半年後
汚い毛布をかぶって、公園のベンチで寝苦しい体勢でいた。眠れなくて、もうすぐ夜明けだから、朝のジョギングを始める前に起きなきゃいけなかったんだ。人々の視線が嫌だった。私のことなんて気にもしないで、何を言ってるのか聞こえても気にしないし、何も良いことなんて言ってなかった。全部意地悪でひどいことばかり。
頭の中を駆け巡る考えで眠れず、ベンチから立ち上がって目をこすった。背中と筋肉が痛くてたまらないけど、もう慣れたもの。妊娠するとこうなるし、コンクリートの上とか公園のベンチで暮らしてるとそうなるんだよね。シェルターで暮らそうとしたこともあったけど、最悪だった。男の人たちが私に無理やりしようとしてきて、妊娠してるって言っても聞かないんだもん。もう嫌がらせには耐えられなくて、1週間以上いたことはなかった。
お腹を見て、手を置いた。「おはよう、ベビーガール。」少し蹴られた気がして、笑った。
笑えるのは彼女のおかげ。私の人生で、生きる価値がある唯一のものだった。彼女のこと以外、どうでもよかった。無料のクリニックに通ってるんだけど、そこの看護師さんたちは親切で、私の面倒を見てくれた。私がホームレスだってことは多分知ってるけど、何も言わなかった。
古くて破れたダッフルバッグを持って、公園の裏に行ってトイレに入った。鏡で自分の顔を見た。黒い髪はボサボサで、目はくぼんでて、着てる服も古くて大きすぎる。
ため息。古いし大きい服でも、何もないよりはマシ。
ぼろきれを濡らして、水筒に水を入れて、個室の一つに入った。服を脱いで、ぼろきれと水と、持ってるほんの少しの石鹸を使って体を洗ったんだ。
終わったら、昨日古着屋で買ったワンピースを取り出して、体に当てた。シェルターでもらった服はもう全然合わなくなっちゃった。お腹がどんどん大きくなってるからね。トイレから出て、公園の入り口に向かって歩き始めた。大きな汚いダッフルバッグを肩に背負ってなかったら、普通の妊娠したティーンに見えたと思う。でもそうじゃないんだ。ダッフルバッグが、私が送ってきた大変な生活の証なんだ。ママに追い出された次の日にイリノイを離れて、それ以来一度も帰ってない。ずっとあちこち移動してる。どこにも長くはいないんだ。危険すぎるからね。何かパターンに気づかれると、私とベビーガールが危険にさらされる可能性がある。だから、一つの町か都市に3日だけいて、来月また戻ってくるようにしてるんだ。
今はニューヨークにいる。ここはお金くれる人がいるんだよね。1日に50ドルもらえることもあるから、食べ物とか飲み物を買うのに十分だし、貯金もしなきゃだし。あと3ヶ月もすればベビーガールが生まれるし、どこに住むことになるのか全然わからないんだ。
タイムズスクエアに行くにはまだ早すぎたから、街を歩き回って周りの景色を眺めてた。
どうしてこんなことになったんだろう?
7ヶ月前には、普通の生活してたんだ。奨学金をもらって、大学に無料で通う予定だった。全部台無しになったのは、誰かを愛してると思って、体をあげちゃったから。今思えば、ウィルは何度も愛してると言ったけど、本気じゃなかったんだよね。ただセックスがしたかっただけで、その時は気づくほどアタマ良くなかった。
7ヶ月前には、ママと二人で寝る、そんなに大きくないベッドがあったんだ。シルクじゃなかったけど、コンクリートやベンチで寝るよりは全然マシだった。
7ヶ月前には、私のためなら何でもしてくれたママがいたのに、今は私とベビーガールだけなんだ。
この残酷な世界で、たった一人で。
妊娠するなんて思ってもなかった。ウィルに浮気したって言われるとも思わなかったし、ママに家から追い出されるとも思ってなかった。
これがいわゆる、予想外のことってやつなんだろうね。
夏で、ノースウェスタン大学に進学して、土木環境工学の学位を取る準備をしてたんだ。4年間そこで勉強して、卒業したら土木建設プロジェクトマネージャーの仕事に就くはずだった。場所とか家とかオフィスとか建てるんだよね。でも、私には住む場所すらないんだから皮肉だよね。旅をすることで色んなことを学んだし、色んなものを見てきた。すごくひどいものもね。
ある日、寝る場所を見つけて、真夜中くらいに男たちが女を襲って、銃で脅してレイプしてた。みんな順番に彼女の体を弄んでて、私はただ恐怖に震えてその光景を見てるしかなかった。自分もベビーガールも殺されるわけにはいかない。生きていくためにこんなに頑張ってるのに。
私の骨の奥底で、これが私の人生じゃないって何かが言ってるんだ。これが私の生きる道じゃないって。だから、体も心も戦ってる。数ヶ月前に地面でポケットナイフを見つけて、誰かが私に手を出そうとしたら、躊躇なく使うつもりだった。
ホームレスだけど、楽じゃなかった。
私とベビーガールのために、人生が欲しかった。ママが送ってきた人生より良い人生が欲しかったんだ。お客さんがコーヒーに砂糖が足りないとか、料理が熱すぎるとか文句言ってくるような、ダイナーで働くのは嫌だった。