第1章:拒絶の痛み
夜道、十代の男の子たちがゾロゾロ歩いてた。総勢六人。みんな、さっきケインの十八歳の誕生パーティーで死ぬほど楽しんだばっかり。ケインって、すげえ大切な友達なんだ。最高の一夜だったな。楽しい時間はあっという間で、みんなで一緒に帰るところ。友情って、本当に特別だよね。親友以上、兄弟みたいなもんだ。でも、次の瞬間、何が起こるかなんて、誰も想像してなかったんだ。
時間は夜中の十二時くらいで、家までの道は静かで誰もいない。でも、みんな一緒なら、別に怖いことなんてないんだ。バカみたいなジョークで笑いあったりしてたら、黒いフードをかぶった男が突然現れた。びっくりして、みんな固まっちゃった。
男の子たちは顔を見合わせ、心臓がキュッてなるような恐怖を感じた。
「おい、大丈夫か?何か困ってる?」
ちょっと躊躇したんだけど、一番年上のサンディが、その怪しいやつに近づいていったんだ。男は顔を上げて、ギラギラ光る赤い目をむき出しにした。サンディは、そのおぞましい目を見た瞬間、ビビって後ずさり。他のやつらも同じだった。もう逃げるには遅すぎた。
背後からさらに二人の男が現れ、ビビってるグループの後ろにいた二人の首をひねったんだ。
他の四人は、もう息をしていない仲間たちを見て、目に涙を浮かべた。アドレナリンがドバドバ出てきて、人生が走馬灯のように駆け巡る。
「お前、何なんだよ!?」
サンディは、心底怖がって叫んだ。自分も友達も震えてるのがわかる。男は不気味にニヤリ。顔は完全に殺意に満ちてる。
「お前の死だ!」
男はサンディに襲いかかり、同時に他の二人のヴァンパイアも、他の二人の男の子を捕まえて、一瞬で牙を首に突き立てた。最後に残ったのはケイン。何が何だかわからないって顔で、涙をポロポロ流しながら、自分の死を象徴するヴァンパイアが近づいてくるのを見てたんだ。
ヴァンパイアは細い首を掴んで、自分の口元に引き寄せ、恐ろしい牙を首に突き立てて、血への渇望を満たそうとした。でも、その、遠くから誰かの叫び声が聞こえたんだ。
「やめろ!」
ケインの首を掴んでいたヴァンパイアは、手を緩めて、そっちを見た。またしても、冷酷な笑みが、その醜い顔に広がった。
「おや、ブライソンじゃないか。嬉しい驚きだね。お前も夜食にでも?」
まるで、ガラガラヘビみたいに、低い声で唸った。ブライソンって男は、目の前にいるクソ野郎を見て、怒りを抑えきれず、きつく顎を噛みしめて言ったんだ。「その男の子を放せ!」
「やってみろよ」
そう言うと、ケインの首に長い牙を深く突き刺し、強烈な痛みが全身を駆け巡ったんだ。
ハッと息苦しさで目が覚めた。髪はボサボサで、目はたぶん怒りと苦しみで真っ赤になってる。また、あの夢だ。
悪夢だ。
そう、悪夢!全部失った夜の、友達も家族も、そして自分の命まで失った夜の、記憶なんだ。
もし俺がすでに死んでるなら、なんでこんなこと話してるんだ?って思うでしょ?俺はヴァンパイアなんだ。強くて孤独なヴァンパイア。失うものなんて何もないから、失うものがないやつってのは、一番危険なんだ。
弱くて情けないやつが大嫌いだ。だって、俺も昔はそうだったから。だから、俺は罰を受け、全てを失ったんだ。
永遠に生きるってのは、本当に罰みたいなもんだ。永遠に生きるのに、誰一人としてそばにいない。愛する人たちが死んでいくのを見て、再会を約束することもできない。だって、永遠に生きるんだから。自分の過ちを永遠に覚えて、後悔し続ける。春には花が咲いて、冬にはそれが消え失せるのを見る。
ブライソンは昔、すべてのヴァンパイアには、永遠に寄り添い、人生の孤独な隙間と死んだ心を満たす相手がいるって言ってた。ソウルメイト、つまり自分のもう片方だ。でも、俺にはソウルメイトなんていらない。そんなのいたら、俺を弱くて情けなくするだけだ。誰の助けもいらない!誰もいらないんだ!
サイドテーブルの引き出しに手を伸ばして、ステラがくれた薬を取り出した。あの悪夢を見ないようにする唯一の方法だったんだ。ステラは魔女で、俺のいい友達だ。人間用の薬はヴァンパイアには効かないから、彼女に頼んで、もっとよく眠れるように、あるいは悪夢を見ないように薬を作ってもらったんだ。でも、引き出しは空っぽ。薬が切れちゃったんだ。
朝になったら、彼女にもっともらうように頼まなきゃ。でも、もう眠れない。部屋は窮屈に感じるし、今夜は空気がめちゃくちゃ息苦しい。意味わかる?
今の俺にとって、新鮮な空気の中に飛び出すのが最優先事項だった。あの落ち込んだ記憶を全部吹き飛ばすために、森の中を走ることにしたんだ。森は家の前にあって、自然の美しさを見せてくれる。着替えて外に出た。まだ夜明けまでは時間がある。空は真っ黒で、星も全然見えない。まるで、俺がどれだけ落ち込んでるか、自然も知ってて、そんな風に変わったみたいだった。森の奥深くまで走り始めて、時間が経つのを忘れてた。
森の中でどれだけ走ってたのかわからないけど、突然、大きな衝突音が聞こえてきて、俺は立ち止まった。強烈な予感が胸の奥底から込み上げてきて、心臓が痛いほど締め付けられたんだ。すると、血の匂いが鼻をかすめた。もう一秒も無駄にせず、匂いの元へ向かって突っ走った。頭は真っ白で、体は勝手に動いてた。
現場に近づくと、別の匂いが鼻をついた。それは、俺をなぜか落ち着かなくさせる、甘い蓮の花の香りだった。俺は、すでに人間離れしたスピードで、さらに速く走った。近づくと、道路の端で壊れてへこんだ車が見えたんだ。崖から落ちそうになってた。すぐに車に駆け寄り、全力で押して道路に戻した。ヴァンパイアってのも、たまには悪くないな、って思ったね。車が道路に安定したとき、俺は中を覗き込んだ。
運転席には男女がいて、すでに車の衝突で死んでいた。心臓が動いてないのがわかった。俺には何もできない。事故現場から立ち去ろうとした時、また、あの美味しそうな、天国のような蓮の花の匂いが鼻をついた。視線を後部座席に移すと、小さな女の子が横たわっていて、頭と左腕から血を流していた。腕には大きな切り傷がある。一瞬ショックを受けたけど、すぐに我に返って、後部座席のドアに駆け寄り、こじ開けた。ドアは蝶番から外れてしまったので、無造作に放り投げた。俺は、壊れやすい人形を抱くように、慎重に女の子を車から出したんだ。触れるところ全部で火花が散ってる。彼女が俺にとって誰なのか、すぐにわかった。
俺のソウルメイトだ。
なんて弱いんだ。
なんて情けないんだ。
俺には、弱くて情けないソウルメイトがいるんだ、って、嫌悪感と不快感を感じながら思った。
人間だった頃の俺みたいだ。彼女は人間なんだ!ソウルメイトなんていらない。弱くて情けないソウルメイトなんていらない!彼女じゃ、俺は変われない!彼女は、何も意味がない!クソくらえ!
過去の記憶がフラッシュバックして、頭の中は大混乱。あの忌まわしい思い出を止めるために、乱暴に髪をかきむしった。人気のない道路の脇の小さな草むらに彼女を寝かせた。彼女は半分意識を失っていて、たぶん俺の声が聞こえるだろう…
「おい!」
そう言って、彼女の青白い顔を優しく揺さぶった。血が顔の半分を覆っていたけど、月明かりの下ではまだ綺麗だった。火花は無視できなくて、これはソウルメイトの絆だってことを思い出した。俺は自分の決意を固めていて、絶対に気が変わることはないんだ。女の子は少しだけ目を開けた。そして、俺は、その時に正しいと思ったことをしたんだ。
「俺、ケイン・ウィルソンは、お前をソウルメイトとして拒絶する!」
俺は、今の惨めな感情の中で、出しきれる限りの力でそう言って、自分の心に強烈な痛みを感じながら、彼女をそこに置いていったんだ。でも、その痛みは無視して、究極の人間離れしたスピードでそこから走り去った。
彼女から離れて!
拒絶の痛みを感じながら。
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