第15章
目の前の光景、マジでヤバくない?って感じ。でもさ、ハンさんの行動に笑っちゃうか、子猫のこと可哀想に思うか、どっちにすりゃいいのかわかんなかったんだよね。子猫はちょっと先にいて、一生懸命前に進もうとしてるのに、ハンさんはまるで槍投げみたいな体制で、ほうき持って子猫を追い払おうとしてるんだもん。
あの、強くてクールなハンさんが、小さな子猫をほうきでツンツンしてるんだよ?
もし子猫があんな状況じゃなかったら、あたし絶対笑い転げてたわ。子猫を助けなきゃ!って思って駆け寄ろうとしたら、ハンさんはほうきを落として、あたしの肩を掴んで、自分の前に引っ張り寄せたんだよね。
マジかよ、なんであたしの後ろに隠れてんだよ!って感じ。子猫がハンさんに近づこうとしてて、もしかして懐いてるのかな?って思ったら、ハンさんはあたしを左右に押しやって、子猫の足跡見てるし。しかも、体があたしに触れるたびに、なんかゾクゾクしちゃうんだよね。
「あのちっちゃいの、アンナ、どっか行かせろ」って、あたしを胸に引き寄せながら怒鳴ってるし。肩がハンさんの硬い胸に当たっちゃったじゃん。子猫を怖がらせようと右足を振り上げたけど、プイって感じで甘えてるし。
「シッシッ!」って、あたしの後ろで叫んでるけど、あたしは何もできずにそこにいた。だって、ハンさんが近いと、なんか体が変な感じになっちゃうんだもん。
ヤバい、こんなの感じちゃダメだ。っていうか、認めたくないんだよね。ハンさんと一緒にいると、なんか落ち着くっていうか、好きになっちゃってる自分がいるっていう事実を。
「あっち行け!」って、座ってこっちを見てる子猫に叫んでるし。考え事から抜け出して、一歩前に出たら、子猫はうちの家の方に走っていっちゃった。
「ペットは禁止なんだよな、アンナ。わかってるだろ?」って、振り返ってあたしを見てくるハンさん。もう、笑いが止まらなくなっちゃって、ハンさんのこと見てたら、つい吹き出しちゃった。
「ハンさんって、まさか子猫怖いんですか?」って、笑いながら言ったら
「ただ、毛のアレルギーなんだよ」って、ちょっと恥ずかしそうに歯ぎしりしてる。でも、顔真っ赤だし、めっちゃキュートじゃん!もしあたしが彼女だったら、背伸びして、ほっぺにチューしてあげたいくらい。まるでクッキーを盗み食いした子供みたいだよ。
「マジかー。これ、SNSにアップしたら、めっちゃ有名人になれるかも」って、コメント欄を想像したら、お腹痛くなってきたし、涙も出てきちゃった。お腹抑えて、深呼吸して落ち着こうとしたんだけど、無理だった。だって、こんなの面白すぎるし、ハンさんの秘密を知ってるの、あたしだけなんて、ラッキーすぎでしょ!
「アンナ」って、低い声でハンさんが呼んだ。一歩近づいてきて、あたしはドキドキして、ハンさんを見上げた。変なことになんないといいんだけど。
「楽しんでるみたいだな」って、また一歩近づいてくるハンさん。
「写真撮ればよかったのに、顔真っ赤にしてるの」って、また笑っちゃった。
「そうだな」って、ハンさんも近づいてくる。
「うん!」って、あたしはニヤニヤしながら一歩下がった。
「そうくると思った」って、ハンさんまた一歩近づいてくる。
「うん!」って、あたしは笑いながら一歩下がって、ハンさん見てる。
「どっちが赤くなるか、勝負だ」って、ハンさんは優しく言って、あたしの腰に手を回して、ぎゅーって抱きしめてきた。あたしはハンさんの胸に顎を乗せて見上げた。
時間が止まったみたい。さっきまでからかってたのに、なんか違う感じになっちゃった。お腹の底から何かが込み上げてきて、顔が熱くなるのを感じる。あたしはハンさんを見つめて、瞬きもできない。ハンさんは優しくあたしを見てるけど、あのニヤニヤ顔はまだ消えてない。
ハンさんはあたしを抱き上げて、もう片方の手も腰に回して、顔を近づけてくる。あたしはただ、ハンさんを見つめてた。
さっきも言ったけど、あたしの体は裏切ってる。突き飛ばしたいのに、できなかった。なんでかなってググってみたら、なんで相手があなたにちょっかい出してるのかって答えが書いてあって、あたしは恥ずかしくなっちゃった。
昨日の退屈なドライブで、「なんで彼は私にちょっかい出してくるんだろう」ってググってみたら、彼は私に惹かれてるからだって。そんなの誰でも知ってることなのに、あたしってマジでバカ。でも、それを読んで、なんか違う気持ちになっちゃった。ハンさんはあたしをイライラさせようとしてるだけだと思ってたけど、ハンさんが話すたびに、彼の目がすべてを物語ってる。
やばい、あたし、医者行った方がいいかも。今、マジで頭おかしくなってる。
ハンさんはさらに近づいてきて、顔が数センチってとこまで来た。あたしは反射的に目を閉じた。なんでこんなことしてるのかわからない。たぶん、あたしの頭はもうおかしくなっちゃってて、ドキドキが止まらないんだと思う。
ハンさんはもっと近づいてきて、唇が触れそうになった瞬間、唇をずらして、「うちのコ、顔真っ赤だな」って、あたしの右耳元で囁いたから、あたしは目を見開いた。ハンさんを見てる。そして、あたしをさらに高く持ち上げて、唇がハンさんの顎に触れそうになった。
なんであたしはなにもできないの?体が動かない。嫌だ、じっとしてるのは嫌だけど、でも、これが好き。
あたしはハンさんを見つめてて、顔は数センチしか離れてない。頭を後ろに傾けてたら、ハンさんがニヤニヤしながら近づいてきたから、あたしは長い葛藤の末に、彼の唇に掌を当てた。ハンさんの笑顔が肌に伝わってくる。ハンさんの優しい瞳を見つめた。
「アンナ」って、ディランの声が聞こえた。
掌を外して、ハンさんの腕から抜け出そうとした。
「やめて」って、小声で言った。でも、ハンさんはあたしを強く抱きしめて、離してくれない。
「ハンさん、離して」って、歯ぎしりしたけど、ハンさんは微動だにしない。そして、一瞬のうちに近づいてきて、あたしの唇を奪った。