あたしはアレクシア、25歳。20回目の合コンなんて、マジつまんないんだけど。特に、向かいに座ってるあいつ…マジで表現しづらいんだよね。
地味顔で、あたしより背も低いし。でも、やたら自信家なの。
会ってまだ5分しか経ってないのに、結婚を熱烈に申し込んできてるし。
あたしの美貌のため、ってのは、まあ、予想通りだけど。
「すみません、あなたへの好意は微塵もありません。つーか、今日のディナー代はあたし持ちで。二度と会うことないでしょうね」
うざい合コンの完璧な締めくくりに、あたしは内心で自画自賛。くるっと踵を返して、入り口に向かってダッシュ!…した瞬間、あの変な男が突然あたしの腕を掴んで、強引に抱きしめてきた…
「うっ」
あたしは目をぎゅっと閉じて、嫌々ながら男の腕の中に抱かれるのを待った。痛い顔で。
「大丈夫ですか?」
耳に響く、男らしい、磁石みたいな声。
男の腕に倒れ込む代わりに、あたしは予想外にも、めちゃくちゃイケメンで、品格漂う男の胸の中に落ちた。顔には、くぼんだ笑顔が浮かんでる。
あたしの体は、この男に物理的に依存してしまうような、結合ホルモンを放出してる。
「ありがとうございます」
あまりのことに、あたしは唐辛子みたいに顔を赤くしてしまった。
「どういたしまして」
男は丁寧な口調で答えた。
彼の魅力的な笑顔に、あたしは急いでこのレストランから逃げ出したくなった。またすぐに顔が赤くなるのが怖くて。
背後から、男の驚いたような気配を感じた。
「クソ!」
バーから飛び出して、一人で通りに立ったら、マジで冷たい風が吹きつけてきて、指が凍りそう。
さらにムカついたのは、あたしのドレスが破れてたこと。あのクソみたいな合コンのせいで、足が丸出しで、震えてる。
タクシー呼んでから20分も経つのに、一台も車が通らない。
冷たい風が吹き荒れてる。
あたしは絶望して足を踏み鳴らした。
やっと一台の車が目の前に止まって、あたしは考えもせずに乗り込んだ。
「誰の車にも乗っちゃうんだ?まさか」
聞き覚えのある男の声が、あたしの頭をリフレッシュさせた。
呼んだタクシーじゃない。驚いた顔で男を見上げると、レストランで抱きしめてくれたイケメンじゃないか!
「あ、すみません、本当にすみません。間違えて違う車に乗っちゃったみたいです。すぐ降ります!」
マジで穴があったら入りたい。
「大丈夫だよ。遅いから、家まで送るよ」
「いえ、大丈夫です。あたし、アレクシアです。ありがとうございます」
「カルビン・スミスです。よろしく」
薄暗い光の中で、彼の魅惑的な、完璧な形の唇を見つめる。
またしても、顔が真っ赤になって、心臓がドキドキし始めた。
言葉が出ない。
「家まで送るよ」
「住所教えて」
「あ…アベニュー・バーリントン、3番地のダウンスリートです」
あたしはつぶやいた。
車は走り出し、ついに家の数ブロック手前の交差点で止まった。
緊張のあまり、間違った住所を言っちゃったんだ。
「ジャケット着て」
カルビンはあたしにジャケットを渡して、あたしは急いでそれを着た。ジャケットはあたしの雪のように白い、ミルク色の生足を隠すのに十分な長さで、本当に内側から温かくなった。
彼はあたしを上から下まで見つめてる。
「また会おう!」
カルビンはニヤリと笑って、車を発進させた。
「どういう意味?え?また会うって!マジか、あたしに興味あるってこと?!」
あたしは、まだ男の匂いが残ってるジャケットをきつく抱きしめて、深く考え込んだ。
家に帰ると、あたしは母親に、親友がどれだけ意地悪か文句を言った。だって、あのブサイクで変な男との合コンをセッティングしたんだから…
でも、あの男と、彼の暖かいジャケットを思い出すと、少しだけ幸せな気持ちになる。
あたしの思考は、ピリッとした電話で中断された。
「アレクシア、聞いて!アビー・ウィリアムズに会ったの」
親友のアニー・ジョーンズからの電話で、あたしは呆然とした…
アビー・ウィリアムズ、あたしの元親友。ある日、彼女はあたしに、高校時代の恋人、ジョニー・エバンスの子を妊娠したって言ってきた。
アビーは、父親なしで子供を産むことができなくて、あたしに、あのクソカップルを一緒にしてあげてって頼んできたから、すごく辛かった。
でも、ジョニー・エバンスがあたしの前にひざまずいて、直接それを伝えてきた時ほどの痛みはなかったけど…
「ねえ、聞いてる?大丈夫?」
あたしが何も言わないから、アニー・ジョーンズは少し心配そう。
「聞いてる、聞いてる、大丈夫」
あたしは無理やり気持ちを落ち着かせた。
「他に何か?」
「アレクシア、言いたくないんだけど、言わなきゃいけないことがあって。ジョニー・エバンスが来月帰ってくるの…」
あたしは最後の望みを失うような気がした。その後、アニーと何を話したか覚えてないし、いつ電話を切ったのかもわからない。ただ、天井をじっと見つめて、長い、長い時間、放心状態だった。
次の日、キラキラ輝く日。
アニー・ジョーンズが、あたしの部屋にズカズカ入ってきた。「ねえ、昨日の合コン、うまくいったんでしょ?部屋の外に置いてあるスーツのジャケット、合コン相手のやつでしょ?運命の人見つけたんだと思ってた」
まぶたを開けるのに苦労してるあたしは、アニーのペチャクチャに困惑し、イライラした。
「いや、昨日の合コンは超失敗だったし、ジャケットもあの変な合コン相手のじゃないし。あいつ、いきなり結婚したいとか言ってきたんだよ、サイコ野郎!」
あたしは合コンの話をやめられない。
「お母さんって、本当に…あなたの結婚のこと、焦ってるよね」
アニーは唇を鳴らした。
「それって全部、アビー・ウィリアムズの素晴らしいお母さんのせい…」
あたしは、母親に従い、良い娘でいるしかなかった。
アニーは、アビー・ウィリアムズの名前を聞いた途端、全てを理解した。
アビー・ウィリアムズのお母さんは、あたしのお父さんと不倫してたし、あたしのボーイフレンドはアビーに奪われた。だから、アビーのお母さんは、あたしの結婚にすごく関心があるんだ。
「今日、仕事じゃないの?」
あたしはすぐに話題を変えた。
「うん、今日は休み。お母さんとお兄ちゃんが来るの」
アニーは笑った。
「そうなんだ。よろしくね。マジで頑張ってる人たちは、マジで頑張って仕事してるんだから!」
あたしは急いで起きて、オフィスに駆け込んだ。
あたしが働いてるシッキムグループは、元々は不動産会社だったんだけど、ここ数年、不動産市場は低迷してる。
それで、会社は文化とか、服とか、他の業界にも手を出し始めた。
でも、トップのリーダーたちの無計画な戦略のおかげで、会社は長年、大きな損失を被ってる。
それに、パンデミックウイルスで、去年は多くの従業員が解雇されたし、それは始まりに過ぎない。来月ももっと解雇されるだろうし、会社全体にパニックが広がってる。
ここは、あたしが卒業してから初めての仕事。
あたしは、この会社に、あたしの最初の恋人、ジョニー・エバンスと同じくらい深い愛情を持ってる。
解雇されたくないから、できる限り一生懸命働いてる。
今日は、いつも以上に頑張ってる。だって、今日から新しいCEOが来るから。彼は、現在の損失を埋め合わせるために、会社全体の希望なんだ。そして、今日が彼の初出勤日。
超有能だって噂の男で、破産寸前の会社をいくつか救ったらしい。さらに伝説的なのは、若いってこと。まだ30代前半くらいじゃないかな。特にあたしにとって魅力的なのは、超イケメンだってこと。
今日のあたしの同僚の女性たちは、みんな最高の格好をしてる。
「聞いた?ゼネラルボードが、会社の株式の大部分をCEOに渡して、彼に会社を経営させるんだって」
「マジか!じゃあ、あたしたちの人生は、この見知らぬ男の手に委ねられるってことじゃん」
同僚たちがチャットしてるのを聞きながら、あたしはますます不安になった。仕事を失いたくないから、もっと頑張って働かなきゃ。
午前中は、水を飲むのも忘れて、仕事に没頭してた。
そして、ランチ休憩の30分前、オフィスのゴシップ好きのアンディ・テイラーが電話を受けて、オフィス全体が騒ぎ出した。
「やばい、来た、来た!キャー、カルビン・スミスが来た!」
彼女は電話を切って、肺から叫んだ。
「カルビン・スミス?」
嫌な予感がする。
「まさか、昨日のジャケットの男?!」
「みんな、気合入れて!スミスさんが来るわよ!」
あたしの部署のマネージャー、トム・ジャクソンは、すごく緊張して興奮してて、CEOの前で自分の能力を披露するのを待ちきれない様子。
「ヒス、彼女、CEOと関係があって、すぐに昇進するらしいわ。あのビッチの醜い顔を見るのは嫌だわ!」
トム・ジャクソンはペチャクチャ喋ってる。
アンディ・テイラーは、軽蔑の表情を浮かべてる。
彼女は、あたしと同じ時期に会社に入社したんだけど、トム・ジャクソンをすごく嫌ってる。
あたしはニヤリ。アンディ・テイラーとトム・ジャクソンが仲良くなることは絶対にないって知ってるから。
誰も知らないけど、二人は元恋人同士だったんだ。でも、最終的にはトム・ジャクソンの不倫で終わった。
だから、アンディ・テイラーは、会社でトム・ジャクソンについての噂を広めることに熱心なんだ。
「来たわ!マジでイケメン!」
「本当にイケメン!」
あたしの注意はすぐに、彼らの興奮した叫び声に引き戻された。
あたしは好奇心から見上げた。
「マジか!昨日会ったあの男だ!」
あたしは内心で叫び、将来の上司があたしを見たらどうなるんだろう…って考えてる。
カルビン・スミスは、あたしの方に歩いてきて、トム・ジャクソンの挨拶を完全に無視して、あたしの顔に視線を固定してる。