第29章
ザナヤのPOV
一週間経ったけど、まだ彼の連絡がない。
あの夜泣いた後、私は彼をまだ信じて、彼の言うことを聞こうって決めたんだ。
何かあるはずだよ。
セスが私にそんなことするなんて、簡単には信じられない。
だって、もし本当にそんな悪い人だったら、結婚してすぐにしてるはずだし。
まだ、彼は私にそんなことしないんじゃないかって気持ちがあるんだ。
彼なら、私をそんな風に傷つけたりしない。
でも、彼から何も連絡がない日が続くほど、希望は薄れていって、心が落ち着かなくなっていくんだ。
みんなが私のこと心配し始めてるってわかってた。
「ね、ザヤ、遊びに行かない?」
私にニヤニヤ笑いながら話しかけてきたのは、東京だった。
彼女の言う「遊び」ってのは、文字通りゲームのことじゃないんだよね。
何か別の意味。
私は彼女をちょっと見つめてから、ため息をついた。
まあ、いいや。
私はさっと立ち上がって、部屋で着替えることにした。東京の騒ぎ声はドアを閉めてても聞こえるから、耳を塞がないと。
「ちょ、東京!やっと寝れたのに!」
マックスの声が寮中に響き渡って、私は笑った。
「ごめん、マックス!愛してるよ!」
東京が叫んだ。
「私も愛してるよ!もううるさい!」
マックスが叫び返した。
口元が緩んだ。
少なくとも、私を笑わせてくれる友達はまだいる。
黒いパンツに、だぼっとしたストライプのシャツを前だけインして、外は寒いからコートを羽織った。
眼鏡をかけて、キャップをかぶり、マスクは手に持った。
斜めがけのバッグを持って部屋を出ると、東京が私とほぼ同じ格好で立っていた。彼女のシャツは黒だったけどね。
「行く?」
彼女が私の腕に手を回して聞いてきた。
「カリは?」
私が尋ねた。
東京は肩をすくめた。「マックスみたいに寝てるんじゃない?」
私たちは外に出た。
今日はスケジュールがないから、ゆっくりできる日なんだ。この後、またアワードショーに出なきゃいけない。それがだんだん嫌になってきてる。セスに会うのが、今はまだ自信がないから。
デビューしてから、私たち、あまり出かけなくなったけど、私たちと友達はこっそり抜け出すのが習慣で、今まで一度も捕まったことがないんだよね。
たぶん、人や場所に溶け込む才能があるんだろうし、もしかしたら、まだそんなに有名じゃないから、私たちだって気づく人も少ないのかもしれない。
まあ、それでも、少しは楽しめるかな。
最初に向かったのは、私たちがまだ練習生だった頃からよく行ってたレストラン。
アジュンマが私たちを見て笑った。
「久しぶりね、みんな!私のこと忘れたかと思ったわ。」
彼女は不機嫌そうだったけど、キャップとマスクをしてても私たちだって気づいてくれて嬉しかった。
「アジュンマァ…」
東京は甘えた声を出した。
東京はいつも甘い声を出してる。私がそうだって言われるけど。
もしかしたら、私たちはネイティブじゃないから、声が高くなりがちだからかもしれない。海外育ちだし。
「はいはい、いつもの席に行ってて。注文は誰か持っていくわね。いつものでいいんでしょ?」
彼女は微笑んだ。
私はサムズアップした。
「最高のアジュンマ!大好き!」
東京と私は、いつものハートマークを作って見せた。
彼女は首を横に振って、私たちはテーブルまで笑いながら向かった。
学校がまだ休みじゃないから、レストランはそんなに混んでない。それに、ここのお客さんは、あまり他人のこと気にしないんだよね。
席に着くと、東京はマスクを外して、いたずらっぽく私に微笑んだ。
「次どこ行く?ショッピング?ゲームセンター?」
私は彼女の熱心さにくすくす笑った。
東京と一緒だと、どんな悩みも忘れられるんだよね。
「どっちも行けるね。新しい服買わなきゃだし、あのシューティングゲームでのリベンジもまだだし、ずるいんだから!」
私は彼女を睨むと、彼女は笑った。
数分後、アジュンマが私たちの食べ物を持ってきた。
「アジュンモニ、私たちのこと恋しかった?」
東京は唇を尖らせて、私は笑いをこらえるために口を手で覆った。
「そうでもないわよ。いつも騒がしいんだから。それに」
彼女の視線が私に注がれる。「彼氏がいるっていう記事、見たけど、本当?」
私は思わずツバを飲み込んだ。
「あ、もちろん違いますよ、アジュンマ。」
嘘をついた。なぜだかわからないけど、セスのことを人に話すのが、なんだかできなかったんだよね。
彼女は頷いた。
「私もそう思ったわ。ありえないって。だって、あの人は明らかに誰かと付き合ってるもん。」
彼女が付け加えた。
「え?」
どうして、みんな私に彼が誰かと付き合ってるって言うんだろう?
そんなにバレバレで、私だけバカを見てるの?
東京は心配そうに私を見た。
「そうよ。あの人は、以前から彼女と常連だったんだけど、去年から来なくなっちゃったのよね。でも、最近また一緒に来るようになったから、ちょっとびっくりしちゃった。」
彼女がそう言うと、私は喉に何か詰まったような気がした。
いつも、世界中で私とセスだけだったのに。どうして?
「さっき来てたって?」
東京が尋ねた。
アジュンマは頷いた。「そうよ。あなたたちが来る少し前に。でもね、ケンカしてるみたいだったのよ。」
私は怒りで拳を握りしめた。
アジュンマは私の沈黙に気づいたのか、私を見つめていた。
「ザナヤ、大丈夫?」
私は顔を上げて彼女に微笑んだ。
「もちろん、アジュンマ、心配しないで。アジュンマの料理、本当に恋しかったんです。」
私は料理を褒めて、彼女の注意をそらした。
彼女は腕を組んだ。
「でも、マックスとカリは一緒じゃないの?」
「ああ、寝てるの!」
東京が楽しそうに付け加えた。私はもう食べる気にならなかった。
だから、彼はデートしてるから、私に連絡してこないんだ。
私はすごく心配して、最後まで彼を信じてたのに、彼は彼女と「ガールフレンド」とご飯を食べてたんだ。
私は食器を強く握りしめた。
これが、セス・デボンのやり方?
「ザヤ、大丈夫?」
東京が尋ねてくるのが聞こえて、私は彼女を見た。もう、こんなドラマにはうんざりだった。
「大丈夫じゃない。泣きたいけど、泣かない。ここで泣けない。でも、あなたがいるから、彼のことは何も聞いてないことにして、一度だけ、彼のことを考えずに一日過ごしてみる。」
私は勇気を出してそう言うと、東京はサムズアップしてくれた。
東京がこんな変な子で本当に良かった。
私たちは目の前の料理を一緒に楽しんで、数分後、アジュンマにお別れを言った。
「またすぐ来ます。約束するよ!次は4人で行こうね!」
東京と私は、彼女に再びお辞儀をして約束した。
その後、私たちは通りの向こう側にあるショッピングモールに向かった。
失恋した女の子は、ドレスを買うものなんだ。
東京と私は、試着室で順番に、自分用の服を試着した。
そう、パフォーマンスで着るドレスは、私たちのものじゃないんだよね。
私は3着見つけることができて、東京は5着。
さすが、彼女は買い物依存症。
今回はマックスがいなくて、本当に良かった。じゃないと、また1時間くらいモールにいたかもしれないからね。
「ねえ、家帰る前に、コーヒーでも買って行かない?」
東京が提案し、私たちは人通りの少ない角を曲がった。
そうじゃなければ良かったのに。だって、サリーとセスが一緒に歩いているのが目に入ってしまったんだ。
セスは地面を見ていて、サリーは笑っていた。
だから、彼らは毎日デートしてるの?
私の心臓は一瞬止まった。
彼らを実際に一緒に見て、心が以前よりもさらに10倍も傷ついた。
肺が機能しなくなって、息ができなくなる気がした。
東京は心配そうに私を見て、その瞬間、セスの視線が私に注がれた。ショックを受けた顔が明らかだった。
私たちはみんなマスクをしてるけど、それでもお互いを認識できるんだよね。
サリーの視線も私に注がれて、彼女の笑顔は消えた。
セスは心配そうな顔をして、私は彼に叫ぶのを我慢しなければならなかった。
彼は私の方に向かって歩いてきたかったみたいだけど、サリーが彼を止めるために腕を掴んでいるのが見えた。
そして、彼は止まった。
胸に鋭い痛みを感じた。
彼は止まった。
もし私に来たかったら、彼女の手を放して走ってくるべきだったんだ。
でも、彼はそうしなかった。
私はバカじゃない。彼は彼女を選んだんだ。私じゃなく。
だから、決めたんだね。
叫びたかったけど、私は我慢した。
ダメ、ザナヤ、あなたならもっとできる。泣かないで。もう泣かない。
大丈夫。結局のところ、もう私には扱えないようなことはないと思う。
私はため息をついた。
私は東京を見て微笑んだ。
「行こう?」
私は彼女の腕を引っ張って、前に進んだ。
もしこれが彼の望みなら、私は受け入れよう。
視線は前だけを見て、彼らのことは見えてないふりをした。
見ないで、ザナヤ。ダメだよ。
私たちが彼らの前を通り過ぎようとしたとき、彼が私の腕を掴んだのを感じた。私は一瞬止まらざるを得なかった。
「ザヤ」
彼はささやき、声に切望を感じた。
強くあれ、ザナヤ。屈するな。
私は彼を見つめ返し、私の目にはもはや感情は何もなかった。
私は彼の手を腕から放して、少しお辞儀をした。
「間違ってるんじゃないですか。すみません、行かないと。」
そして、東京と私は前に進んだ。彼らから遠くへ。私の心が粉々になることから遠ざかった。
ここ数週間、彼は私の強さであり弱さでもあった。
結局、残ったのは痛みだけ。
人生には、どんなに望んでも、手放して諦めなければならないものがある。
そして、私は彼を自由にすることで、自分自身を自由にする。
私が前を歩くとき、涙が私の目からこぼれ落ち、東京が私の注意を引こうと絶え間なく試みていることにも、すべてを忘れて、気にも留めなかった。
彼なしで20年以上生きてきたんだから、きっと一人でも生きていける。
どんなに辛くても。
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