第8章
ジャンナ・フローレスのP.o.v
アシュリーはあたしのクローゼットをゴソゴソしてた。
「ジャンナ、ドレス持ってくべきだよ」 彼女はあたしがクローゼットの奥底にしまい込んでたガウンを掲げながら言った。
「なんでドレスが必要なの?」
「アレクサンダーのハートを射止めたかったら、セクシーな格好しなきゃ」
「誰がアレクサンダーのハートを射止めるとか言ったの?」 あたしが聞くと、彼女はため息をついた。
「ジャンナ、彼の事見てる時のあんたの顔見ればわかるよ。好きだってバレバレだって。だからちょっと後押ししてあげればいいの」
「あたしとアレクサンダーはただの友達だよ」
「大学のみんなはそうは思ってないと思うけど」 ジャマルがあたしの部屋に入って来た。
「学校じゃどう見られてるの?」
「例えばさ、バスケの試合とかあんまり来なかったのに、アレクサンダーがチームに入ってから毎回来るようになったじゃん」
「アレクサンダーが行けって言うから行ってるだけ」
「俺もバスケ部だけど、覚えてる? しかもお前の弟だよ」 彼が言って、あたしは目を回した。
「あんたがいつもチアリーダーとどっか行っちゃうから行かないだけだし。アレクサンダーは試合の後、どんなに混んでても必ずあたしに会いに来るんだよ。一番に」 あたしが言うと、顔が赤くなってるのに気づいた。
「ほらね、気づかないうちに顔赤くなってるし」 アシュリーが言うと、あたしはため息をついた。
「姉さん、アレクサンダーのこと好きになったんだよ」 ジャマルが言って笑った。
「仮にアレクサンダーのこと好きだとして、あたしに近づく奴らみたいに、あんたは彼の顔面パンチするの?」
「いや、しないよ。だってアレクサンダーはいいやつだし」
「もういいよ、この話は。ジャマル、あんたはさっさと荷造りしなさいよ」 あたしは彼を部屋から追い出しながら言った。
「ジャンナ、ドレスはまだ持ってくよ。いつ必要になるかわからないし、水着もね」 アシュリーが言って、あたしは目を回した。
アシュリーって、ほんと変。
「二人とも、忘れ物はない?」 お母さんが、出発しようとしてる時に聞いてきた。
まず学校に行って、それからバスで空港に行って、マイアミだって。
「大丈夫、全部あるよ」
「あーあ、二人と会えなくなるのは寂しいけど、少なくともあんたたちの言い合いからは解放されるわね」 お母さんが言って、あたしたちは笑った。
彼女はあたし達の額にキスをして、それからタクシーで学校に向かった。
「マジで、アレクサンダーに電話しようとしてるんだけど、出ないんだよね」 あたしが言った。
「隣に住んでるんだから、彼の家に行けばいいじゃん」
「彼のママがいるし、多分あたしのことあんまり好きじゃないと思うし、それに彼の窓は一日中閉まってるし」
「彼のママはあんたのこと嫌いなの? 誰があんたのこと嫌いになるんだよ」 ジャマルが言って、あたしは目を回した。
「ジャマル、あたしが、あんたのバッグに入ってたコンドームを見たの知ってるから、そう言ってるんでしょ」
「ママに言わなくて、サンキュー」
「ジャミー、大学卒業前に女の子妊娠させたら、マジで殺すからね」 あたしが言うと、彼はくすくす笑った。
「なんだ?髪下ろした方がいいじゃん。めっちゃ可愛い」 彼が言って、あたしは笑顔になった。
「ありがと、弟」
「弟じゃないし、俺ら同い年だし」
「違うよ、あたしの方がお姉ちゃん。6分だけね」 あたしが言うと、彼は目を回した。
やっと学校に着いて、ジャマルは友達のところに行った。
あたしの目はアレクサンダーを探してたんだけど、見つからなかった。大丈夫かなあ。
「ジャンナ!!!」 アシュリーが言って、あたしに飛びついてきた。
「アッシュ、殺す気?」
「ごめん、興奮しちゃって。マイアミ行くんでしょ?」
「うん、楽しみだね」
「せめて、ちょっとは気が楽になるって約束してよ」 彼女が言うと、あたしはため息をついた。
「わかった、いいよ。約束する」
「アレクサンダーは?」
「知らない。電話したんだけど、出なかったの」
「なんかあったんじゃない?」
「うん、そうかもだけど…」
「来た!」 アシュリーが遮って言った。
黒いジープが止まって、アレクサンダーが出てきた。めっちゃかっこいい。彼に会いに行こうとしたら、女の子も出てきた。
彼女はアレクサンダーと手を繋いでた。
「あれは誰?」 アシュリーが聞いた。
「知らない。友達…かな、彼女とか」
「ううん、彼女じゃないと思う。見て、彼はそんなに嬉しそうじゃないし」
アレクサンダー・マックイーンのP.o.v
うちのママはほんと頑固だし、スカイラーはめっちゃくっついてくる。マディソンより酷い。
学校までついてきやがった。四六時中、後ろに張り付かれてどうすりゃいいんだ。
やっと学校に着いた。ジャンナが一番最初に見えた。髪下ろしてて、めっちゃ綺麗だった。
女の子らしい格好はしてないけど、あたしにはすごく可愛いんだ。
すぐに駆け寄って、ぎゅーってしたいんだけど、スカイラーがいたのを思い出した。
彼女とアシュリーの方へ歩いて行った。
「やあ、ジャンナ」 あたしが言うと、彼女はスカイラーを見てから、あたしの方を見て、笑った。
「やあ。実は電話したんだけど、出なかったんだよね。なんでかわかったよ」
「あんた誰? うちの大学の生徒じゃないわよね」 アシュリーが言った。
「スカイラーよ。アレクサンダーの一番の友達。ママが電話したから、それで来たの」 スカイラーはあたしの手をきつく握りながら言った。
「待って、あんた大学に行かなくていいの? つまり、アレクサンダーのために自分の大学サボって来たってこと?」 アシュリーが聞いて、ジャンナは彼女に黙るように肘で突いた。
「アレクサンダーは一番の友達だし、会いたかったの」
「うーん…ジャンナ、今日めっちゃ可愛いね」 あたしが言うと、彼女は笑った。
「あんた、男の子っぽいんでしょ?」 スカイラーが聞いて、あたしはため息をついた。
「いや、違うけど… アシュリー、バスは別のとこで待とうよ」 ジャンナが言って、アシュリーを引っ張って行った。
「そんなこと言うべきじゃなかったわね」
「男の子っぽいって言われるのが嫌なら、そういう格好やめればいいのに」
ジャンナ・フローレスのP.o.v
「スカイラーって、ビッチっぽい気がする」 アシュリーが言った。
「彼女の問題でしょ。好きにすればいいじゃん」 あたしが言うと、アシュリーは変な顔をし始めた。
「何?」
「スカイラーがアレクサンダーと仲良くしてるのを見て、嫉妬してるんでしょ」
「してないよ。なんでそう思うの?」
「だって、ずーっと見てたじゃん」
「してないって。ただ…」 あたしはため息をついて、アシュリーが手を握ってくれた。
「見て、ジャンナ。スカイラーの口を塞ぐ唯一の方法は、もっと気が楽になること。本当の自分を見せて、過去は忘れて」
多分、アシュリーの言う通りかも。あたしも自分の過去は忘れて、本当の自分に戻ろうって思ってたんだ。
「マイアミに着いたら、その話はしよう。でも今は、バス来たよ」
数分後、あたしたちは空港に向かっていた。アレクサンダーはスカイラーの隣に座ってて、一緒に座るって約束したのに、予定変わったみたい。
「アシュリー、あたしの姉ちゃんと話したいんだけど、席代わってくれない?」 ジャマルが言った。
「いいよ」 アシュリーが言って、ジャマルがあたしの隣に座った。
彼はあたしを見つめ始めて、ニヤニヤしてる。
「何がしたいの? なんでそんな風にあたしのこと見てるの?」
「スカイラーってホットな女のこと嫉妬してんだろ」
「してないよ、ジャミー。もう行って」
「アレクサンダーのそばにいたかったのに、あいつが邪魔したんだろ」
「彼女はアレクサンダーの一番の友達なんだから」
「アレクサンダーは俺の友達だし、代わりに話してやってもいいよ」
「やめて、お願い。マジでゴタゴタは嫌なの」
「姉さん、あたしとあんたは、ここでも一番可愛いんだから。男の子みたいな格好でも、アレクサンダーがそれに気づかなくても、彼はマジでバカだよ」
「ありがと、弟。想像以上にウザいけど、あたしを笑顔にする方法を知ってるね」
「双子なんだから、笑顔にさせなきゃ」
彼は席を代わったけど、アシュリーじゃなくて、アレクサンダーがあたしの隣に座った。
「やあ」 彼はかすれた声で言った。
「なんでここにいるの? スカイラーと一緒にいるべきでしょ」
「彼女、寝ちゃったんだ。ほんとごめんね。ママが無理やり連れてきたんだ」
「じゃあ、あんたのママは彼女のこと好きなんじゃん」
「それはやめて、あたし達の話をしようよ。マイアミ案内してあげるよ」
「マイアミ行ったことあるの?」
「もちろん。休暇で行ったことあるんだ」
「スカイラーがいるんじゃ、無理でしょ」
「何とかするよ。今は、あたしの灰色の瞳が見たいんだ」
「外せないよ」
「わかってるよ。それでも、綺麗だよ」 彼は言って、あたしは照れて顔を背けた。
「最強のジャンナ・フローレスを照れさせた?」
「照れてないし。窓の外を見たかっただけ」 あたしが言うと、彼はくすくす笑った。
「プレゼントがあるんだ」
彼はブレスレットを取り出して、そこに「beautiful」って彫ってあった。
「わあ、綺麗」 あたしはすごく嬉しそうに言った。
彼はあたしの手首につけてくれて、触ってみた。
「ほんとにありがとう」
「一番可愛い女の子のためなら何でもするよ」
空港までの間、ずっと話してた。
T.B.C