第3章
来週の木曜日、ハンさんが発表するプレゼンの書類をひたすらタイピングしてた。あの人のオフィスに入って話すたびに、ニヤニヤって顔するんだよね。見られるとマジで落ち着かないし、一体なに考えてるのか全然わかんない。腕を伸ばして、椅子にもたれかかった。初日から疲れた〜、前の仕事と違って、全部背負うものがないからかな。今は、ハンさん関連のこと、会議とか、必要な書類とか、スケジュールとか、全部私がやらなきゃいけないんだもん。そこに座ってパソコンいじってるハンさんを見てたら、スマホがブルブルって震えた。
「お仕事、初日はどうだった?♥️」
ディランからのチャットだって気づいたら、思わずニヤけちゃった。
机と周りの写真撮って、送ってあげた。
「イイ感じ」
「お嬢様は、あの贅沢な会社で快適そうだな」
「マイガール」って言葉に顔赤くなっちゃった。私が落ち込んでる時は、いつもこう呼ぶんだよね。
「めっちゃ忙しいんだけど」
スマホ持ち上げて、仕事中の上司の写真撮って、送ってやった。
「うちの変な上司」
「いや〜、マジでイケメンじゃん。エマが夢中になるのもわかるわ。あなた、いい景色見てるね」
「?」
「そんなに彼のこと見てるの?俺みたいなイケメンがいるのに。何時に仕事終わるの?」
ディランはいつもカジュアルな格好。Tシャツとパンツが好きだよね。身長は、上司より低くて、ディランは5'8くらい、あいつは6'くらいかな。ディランのダークブラウンの髪の毛は、いつもトゲトゲしてて、触りたくてウズウズしちゃう。で、私に触らせてくれるように、屈んでくれるんだ。
自分のことは無視して、返信した。
「9時」
「了解。迎えに行くよ」
「了解、仕事終わらせなきゃだから、バイバイ?」
「またね!」
スマホを机に置いて、仕事に戻ろうとしたんだけど、視線を感じて、勝手に指が止まっちゃった。
うん、彼の視線。
彼の方見たら、変な笑顔になっちゃってることに気づかず、笑ってた。ディランって、一緒にいなくても、いつも笑顔にしてくれるんだよね。
それから、彼は仕事に戻って、私も自分の仕事に戻った。
「やっと終わった〜」ってため息ついて、パソコンをシャットダウンして、バッグとスマホ掴んだ。書類を棚に置いて、部屋から出て、鍵をかけた。
鍵を渡されてて、もう一本はオフィスにスペアがあるんだよね。
夜9時5分。
スマホが鳴ったから、出てみた。
「はーい、今行くー」
電話切って、エレベーター待ってたら、周りはシーンとしてた。他のスタッフは、7時半にはほとんど帰ってるからね。
足音が近づいてくるのが聞こえて、振り返ってみたら、誰もいない廊下だった。
「疲れた?」ってハンさんが、私の隣に立って話しかけてきた。
「まあ、そうでもないけど」ってエレベーターのこと見つめながら答えた。
ラッキーなことに、エレベーターはすぐに来てくれて、急いで乗り込んだ。ディランが待ってるからね。
ハンさんも一緒に乗り込んで、私の隣に立った。
「アンドリュースさんが、あなたを雇った理由がわかったよ、アンナさん。あなたの仕事ぶりは、本当にすごい」
そう言われて、めっちゃ嬉しかった。頑張った甲斐があったなって。今、超一流の会社で、しかもCEOのアシスタントとして働けてるし、初日で褒められるなんて、最高じゃん。
他のスタッフから聞いたんだけど、彼はあんまり褒めたりしないらしいんだよね。っていうか、今まで一度もなかったらしい。
シャーロットに言ったら、マジでビックリするだろうな。
「ありがとうございます、ハンさん。嬉しいです」って言って、彼の方を見たら、目が私に釘付けになってる。
なんか変な人なんだよなー。全然理解できない。
エレベーターのドアが開いて、バイバイって言って降りた。
「家まで送ろうか?」って言われて、足が止まった。
振り返って見たら、ハンさんはポケットに手を入れて、私の前に立った。
「大丈夫です」って丁寧にお断りした。
「遅いし、君は僕のアシスタントなんだから、ちゃんとしないと」って、完璧に眉を上げて言った。
あー、そういうとこ、マジでカッコいいんだよな。
「すみません、友達が迎えに来てるんです」って、何か「わかった」とか返事くれるのを待ってた。さすがに、そのまま帰るのは失礼かなって。だって、彼は親切にしてくれてるだけだし。
会社の他のスタッフに会ったんだけど、みんな彼のこと、横柄で、めったに笑わないって言ってたんだよね…マジで、変わってる人。
「一緒に笑って、メッセージ送ってた友達のこと?」って、ほぼ私の身長に合わせるようにかがんで聞いてきた。
えー、私150cmくらいで、彼は180cm近くあるのに。
「プライベートなことですよね、ハンさん。すみません、もう友達がずっと待ってるので、行きますね」って笑顔で言って、気まずくならないようにすぐに行った。
「ヘーイ!」って黒い車に向かって叫んだら、ディランが待ってて、私が着いたら助手席のドアを開けてくれた。
乗り込んで、シートに寄りかかってため息ついた。
「疲れた?」ってディランがドア閉めながら聞いてきた。
「いや、全然」って答えて、シートベルトして、ディランもした。
「どこ行く?」って、彼が車のエンジンかけようとしてるから聞いた。
「アンタ次第だよ」って言って、私を見てウインクした。
「いつもの場所、BBQバーでしょ!」って、大げさに道指さした。
「了解、お姫様」って笑って、BBQバーに向かった。
あそこの料理はマジで最高なんだよね。チキンとかビーフとか、舌に残る味がたまらない。それに冷たいコーラを一緒に飲むと、一日の終わりって感じ。ディランと私はいつもあそこにご飯食べに行くんだ。そこの店長も私たちと仲良くて、いつもデートしろって言ってくんだけど、私たち、そういうの禁止って感じで。たまにあそこでパーティーしたり、エマも来たりするんだよね。