ゼロの記憶が散らばる!
ヨンシアはジウインを緩めて、やってきたジャン・ティエンを見た。口の端の血はヨンシアが拭ってやった。自分が死ぬかどうか、分かんなかった。ただ、戦いたいってことだけは分かった。太陽が昇ったら、戦いは終わる。でも、あの燃えるような太陽を見れるのかどうかも分かんない。分からない、何もかも。未来を予測できるやつなんていないんだから。分からないからこそ、俺たちは勇敢に進む。分からないからこそ、次の瞬間には死んでしまうかもしれない。
「ヨンシア、やめて、手を離さないで…」ジウインは意味不明なことばかり言ってて、目が虚ろで、ヨンシアの方を見ていた。ヨンシアは猛スピードで走っている。
周りは静かで、聞こえるのはジャン・ティエンの銃声と、ジウインの心臓の音だけ。
避けて、捕まえて、回転してキック。ヨンシアの動きはどれも速くて完璧で、ジャン・ティエンはちょっと油断してたけど、すぐにヨンシアのペースについて行って、互角に戦ってる。でも、空中で落ちてくる血だらけの欠片をキャッチしようとしたジャン・ティエンは、ヨンシアに足で踏まれまくって、口から綺麗で魅力的な花を咲かせたんだ。ヨンシアは油断して、ジャン・ティエンを倒したって思ってた。赤い太陽だって見れるって。しばらくの間、ジウインに向かって笑みを浮かべてたんだけど、その瞬間、全てがひっくり返った。魔法陣が起動して、ヨンシアにできることは、ジウインに悲しい顔を見せることだけだった。
ジャン・ティエンがこんなに遅かったのは、周りに魔法陣を仕組んでたから。でも、ジャン・ティエンが慎重で、バレなかったのは、ジャン・ティエンがジウインを利用したから。ジウインだけが、ジャン・ティエンの警戒を完全に解けるんだ。
ヨンシアは陣の中央に立ってて、そしたら無数の弾丸が彼に向かってきた。でも、反応できなかった。弾丸は彼の体を貫通して、そして通り過ぎた。ヨンシアの体は陣の中でバラバラになって、崩れ落ちた。叫びもしなかったし、痛くもなかった。ああ! ジウインさえ元気なら、心は痛くない。そして、彼は倒れて、彼の陣は消えた。
「ヨンシア!!!」
ジウインは喉をかきむしって叫んだけど、頭の中では息をするのも大変だった。ただ、心の中で燃え上がった一時の温かさが、一瞬にして消え去り、凍り付いていくのを感じただけ。
どれくらい経ったか分からないけど、ヨンシアは立ち上がって、ジウインのところへゆっくりと歩いて行った。まだ血が流れてる。ジウインを抱きしめて、ジウインの肩に牙を見せずに強く噛みついた。ただ、ヨンシアは、自分がかつてジウインを愛していたという痕跡を残したかっただけだった。彼女が忘れてしまうのが怖かったんだ。
人差し指でジウインの額を指して、そしてジウインに陰鬱な笑顔を向けて、ジウインに向かって言えることはこれだけだった。「ごめんね。「幸せを祈ってるよ、ジウイン」
そして、容赦なくジウインの記憶の欠片を粉々に砕いて、彼女が昏睡状態に陥るのを見て、ヨンシアの体からも血が噴き出して、地面に横たわって血が広がり、まるで空に咲く、咲き誇る血の蓮のようだった。
魂は空中に漂い、ジャン・ティエンによって空の汚れに封印された。ヨンシアはこの世界から消え、みんなの記憶の中で死んだ。彼は2014年の夏、ジウインが嫌いだった夏に死んだんだ。
俺がいた夏は、悲しくて混乱してた。晴れた日に、お前は俺にたくさんの心をくれたけど、俺は一度も受け入れなかった。覚えてる思い出は多くない。ただ、お前の無言の顔を覚えているだけ。九年(2)クラスで、俺たちは半学期以上一緒に過ごした。MP4は小さな建物に残ったままだった。俺がお前のために預かってたんだ。覚えているのは、目が覚めたら、2014年の夏にお前と過ごした全ての思い出が消えていたということだけ。