ヴァンパイアハンター
もう暗くなって、ヨンシアは寝てるけど、まだ起きてないんだよね。ジウインも寝てるし、超見慣れた光景!
満月、黒い雲が鎌みたいな月に覆いかぶさって、その雲の間から漏れる光もぼんやりとしてる。
光一つない死角で、ヨンシアは顔を上げた。真っ赤な瞳が、人の心の奥底みたいな光を放ってる。ヨンシアは血が欲しい! 渇望してるんだ…立ち上がって、周りの匂いを嗅ぎまわって、すぐそばにいる人間の気配を探してる。ヨンシアは血を求めてる。それは、悲しみと寂しさのせい。ヨンシアにはもう抑えられない。全部受け入れちゃう!
ちょっとしゃがんで、ジウインの匂いを嗅いで、ゆっくりジウインの首に近づいて、口を開けて、牙をむき出しにして、血のような赤い瞳で冷酷で冷たい光を放ってる。
ヨンシアが噛みつこうとした瞬間、黒い影が素早く現れて、銃がヨンシアのこめかみに向けられた。撃とうとしたその瞬間、影はためらった。だって、吸血鬼の側にいるのは人間で、人間に危害を加えることはできないんだから。罪のない人たちを巻き込みすぎる!
ヨンシアはゆっくりと振り返って、自分に向けられた目を見た。怖がってる目をしてる。ヨンシアは、あの冷酷で非情な顔と目をした吸血鬼を見た。子供の頃に母を殺した吸血鬼ハンター、母の胸を長剣で冷酷に貫いた吸血鬼ハンター…
「お母さん…」 ヨンシアの頭の中に、その二つの言葉が浮かんだ。そして、その吸血鬼ハンターがためらい、トランス状態になった隙に、ヨンシアは死角から逃げ出したんだ。
ジャン・ティエンは絶対的な存在に戻り、千魏は彼によって片付けられた。まだ寝てて、さっき何が起こったのかも気づいてないジウインを見て、冷たく鼻で笑った。「よくもまあ、あんなに寝てられるな。」 ジャン・ティエンも初めて見たよ。でも、ジャン・ティエンはジウインに感謝しなきゃならない。もしジウインがいなかったら。ジャン・ティエンは、世界に残された唯一の吸血鬼を発見できなかったかもしれないんだから。
小さな洋館の二階で、ヨンシアは両手で頭を抱えて隅に座ってる。ヨンシアの顔は青白くて血の気が引いてる。さっきの出来事から、明らかに立ち直れてないんだ。彼は、あの吸血鬼ハンターが、吸血鬼ハンター一族の中で最強で、最も功績のあるハンターだってことを知ってたから、あの冷酷で容赦のない吸血鬼が、聖戦で母親を殺したんだってことも。彼は死ぬだろう。母親と血族の希望を抱いて!
数えきれないほどの恐怖が、ヨンシアの心と心臓に押し寄せてきた。どうすればいいんだ? 誰もヨンシアを助けられないみたいで、ヨンシアはまるで世界でたった一人ぼっちみたいに感じてる…
ジウインがヨンシアの部屋のドアを開けて、顔を突っ込む。真っ暗で、カーテンが閉められてる。ヨンシアは隅に縮こまって、顔を埋めてる…
慎重に入って、音を立てないようにするんだけど、ブーツがまだ「カチカチ」って音を立てる。その音でヨンシアは顔を上げて、ジウインのドジな行動を見て、気まずそうに笑って、深く眉をひそめて、ジウインが何をしてるのかわからない。
「あの…まだ悲しいの?」 ジウインが尋ねた。
ヨンシアは立ち上がって、理由もなくジウインを飛び越して階段を下りた。ヨンシアは血を飲まないと、ジウインに噛み付いてしまうかもしれないから。ヨンシアはよくわかってる。もし心の中に数えきれないほどの悲しみと寂しさがなかったら、ヨンシアは制御できるのに。でも、それは「もし」の話なんだ!
ジウインはわけがわからない。ヨンシアってやつ、どうして人を無視するんだ? 拗ねて出て行ったのか? そんなはずないんだけどなあ。山から来た私だって、MP3が100元以上するってことくらい知ってるし、ヨンシアはまだジンスェンジン・グループの御曹司なのに、100元くらい問題ないでしょ? ケチだなあ、こんなに怒るなんて。
ジウインはため息をついて、それから下に行って、あの小さな家の隅々を探したけど、ヨンシアは見つからなかった。そして、その小さな家の隣にある桜の庭もまた鍵がかかってる。ジウインは本当に、どこでヨンシアを探せばいいのかわからなくて、それでまたあの洋館に戻ったんだ。
キッチンに入ると、ボウルが臭い。洗ってなかった時間が長すぎたから。だから、構う気にもなれなかったんだけど、ヨンシアに雇われたメイドだったことを思い出した。ゆっくりと、フワフワ浮くように、ビニール手袋をして、自分の息で皿を洗った。ジウインがもう一度顔を上げたときには、もう朝の8時で、朝ご飯を食べてないことを思い出して、お腹が空いてた。ジウインは朝食を作ることにした!
冷蔵庫に何があるか、よく調べてみる。食材はそんなに多くないけど、色んなものがある。よくある卵、赤い人参、キャベツ、ミートソース、ミートボール…ジウインは突然、この五つの食材を使って二つの料理を作ることを思いついた。赤い人参、ミートソース、ミートボール、卵をスープにして、キャベツは炒め物にする。それで準備完了。
もちろん、ジウインもヨンシアの分も用意して、ヨンシアが怒らずにこの食事を終えてくれることを願ってる。
仕事が終わったのはもう10時だった。ヨンシアはまだ帰ってきてないし、ジウインはお腹が空いて降りてきた。ジウインは、あんなに大きな男の子が女の子みたいに怒って出て行って、10時頃になっても帰ってこないなんて、本当にケチだと思う。
「何してるの?」 ヨンシアはソファに寝転がってるジウインを見て、不思議そうに尋ねた。
「お腹が空いて死にそうだよ。他に何ができるって言うの?」 ジウインも座ったまま見向きもしないで、髪を肩の後ろに持って行って、立ち上がり、仕方なさそうにヨンシアに可愛い笑顔を向けて、優しく言った。「ご飯作ったんだけど、一緒に食べない?」
ジウインのその言葉を聞いて、ヨンシアは驚いた。ジウインがこんな風に人に接するなんて。たった二人だけなのに。料理に毒でも入ってるのか?
ダイニングルームに行って、ヨンシアは目を走らせて、それから何も言わずに座って食べ始めた。そして、スープは薄味で、おかずは塩辛く、ご飯は生煮えだってことに気づいた。ヨンシアはほとんど吐き出した。忘れられない感覚がヨンシアの心に現れて、ヨンシアはジウインをどうすればいいのかわからない。このスープとおかずは美味しそうに見えるし、色もすごくいいのに、どうしてこんなに…ヨンシアは言葉で表せない。ジウインの料理の味を表せる言葉なんて、頭の中にほとんどないんだ。
ササッと降りて行って、ご飯を数口かき込んで出て行った。階段を上る時、何かを思い出したのか、一瞬立ち止まったように見える。「来月の試験、頑張ってね!」
ジウインは答えなかった。ヨンシアは自分で勉強するのか? ジウインにとってはまるで地獄だよ!