第33章
ザナヤのPOV
足がガクッときて、手首を掴まれた。
助けを求める叫び声をあげる前に、体が壁に叩きつけられた。
痛いかなって思ってたんだけど、背中に腕が回ってて、完全に壁に激突しなくて済んだ。
誰か確認しようと顔を上げたら…
…後悔した。
セスの唇が、飢えたように私の唇に食らいついてきたから。
強引で、すごく欲しがってる。
不意を突かれて、舌が中に入ってきた。
一瞬、怖くなったって言ったら嘘になる。
でも、相手はセスだから、最初感じた恐怖は、あっという間に消え去った。
でも、一番ムカつくのは…彼を止めたいと思わないこと。
クソ。
めっちゃ会いたかったんだ。
すぐに、動きがゆっくりになって、優しく、情熱的にキスしてくれる。
認めたくないけど、この数週間、彼を避けようと必死だったのに、結局、彼の触れ合いやキスには、いつも屈しちゃうんだよね。
そう思ったら、感情が溢れてきて、目から涙が溢れてきた。
なんでこんなことするの、セス…?
私が泣いてるのに気づいたのか、すぐに顔を離して、唇はもう重ならない。
引き戻したい気持ちを必死に抑えた。
「ザナヤ…会いたい…」
声が震えて、額が私の額に触れる。
頬を伝う液体に気づく。
泣いてるの…?
「ファンタスティックトリオ」のゲスト出演のインタビューがあったんだけど、どうやって私を見つけたんだろう。
「電話に出ないし、避けられてたから…話したかったんだ」
彼が呟いて、泣かないようにするのに喉が痛い。
一体どんなゲームしてるの、セス…?
「話すことなんてないでしょ。あなたが選んだんでしょ、なら貫きなさいよ」
そう言って、彼を突き放そうとしたけど、代わりに腕が私の体に巻き付いて、強く抱きしめられた。
その瞬間、私たちが別れてからずっと待ち望んでいた、あの慣れ親しんだ感触に、心臓が激しく鼓動し始めた。
「僕を信じてって言っただろ?お願い、ザナヤ、このことだけは信じてほしい」
彼は懇願し、声は震え、涙が頬を流れ続けている。
なんでこんなに苦しんでるの…?
「じゃあ、何が起きてるのか教えて」
そう言うと、彼は罪悪感に満ちた顔で私を見た。
「ほら?セス、お願い…もう無理なの。私を信じてほしいなら、なんでか説明してくれないと」
私の声には痛みがあり、自分の耳でもそれがわかるほど。
「これは解決する。信じて。必ず。ボスが良くなるまで待ってて。約束があるから何も言えないけど、お願い、君を失いたくないんだ。絶対に」
彼は声を詰まらせ、私を強く抱きしめた。
「もう失ったでしょ」
そう言ってしまった言葉を後悔した。彼の美しい顔に痛みが走ったから。
もう失ったって言ったけど、そうじゃないってわかってた。
「違う!」
体の力が抜けていくのを感じた。
すべての痛み、涙、そしてずっと心の中に溜め込んできた憧れが、セスの心が壊れていくのを見て、私の体のシステムをスローダウンさせているように思えた。
セスは、一体どれくらい前から連絡を取ろうとしていたんだろうか。私はすべての電話とメッセージを無視していた。
寮に来ようとしたけど、女の子たちに彼を入れさせないようにした。
あらゆる手段で彼を避けようとしたのに、それでも彼は私を捕まえることができたんだ。
少し彼を引っ張ってみると、彼の姿に息を呑んだ。
目は腫れ上がり、頬には、私が触るのが大好きな脂肪がなくなって…
明らかにすごく痩せたけど、それでも、めっちゃイケメンだった。
「あなたに何があったの?」
そう言って、両手で彼の顔を包み込み、涙を拭ってあげた。
目の下にクマができてる。
「ザヤ、約束して。もう僕を避けないでって。電話とメッセージには必ず出てくれって」
彼はそう言って、少し口を尖らせた。
「もうデートは行かないで」
え?どうしてそれを知ってるの…?
混乱した私の目に気づいたのか、彼は少し咳き込んだ。
ていうか、ちょっと熱いんだよね。マジで。
「スカイと僕が尾行したんだ」
私は目を見開いて、やっと理解した。
「変だと思ったんだ!」
私は息を呑んだ。「変なメガネとカツラの男の人、あれスカイでしょ?」
って、もう答えは分かってるけど。
スカイがわざとウェイターにぶつかって、料理をヨハンにぶちまけさせたことを思い出すと、顔が赤くなった。
あの件では本当に申し訳なくて、今でも彼に謝る勇気がないんだ。あの日の出来事はすべて大惨事だったから。
でも、セスとスカイがそんなことしてたって知って、セスが嫉妬してるって思ったら、なぜか嬉しくなっちゃう。
実際、デートじゃなかったし。
音楽に対する興味につて話しただけで、次のアルバムでコラボしないかって誘われただけなんだ。
「あいつがどんなに酷いことになっても構わない。もう他の男とは一緒に出かけないでくれ。必ず捕まえるから」
彼の声は厳しく、私は面白そうに彼を見た。
「セス、あなたとサリーがデートするんでしょ?」
そう言った。
「あれは違うんだ!彼女とは行きたくない!」
彼は叫んだ。
「じゃあ、なんで行くの?」
私は、そこから少しでも答えを引き出そうとした。
「行かなきゃいけないんだよ!」
苛立ちが声に表れてる。
「彼女が元カノだったって、言わなかったよね」
そう言って、がっかりした。
「そうじゃないんだ。最初は理解し合ってて、何回か会って関係を進めようとしたけど、そうはならなかった。誓うよ。ただの友達なんだ」
私は彼が言ったことに眉をひそめた。
「でも、彼女にとっては、ただの友達じゃないと思うけど」
そう言うと、彼は首を振ったから、私はもっと混乱した。
「それで、このショーは何なの?」
私が何をしようとしてるのか分かって、彼は唸った。
「全部は言えないけど、この問題を解決したら教えるよ。約束する」
彼の顔から手を離し、ため息が漏れた。
「私を信じてほしいなら、明らかに私たちに関わってることなのに、私を信じてくれないのね」
そう呟くと、彼は会話がどこに向かっているのか理解して、抱擁を緩めた。
「ザナヤ…」
彼の切ない瞳が私を見つめ、まだ涙が滲んでいる。
「しっかりして、セス・デボン。自己反省して、自分の優先順位を確認して。いつも私が信じてるわけにはいかないの。これは一人だけのゲームじゃないんだから…」
そう言って、感情を抑えようと唇を噛んだ。
「私に少しは希望を持たせてくれない?」
そう言って、彼の腕を完全に私から離した。
また、少し空虚な気持ちになった。
分からないけど、いつもこうやって抱きしめ合ってるのに、慣れてきちゃってるんだ。
服を直しながら、彼を見た。彼は地面を見て、深く考えてる。
ため息が漏れて、私の手は彼の右頬に伸びた。
「やるべきことをやりなさい。でも、そんなに長く待つことにはならないで。もう限界があるの。私も自分を守らなきゃいけないから」
そう言ってから、軽くハグをした。
もし選べるなら、いつまでもこうしていたいけど、無理なんだ。
彼には、そうする理由があるって言ったのは正しかった。
彼が私を信じてくれることを願うだけ。そうすれば、一緒にこの灯火を抱くことができるのに。
一人で全部解決することはできないんだから。
結婚したときから、私たちはチームだった。
彼も私を信じてほしい。私が彼を信じるように。
どんなに泣いても、どんなに傷ついても、私は彼を諦めなかった。
諦めることもできたのに、結局、ボートの下に私を置いていった後でさえ、私の心はいつも彼を信じることを選んだ。
でも、今回のちょっとした出会いで、彼をまだ失っていないんだって希望を持てた。
彼を置いていく前に、彼の唇にキスをした。
あなたは物事を解決しなきゃいけない、セス。そうしないと。
私たちが経験してきたこのドラマから学んだことは、自分を愛することなんだから。
そう、女の子は自分自身を愛さなきゃ。
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