え、マジで…? ちょ、冗談だよね? でも、あの人が冗談言う人じゃないのは確か。だって、知り合ってまだ1ヶ月だけど、笑った顔も冗談言ってるのも見たことないし。
他のスタッフからは「ミスターコールド」って呼ばれてるんだよね。いつも冷たいから。でも、本当は良い人だって知ってる。色々あってそうなってるだけで…。だからこそ、あの人のこと好きになったんだよね。絶対、私のことそういう風に見てないってわかってるのに。
…で、なんでこんなこと言ってるの?
「冗談ですよね?」って、よろけながら聞いた。だって、やっと足で立ってるんだから。
「冗談なんか言うわけないだろ。困った時は助けてくれるって言ったのはお前だろ? もう約束破るのか?」って。プロだよね、あの人。私が悪いみたいな言い方、一瞬でできるんだから。まるで爆弾投げつけられたみたい。
「それは言ったけど、こんなことになるなんて思ってなかったし…」って、向かいの椅子に座った。
「約束したんだから、俺に協力しろよ。それとも、俺が狼に食われるのを見たいのか?」って、眉毛上げて言われた。意味はわかる。
正直、そんなの絶対嫌。だったら、私が犠牲になって、あの人を助ける方がいい。別に悪い話じゃないし、私にとってもメリットあるし。
「じゃあ、私と結婚すればいいんですか?」って、もう一回聞いた。
「そうだ。結婚して、俺の奥さんになれ。お前と家族の面倒は俺が見る。学校にも今まで通り行けるし。ただ、そばにいてくれればいい。そんなに難しいことじゃないだろ?」
いや、十分難しいこと言ってる。私を愛してもいないのに、結婚したいって。私はあの人のこと好きだし、喜んでそうしたいけど、色々考えなきゃいけないことがあって、よくわからないから、ちょっと説明してほしい。
「私の年齢のこと、気にしないんですか?」
「もう大人だし、未成年じゃないから全然気にしない。よく考えて、答えを出してくれ。どんな答えでも受け入れるから」って。
あの人を見た。すごく必死な顔してる。こんな人、よっぽどのことがないと私に頼ってこないはず。だから、その場で人生最大の決断をした。
「やります。結婚します」って言うと、嬉しそうな顔をした。
初めて見た。笑顔ってあんなに明るくなれるんだ。余計に好きになった。
これからどうなるかわからないけど、頑張ろう。ちょっとわがままかもしれないけど、私も幸せになる権利はあるんだから。
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2ヶ月後
セリーナは嬉しかった。まさか一発で合格するなんて信じられない。教習受け始めた時から、ずっと不安だったんだよね。でも、これで免許取れたから、自分で運転できる! きっと、あの人も喜んでくれるはず。そう思えた。
セリーナの人生に喜びをくれるのは、旦那だけ。周りの視線とか色々あるけど。故郷の小さな村に両親に挨拶に行った日のこと思い出す。結婚するって言った時の、あのびっくりした顔。
時間をかけて説得した。正直に、あの人がいないと生きていけないんだって。あの人が私の喜びの源なんだって。いつも私の幸せを願ってくれてるから、最終的に承諾してくれたんだ。
セリーナは小さな村で育った。そこではみんな、農家か工場で働いてる。両親は高校卒業してすぐに結婚して、セリーナを産んだ。二人は幼馴染で、私のためにお金を貯めてくれた。
誰よりもたくさんの愛情と優しさをもらった。有名な大学に行ってほしいって言ってくれて、それが叶った。両親を喜ばせたかったから、必死で勉強した。
そういう環境だったから、友達は全然いなかった。でも、それが問題だとは思わなかった。なぜ大きな街に来たのか、わかってるから。知らない場所で友達作るのは、私にとってはリスクでしかないから、そんなの望んでなかった。
18歳で結婚したけど、学校には通い続けてる。でも、前と全然違う。周りの目とか、陰口とか。結婚するのは罪じゃないのに、まるで私が何かとんでもない罪を犯したみたいに言われる。
「おめでとうございます」って、運転手さんが車に着いた時に言ってくれた。
「ありがとう。色々助けてくれて。まさかこんなに早くできるとは思わなかったわ。本当にありがとう」って、その人に笑顔で言った。
「お役に立てて嬉しいです。この後、どこに行きますか?」って。
ちょっと考えて、結論を出した。
「先に、何か食べに行きましょう」って言うと、運転手さんがドアを開けてくれたから、車に乗った。
新しい免許の写真を撮って、海外出張中の旦那に送った。忙しいはずだから、きっと見てないだろうけど。
「奥様、元気?」って、旦那と結婚してからずっと運転手をしてくれてる人に聞いた。
リチャードは良い人で、大好き。周りの人たちが色々言ってきて落ち込んでる時も、いつも励ましてくれる。
「元気ですよ。苗木、まだ欲しいですか?って聞かれました」って言って、セリーナは思い出した。
「忘れてた! 欲しいわ。家の裏に庭を作ろうと思ってて。野菜とか植えたいの」って、すでに新しいプロジェクトがどんな風になるか想像してる。
「いいですね。もし何か手伝うことがあったら、遠慮なく言ってください」って、リチャードが言ってくれたから、セリーナは笑顔になった。
「覚えておくわ」って言った。
車はセリーナのお気に入りのフードモールに止まって、嬉しくて車から飛び出して、ピザ屋さんに駆け込んだ。嬉しい時は、どうしても食べたくなっちゃうんだよね。
前は節約しなきゃいけなかったから、好きな時に食べられなかったけど、今は旦那がくれたカードのおかげで、欲しいものは何でも買える。旦那が望む使い方とは違うかもしれないけど、私のやり方でお金を使ってる。
「いらっしゃいませ、またすぐに会えましたね、ソイヤー夫人」って、女性の店員さんがセリーナの前に立った。
「あなたもね」って、笑顔で返した。
「いつもの?」って聞かれた。
「そう。あと、3種類追加で」って答えた。
「パーティーですね」ってアンが注文を作ってくれる。
「合格したの! 運転免許取れたの!」って、嬉しくて仕方ないから、隠せない。
「おめでとう! 私も嬉しいわ」って、アンがレシートをくれた。
「ありがとう。飲み物ももらってもいい? あなたにもあげるわ。いつも話しかけてくれるから」って、感謝の気持ちで言った。
「ありがとうございます」って、アンが飲み物の会計をするためにカードを受け取った。
レシートを受け取って、セリーナは注文ができるのを待つために、椅子に座った。旦那の名前で呼ばれるだけで、ドキドキしちゃう。
「あら、偶然ね。こんなところで会うなんて思わなかったわ」って、聞き覚えのある声がして、頭を向けて見ると、旦那の義理の妹だった。あの女は本当に嫌い。
「元気?」って、セリーナはすぐに聞いた。
「元気よ、見ての通り。また、彼の金を使いに来たんでしょ? 恥ずかしくないの?」って、ウェンディが言って、セリーナは彼女を見た。ウェンディみたいな人、嫌い。自分だけが一番だと思ってるんだから。
「旦那が稼いだお金を使ってるだけだけど?」
「信じられない。なんで、こんな恥知らずなゴールドディガーを旦那は選んだのかしら。そのうち捨てられるわよ、今のうちに楽しんでおきなさい」って、ウェンディは言って、去っていった。