第4章 死んだ花嫁の美しいウェディングドレス
朝っぱらから、まさかのノラが来たんだよね。デカい箱を抱えてて、あたしをめっちゃ嫌そうな顔で見てる。「義兄が送ってくれってさ。あんたが貧乏すぎてアーロン家のメンツ丸潰れとか嫌だし」だって。
箱の中身は、すっごい綺麗なウェディングドレスだった。キラキラ輝くダイヤがびっしりで、マジで眩しくて見とれちゃうくらい。
このドレスを撫でながら、ちょっとだけ嬉しくなっちゃった。死ぬ前に、こんな素敵なドレスを着て、好きな人と結婚できるなんて。あたしって、案外イケてるじゃん。
結婚式はこじんまりとしてて、あたしは家族にも言ってなかったんだ。大金持ちのアーロン家なのに、参列者はめっちゃ少ないし。
静かにウェディングドレスを着て、一歩一歩、クリスの方へ歩いていく。
クリスの顔は、最初はめちゃくちゃ青ざめてたんだけど、だんだん真っ赤になっていくんだよね。近くで見たら、血管が浮き出てるのも見えたし。
クリスは持ってた花を地面に叩きつけて、ネクタイ掴んであたしの方に迫ってきた。あたしはビビって何度も後ずさりしたんだけど、ガシッと掴まれちゃった。熱い息が顔にかかってくる。「クリス、ヘレンと同じウェディングドレスを着るなんて、誰に許可もらったんだ?」
え!ヘレンのドレスと一緒だって!?
あたしは目を見開いて、横に立ってるノラの方を見た。ノラ、あたしを見てニヤニヤ笑ってる!
わざとだ。
「ノラ…」
あたしの言葉が終わる前に、ノラのキンキン声が響いた。「クリス!妹を殺して、代わりに成り代わろうとするなんて、酷すぎるわ!」
クリスの顔色、さらに悪くなってる。強く押されて、あたしは地面に倒れ込んじゃった。
「ヘレンの髪の毛にも及ばないくせに。マジで笑えるし、吐き気がする!」クリスは一言一言、吐き捨てるように言った。
「あたしじゃない。ヘレンのウェディングドレスがどんなのかも知らないもん」
ノラが叫んだ。「嘘よ。ちゃんと見てたんでしょ。結婚する時は絶対同じもの着るって言ってたわ」
あたしはクリスを見た。クリスは、あたしに対してものすごい落胆した顔をしてる。
誰もあたしのこと信じてくれないんだ。会場にいる人たち、みんなあたしを軽蔑した目で見てる。
あたしはゆっくりと立ち上がって、服を払い、クリスを睨みつけた。「結婚式を続けるかどうかなんて関係ない。あたしはもう、あなたの正真正銘の妻なんだから」
「妻?」クリスは鼻で笑った。「不実で冷酷な妻?」
「クリス。あたしと結婚しようとしてるなら、教えてあげる。あんたはただの代理人。あたしのクリスの妻は、永遠にヘレンよ!」
クリスの言う通りだ。あたしの目的は、お腹の子のためだけじゃないか。
少しの幸せを手に入れたいっていう、あたしの欲と願望だったんだ。でも、それはあたしのものではない。今、その贅沢な望みはカラフルなシャボン玉みたいに弾け飛んだ。現実を受け止める時が来たんだ。
「あたしは絶対に義兄と結婚する資格なんてないわ!」いつの間にかステージに上がってきたノラが、あたしに近づいてきて、突き飛ばし始めた。
すぐに、なんか変だって感じた。ノラは、あたしをステージから突き落とそうとしてるんだ。あたしは、ノラがお腹の子を狙ってるんだって直感した。
あたしは抵抗し始めた。
ごちゃごちゃしてる中で、ノラが足を上げて、あたしを強く蹴ろうとした。でも、ハイヒールが変な風にねじれたみたいで…。ギャー!って叫んで、ステージから落ちた!
会場は大騒ぎ。クリスが駆け寄って、ノラを抱き起こした。
クリスの顔は、不安と焦りでいっぱい。「ノラ、大丈夫?」
ノラは地面に手をついて、めっちゃ苦しそう。クリスを見て、涙をボロボロ流してる。「義兄、足の感覚がないの!」そして、あたしを指差して、恨めしそうに言った。「クリスよ。この意地悪女が、あたしを突き落としたの!」
クリスは、あたしをさらに落胆して怒った顔で見てる。ノラを抱き上げて、振り返りもせずに歩いて行った。
「あたしは突き落としてない!」あたしは、クリスの背中に向かって叫んだ。
クリスは一瞬止まったけど、すぐに歩いて行ってしまった。
結婚式に来ていた人たちは、あたしを軽蔑した目で見て、色んな酷い言葉が耳に入ってくる。
あたしは歯を食いしばって、自分に言い聞かせた。耐えなきゃダメだって。もう、関係ないじゃん。
あたしは、無事にお腹の子をこの世に産むまで、ちゃんと生きていきたい。
クリスが帰ってきたのは、三日目の夜遅く。部屋に直行して、あたしをベッドから引っ張り出した。
「まだ寝てたのか?」クリスの目は真っ赤だった。
あたしは全然寝てない。っていうか、もうずっと寝れてないんだよね。酷い妊娠反応で、体の細胞一つ一つが痛みで泣き叫んでる感じ。クリスが来る前は、一日中ベッドで起き上がれなかったし。
「ノラは…」クリスはうなだれて、すすり泣いた。「もう二度と立てないんだ」
クリスの言葉に、あたしは呆然として、しばらくその場に立ち尽くした。
まさか、ノラの状態があんなに深刻だったなんて、思ってもみなかった。脊髄損傷で両下肢麻痺になって、車椅子で残りの人生を過ごすことになったんだって。
今回はあたしのせいじゃないんだけど、それでも心がすごく苦しい。結局、こんなことになって、まるでノラのあの美しい年齢が、死刑宣告されたみたいじゃん。
クリスはゆっくりと顔を上げた。その目には、深い悲しみと決意が滲み出てる。覚悟を決めたように、クリスはゆっくりとあたしの首に手をかけた。「クリス。二人の姉妹の人生をこんな悲惨にしたのは、全部あんたのせいだ!」
「あたしは関係ないって言ってるでしょ。最初は、あなたもあたしも被害者だったし、何も知らなかったんだから!それにノラは、ただ単に落ちただけ!」あたしは、クリスに懇願するような目で見て、少しでも聞いてほしいと願った。
でも、クリスは唇を固く閉ざして何も言わず、突然、あたしの首を強く締め付けた!
息苦しさが顔を襲ってきた。あたしは力いっぱい抵抗したけど、クリスの束縛から逃れることはできなかった。視界がだんだんぼやけてくる。
マジで、こんな風に死にたくない!
「子供たち!」あたしの目は見開かれ、大声で叫んだ。涙が頬を伝って、自然に流れ落ちた。