第6章:殺人者たち!
シャの視点:
ハンナって、ブライソンっていう男の子にめっちゃ興味あるみたいだった。
お昼もずっと一緒にいたし、あいつと、あたしが一番来て欲しくなかった男が一緒だったし。
はあ!でも、なんで他人のせいにしてんの? 自分が最悪な運命ってだけじゃん!
あいつ、何考えてんの? あたしの存在を無視したいのに、どうしたってあたしを誘ってくるんだよ、あのずるいぐらいかっこいい目つきでさ。
大学が終わってから、ハンナのお父さんから電話がかかってきて、遊びに来るって。
ハンナ、すでにパパに会いたくてしょうがないから、ちょっと早退した。
あたしともっと一緒にいたかったのにってずっと言ってたけど、もう行けって言った。
パパから引き離すことなんてできなかった。
あたしはたまに、そんなハンナのこと、羨ましいって思ってたから。
多分、あたしも両親にめっちゃ会いたかったからなんだろうな。
とにかく、あたしはまた一人。
大学の近くのカフェに行って、バイトでも探そうかなって思ったんだ。
だって、大学生ってマジでお金かかるじゃん?
しかも、ろくでもない親戚どもが、生活費すらろくにくれなかったら、絶対バイトしないとやっていけないし。
カフェにはお客さんがいっぱいいて、あたしの心に新しい希望が生まれた。
『求人募集』の看板が、でっかいガラス窓の隅っこからあたしを見てた。
まるで、あたしに話しかけてるみたいだった。
入って、窓から外してくれって頼んでるみたい。
ここ、めっちゃ人気あるみたいじゃん。
大学終わった後、学生みんなここに来るし!
ここでバイトできたら、あたしのクソみたいな叔母さんと、あいつのクソ息子から逃げられるくらい稼げるかも。
深呼吸して、落ち着いて、勇気を出して店長に話しかけてみた。
あたしの前に、スーツを着た男の人が、お客さんの対応をしてた。
店長は、感じのいい人で、スタイルも良くて、40代くらいかな。
あたしに気づくと、優しく微笑んでくれて、少しだけ緊張がほぐれた。
「何かお困りですか? 娘さん」
優しく聞いてきた。笑うと目尻にしわができるんだよね。
よし、シャ!深呼吸して、自信持って!
あの人、優しそうだし。
「えっと、こんにちは、店長さん。外の求人募集の看板を見て、もしよければ、あたしを雇っていただけないかなって…?頑張って働きます!約束します!料理もできるし、掃除もできるし、何でもできます!」
あたしの目に希望がキラキラしてるのが自分でもわかった。
胸がドキドキしすぎてやばかったけど、意外と声はスムーズに出た。
店長がニッコリしてくれて、希望の炎がさらに燃え上がった。
お願い、イエスって言って!
「あー、あの『求人募集』出して以来、けっこう応募があったんだけどね」
ってウインクされた。
あたしの顔、すごいことになってると思う。
ってすぐに「でも、君はすごく経験があるみたいだし、チャンスをあげようかな。明日、大学が終わってから、またね、娘さん」
って、優しい目で話しかけてきた。
あたしの心にズキンときた。
こんな風にあたしのことを見てくれた人、久しぶりすぎる。
でも、気を引き締めて、気がつかないフリをして、息を止めてたことに気づいて、ホッとした。
キラキラした目で店長を見て、感謝の笑顔を向けた。
「ありがとうございます!店長さん!本当に嬉しいです。絶対ガッカリさせません、約束します!本当にありがとうございます!」
敬意を払って言って、カフェを出ようとした。
あの時は、本当に嬉しかった。
久しぶりに、いいことがあったんだ。
もちろん、大学生活が始まったのも最高だけどね!
あとは、あのヘレナおばさんに、ここで働く許可をもらうだけ。
でも、たぶん無理だろうな。
あたしが自立する姿なんて見たくないし、いつもあたしをバカにしたがってるし。
家に近づくと、もう夕日が沈みかけてた。
暗くなり始めてる。
ちょっとパニックになってきた。
もう遅刻だし、もしジョンがいたら、あたしはいつものように『シャのケツを殴りまくるセッション』をすることになるし、それだけは絶対に避けたい。
あたしの視線は、抜け道の方に向いた。
あそこを通れば、大通りを通るよりも早く家に着けるかもしれない。
でも、今まで一度も使ったことないんだよね。
単純に、怖いから。
昼間でも暗いし、人がいないし。
それに、めちゃくちゃ不気味だし。
今日なら、間に合うかも。
でも、暗いんだよな!何かあったらどうするんだ?
いや、シャ!ジョンが怒るより怖いことなんてないんだから。
よし、今日だけあの道通ろう。
うん、今日だけ。
自分の中で葛藤したけど、意を決して、暗い路地に入った。
もうすでに怖くなって、入るんじゃなかったって後悔したけど、もう決めたことだし、仕方ない。
できるだけ早くそこから出ようと、足早に歩いた。
一歩進むごとに、心臓の音がどんどん速くなっていく。
何か悪いことが起こりそうな気がした。
出口まで半分くらい来たとき、突然、目の前に男が現れた。
あたしは息を呑んで、反射的に数歩後ろに下がった。
太陽は完全に沈んでて、あたりは真っ暗になった。
男は、ちょっと幅のある体格で、道を塞ぐように立っていた。
あいつは誰?
なんで、あんな怖い笑顔であたしに近づいてくるの?
逃げたかった。
叫びたかった。
でも、足が全然動かない。
まるで地面にセメントで固められたみたいだった。
男は、まだあの不気味な笑顔のままで、あたしの方に歩いてきた。
彼の目は、異常に輝いていた。
あたしに飛びかかってきて、腕を掴んできた。
あたしは叫んで、腕を振りほどこうとしたけど、彼は鋼のように強く掴んでて、腕が痺れ始めた。
あいつ、あたしをどうするつもりなんだろう?
あたしは必死に、抵抗しようとした。
彼の目を見て、あたしの防御は弱まっていった。
あの目は、今まで見た中で一番怖かった。
めっちゃ冷たい。
全く生気がない。
死んだみたいだった。
突然、風が吹いて、次の瞬間、男は文字通り空を飛んで、ゴミ箱に激突して、一緒に倒れた。
代わりに、もう一人の男が目の前に立っていた。
どこから現れたの?
彼は後ろを向いて、さっき地面に叩きつけた男を見つめていた。
地面に倒れた男は、怯えたように泣きわめいて、めっちゃ怖そうだった。
飛び起きて、ものすごい勢いで走り去った。
全部一瞬で起きたことすぎて、何が起きたのか、全然理解できなかった。
起きたってわかるのは、地面に倒れたゴミ箱を見た時だけだった。
気づいたら、涙が頬を伝っていて、弱々しい声が漏れた。
あたしの救世主である男が振り返ると、ケインだった。
学校のケイン。
彼の顔は、今まで見た中で一番怖い顔になってた。
でも、あたしに気づくと、目が優しくなって、あたしを抱きしめてくれた。
怖いなんて言葉じゃ言い表せないくらい、本当に怖くて、ケイン・ウィルソンの胸の中で号泣してた。
ケインの腕の中の温かさと安心感は、あたしをもっと泣かせた。
そしてすぐに、あたしは全部について泣き始めた。
両親がいなくなったこと、叔母の仕打ち、あたしの不運、孤独、全部。
あたしの中の悲しみと苦しみが限界に達して、爆発しちゃったみたいだった。
涙腺のコントロールを失ってた。
しばらくして、泣き止んだ後、永遠に感じられたけど、ケインがあたしから離れて、あたしの顔を見た。
彼の顔には、心配そうな表情が浮かんでた。
あたしにとって、知らない人の前で安心感を感じるのは、すごく新鮮だった。
「大丈夫? どこか怪我した?」
心配そうな声で聞いてきて、あたしの心は溶けてしまいそうだった。
自分の体のあちこちを見て、怪我がないか確認してる。
誰も、あたしが大丈夫か、心配してくれたことなんてなかった。
そう考えずにはいられなかった。
彼がものすごく心配そうにあたしの腕を診ているのを見て。
あたしは首を横に振って、震える息を吸い込んだ。
「うん!だ、大丈夫。あの、ありがとう」
あたしはどもりながら、自分の足元を見た。
何でここにいるのか聞きたかったけど、やめておいた。
もし彼がいなかったら、あたしはどうなってたんだろう?
もしかしたら、生きてなかったかもしれない。
死んでたかもしれない。
「あー、やばい!」
って小声で呟いた。
家に早く帰らないとジョンに殴られることを思い出した。
同じ日に2回も殴られるのは、シャ的には、ちょっと。
ケインは心配そうな顔で、あたしの頬に手を添えて、顔を上げた。
心臓がドキドキして、お腹の中で蝶々が飛び始めた。
彼の触れ方は、すごく暖かくて、すごく電気みたいだった。
顔全体から、足の指まで、衝撃が走った。
頬が赤くなって、バラ色のピンク色になった。
「大丈夫?」
彼はまだ、慣れないような優しい顔であたしを見ていた。
彼のハンサムな顔をずっと見てると、膝がガクガクしてきた。
「だ、大丈夫!ただ、家に帰りたいだけ。今日は本当にありがとう」
あたしは、できる限りの力でそう言って、歩き出した。
でも、数歩歩いた後、彼がついてきてることに気づいた。
振り返って、困惑した表情で彼を見た。
「何?」
彼の美しい顔、完璧な目、あの美しい唇を見て、あたしは混乱したー
やめろ、エロいこと考えるな!
「家まで送るよ」
彼は、何でもないように肩をすくめて言った。
あたしの言葉は、また今夜、何度も心臓をドキドキさせた。
あたしはただ頷いて、また歩き始めた。
彼は、あたしの隣を黙って歩いた。
叔母の家が見えてきたとき、あたしは止まって、彼の方を向いた。
「着いた。今日は本当にありがとう」
感謝を込めて言った。
「どういたしまして。いつでも」
彼は肩をすくめて言った。
そして、彼は笑った。
本当に笑ったんだ。
彼の笑顔は、彼の顔立ちをさらに際立たせてた!
そして、今日の朝学校で見た、あの陰気なケインとは全然違って、すごく綺麗だった。
あの笑顔は、百万ドルの価値があるね。
あたしはまた恥ずかしくなったけど、自分でも笑わずにはいられなくて、手を振ってさよならを言ってドアに向かって歩いた。
ドアを開けたとき、彼がもういないか確認するために振り返った。
でも、彼はまだそこにいて、あたしが入るのを見てた。
なんて優しいんだろう!
ドアを閉めたとき、まだ頬は深いピンク色で、ため息をついた。
リビングルームに忍び足で進んで、部屋にこっそり入ろうとした。
ヘレナ叔母さんやジョンが怒鳴りながら入ってくる声が聞こえなかったので、2人が家にいないか、あたしが入ってきたことに気づいてないと思った。
そう思ったんだけど、階段を上がろうとしたとき、リビングから囁き声が聞こえてきた。
2人があんなに静かに話すのは、すごく珍しいんだよね。
いつも近所の人に聞こえるくらい大声で話してるし、一度はジョンがヘレナに食べ物のことで怒鳴ってるのを聞いて、警察を呼んだりもしたのに。
好奇心には勝てなくて、2人がネズミみたいにこそこそ話してるリビングのドアに忍び寄った。
十分近づいたとき、ヘレナ叔母さんとジョンが話してるのが聞こえた。
「あいつは本当にムカつく!」
ジョンは歯を食いしばって怒鳴った。
いつものように、彼の声には怒りが滲んでる。
あたしのこと?
「もう我慢できない。あいつを見るたびに、あたしらのものを奪おうとしてるみたいだもん」
ジョンはさらに怒った口調で叫んだ。
どういうこと?
あたしが何を持ってるっていうの?
「落ち着け、息子よ。あいつに何もできないわけじゃないだろ。
ああ、あいつの名前もムカつく。シャ」
彼女の口調は、見下すようなものに変わった。
だからあたしのことなんだ。
あたしはほとんど目を回した。
あたしは、2人にとって何の役にも立たないのに、なんでこんなに憎まれてるんだろう?
「でも、心配しないで」
彼女は続けた。
「あいつがずっとうろついてるわけじゃないわ。あいつの両親を送り込んだところに、送ってあげるわ」
彼女の言葉はあたしの心を突き刺した。
まっすぐ、心臓を貫いて、粉々に打ち砕いた。
あたしの両親を殺したってこと?
あいつらが殺したってこと?
あの事故で死んだと思ってたのに!
つまり、あいつらは車をいじったってこと?
ブレーキを壊したってこと?
涙が頬を伝い始めた。
言葉が深く染み渡っていく。
あたしの心は、まるで千回も刺されたみたいに、とても苦しかった。
「もしあいつがいなくなったら?
もうずっとここに置いておくわけにはいかないだろ。もう大人だし」
ジョンは尋ねた。
悪魔みたいな笑い声が聞こえた。
まるで邪悪な魔女みたいだった。
ヘレナが笑ってるんだ。
彼女は、叔母って呼ばれるに値しない、ひどいビッチだわ。
「心配しないで、ダーリン。
もし逃げようとしても、殺してあげるわ」
まるで他人の命を奪うこと、両親を財産のために殺すこと、殺すこと自体が、何でもないことのように話した。
あたしの心は、彼女の残酷さに締め付けられた。
信じられない!彼女はそんなに落ちぶれてるなんて!
あたしはただ、この人たちが意地悪で残酷だと思ってたけど、殺人犯でもあったんだ!
あたしは、2人があたしが来たこと、自分たちの計画を聞いたことを知らないように、静かに自分の部屋に歩いて行った。
正直、あたしは自分が聞いたことを知られたら、何されるか怖かったんだ。
すごく臆病だってことはわかってる。
でも、どうすればいいのか、何ができるのか、全然わからないんだ。
証拠は何もなくて、ただ聞いたことだけ。
もしバレたら、すぐに永遠に黙らされるだろうし。
ハンナにも言えないんだ。
あいつらは簡単に、自分の血である両親を殺したんだから、関係ない人になんてことするのか、想像もできない!
最悪なのは、その人が、あたしが愛して、大切に思ってる人だった場合。
あたしはハンナのこと、よく知ってる。
あいつらはすぐに何かするだろうし、ジョンが何かを嗅ぎつけたら、すぐに警察の友達に、彼女を始末するように頼むだろう。
ジョンが犯罪で、友達に違法なことさせてたの、あたしは見てたから、警察との繋がりがあるってわかってる。
その夜、あたしは泣きながら眠った。
彼らから逃げる希望は全部消え去って、煙になってしまった。
あたしの空想の城は崩れ落ちて、痛々しく消えてしまった。
あたしは、いっそ殺された方がよかったかもしれない。
生きてたら、拷問されるだろうし、逃げようとしたら、即死するだろうし。
あたしは無力で、両親が殺されたことを証明することすらできない。
どちらにせよ、死ぬことだけが唯一の逃げ道だった。
もう未来への希望はないんだ。
だって、結局は、あいつらがあたしを殺すってわかってるから。
そして、あたしを助けてくれる人はいない。
*~*~*~*~*~*~*