カーラ
お店に入って、必要な食料品を全部買った。あたしのことジロジロ見てくる人たちの視線なんて、全然気にしてないし。あたしはビッチかもしれないけど、あたしの生き方だから、周りのことなんて気にしないもん。
男たちはあたしのこと欲しがるんだよね。だって、めっちゃ恵まれた顔に、ナイスバディだもん。あたしみたいな女の子、欲しくない人いる?
あたしはカーラ・ゲイツ。孤児で、頼れる家族なんていない。親友のジョイスだけは一緒にアパートに住んでるけどね。あたしと違って、ジョイスはいい仕事してるし、すっごい謙虚なの。でも、ジョイスは他の人たちみたいにあたしのことジャッジしたり、批判したりしない。
アパートに帰った。今日はクライアントとのミーティングがあるし、後でクラブにも行かなきゃ。あたしの仕事は、みんなが言うには、売春婦とか、ビッチとか、何でもいいけど、あたしは全然気にしない。何年もやってるし、もうすぐ辞めるつもりもないもん。ずっとこれで生計立ててきたし、もうすぐ辞めるつもりもない。
着替えて、ホテルのクライアントに会いに行った。今は長い関係は望んでないから、クライアントとの関係にはすごく気を遣ってる。
あたしのこと、独り占めしたいっていう人もいたけどね。でも、あたしの人生をコントロールされたくないから、そういう人たちとは話すのをやめた。
あたしの人生に、男になんて指図されたくない。恋愛とかマジ無理。そんなの絶対やりたくない。
ホテルに着いて、ミーティングする部屋に直行した。そこで時間はかからなかった。用事を済ませて、そこから出た。彼はちゃんと払ってくれるし、それがいいんだよね。
まだタクシーが見つからなくて、道を探して歩いてた。道の端っこで待ってたら、道の向こうにすごい車が見えたんだよね。ポルシェで、最新モデル。こんなの持ってる人、きっとお金持ちだ。
男かどうか、ちょっと見に行こうかな。なんか変な停め方してるし、なんでだろ? めんどくさいことには関わらないで、家に帰った方がいいかな。
いやいや。何が起こるっていうの?
車に近づいて、ガラスをノックした。中を見ようとしたけど、あんまり見えなかったけど、誰かいるのはわかった。何度もガラスをノックしたけど、返事がない。クソ、まじムカつく。もういいや、帰ろ。
立ち去ろうとしたら、ドアが開いた。そこで振り返ったら、すごい光景が目に入ったんだ。
「まじか! 大丈夫ですか?」って、息苦しそうな運転手に声をかけた。
これって、喘息の発作とか? なんであたし、まだここにいるんだろ? 椅子に寝かせて、必死に蘇生しようとした。スマホで応急処置をググって、その通りにやってみた。
なんで息苦しそうなのかなって不思議に思ってたんだけど、喘息の発作じゃないみたい。何はともあれ、彼はようやく息を吹き返した。ってことは、もうあたしは帰れるってこと。
やっと彼の顔をじっくり見ることができた。くせっ毛の黒髪に、緑色の瞳。めっちゃイケメンだし、お金持ちっぽい。道端で死ぬような人じゃないでしょ。
「あの… 大丈夫ですか? 救急車呼びましょうか?」って聞いた。
なんであたし、こんなバカな質問してるんだろ。さっさと救急車呼んで助けてもらえばいいのに。ここにずっといる時間なんてないし、あたしが帰ったら何かあったらどうするの?
ようやく彼がこっちを見て、あたしを見つめてる。ちょっと気まずいんだけど。彼の目はなんだか暗くて、なんでだろって思ってる。
「やっぱり、救急車呼びますね」って、もう一回言った。
彼はあたしの手首を掴んで、電話をかけるのを止めた。手首を掴まれた瞬間、全身に電気が走ったみたい。何が起こったんだ?
「やめてくれ。誰にも連絡しないでくれ」って、ようやく言った。
声は大丈夫だし、こんなに強く誰かを掴めるってことは、大丈夫なんだろう。
「わかった… もう離してくれない? 痛いんだけど」
彼は手を離して、椅子に頭を預けて、髪を指で梳いてる。あたし、今よだれ出そうになってるんだけど。ちょっとくらい、彼のこと試してみてもいいかな? でも、あたしは相手にさせたいタイプじゃなくて、あたしに懇願させるのが好きだから、そんなことしないけどね。
「もう大丈夫みたいだね。あたしはもう帰って、自分のことするよ。すみません」って、行こうとしたら、また彼に引き止められた。
「助けてくれて、どうしたらお礼できる?」って聞かれた。
お金でももらおうかな。あなたから他に何が欲しいって言うの? ただし、楽しいことでもしたいって言うなら別だけどね。もう、あたしは帰る。彼にコントロールされるのは無理。長くいたら、変なこと言い出しそうなタイプだし。
「別に。もう帰る。バイバイ」
今回はちゃんと逃げ切った。やっとタクシーを捕まえて、家に帰った。彼のことが頭から離れない。しょうがないよね。イケメンだし、見てて飽きないし。
「カーラ、大丈夫? なんか上の空だよ。あたしが来たのにも気づかなかったし。いつもと全然違うじゃん」って、ジョイスが話しかけてきた。
ため息をついて、「ごめんね、ジョイス。ちょっと変なことばっかり考えちゃってた」って言った。彼女はニヤリとして、「あたしもその変なこと、知りたいな。教えてよ」あたしは目を回した。
「ジョイスってほんと変。教えないよ」って言ったら、彼女はぷいっと拗ねた顔をした。
「そんな顔しても、教えない。今日は仕事どうだった?」って、話題を変えた。
「話を変えたね。仕事は最高だったよ。帰り道でワイン買ったし」って答えた。
「わーい。ありがとう、ベイビー。だからジョイスのこと好きなんだよね。ちゅーさせて」
彼女は顔をしかめて、「えー、あたしレズじゃないからね!」って、部屋から飛び出した。
あたしは笑い始めた。ジョークの言い合いは、いつものこと。少なくとも、ジョイスはあたしのことをジャッジしないで、気にかけてくれる。それが一番好きなところ。
夕方になって、クラブに行く準備をした。ジョイスにバイバイって言ってから家を出たんだけど、あの助けた男のことが頭から離れなかった。彼、今どうしてるかな、まだ生きてるかなって。
あたしが呼吸を整えてあげたから、大丈夫なはず。もっと一緒にいて、知り合えばよかったかなって思う気持ちもある。
でも、そんなことない。彼のことなんて忘れて、自分の仕事に集中しなきゃ。彼はもういないし、あたしは現実と向き合わないと。それが一番いい選択をしたと思う。