マジで朝って嫌い。大好きなんだよね、彼女が迎えに来てって電話してくるまでは。彼女の名前はアップル。本名だよ。なんでまだこんなやつと付き合ってんのか、マジでわかんない。だって全然好きじゃないし。付き合ってる理由は、彼女がチアリーダーのリーダーだから。でしょ?学校ってやつはさ、フットボール部のキャプテンはチアのリーダーと付き合ってなきゃいけないみたいなとこあるじゃん?
「もう行くよ」って言って電話切った。
アイツ、車持ってんのに、なんで俺に迎えに来させんだよ。スマホをポケットに突っ込んでため息。「早く行かないと、怒るよ」
お母さんが笑って、俺の頬をつねってきた。手を払いのけて、ニヤけて、バッグを持って、バイバイって言った。
「新しいご近所さんに、早く挨拶しに行ってあげてね」って、お母さんが言った。
ガレージを開けて、車のロックを解除して、バッグを後ろに投げ込んで、アップルの家に向かった。
「何してたん、マリク!?」って、着くなり叫んでやがる。
うっせーよ、クソビッチ。
「別に」ってため息。「何してたのよ、他に彼女でもいるの?いたら別れるわよ」
少し考えてから答えた。「いるから、じゃあ別れよっか」ってニヤリ。「あら、面白いこと言おうとしてる時のかわいさったら」って、髪をくしゃくしゃにされた。
唇を噛んで怒りを抑え、車を走らせ始めた。バカ女。
一緒に学校に入った。彼女の腰に手を回して。なんか考えようとしたんだけど、アイツのウザい声が頭から離れなくて。全然ダメだった。そしたら、いつものメンバーが見えた。「もう行く」ってアップルに言って、頬に軽くキスして、俺はさっさと離れた。
「ボール!」
親友のデールが言って、フットボールを俺に投げた。空中で回転するのを見て、片手でキャッチした。投げ返したら、同じようにデールもキャッチ。デールとは1年生からの親友で、友達としてはいい関係だ。唯一ウザいのは、俺がゲイだって言ってくる時。なんでそんなこと思うんだろ。俺とデールは、髪の毛も巻き毛で茶色いし、目も青いし、似てるんだよな。デールの目は水色で、俺のは明るいブルー。身長も同じ、タトゥーも同じ、肌の色も日焼けしてるけど、俺の方がムキムキで、デールはめっちゃ早口。デールに話させたら大変だぞ。
「どうした?なんか怒ってるみたいだけど」
アップルと上手くいってないって、わかるのはデールだけなんだよな。別れろって言われたけど、意地っ張りだし、評判も気になるから、アドバイスは無視した。
「アップル」ってボソッと言った。デールが背中をポンポンって叩いてくれて、俺らは仲間から離れて、学校に入った。「マジで別れろって。絶対幸せじゃないって」
「わかってるけどさー」
「もうかわいい男見つけれたんじゃない?っていうかさー」
「ちょっと待って、何?」
デールは目を丸くした。「俺はゲイじゃない」って不機嫌そうに言った。「そう思ってればいいよ」
俺のロッカーを開けて、本を取り出してくれた。俺はまた目を丸くして、本を取った。「思ってないから別にいいんだよ、お前こそそうじゃないの?」って言い返した。デールはクスクス笑ってから答えた。「ゲイじゃないけど、お前はゲイだって知ってるよ。マジで」
俺は目を丸くして、デールの言葉は無視して、一緒に授業に向かった。
教室の前に座った。アップルが入ってきて、デールは目を丸くした。アップルはデールの前に立って腕を組んだ。「どけ」って言った。
「どけ、クソビッチ」
アップルは息を呑んで、俺は顔を背けた。「そんなこと、言わせる気!?」
「本人の問題だろ」って俺は肩をすくめた。アップルはため息をついて、俺の隣に座った。なんで入ってきた時にそうしなかったんだろ? デールと話してたら、先生が入ってきた。「生徒のみんな、今日から新しい転校生が来ます。みんな優しくしてあげてね、特に男子はね」
先生はドアに行って、男の子を連れて戻ってきた。男の子は下を向いてて、顔が見えなかった。「みんな、ケイシー・ロンドンだよ」
男の子は先生に肩を叩かれるまで顔を上げなかった。顔を上げた時、ニヤッとして、俺はしばらくその顔に見とれた。短い茶色の髪、茶色の目、日焼けした肌、ピンクの唇、丸くてつるんとした顔。めっちゃ綺麗じゃん。「なんであの子のこと見てるの?」って、アップルが聞いてきた。「別に」って俺は言った。
俺はケイシーのことを見続けていた。先生が席に着くように合図した。ケイシーは教室の隅の、俺らの向かい側の席に座った。先生が話している間、ずっと先生の唇を見てたんだよ。先生はいつもよりゆっくり話してたけど、俺は別に何も思わなかった。授業の半分くらい、ケイシーを見てた。先生のこと見てるケイシーを。
「ずっと見てるなー」って、デールがニヤリ。俺はまた目を丸くして、先生の方を見た。
チャイムが鳴って、みんな立ち上がった。ケイシーはみんなが動き出すまで動かなかった。マジであいつ、変わってるって思った。先生の唇を見てるし、話さないし、チャイムがいつ鳴るかも知らないし。「話しかけに行ってみない?」って、デールが廊下で言った。「無理、バイバイ」ってアップルは、誰も自分を恋しくないかのように言った。「ケイシー!」ってデールが呼んだ。俺はデールの胸を叩いた。ケイシーは見てなくてよかった、そのまま歩き続けたから。「大丈夫かな?」ってデールは言って、俺をケイシーの後ろに引っ張った。追いついて、デールがケイシーの肩に触ると、ケイシーは飛び跳ねて振り返った。「…こんにちは」って、囁くような声で、ほとんど聞こえなかった。「あー、こんにちは。俺はデールで、こっちが…」デールは遮られた。「早すぎる」って、ケイシーはデールの唇を見て言った。「俺はマリク」って俺はゆっくり言った。ケイシーは笑って、頷いた。その笑顔が、めっちゃ可愛かった。マジで、別にゲイじゃないけど。
「どの授業受けてるの?」って、俺はまだゆっくり話した。ケイシーは時間割を渡してくれて、歴史だって分かった。「じゃあ、一緒に行こうか」って、俺は早く言った。ケイシーは困惑した顔で俺のこと見てたけど、何言ってるかわからないって感じで、頷いた。デールを見たけど、肩をすくめただけで、俺らはケイシーと一緒に歩き出した。たぶん、ゆっくりなだけなんだろう。