ヴォーン氏
クレメンタインの視点
数日経って、フィンとクリードはまだ仲悪いまんまだし、双子も巻き込まれてる。なんでケンカしてんのか、マジで分かんない。フィンのこと、みんな嫌いってことしか知らないんだよね。毎朝、フィンが俺らの部屋の向かいで、赤いバラ持って待ってるんだ。早すぎて、ちゃんとメシ食ってんのか心配になるくらいでさ。だから、見かけるたびに部屋に入れて、メシ食わせてやってる。部屋のルール違反なのにね。フィンは、俺にプロポーズするために、こんなことしてて幸せなんだろうか。俺も、フィンのこと好きだけど、まだ言いたくないんだよね。だって、俺の気持ちで遊ばれるのが怖いから。噂によると… フィンは、ヴァンプハイに入る前はすごいプレイボーイだったらしいんだよね。ヴァンプハイの生徒が五人も自殺したのは、フィンのせいだって言われてるんだ。俺も、あいつらみたいになるんじゃないかって怖かった。
今、俺はヴァンプハイの像の反対側に立ってる。ヴァンプハイから出るドアの裏で。あの像がどうやって、どれくらいの時間かけて作られたのか観察できたんだ。牙を持った男の像で、うつむいてて、後ろにはナイフを持ったウーマンがいて、男を刺そうとしてるんだよね。この像の意味が分かんない。ヴァンプハイとどんな関係があるんだろ?
「子供たちに会うのが楽しみだよ」 誰かがドアから入ってくる声がして、振り返ったんだ。そしたら、フィンの腕を組んでる、すっごいキレイなウーマンがいて、マジで顔しかめたわ。二人とも俺のこと見て、上から下までジロジロ見てくるんだもん。
「何してんの?」 ウーマンが俺に聞いてきた。俺は、俺に微笑んでるフィンから目を離せなかった。
アイツ、誰と一緒なんだよ? この前まで俺のこと、ストーカーみたいに追いかけてたのにさ。噂はマジだったってことだよね。
「パパ」 ゆっくり後ろを振り返ったら、目がマジで見開いちゃった。フィンが階段を振り返ってて、俺も振り返ってたから。前を向いたら、マジで気を失いそうになった。フィンが二人いたんだもん。
フィンが俺の手を握った。フィンの手の中に、フィンがいるように見える。
「ここで何してんだ?」 隣にいるフィンの、超冷たい声が聞こえて、そっち見たんだ。パパのこと、全然歓迎してないみたい。
「子供たちに会いに来たんだよ? フィン、そんなに失礼なこと言うなよ」 そう言ったのは、フィンにそっくりな人だった。ってことは… アイツのパパも、フィンに似てるんだ?
「この前、俺たちがお互いに何も証明できない限り、二度とここには来ないって言ってたよな?」俺はフィンを見て、ちょっと怒った口調になった。
「気が変わったんだよ、ところで、俺は…」
「お前らの子供は上にいるんだ。さっさと行けよ」 フィンはそう言って、俺を見てきた。「行こう」って言って、無理やり俺をパパから遠ざけようとした。
「彼女がお前の彼女か?」 フィンのパパの質問で、俺たちは足を止めた。
「関係ないだろ」 フィンはそう言って、パパは歩き出そうとしたけど、また口を開いた。
「会いたいんだ。後で一緒に晩飯行こう。お前に謝りたいこともあるし」 そう言われて、俺はゴクリと唾を飲み込んだ。フィンが後ろを振り返ったから、俺も振り返った。
「用がないなら、俺は行くよ」 フィンはそう言って、パパと一緒にいるウーマンを見たんだ。フィンが言ったことに、パパの連れがムカついてるのが分かった。完璧な眉毛を上げて、ニヤリと笑ったんだから。
「お前、一番下のジョセフをそんな風に育てたのかい? あなたの一番下の息子が、あなたにこんな態度とるなんて信じられないわ」 ウーマンはフィンを見て、フィンパパにそう言った。それから、視線を俺に移したんだ。まるで、俺のこと調べてるみたいな感じで。もし考えすぎだったら、俺のこと探ってるように見えたかもしれない。
「あなたは人間だ」 そう言われて、俺は足を止めた。フィンが俺の手を強く握ってるのが分かった。「吸血鬼の血を持った」 そう付け加えられて、俺はゴクリと唾を飲んだ。フィンは、パパの連れを見た。
「人間だよ、純粋な人間だ。吸血鬼の血なんて入ってない」 フィンはパパの連れにそう言った。ウーマンは微笑んで、それからフィンを見た。
「防衛的ね。分かりやすいわ」 そう言われて、全身に恐怖が駆け巡った。
「もういいだろ」 フィンのパパがささやいて、フィンを見た。「後で晩飯に行こう。俺の息子が夢中になってる女に会いたいんだ。嫌でも、喜んででも、お前は彼女と晩飯に行け」 フィンに命令するみたいにそう言って、俺を見た。
「お会いできて嬉しいわね、お嬢さん」 フィンのパパは俺にそう言って、俺たちの前を通り過ぎて行った。一緒にいたウーマンの、アホみたいな顔も見ちゃった。秘密を知られちゃったみたいな気分になった。
怖い。