第3章
イングリッドのPOV
「ママ、マジで来られないの?」ってラヤが聞いてきた。
「本当に行きたい?行きたいなら連れてくよ」って言ったんだけど、すぐに考え始めた。友達たくさんいるし、植物のお世話もあるから、マジで来れないんだよね。
「でも、ママ、友達と植物と一緒に来てもいい?」って聞いてきた。イラとあたし、二人して笑っちゃった。
「それ、どうやって持っていくの?」ってサンドロが笑いながら言った。
「いいよ。持って来れるなら、持ってきても」って、あたしの妹が今はむすっとしてるラヤをからかった。
「ママに会えなくなるの寂しい」って言って、あたしに抱きつこうとした。あたしは笑うしかなくて、抱きしめ返したよ。
「あたしも寂しいよ。一緒に来ちゃえば?そこでまた植物育てればいいじゃん」って言ったら、言われたことにムッとしてた。
「運動会出るから、ネイ」って言った。あたしと一緒に行くのは嫌だったみたい。ラヤは植物係だし、子供たちのための植物の日なんだよね。ラヤが行きたいって言うから、あたしも承諾したんだ。小さい頃から、ラヤはずっと植物のお世話してたんだもん。自然が大好きなんだよね。
「アテジョリーと一緒に行くから、ネイ」って言うから、あたしは頷いた。抱きしめる力が強くなって、抱っこして欲しそうにしてる。
「うちのベイビー、もう6歳なのに、まだ抱っこして欲しいんだ…」って笑っちゃった。おじさんとおばさんもからかってるけど、ラヤは無視。
「あたしをからかうんだよ、ネイ。ママみたいないい人いないのに」って言うから、あたしはもっと笑っちゃった。
「泣かせてみろよ、そしたらどうなるか…」って、あたしはまだ兄弟たちを睨んでる。ラヤはそんなに泣かないけど、すぐイライラするんだよね。
明日、ワークショップのためにマニラに行くんだ。1年間のオンライン授業の後。今回は、実際にワークショップに参加する。また学校お休みだし、この機会を逃したくなかった。
ラヤと一緒にマニラに行けたらよかったんだけど、やめたんだよね。ラヤはしばらくここにいたいみたい。運動会に出たいらしくて、あたしの兄弟は、ラヤと一緒に来て欲しくなかったんだ。ラヤはみんなのハッピーピルだからね。家にいたくないみたいだけど、1週間後にはマニラに来るって。あたしは1ヶ月も子供と離れたくないんだよね。すぐに会いたくなっちゃう。
運動会が終わったら、ジョリーと一緒にあたしのとこに来る予定。ジョリーはマニラに行きたがってたから、行きたいって言われたときには承諾しちゃった。
ラヤの部屋に行った。うちの娘は熟睡するタイプ。数分も経たないうちに寝ちゃった。あたしは、ラヤの顔を見て微笑んだ。ラヤは本当にお父さんに似てるんだよね。長いまつげ、えくぼ、目、鼻、それに巻き毛。唇と肌の色だけあたしに似てる。本当にインディゴの娘だなって思った。インディゴのことを思い出して、唇を噛んだ。
最後に会ったのは1年前。学校での撮影の後。忘れられないんだよね。もう乗り越えたと思ってたのに、1日会っただけで、また1年間も彼のことを考えてた。まあ、ラヤのこと伝えるチャンスもあったんだけど、結局何も言えなかったんだよね。後悔してる。
マニラに行ったら、ラヤのこと話してみようかな。
彼の名刺を見た。一度も電話してないんだけど。マニラに着いたら電話してみようかな。彼も知るべきだよね。もう分からないけど。
次の日も、早くから準備した。マニラに借りるアパートも決まってる。あとは、あたしが行くだけ。
「行ってくるね」って言った。ラヤが涙を流してるのが見えた。唇を噛むのを止められない。急にここにいたくなっちゃった。もう1週間も会えないなんて。耐えられるかな。すごく寂しいよ。
「えっと…気をつけて、ママ」ってラヤは言った。涙を我慢しながら。あたしは笑うべきかどうかわからない。大人のフリしてるから。
バス停までみんなが見送ってくれた。あたしは、ラヤのことを何度も言い聞かせてた。「あたしが嫌われてもいい。ただ、ラヤに必要なことを忘れて欲しくないだけなんだから」って。
バスの中では、すぐにラヤのことばかり考えてた。子供に会えなくて、本当に落ち込んでたんだ。バスに乗ったらすぐに寝ちゃって、移動はあっという間だった。
まだ車持ってないんだよね。お父さんが食料品の在庫整理で使うから。それに、マニラで使ったら遅刻しそうだし。
マニラに着いたとき、周りを見ずにはいられなかった。今でも変わらないんだよね。渋滞もすごいし、煙もすごい。でも、あたしが育った場所だから、色んな思い出が頭に浮かんでくるんだ。苦い思い出も甘い思い出も。コーヒーみたい。降りるときには、ニヤけが止まらなかった。
6年ぶりにマニラに来たから、周りを見回さずにはいられなかったんだ。
滞在するアパートに着いて、すぐにジョリーとイラに連絡した。電話がすぐにかかってきて、ラヤがすぐに電話に出た。ラヤが泣いてるのを聞いて、あたしはすぐに席を立った。
「ママ、寂しいよ」って。あたしが出かける前に、ラヤは強がってたんだけど。あたしが出て行ったら、泣き始めたんだって。うちからあたしがいなくなるのは初めてなんだよね。いつも学校の遠足とかにも一緒だったのに。
「お姉ちゃん、ごめんね。お姉ちゃんが行く前に、ラヤはすごく強がってたんだよ。でも、お姉ちゃんがいなくなったら、泣き出しちゃったんだ」ってイラが言った。あたしは頭を掻いて、ビデオ通話した。ラヤとじっくり話したよ。
「ママと一緒にいたいなら、アテジョリーが今から一緒に行くよ」って言った。
「あたしの運動会はどうなるの、ネイ?」ってラヤは聞いた。まだ目が腫れてる。
「キャリーが嫉妬しちゃうよ」って、まだムスッとしてた。
「それはラヤ次第…ラヤが決めていいよ」ってあたしは言った。
「1日考えさせてくれる?」って言うから、あたしは優しく笑った。
「わかったよ…」って言った。2人でおしゃべりしながら、あたしは準備してた。ラヤは話すのを嫌がらないし、あたしも質問攻めでも全然平気。
その後、ラヤは、1週間はヌエバエシハにいて、運動会が終わったら、すぐにここに来るって決めた。
その夜も、すぐに寝付けなかった。話が終わってから、ラヤが寝るのを見守ってた。ジョリーとイラの間で寝てたから、すごい騒がしかったけどね。
次の日、ワークショップの準備をした。感じた興奮は現実離れしてた。ママのジーンズとポロシャツを着て、上のボタン2つは外したままで。
準備が整ったら、ワークショップが行われるメディアスターアカデミーまで、ジープニーに乗った。毎朝こんなに人がいることを忘れかけてた。ヌエバエシハでは、ジープニーが満員になることもないし、トライシクルに乗れることもしょっちゅうだしね。
あたしは、もう早い時間に着いた気がした。スタッフの人たちが挨拶してくれて、ワークショップの部屋まで案内してくれた。あたしは、色々貯めてきたカメラを運んでた。編集もできるから、ちょっとしたお金にもなるんだ。
部屋の真ん中に座った。ここにも人がたくさんいる。
教えてくれる人が誰か見て、あたしは震えそうになった。インディゴだ。マジかよ。1ヶ月間も毎日彼に会うのか…?
「おはよう」って彼が言った。あたしは彼の声の冷たさに震えそうになった。あたしの知ってるインディゴとは全然違う。でも、彼の唇には遊び心のある笑顔が見てとれる。
あたしの隣の人たちを見て、彼、インディゴを見て本当に興奮してるんだよね。興奮して震えてるティーンエイジャーもいるし。彼女は、彼に会うためにここに来たんだね。それに、インディゴは、ホットなプロデューサーとしてソーシャルメディアでも有名だしね。あたしのフォロワーより多いし。イングリッド、完全にストーカーじゃないか、あたし。
あたしは自分を落ち着かせて、前だけに集中した。彼の目があたしを見たとき、背筋が伸びた。彼があたしを見たとき、顔にショックの色が見えた。あたしは彼に微笑んだ。
「始めよう」って。彼はすぐに遠い顔になって、部屋を見回した。
そして、彼は教え始めた。あたしは静かに聞いてた。時々気が散っちゃうんだけど、それでも集中しようとした。お金を払ったのに無駄にしたくないし、何か学べないのはもったいないから。
「ミスター・コルネル、成功の秘訣は何ですか?」って彼らは聞いた。インディゴの小さな笑い声が聞こえた。
「うーん?もう成功したとは言えないよ。まだまだこれからだよ」って彼は言った。彼は見た目は威圧的だけど、カジュアルで、まるで話してるみたいに教えてる。でも、彼から本当に多くを学べるって言えるんだよね。彼は本当にすごいから。彼はいつもそうだった。今はもっとすごい。
今日は簡単なことしか教えてなかった。本当の授業は明日から始まるから。
インディゴが彼女を見て、彼女に優しく微笑んだのを見た。彼女は何か質問してる。
「何すればいいですか?これの使い方、全然分からないんです」って言って、彼女は自分のカメラを見せた。あたしはちょっと眉をひそめた。このクラスはもう進んでるんだと思ってたんだけど?
インディゴは彼女に近づいた。彼は彼女にも笑顔を返した。あたしは完全に思い出さずにはいられなかった。あたし達が大学生だった頃のこと。彼が、あたしに色んなことを教えてくれた時のこと。過去のことなんか考ちゃダメだよ、イングリッド。辛くなるだけだよ。
次々と、みんなが彼に質問してる。あたしは不思議で仕方ない。あたしは首を横に振って、自分のカメラに目を向けた。
「クラスに来たっていうより、先生に会いに来たみたいだな」って、あたしの隣の人が笑いながら言った。
「やあ」って、あたしが彼を見なかったら、彼が挨拶してきた。
「ジェイコブだよ」って自己紹介して、あたしに手を差し出した。
「イングリッド」ってあたしは笑顔で言った。握手って、もう流行らないよね。あたしは目を閉じた。彼は手を離さないから。あたしも困らせたくないから、握手した。
「お互いに話すのはやめましょう。できる限り聞いてください。払ったお金が無駄になりますよ、ね?」ってインディゴは笑いながら言った。彼はもう前にいる。バカだね、みんなが知っておくべき基本的な情報を教えてるのに、時間無駄にしてる。
うわあ、なんでそんなに怒ってるんだ、イングリッド?
あたしは自分を落ち着かせて、彼に視線を戻した。彼の目が既にあたしを見ていたので、あたしはショックで飛び跳ねそうになった。彼はあたしの目を避けることすらしなかった。あたしが微笑んだとき、彼は眉を上げただけ。あたしの笑顔をまた無視するように、彼は他の人たちに目を向けたとき、あたしは顔をしかめた。
彼の話を聞きながら、誇りに思わずにはいられなかった。彼は本当にすごかった。彼は色々経験したんだ。彼はこれらすべてに値する。
授業が終わったとき、インディゴに挨拶するために、みんなが出終わるまで待とうと思ったんだけど、たくさんの生徒が待っているのも見えた。あたしは肩をすくめて、外に出た。
「イングリッド、何か落ちたよ」って、彼の前を通ったときに彼が言った。あたしのキーホルダーが彼の手にあった。
「あ、ありがとう」ってあたしは笑顔で言った。
「インディゴ」って、あたしは彼に呼びかけた。彼があたしに驚いて振り返った。
「何年も言えなかったけど、本当にあなたを祝福したい。心から、誇りに思ってるよ、インディゴ」って、あたしは彼に微笑んで言った。