まだ彼には会ってないんだけど、同僚たちは怖いって言ってるんだよね。
宮殿って、滅多にみんなに開かないじゃん? 今夜、新しい狼の王様が戴冠するんだ。彼がオオカミに変身した後で。みんな招待されてるけど、私だけ例外。
お父さん、つまりラムスは、私が家とパックの土地から出るのを固く禁じてたんだ。部屋に閉じ込められて、命令に背いたら罰するって脅されたし。
なんでお父さんが急に変わっちゃったのか、わからないんだよね。マザーが生きてた頃は、こんなじゃなかったのに。いつも私に怒ってて、ちょっとしたことで罰してたんだ。もしマザーがここにいたら、私を一人にしなかっただろうな。きっと連れて行って、一緒に祝ってくれたはず。
「こんなの許せない。新しい王様の変身を見ないと。」って心の中でつぶやいた。
たまには自由になりたいし、自分のやりたいことしたいじゃん? 自分の決断で生きてみたいんだよね。
バッグを掴んで、着替えをいくつか入れた。ガラス窓を割って、4階から飛び降りたんだ。
お父さん、ラムスはきっと怒って罰するだろうけど、今はそんなこと考えたくないんだ。
オオカミに変身したら、すぐに全力で走り出した。
お父さんの命令に背いたことなんて、頭から全部追い出したんだ。
あいつ、つまりラムスはきっと私を、マザーの体を埋めたあの罪の木にまた縛り付けるだろうな。あの木は、私の人生で一番悲しい出来事を思い出させるんだ。すべてが変わってしまった日。
長い距離を走って、体中が疲れでいっぱいになるのがわかる。足も弱ってきてるし。王国は、すべてのパックの中心にあるんだ。
お祝いの会場に着いたら、どれだけの狼たちがこのイベントに参加してるのか、目にしたよ。
ステージの前には、今夜ゼウスが変身を始めるから、引退することになる王様がいる。
お父さん、ラムスも一番前の席に座ってるのが見えた。彼のベータと、他のアルファたちとそのベータと一緒に。
人間の姿に戻って、服を着た。
メスのオオカミは18歳の誕生日に変身できるけど、オスのオオカミは21歳。でもロイヤルブラッドは違うんだよね。25歳になると変身するけど、人間の姿でも強いんだ。
彼の姿が人間だって見て、ニヤけちゃった。パックのメスの戦士たちから聞いた話だと、彼は本当にイケメンらしいんだ。彼の存在だけで、猛烈に彼に駆け寄ってキスしたくなるけど、彼の評判を思い出したんだ。彼は、誰でも近づけるようなタイプじゃないんだ。女の子だって。
首を振った。「この考えは、私のメイトだけのものだ。」
彼を観察したら、全然笑ってないんだよね。なんでだろう?
「息子よ、時が来た。月が一番高い位置にある。」王様はそう言った。
月の光が黄金のステージに当たると、新しい王様は変身し始めた。みんな一瞬静かになって、息を止めてるみたいだった。
彼の体が汗をかいて、変身が始まるのがよく見える。彼は少しも声を出さないんだよね。痛そうな顔もせずに。骨が動き始めて、毛皮が現れて、オオカミに変身したんだ。
本当に息を呑むほど美しい!!!!
あのハンサムな男性が、額に白い三日月模様のある、巨大な真夜中の黒いオオカミに変わったんだ。それが、すべての王様がオオカミの姿になると現れる生まれつきの印だけど、いつも黒いわけじゃないんだ。前の王様は茶色のオオカミだった。
みんな「新しい王様に万歳、ゼウス王に万歳!」って叫んでる。私もそこで一緒に叫んだよ。
まだ叫んでたら、お父さん、ラムスが私のほうを見てるのが見えたんだ。目が合って、ああ、やばいって思った。オオカミの姿に戻って、家に向かって全力で走った。
ラムスは私を罰するだろうな、いつもそうなんだから。
すぐにパックの家にたどり着いて、部屋のドアに鍵をかけた。お父さん、ラムスの怒りからは逃げられないってわかってる。閉じたドアでさえ、彼が私を傷つけるのを止められないんだから。
まるで私が考えてることを聞いたみたいに、ドアが荒々しく開いて、怒った顔のお父さん、ラムスが私の髪を掴んで、外に引きずり出したんだ。罪の木まで。そこには、パックのメンバーみんながいて、また別の痛い罰を目撃することになるんだ。
どうしてこんなに早く来れたんだ?新しい王様を祝福するために、あと数分は残ってると思ったのに。
「何度も言ってるだろ、私に従わなきゃいけないってことを。何回言えばわかるんだ?」お父さん、ラムスは私を外に引きずって、木に縛りつけながら叫んだ。
「お父さん、お願い、ただ彼の変身が見たかっただけなんだよ。あなた以外、誰も私を見てないよ。」私は泣きながら言った。
「言っただろ、来るなって。お前は私に背いたんだ、カタリーナ。」
「お父さん、もうやめて。これじゃ、何も良くならないよ。」兄のサムが叫んだ。
「私たちの掟を知ってるだろ。私はアルファで、お前は私に背いた。罰を受ける必要があるんだ。」
「お父さん、それは彼女にとって酷すぎるよ。最後に罰したのは、私たちの訪問者と話したからでしょ。彼女は私の妹だし、今日したことに何も悪いことなんてないよ。私たちみんなそこにいるべきだったんだ。」
「サムエル、お前も私に背くのか?なんでいつも彼女の味方をするんだ?」
「違うよお父さん、でも彼女は私の妹で、あなたも彼女の父親だってことを理解してほしいんだ!!」
「サム、大丈夫だよ、私のせいだから、仕方ないんだ。もう慣れてるし。」私はお父さん、ラムスの目をまっすぐ見て言った。以前は愛と幸せで満ち溢れていた彼の目。かつて私を世界で一番大切な子供のように見ていた彼の目は、今や私だけのために作られたムチを持っているんだ。先週、パックの家から出て、裏庭でバラを摘んだときに、男が来て話しかけてきたから受けた罰からの、私の血の染みがある。父、ラムスをあんなに怒らせることになるなんて思ってもみなかったのに。
「これはお前の不従順に対するものだ、カタリーナ。これが最後になることを願う。」そして、私はそれを感じた。約8年間受け続けているあの痛み。背中へのすべての鞭が、感情を表さないための力を与えてくれるんだ。痛み、悲しみ、そして父、ラムスに対する怒り。
もう、こんなくだらない罰のために泣いたりしない。もう十分だ。彼の気が済むなら、どんな打撃にも耐えられる。
「今回こそ、お前は学ぶだろう。」お父さん、ラムスは言った。
「本当に?お父さん?それとも今回は、私がマザーの死の責任者だってことを理解するべきってこと?」それが、私が気を失う前に言った最後の言葉だった。
*********
きれいな蝶を見て、森の奥深くまで追いかけたんだ。マザーが私たちの食事の準備をしてたから、私だけだった。マザーに川の近くでピクニックしてもいいか聞いたら、いつも私の願いを叶えてくれたんだ。
「カタリーナ?」マザーは周りを見ながら言った。
この美しい蝶に気を取られて、声が聞こえなかったんだ。熊が住む洞窟に着くまで。
「あー!」突然、熊が現れて私を襲ってきたんだ。
「カタリーナ!」マザーが叫んだ。
「マミー、助けて!助けて!」私は叫び返したんだ。
すると突然、マザーは美しい茶色のオオカミに変身して、私を捕まえようとする熊から守ってくれた。
彼女は勝てないってわかってた。そして一瞬にして、熊の爪が彼女の胸に当たり、血が噴き出したんだ。
「カリシャ!」お父さん、ラムスが叫んだ。そして、突然たくさんのパックの戦士たちが熊を襲い、殺したんだ。
「カリシャ、私を置いて行かないでくれ。パックの医者を呼んでくれ!」彼は叫んだけど、パックの医者が到着する前に、マザーは死んでしまったんだ。
お父さん、ラムスは私に何が起こったのか尋ねて、私が理由を伝えたとき。彼は私を見て、私の顔を平手打ちしたんだ。その日から、お父さん、ラムスは変わってしまったんだ。
私が過ちを犯すたびに、彼は私を罪の木に縛り付けて、何度もムチで打ったんだ。私が気を失うまで。あの木は、彼が私の母を埋めた場所なんだ。それは、彼がいつでも私を罰したいときに使う場所だったんだ。