第2章
6
でも、彼の足は僕が願っていた通り、日に日に良くなってきてたんだ。
時間はあっという間に過ぎていく。毎日、ジャマルは僕のことを「負け犬」って呼んで、僕を苦しめようと色んなこと試してきたけどさ。
正直言って、一つだけ認めることがあるんだ。それは、本当に辛いことだった。それは、心の痛み。
でも、彼はついに普通に歩けるようになったんだ。
僕も罪悪感を感じなくて済むようになった。
ただ、まだ自己中心的で、彼の記憶を取り戻して欲しかったんだ。
僕らの過去を思い出して欲しかった。
僕の別れの真実を彼に伝えたかった。
それで、彼が歩けるようになったことを祝う口実で、その町に連れて行ったんだ。
太陽が照っている日はそんなに多くない場所だったけど、僕にとっては大切な場所だった。
僕らは、その町に何度も行ったことがあるんだ。
そこには、森の中に貴重なハーブがたくさんあって、僕はそれに夢中になっていたんだ。
おばあちゃんが残してくれた医学書には、まだたくさんの貴重な薬草が載っていた。
僕の目を覚ましてくれるかもしれないけど、この森は危険もいっぱいだったんだ。部族から追放されて、生き残るために森をさまよっている野良オオカミがいたから。
ジャマルは、僕に何か悪いことが起こるのを恐れて、いつも一緒に来てくれてたんだ。
今回は、余計なネヴァーがいるとは思わなかった。
彼の記憶を取り戻してあげたかったから、僕は彼に提案したんだ。
「ミスターアルファ、後で森に行って、あなたの回復に役立つ良い薬草を探してくるよ。」
「ここには来たことがあるんだ。森の景色は綺麗で、ちょっと湿っぽいけど、中の新鮮な空間があなたの傷を癒してくれるはずだよ。見てみたい?」
彼は黙っていた。
ネヴァーが口を開くまで:「あなた、ここにいるのね。見てきなさいよ。」
彼女は彼の腕を掴んだ。
ジャマルは彼女の頭を撫でた:「分かった、お前の言う通り。」
これは、元々は僕の幸せだった。
でも、今の僕がどんなに辛くても、他人を責めることはできないって分かってる。結局、この道を選んだのは僕自身なんだから。
昔、僕がハーブを採りに森に行くとき、彼は僕が野良オオカミに襲われないように、ボディーガードを手配してくれたんだ。
今日も誰かを探しているようだった。
道の分かれ道で、彼はボディーガードに何かを囁いた。
ボディーガードが僕に道案内をしてくれた。「ヘブンさん、こう行けばたくさんのハーブが見つかりますよ。後で迎えに来ます。」
僕は同意した。
別れ際に、彼らは楽しそうに笑っていた。
僕は知らなかったんだ。目の前に、巨大な深淵が待ち構えていることを。
7
ボディーガードが教えてくれた道を進んだんだけど、穴に落ちちゃって、自分では起き上がれなくなってしまったんだ。
パニック、恐怖、ありとあらゆる悪い感情が僕を飲み込んだ。
叫んだけど、誰も返事をしてくれない。
ボディーガードは後で迎えに来てくれるはず、何度も自分に言い聞かせたんだ。
「大丈夫、誰かが助けに来てくれるから。」
何度も期待しては、また失敗する
「ちょっと待って、もう少しだけ待ってて。」
でも、ボディーガードは来なかったし、ジャマルも来なかったんだ。
午後遅くになって、ネヴァーは野花のブーケを持って、笑顔でジャマルと一緒にこのあたりを通ったんだ。
助けを求めて叫んだけど、彼らには聞こえていないようだった。
声が枯れるまで泣いて、斜面でジャマルは僕を見たんだ。
ついに助けられるんだって喜んだ。
まるで、水のない岸で渇きに苦しんでいた魚が、ついに雨を待っていたような感じだったんだ。
でも次の瞬間、彼の視線はネヴァーに移ったんだ。
何事もなかったかのように、彼女と話して笑っている。
彼は、本当に僕を見なかったふりをしていたんだ。
「J、雨が降りそうだよ。行こう。」
「ああ。」
僕は崩れ落ちて泣いた。記憶を失ってから、なんでこんなに僕を嫌うんだろうって分からなかったんだ。
心は、まるで一番切れ味の悪いハサミで切り刻まれるようだった。
砕かれて、砕かれて。
ジャマル、この森で夜に雨が降るってこと、知ってるでしょ。
僕が一番雨を恐れていたってこと、絶対知ってるはずだよ。
この町では、夜には野良オオカミが出るんだ。
8
激しい雨が降り、完全に暗くなった。
誰も来なかった。
体の温度が急速に低下していくのを感じたんだ。狼の体温は45度を保つはずなのに。
でも、冷たい雨が僕の調整機能を洗い流しているのを感じたんだ。
狼に変身して、毛皮を使って暖かくして、この森で凍死しないようにしなきゃいけなかった。
地面は薄くて、泥だらけになって、疲れて座り込んだ。
夜中に寒さで目が覚めたんだけど、目を開けたら、気を失いそうになったんだ。
周りには、悪臭を放ちながら、ゆっくりと僕に迫ってくる、不気味な目があったんだ。
野良オオカミ、嫌な臭い。
彼は、僕の雨に濡れた体を貪欲に見つめていたんだ
「来ないで、嫌だ。」
震えが止まらなかったんだ。
「誰か!」
「お願い、助けて…」
「助けて…」
あの夜、僕の絶望を誰も知らなかった。
僕は、ハーブを切るためにいつもリュックに入れていたナイフを使って、彼を殺そうとしたんだ。
体力がないから、ナイフが急所を捉えても、彼に抵抗する隙を与えてしまったんだ。
そのせいで、彼の爪で全身に傷を負うことになった。
彼とどれだけ苦しんだのか、どれだけの痛みと恐怖に耐えたのか、誰も知らなかったんだ。
どんどん寒くなっていく。
熱が出てきて、ついに耐えきれなくなって、気絶してしまった。
夜が明けて目が覚めたとき、村人に助けられていたんだ。
人間の姿に戻って、裸で、優しい村人たちは僕にボロボロの古い服を何着かくれて、何とか体を覆うことができたんだ。
村人に感謝して、病気の体をひきずって、ジャマルを探すことにしたんだ。
彼が僕を見たとき、本当に嫌そうな顔をしたんだ。村人の狼の臭いがするとか、その目には嫌悪感が。
また、心が痛んだんだ。さっきも言ったけど、一番辛いのは、心の痛みなんだ。
考えたんだ。ボディーガードは僕を傷つける必要はなかったんだ。
彼は、何千人もの人が憧れるアルファキングにしか命令できないんだ。
彼が記憶を失っていなければ、僕を嫌って苦しめるのは許されるのかもしれない。
でも、彼は記憶を失ったんだ。なんでこんなに僕を苦しめるんだ。
ただ、昨日、なんで見て見ぬふりしたのか、知りたかったんだ。
なんで僕を傷つけたいと思ったのか。
彼は、記憶を失う前から、僕を心底嫌っていたんだろうか。
僕は、彼らの別荘に入った。
「ジャマル、なんで僕をわざと騙したの?」
9
ジャマルは、僕を一瞥した。
まるで興味がないみたい。
「元気そうじゃん。」
「下級狼の臭いがするけどな。」
そう言うと、彼はネヴァーを見て、二人はお互いに笑い合ったんだ。僕の臭いが耐えられないみたいな感じで。
「なんで? 最初からお前が嫌いだったから。」
「お前の口紅も、臭いも、目つきも、僕のタイプじゃないんだ。」
ジャマルは突然、僕の体の傷に気づいて、何か言おうとしたんだけど、そこにいたネヴァーが、甘えるような泣き声でジャマルに抱きついたんだ。
「J、ちょっと転んだだけなんだ。痛い。」
彼は明らかに慌てて、さっき見た僕の傷のことなんて、すっかり忘れてしまったんだ。
「どこが怪我したんだ? 見せて。」
「大丈夫、大丈夫。擦ってあげるから。」
泥だらけで火照っている僕のことなんて気にせず、彼女のちょっとした擦り傷に夢中になっている。
彼女は、彼の心の中でとても大切な存在なんだろう。以前の僕よりも。
ジャマルは、この瞬間、すぐに後悔することになるって、まだ知らないんだ。
彼が彼女を気遣う様子を見て、僕はまた泣いたんだ。言ったように、最悪の痛みは、心の痛みなんだ。
ただ、目を閉じた瞬間、もう耐えきれなくなって、気絶してしまったんだ。
目が覚めたとき、彼の企みを暴いたんだ。