第13章 企業のために
あの人の登場で、あたしのトキメキメーターがプラス1された。
「何作りたい?」
店主は立ち上がって、生徒に自立して作業してもらうために、手を洗ってオリビアにカタログを見せた。
「カップ」って答えた。
陶芸教室に来る人は大体最初にカップを作るから、店主は驚かなかった。
「今日はお客さんいるから、後で弟に教えてもらおう」って、店主は笑ってカーテンの向こうに呼びかけた。
「お兄ちゃん、ちょっとお願い!」
カーテンの向こうには、休憩室に通じる小さなドアがあった。オリビアはカウンターに立って、中からテレビゲームの音が聞こえた。
店主の声が終わると、ゲームの音は止んだ。
足音が近づいてきて、カーテンが開かれた。オリビアは顔を上げて、固まった。
「ニ…」
ニコラスがうなずいた。
ジョージは、「兄貴、カップの作り方教えてもらいたいらしいんだ。教えてやれよ」って言った。
ジョージが去った後も、オリビアはまだぼーっとしてた。心臓はまるでハンマーみたいにドクンドクンうるさかった。
「こんにちは、ニコラス。オリビアって言います。あなたのファンなんです」って挨拶した。
憧れの、演技界のレジェンド、ニコラスだ!
ニコラスが微笑んで手を握ってくれて、オリビアの目はキラキラ輝いた。
向かい合って座ってるだけでも、夢見てるみたいだった。ニコラスに会うには、演技の道に進むしかないって思ってたのに。
こんなに突然チャンスが来るとは思わなかった。
ニコラスの手は綺麗だった。大体の男の人より細くて、ゴツゴツしてない指をしてた。白くて、でも女々しくない。
憧れの人が陶芸を教えてくれるってことで、オリビアの指は緊張して震えた。
これは夢が叶った瞬間。800回生まれ変わっても味わえるくらいだわ。
アシュリーは、ジョンの命令で、ジョーンズ家が制作する新しいリアリティ番組のために、人気のある陶芸教室のオーナーを探しに来た。その番組では、ものづくりコーナーがあるらしい。
中に入ると、アシュリーは中に座ってる少女に気づいた。あの、ジョンさんがサインさせようとしてるオリビアじゃない?
そして、オリビアの向かいに座ってる人を見て、アシュリーはさらに見覚えがあった。ニコラスだ!!!
ジョージは少し前にメッセージを受け取ってて、アシュリーを見て手を洗って、中に入れて話をした。
ジョーンズ家のリアリティ番組に出演することに同意したんだ。
アシュリーはベテランのエージェントだから、驚きや興味はうまく隠してたけど、ジョージは自分の兄が俳優だってことは知ってた。
もし何か漏れたらまずいから、ジョージは笑って言った。「ニコラスは僕の兄です。お店が忙しいときに手伝ってくれるんです」
ジョージの家系は代々陶芸をしてて、ジョージは父親の技術を受け継いだ。ニコラスは学業優秀で、後にスカウトされて芸能界に入ったんだ。
アシュリーは状況を理解して、ジョンに報告した。
オリビアは、ニコラスと一緒に作ったカップをプレゼントして、サイン入りの写真をお願いした。
「『ウエストワールド』に出てたよね?」ってニコラスが聞いた。
さっき少女を見たときから、どこか見覚えがあるって思ってたんだ。
オリビアはニコラスが『ウエストワールド』を知ってて驚いた。「アーノルド役をやりました」って、大きくうなずいて言った。
『ウエストワールド』のアーノルドは悲劇的な人物で、ニコラスはよく覚えてた。
ニコラスを間近で見て、オリビアはますます芸能界に入りたいって気持ちを強くした。いつかニコラスと共演する映画に出るのが夢なんだ。
…
トーマス家では、デビッドと両親がいた。
オリビアが入った瞬間、シリアスな空気が漂ってるのを感じた。普段はオリビアをまるでプリンセスみたいに甘やかしてるのに。
3人ともこんなに厳しい顔をしてるのを見るのは初めてだった。
比較的、母親の顔色がマシだった。
オリビアはすぐに母親の足にしがみついた。
「ママ」って呼んだ。
ドナルドは言った。「会社にポジションを用意した。文句言うな。明日から出勤しろ」
デビッドは、「明日、連れてってやるよ」って付け加えた。
オリビアは母親の腕に顔を埋めて、「嫌だ。ジョーンズ家と契約するつもりなんだ」ってボソボソ言った。
「これが私の夢なの」って、オリビアはちょっと不機嫌そうに言った。
カレンは言った。「もしあなたが俳優になったら、色んなところに行かなきゃいけないでしょ。撮影現場がどんな環境なのか分からないし。もし、またあんなことになったら…」
言葉を最後まで言えなかった。
あの事故で、大切な娘を失いかけるところだったんだ。カレンは、たった一人の子供に何かあったら、どうやって生きていけばいいのか想像もできなかった。
カレンはどんどん怖くなった。
オリビアは頭をかいた。前回、どうやって事故になったのか、あんまり覚えてないんだよね。
溺れかけた後、なんかおかしくなって、しばらく記憶が空白だったんだ。後になって、色んなことを少しずつ思い出した。
オリビアは母親の首に抱きついて言った。「会社にはマネージャーとアシスタントをつけてくれるし。それに、会社で働くことになっても、運転しなきゃいけないし、車の事故に遭う可能性だってあるし…」
カレンはオリビアを叩く真似をして、オリビアは頭を下げて降参した。
「ごめんなさい。もう変なこと言わない。ママ、叩かないで」ってオリビアは頼んだ。
母親はいつもエレガントで、それを台無しにできるのはオリビアだけだった。
「デビッド」ってドナルドは、渋々ながらもそう言った。
「妹がどうしても芸能界に行きたいって言うなら、閉じ込めてしまえ。外に出すな。行こう」ってドナルドは、カレンの手を握って言った。
オリビアは床をドンドン叩いて、デビッドを哀れんだ目で見た。
「兄さん、そんなことしないでよ。私、あんたの妹じゃん」ってオリビアは抗議した。
デビッドはオリビアの襟首を掴んで言った。「妹じゃなかったら、こんなことしないよ」
オリビアは外出禁止になった。
ベッドにゴロンって寝転がって、超退屈!
寝返りを打って起き上がり、ホラー映画を探して、大音量で再生した。その音は廊下に不気味に響いた。
オリビアは、並の女の子と何も変わらないんだけど、勇気だけはめっちゃ大胆だった。
デビッドは首を振って、メイドにオリビアの大好物である鶏ガラスープを作るように指示した。なぜか今年は、前は嫌いだったのに、なぜかものすごくハマってるんだよね。
ホラー映画のせいでオリビアは眠くなった。
膝を抱えてウトウトしてた。
朦朧とした中で、ニコラスの顔が見えた。顔がかっこよすぎて、オリビアはいたずらしたくなった。
目を閉じてニヤニヤして、自分で笑って起きた。
テレビはもう別の番組に切り替わってた。
オリビアはリモコンを掴んで電源を切った。
ニコラスのツイッター、最近更新されてないなあ。その後、メイドが夕食に呼んでくれた。
オリビアは返事をしなかった。
兄に外出禁止にされて、逃げられないけど、絶食することだけは誰にも止められない。
両親が心配するのは分かるけど、嫌いな業界で苦労したくなかったんだ。
自分の人生を決められるのは嫌だった。つまんないんだもん。
デビッドはオリビアが食べないことを心配して、その夜、自分で夕食を持ってきてくれた。
「俺だ。開けろ」って、デビッドはトレイを持って呼びかけた。
まさか、テイラー家の実力者が、まさかのシスコンだったとは!
デビッドを中に入れてから、オリビアはベッドに足を組んで座ってゲームをしてて、持ってきた美味しい夕食には見向きもしなかった。
「餓死するつもりか?」って、デビッドは真剣に尋ねた。
オリビアは答えず、ゲームの効果音に没頭していた。
ゲームが終わると、オリビアはタブレットを放り投げて、兄を真っ直ぐに見つめた。
「『ウエストワールド』の登場人物で、誰が好き?」って聞いた。
デビッド:?
「メイブ・ミリー」ってオリビアは答えた。シーツを引っ張って肩にかけた。「それじゃ、兄さん、ローガンを演じてあげるよ」
デビッド:「…」
「頭おかしいのか?」
デビッドは言った。「食べろ」
オリビアからシーツを剥ぎ取って、襟を掴んで、テーブルに引きずっていった。
デビッドはオリビアを押し倒した。小さい頃、宿題をやらせるためにそうしてたみたいに。
「米粒一つ残すな」って、デビッドは命令して、腕を組んで、オリビアの隣に椅子を置いて座った。
どんな女の子も悲鳴をあげるような視線が、彼女をじっと見つめていた。
分かった、食べるよ。
オリビアは箸を掴んだ。
デビッドはため息をついた。「2年間、芸能界でやっていい。もし、それまでに芽が出なかったら、戻ってきて家業を継ぐんだぞ」
彼は、妹がいつも頑固だってことを受け入れた。甘やかして育てすぎたから、誰も彼女を説得できないんだ。仮に会社で働くことに同意しても、きっと演技の夢は諦めないだろう。少しは挫折を経験させた方がいい。
この時点では、デビッドは2年という期間が長すぎるなんて想像もしてなかった。オリビアは、半年もしないうちに芸能界で大スターになったんだ。まだ妹がご飯を食べてるのを見てた、何も知らないお兄ちゃんは、まだそれに気づいてなかった。
「でもさ…」
「もー、話引きずるのやめてくんない?」ってオリビアは目を大きくした。
デビッド、撤回する気?!
彼女の心の内を理解してるんだな。デビッドはオリビアの髪を乱暴にクシャクシャにして、「後悔してるわけじゃないけど、お前が会社からつけられたアシスタントには納得いかないんだ。ここに、適任なやつがいる」って言った。
「誰?」
デビッド:「お前もよく知ってるやつだ」
この言葉に、オリビアは興味を持った。
デビッドの知り合いで、誰がオリビアと面識あるんだろう?
秘書?まさか、お兄様は、自分の大切な秘書をくれるの?アシスタントの給料だって、払えないんじゃないかって疑ってた。
「早く寝ろよ。明日、ジョーンズ家に行かせてやる」
オリビアはデビッドの後ろをついて行った。デビッドの背中は高くて頼もしい。オリビアは手を擦り合わせて、デビッドの背中に飛びついた。
デビッドはよろけて、困ったように振り返った。
「子供かよ」
オリビアはデビッドの耳を引っ張って、「兄さんの目から見たら、80歳でも子供だよ」
小さな腕を男の首に回した。
「兄さん、これ、お父さんにどうやって言うの?」
デビッド:「心配すんな」
「兄さん、ありがとう」ってオリビアの声は甘かった。
デビッドは楽しそうにオリビアを回して、すぐにオリビアは涙目で許しを請うことになった。
目が回るのは嫌なんだ。
Facebookの「新しい友達」の横に赤い「1」が表示された。
ジョンがオリビアを友達に追加したんだ。
オリビアはシャワーを浴びて、友達申請に気づかずに寝た。不思議なことに、その夜、ジョーンズ家エンターテイメントのCEOの夢を見たんだ。
夢の中での二人の関係はすごく親密だった。
オリビアが次の日に起きて顔を擦って、「ジョンの顔が良すぎるから、夢に出てきたんだ」って考えた。
トーマスの車が外に停まってた。
オリビアはリュックを背負って、軽快な足取りで車に飛び乗った。
まさか、兄が個人的に見送りに来るなんて思わなかったんだ。
「兄さん、行こう」