第6章 イーサンの物語 (特別編)
イーサンの話(おまけ)
キャサリンはそこに倒れて、ボロボロで血だらけだった。
俺は呆然と見つめて、どうしてキャサリンを救えなかったのか考えようとした。そしたら、恐ろしい真実が突き刺さったんだ。俺はいつもキャサリンを待たせていたんだって。
俺たちのめちゃくちゃな関係の中で、キャサリンのために何もしてなかったんだ。エミリーが戻ってくる前は、エミリーへの未練とキャサリンとの関係を両立させてた。
そしてエミリーが本当に戻ってきた時、俺はただ…スイッチを切り替えたんだ。まるで電気のスイッチみたいに。
エミリーがちょっとした切り傷をしたからって、キャサリンの両親に会うのをすっぽかしたんだ。切り傷だよ?
エミリーのベッドに潜り込んで、彼女に抱きしめられてた。彼女がそうしてって言うから。
キャサリンに怒鳴ったりもした。エミリーの味方をして。
俺は何をしてるか分かってた?もちろん、分かってたよ。
ただ、キャサリンとは長いこと一緒にいたからさ。俺はキャサリンに夢中で、彼女も俺に夢中だって思ってたんだ。
何が悪いのか、キャサリンが自分で気づくべきだって思ってたんだよ。
あの少女がエミリーのために花を買ってくれって頼んできた時、俺の中のどこかはすごく嬉しかったんだ。
でも、良心っていうか、そういうものが働いたんだ。俺はそれを否定して、キャサリンを見た。
でも、キャサリンは俺を愛してるって顔をしてなかった。彼女の目には、この…軽蔑があったんだ。
まるで俺のことを見透かされてるみたいで、俺の頭の中のめちゃくちゃな考えを全部知ってるみたいだった。
キャサリンの兄は、俺を彼女に会わせようとしなかった。
俺はキャサリンは俺を愛してるんだって言い聞かせ続けた。そんな些細なことで、俺を振ったりしないだろうって。
俺はただ、説明するチャンスが欲しかったんだ。
ただ、エミリーのそばにいてあげたかったんだ。彼女はたった一人で、苦しんでた。彼女はうつ病だったんだから。
キャサリンは良い子だった。きっと分かってくれるはずだって。
でも、二日経っても、キャサリンはまだ意識不明だった。危篤だって通知まで出たんだ。
それで、本当にパニックになったんだ。彼女はひどく傷ついてたんだ。
もし、キャサリンが俺を許してくれなかったら?
俺はキャサリンに会わせてくれって、昼も夜も懇願したけど、キャサリンは俺の顔も見ようとしなかった。
そしたらエミリーが、自分のアパートを追い出されたって、病院の部屋にもいさせてくれないって教えてくれたんだ。
それで、俺は考えられる唯一の場所に連れて行ったんだ。キャサリンと俺がシェアしてたアパートに。
でも、たった一つのことを忘れてたんだ。キャサリンがそのアパートの所有者だったってことを。
案の定、エミリーと俺は追い出されたんだ。
そして俺は、キャサリンを責める度胸があったんだ。冷酷だって非難したんだ。キャサリンがまだ俺のことを愛してるから、こんなことしてるんじゃないかって思い始めてたんだ。
ありえないことだろ。
後で、俺とエミリーの動画がネットにアップされたんだ。一晩で拡散されたよ。
でも、なぜか話が歪められたんだ。キャサリンが浮気相手だって言われてたんだ。
俺は何も言わなかった。俺の中の暗い部分では、キャサリンの評判が落ちれば、彼女は俺のところに戻ってくるしかないんじゃないかって思ってたんだ。
俺だけが彼女を必要とする人間になるんだって。
でも、キャサリンがどれだけ要領がいいか、そして彼女の友達がどんな人たちか、俺は忘れてたんだ。
すぐに、ネットは俺とエミリーに関するすべてを掘り起こしたんだ。
みんなが俺たちに背を向けた。俺たちは職を失った。社会的なペリアになったんだ。
俺はキャサリンに会いに行った。そして、キャサリンは俺に、俺は単なる代用品、代役だったって言ったんだ。
どうしてそんなこと言わなきゃならないんだ?ちょうど俺が、キャサリンのことを本当に愛してるかもしれないって気づいた時に。
キャサリンが俺のために料理してくれたり、慰めてくれたりしたのは、全部嘘だったのか?
でも、キャサリンはエミリーに嫉妬してたんだ、俺はそれを見たよ。
そしたらエミリーが現れて、妊娠したって、俺の子供だって言ったんだ。
お母さんは崩れ落ちて、とめどなく泣いた。
お母さんは俺をにらみつけて、毒を吐くように言った。「お前はあんたの父親そっくりだわ。あんな遺伝子を継がせるべきじゃなかった!」
それから、エミリーを平手打ちしたんだ。お母さんがエミリーに優しくないのは初めて見たよ。
「このビッチ!妊娠だって?そんな子供、この家族にはいらないわ!」
「あんたは純粋で無垢なフリをしてたんじゃないの?その演技はどうしたの?あ、そうか、彼を待ってたんだわね!そしてあんたのお母さんは、家庭内暴力の被害者だったんでしょ?それで離婚したんでしょ?で、今度はこうやって、浮気相手をしてるの?」
エミリーが俺を見てるのが分かった。きっと涙目で、まるで悲劇のヒロインみたいに。
でも、俺は彼女のことなんか見向きもしなかった。彼女は本当に偽善者だったんだ。
「まあ、あなたと私が一緒にいるのは、当然のことでしょう?前にも一緒になればいいって言ってましたよね?」エミリーは、偽りの甘さで言葉を紡いだ。
「彼は今、独身です。この赤ちゃんは『私生児』ではありません。結婚できます。私たちの子供は正当なもの、婚姻関係の中で生まれた子供になります!」
お母さんは椅子を掴んで、息を吸うのに苦しそうだった。顔は真っ赤だ。
「出ていきなさい!誰があなたみたいな悪魔と一緒にいたいと思うの?どうして普通の生活ができなかったの?どうして結婚して、関係を持たなきゃいけなかったの?あなたの大切な『真実の愛』がいるのに?」
「あなたの『真実の愛』ってやつは、みんな娼婦なの?すでに誰かのものになってる人しか狙わないの?」
俺はお母さんを助けに行って、水を持ってきてあげた。
でも、お母さんは俺のことを、最悪の敵のように見ていた。
「イーサン・フォード!お前は私の人生を台無しにした、そして今度は自分の人生を台無しにしてるのか?クズであることは、お前のDNAの一部なのか?」
「フランク・フォード!あなたは私の人生を台無しにした、そして死んでからも私を苦しめるつもりなの?」
俺はうなだれて、お母さんに殴られたり、怒鳴られたりするに任せた。それが、何か本当の感情を感じる唯一の方法だったのかもしれない。
それから、ガシャン!
ガラスが割れた。俺は顔を上げた。
エミリーがそこに立っていた。まるでロボットみたいに硬直して、彼女の目には生気がなかった。
彼女は俺を見て、俺は冷たさを感じた、そして、虚無感を感じた。でも、俺はすでに心が死んでいたんだ。
なんで、俺をバックアッププランとしか見てない奴のことなんか気にしなきゃならないんだ?
彼女の赤ちゃんは、俺の子供じゃないかもしれない。彼女は浮気してるかもしれない。
彼女は、行く場所も、お金も、仕事もないから、ここにいるだけかもしれない。俺はただの安全な港なんだ。
俺は鼻で笑って、外に出てタバコを吸いに行った。
でも、運命のいたずらか、俺が外に出た瞬間、エミリーが上の階の窓から飛び降りたんだ。そして、俺の上に落ちてきた。
俺が感じたのは、焼け付くような痛み、そして…暗闇だった。
俺は死んだんだ。
エミリーは、俺を道連れにすることに成功したんだ。
俺は無意味な死を遂げたんだ。
俺が殴られた時、閃光が走ったんだ。キャサリンが俺の彼女になることに同意してくれた時の記憶が。
彼女は青いドレスを着てて、ジャスミンの香りがした。
彼女は微笑んで、俺を励ましてくれた。いつも与えてくれて、いつもそこにいて、俺のためにすべてしてくれたんだ。
そして、結局、俺は彼女を血の海の中に置き去りにしてしまったんだ。
俺が言ったのは、
「待ってて。」
それだけだったんだ
でも、今、誰が俺を待っててくれるんだ?
来世で、俺を待っててくれるのか?
キャサリン?
もう二度と優柔不断になったりしないって約束するよ。