第15章 妹が好き
ニコラスとジョンって、全然タイプ違うじゃん。
でもさー
ジョンの顔も、なんか色々ありそうでしょ?
「オリビア」デビッドはベッドの縁に座って、オリビアの髪をなでた。
オリビアは顔を上げた。
「社長とは、あんまりベタベタしない方がいいよ」デビッドはアドバイスした。
オリビアは意味わかんないけど、兄が正しいってことは知ってた。
頷いたの見て、デビッドはもう長居する気はないみたい。「ドラマ見るんでしょ。邪魔しないよ。早く寝なさい。クマ酷いよ」
「知ってるー。なんで兄ってママみたいなんだろ?」
説教くさいとこ、ほんとリアル兄弟。
シリーズ全部見終わったら、もう10時。でもオリビアは全然眠れなかった。
あー、旅行行きたいなぁ。
オリビアはうつらうつらと眠り始めた。
「ジョン、私、アルプスに行きたいな」
男の声は低く響いた。「一緒に行こう」
オリビアは、彼のシャツの金属ボタンとか、手とか、めっちゃハッキリ見えるんだけど、どうしても顔だけは見えなかった。
ジョン?ジョンって誰?
オリビアはまたよく眠れなかった。
次の日は、脚本の打ち合わせ。
オリビアはちゃんと仕事に行った。会社の外には、ファンがいっぱい。ほとんどがニコラス目当て。
この前、原作の作者と会ったんだよね。
『ゲーム・オブ・スローンズ』は、サスペンスで、ちょっとオカルトチックな作品で、めちゃくちゃ怖いわけじゃないんだけど、論理的に考えるとゾッとする感じ。
特に最後の犯人は、マジで予想外。
あと、作者がめっちゃ可愛かったっていう。
ギャップ萌え。
会議室に入ったら、若い俳優さんたちがもう来てて、挨拶し合った。オリビアは自分の名前が書いてある席を見つけて、脚本を開いた。
プロデューサーがオリビアのことチラ見してた。ジョンが個人的にオリビアを主役に選んだって聞いたらしい。
みんな、人気も実力もあるスターリー・エンタテインメントの売れっ子を推してたんだよね。なんでジョンがこの新人を選んだのか、誰もわかんなかった。
ニコラスがすぐ来た。オリビアは脚本の打ち合わせに参加するのは初めてで、ニコラスとのシーンもあるから、緊張してた。
ニコラスはオリビアを見てびっくりした。
マネージャーから、ジョーンズ・ファミリー・エンタテインメントの新人、オリビアが『ゲーム・オブ・スローンズ』のヒロインだって聞いてたらしい。
でも、ニコラスの陶芸教室に来てた女の子が、オリビアだって思わなかったみたい。
ニコラスはオリビアに笑いかけて、オリビアはちょこっと手を振って返した。
脚本の打ち合わせが終わった。
オリビアが出ると、ニコラスが後を追いかけてきた。
「あのカップ、すごくいいね」って。
男の人の声が低くて、オリビアはドキドキした。
「ニコラスが教えてくれたからだよ」オリビアは返事した。
オリビアが言い終わった瞬間、二人とも固まった。
ニコラスが「どうやって来たの?」って聞いてきた。
「車で」
オリビアは自分の言葉を後悔した。なんで車って言っちゃったんだろ?言わなければ、タダで帰れたのに。
だって、こんな近くでニコラスを見て、オリビアは嬉しくて混乱してたんだもん。
オリビアは本当にニコラスのこと、大好きだったから。
「これ、あげる」ニラスはオリビアに小さな箱を渡して、笑った。「この前のカップのお礼」
オリビアは車に乗って、プレゼントを開けるのが待ちきれなかった。
ニコラスがくれたのは、キラキラ光るブレスレットで、すっごく綺麗だった。
オリビアはブランド知ってる。これ、20000ドル以上するやつだ。オリビアは唇を噛んだ。プレゼント、高すぎる。
自分のカップなんて、価値ないじゃん。
...
ニコラスが車に乗ると、マネージャーが水筒を渡した。
「オリビアのこと、知ってるの?」
最初は、スターリー・エンタテインメントの売れっ子がヒロインになると思ってたんだよね。有名だし、色んな噂はあるけど、ファンも多いし、世間の評判も良いし。
ウィンウィンだったはずなのに、まさかの、全然無名のオリビアがヒロイン。
マネージャーはちょっとイライラしてた。
ニコラスは無口で、特に女の子のことになるとそう。
さっき、ニコラスがオリビアと話してるの見て、マネージャーは太陽が西から昇った気分だった。
「うん、俺の兄の陶芸教室に来てた」
ニコラスはそう言って目を閉じた。
マネージャーは首をひっかいた。それだけ?
車のエアコンはガンガン効いてるから、マネージャーはブランケットを取ってニコラスにかけた。
ニコラスのまつ毛が揺れた。
あの女の子の目は、澄んでて綺麗だった。あの日、陶芸してる時、気が散ってたんだよな。
ちょっと考えて、ニコラスは「オリビアの連絡先、教えて」って言った。
マネージャー:?
...
ジョーンズ・ファミリーと契約したって知って、ドナルドはイライラしてた。両親を喜ばせようと、オリビアは実家に帰った。
自分で何品か料理して、食卓に並べて、書斎にいる両親を呼びに行った。
オリビアはラブラドールみたいにドナルドの後ろに立って、肩もみを始めた。
「パパ、私すごくない?ジョーンズ・ファミリー・エンタテインメントってすごい厳選するのに、卒業してすぐに契約できたってことは、この業界で成功するポテンシャルがあるってことだよ?ジョン社長って、すごい目利きなんだね?」
ドナルドは鼻で笑った。
「パパ、いつもお疲れ様。これからは私が稼いで、二人を楽させてあげる」
ドナルドはまた鼻で笑った。
テイラー家は金持ちなんだから、オリビアが8年間も演技して、どれだけ稼げるっていうんだ?
そんな金、見る価値もない。
それに、テイラー家の娘は、お金なんかじゃなくて、幸せに暮らせばいいんだ。なんで演技なんかするんだ?
「パパ、もっとすごいことあるんだよ。私の憧れのニコラスと同じ事務所なんだ」
今度は、ドナルドは鼻で笑うのをやめた。
ニコラスのこと、知ってるんだ。オリビアの部屋に貼ってある大きなポスターの人。
「あいつと結婚したいのか?」
そう言われて、オリビアは顔を赤くした。
確かに昔、親友と毎日ニコラスと結婚するってアホみたいに叫んでたことある。
考えてみれば、オリビアはニコラスのこと、ずーっと好きだったんだよね。
7年くらい。
7年、変わってない。
「子供の言うことなんて、本気じゃないから」オリビアは自分の顔を触った。
ドナルドはチラッと見た。ごまかしてるけど、バレバレじゃん?
「やりたいなら、止めない。ただ一つだけルールがある。健康と安全には気をつけろ。何か困ったことがあったら、一人で悩まずに、私に言いなさい。わかった?」
オリビアは泣きそうになった。両親がようやく折れたんだ。
...
デビッドはオリビアを家まで送って、助手席のオリビアを見ると、目がキラキラしてた。
デビッドは眉を上げて「どうしたの?」
オリビアはスマホを渡した。「兄、ニコラスがFacebookで友達申請してきたー!!!」
「なんでそんなに興奮してんの?ドラマで一緒なんだから、Facebookで友達になるのは普通じゃん」
「…」
オリビアはスマホを抱きしめて、友達申請を承認した。
兄は、すぐさま冷水をぶっかけてきた。ただ興奮してるだけで、勘違いはしてないよって。
ニコラスのプロフィール写真を見て、オリビアはふとジョンを思い出した。
それで、兄の方を見た。
「そういえば、兄さん」
「ん?」
「この前、社長の車に傷つけちゃったんだけど。弁償、お願いできない?」
ジョンは大丈夫だって言ってたけど、オリビアは人に借りを作るのは嫌だった。
デビッドは頭痛がしてきた。「もう運転するな」
オリビアは不満げだった。駐車場以外は、別に何も困ってないんだけど。まあ、運転しなくても、家には運転手いっぱいいるしね。
ニコラスは、インスタをあんまり更新しないんだけど。30分もしないうちに、オリビアは全部見てしまった。
内容はドラマのこととか、日常のこととか。
ニコラスのインスタを見てて、オリビアは、ニコラスも自分のインスタ見てるのかな?って思った。
オリビアはドキドキしながら、自分のインスタを開いて、何かヤバいことないか確認した。
見てたら、怖いような、嬉しいような気持ちになった。
インスタで、ニコラスへの愛を何度も表現してるし。でも、もう目の前でファンだって言っちゃったし、見られても別にいいかな。
ご飯のこととか、ゲームのこととか、ニコラスへの愛とか、それ以外はあんまりないし。
オリビアはスマホを閉じて、ベッドに顔をうずめて、頭をクリアにしようとした。
陶芸教室で会ってから、なんか夢みたい。
オリビアは口角を上げて笑って、体を丸めて、足でブンブン蹴った。
うわー、めっちゃ嬉しい。
『ゲーム・オブ・スローンズ』は、サスペンス系のIPだけど、恋愛要素も結構あって、キスシーンとかもいっぱいあるんだよね!
きゃー。
オリビアは顔を覆って、エビみたいに赤くなった。
ニコラスの唇、柔らかいのかな?
オリビアは考えれば考えるほど、元気が出てきた。起き上がって、スマホを持って、ニコラスとのチャットを開いた。
スタンプを送った。
本当は、何て送ったらいいかわかんなかったけど、なんか送ってみたかったんだよね。
でも、兄の言う通り、ドラマの主演俳優同士がFacebookで繋がるのは普通のことだし。もしかしたら、ニコラスは共演者全員に友達申請してるのかも。
ニコラスは大きくくしゃみをして、バスタオルを引っぺがして、腰に巻いて、バスルームから出てきた。
スマホには、オリビアからの未読Facebookメッセージ。
髪を拭きながら、ニコラスはそれを見た。あの女の子から、可愛い挨拶スタンプ。
「Dota、やる?」って聞いた。
ニコラスから話しかけてきたからね。
オリビア:「!」
「うん!」って返信した。
ニコラス:「10分後に一緒にやらない?」
「いいよー!」
ニコラスはニヤリとした。
オリビアはスマホを抱えて、ベッドの上をゴロゴロした。うわー、ニコラスとゲームするんだ。
ニコラスって、ゲーム上手いのかな?
オリビアは、朝3時まで寝なかった。ニコラスとずーっとゲームしてたから。
ニコラスは、ゲームめっちゃ上手くて、オリビアの友達の中で一番だった。
あんなにイケメンで、演技も上手くて、性格も良くて、ゲームも上手い人なんて、ニコラスってほんとに神様が作った傑作だ!
1ヶ月後、『ゲーム・オブ・スローンズ』の制作発表会があった。
発表会の後、オリビアは本格的に撮影の準備を始めた。
事務所で、撮影に入る前に打ち合わせがあって、オリビアは1ヶ月ぶりにジョンに会った。
もっと痩せてて、ピッタリしたスーツを着てた。
髪は綺麗にセットされてて、骨格も綺麗で、目がちょっと怖くて、直視できない感じだった。
打ち合わせの後、オリビアは呼び止められた。
社長と二人きりで、オリビアは緊張した。