第34章
「あれ、見よっか」
カウンターテーブルに身を乗り出して、今日の映画リストボードにあるロマンスアニメ映画を指しオススメした。
「お嬢様のお望み通りに」ハンさんはチケットを買って、あたしはポップコーンを買いに行く。
映画館に入って、ガラガラだったから、あたしは席まで走った。お互いに隣り合って座って、映画が始まるのをワクワクして待つ。
「画面見てて」
あたしは大きなスクリーンに釘付けになってて、隣の人は最初からあたしのことばっかり見てる。
「アンナを見てると幸せになる」
彼は笑った。
「チャラいねー、映画見に来たんじゃないの?」
あたしはカップからポップコーンを一つ取って、口に運んで訊いた。
「ストップ」
突然そう言われて、あたしは唇にポップコーンを挟んだまま彼の方をすぐに見た。
彼の右肩に寄りかかって、あたしに近づいてきて、あたしの口のポップコーンを奪うようにキスをした。彼は後ろに座って、映画を見始めた。
小さなポップコーンを噛みながら、あたしはスクリーンに視線を固定した。心臓がドキドキし始める。
「君の口の中の方が甘く感じる」
彼がそう言うから、あたしは下唇を噛んで、頬が熱くなった。
「どこ行くの?」
あたしはシートベルトを締めて訊いた。
「知ればわかる」
彼はエンジンをかけて、そっけなく言った。
左を向いて彼のことを見つめた、というか、ガン見してるよね、今。
彼のダークブルーのシャツの袖は肘まで折りたたまれていて、血管が浮き出て見える。あたしは彼が運転する間中、彼の動きを観察することに視線を固定した。彼の眼は、あたしの方をちらっと見てはニヤリとしながら、一分ごとに右に動く。
「何見てるの?」
彼は笑いながら訊いた。
「ハンさんを尊敬してるんだもん」
あたしは笑顔で彼を見つめながら、そう言った。
恋人とイチャイチャするのは、楽しいことだよね、きっと。
車が止まって、あたしはさっと彼から目を離し、シートベルトを外して車から降りた。
目の前の場所を見て、あたしの唇に大きな笑顔が浮かんだ。
遊園地
もうすぐ暗くなる頃、あたしたちは遊園地にいる。
「ハンさんがこんなデートする人だとは思わなかったな」
あたしは彼が車から降りてあたしの方へ歩いてくるのを見て、自慢げに言った。
「サプライズがあるんだ」
彼はあたしの手を握って、もっと奥へ歩いていく。
彼はあたしを引っ張っていく。あたしの目は周りを見回し、暗闇の中でクレーンゲームの光が目に飛び込んできた。
「クレーンゲームしたい」
あたしは立ち止まろうとしながら言った。
「後で」
彼はまっすぐ前を見て答えた。
「あれやりたい」
あたしは立ち止まって、ブランコを指差して文句を言った。
「まず」
彼はあたしの肩を掴んで、優しくあたしを彼の方に向き直らせて、「観覧車に行こう」と低い声で、あたしを見下ろして言った。
なんでそんなに観覧車に乗りたがってるんだろう?
観覧車のためだけに来たようなものだよね…あたしの心はため息をついた。
「わかった」
あたしは彼の手を握って、カラフルなライトが飾られた巨大な観覧車に向かって歩いた。夜にとても綺麗に見える。
「ねえ、カップルが一番高いところでキスしたら永遠に一緒にいられるって言うんだよ」
あたしは彼を見て笑顔で笑い、彼の隣の鉄製の階段を登った。
「そうなの?」
ハンさんは眉をひそめて、ドラマチックに考えたふりをした。
ゴンドラに入って、お互いに向かい合って座った。あたしはトランクに貼り付いたトカゲのようにドアにくっついて、外の景色に見とれた。星が瞬く暗い空と、夜の街の灯り。
「アンナ」
ハンさんがあたしを呼んだので、振り返って彼を見た。「ずっと僕のそばにいてくれる?」
彼はそう言って、あたしを不思議そうに見つめた。
なんでこんなことしてるんだろう?
プロポーズだってしたのに、これは一体なんなの?
どうしちゃったの?
「な、に…」
パンという音が聞こえて、あたしは言葉を切った。
左を向いてガラス越しに見ると、花火が様々な色で爆発するのを見て、あたしの目は見開かれた。空中に「I love you」という文字が現れると、あたしは小さく笑った。
その光景全体が、あたしを夢中にさせた?
喜びの涙があたしの目に溢れ始めた。
「ハンさ…」
あたしは言葉を切って目を閉じると、彼があたしの唇にキスをした。あたしたちはもう頂上に着いていることを知っていた。
あたしたちは何世紀も飢えていたかのように狂ったようにキスをした。あたしは突然、何かが頭にフラッシュして、中断した。あたしはいつも望んでいたものを見た。あたしの夢と想いのすべてのパズルが、一つの完全なピースに組み合わさっていく。
こんなことって、あり得るの?
どうしてこんなことが起きているんだろう?
奇跡?
あたしはそこで記憶の中に漂っていた。突然、体が弱く感じて、足はよろめき、体は軽くなった。あたしは突然のズキズキする頭痛を止めようとしたが、できなかった。彼の肩に倒れ込んで、暗闇にあたしは身を任せた。
イヤ…これは起こるはずじゃない…
すぐに目を見開いて、悲鳴が口から出た。周りを見渡して、自分が家にいることに気づき、深呼吸をして天井を見つめた。
「気分はどう?」
天井から視線を移して、彼の言葉が聞こえたとき、右を見た。
「あ…たし…」
あたしの声はか細い囁きになった。彼は席から立ち上がり、あたしがもがいていると、座るのを手伝ってくれた。
彼はあたしの近くにいて、枕を心地よく置いてくれたので、あたしは彼を見つめた。
「ジャッキー」
あたしは彼の名前を優しく呼んだ。彼はすぐにあたしを見て、あたしの読めない表情で眉をひそめた。
「君は…」
彼はあたしに近づいて囁いた。
「覚えてる」
あたしは感情で満たされた彼の目を覗き込みながら、優しく言った。
本物の笑顔が彼の唇に浮かんだ。彼の目はあたしから決して離れない。「君は…」彼は言葉をうまく作ることができず、つっかえながら言った。「覚えてる?」彼はあたしの頬を包み込んで再び尋ねた。
「お父さん?」
あたしは優しくそう言うと、彼の笑顔は消えた。