第3章
ちょっとびっくりして、慌てて振り返ったら、さっきまで泳いでた子がもうプールから上がってた。
広い肩にタオルかけてて、膝丈くらいの黒いショートパンツ。
髪の毛はタオルでゴシゴシしたからか、あっちこっち向いてた。
「ライラだよ、新しいお隣さん。お花を見てただけ…」
たぶんめっちゃ引きつった笑顔で言葉を切った。
何か言ってくれるかと思ったけど、あいつはただ無表情でこっちを見てるだけ。
「名前、聞かなかったな」
気まずい空気を何とかしようと、そう言った。
「別に教えた覚えはないけど」
って、超失礼じゃん。
言い返そうとした瞬間、ポーリーヌが来た。
「オーウェン、そんな態度じゃダメよ。マナーはどうしたの?」
たぶんプールに沈めたんだよ。
「すぐに謝りなさい」
私はちょっと得意げに立って、あいつが謝るのを待ってたけど、そんなことはなかった。
そいつは家の中にズカズカ入って行っただけ。
「本当にごめんなさいね、あなた」
ポーリーヌは心配そうな顔で謝ってきた。孫のやったことに信じられないって感じだったのかな。
「謝らないで。きっとびっくりしただけだと思うよ。だって、いきなり裏庭に見知らぬ人がいたら、誰でもそうなるでしょ?」
ちょっと気まずそうに笑った。
もっと外に出た方がいいな。
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リビングのソファでパジャマ姿でくつろいで、リモコン片手に面白そうな番組を探してチャンネルを回してた。
今日はちょっと疲れちゃったんだよね。
お母さんとポーリーヌの家を出た後、他の近所にも挨拶に行ったんだ。
それから、必要な食料品を買いに行ったし。
「ライラ、ご飯作るの手伝って!」
お母さんがキッチンから呼んだ。ちょうどロマンチックコメディを見ようと思ってたところだったから、思わず「うっ」って声が出そうになったけど、我慢して立ち上がった。
キッチンに入ると、お母さんが野菜を切ってた。「お米、お願いできる?」
って、冷蔵庫からステーキを取り出して、キッチンの真ん中のカウンターに置いた。
「うん」
ステーキの横にあったお米の袋を取って、十分な量をボウルに入れた。
シンクに持って行って洗って、お鍋に入れて、水をたっぷり注いだ。
それから、お鍋をコンロに置いて、火をつけた。
「この辺、どう?」
って、お母さんはマリネしたステーキをオーブンに入れながら聞いた。
「うーん、あのオーウェン以外は、会った人たちはみんな感じ良いかな」
「でも、他の家に行ったとき、同い年の子がいなかったからかもしれない」
お母さんが何か言おうとしたけど、リビングからけたたましい電話の音がして、遮られた。
数分後、お母さんは携帯電話を持ってリビングに戻ってきた。
「ブリジットからだった。引っ越しの様子を聞いてきたの」
「また旅行するの?」
「ううん、まだだけど、そのうち行かないと。仕事だから」
って、お母さんは優しく言った。
ご飯ができて、お母さんと私は夕食を食べながら、いろいろ話した。
食べ終わった後、私が皿洗いを申し出て、お母さんはおやすみって言ってくれた。
お皿はそんなに多くなくて、思ったより早く洗い終わった。
寝る前に、全部の部屋の電気を消した。
寝室の窓を閉めようとしたとき、オーウェンがプールに飛び込むのが見えた。
あいつは何かおかしい。
だって、もう真夜中近いのに、ほとんどの人は寝る時間なのに、泳いでるんだもん。
もし暑かったらわかるけど、外は寒いし。
もしかしたら、トレーニングしてて、プールでクールダウンしてるのかもしれないけど。
別にどうでもいいんだけど、あいつは今日私を困らせたし。
カーテンを閉めて、ベッドサイドテーブルから本を取った。
2ページしか読んでないのに、まぶたが重くなってきた。
本を置いて、今日はもう寝ることにした。