11 ゴブレットの中の嵐
巨大なモンスターみたいに、アポストリスは海を走ってた。ストラトス湾から2万スタディアも離れた場所、果てしない海への危険な旅だった。キンハイムの他の船じゃ、こんなこと自慢できないよ。
波は急に高くなって、空に届こうとしてるみたいだったけど、その船は傲慢に波の上を進んでた。とんでもない大きさの船で、長さは190フィート、貨物室は2000トン以上もあったんだ。
900人もの人が乗れるし、船の下には集会所とか食堂もあった。ペガサス用の個室が20個もあってさ。芸術作品みたいで、像とか彫刻、アイオンの神殿、パンクラチオンの練習ができるジムもあったり。食料とか飲み物、その他の配給品は1年分も貯蔵できる倉庫もあったんだ。最高の麻と革を使った豪華な部屋は、金で買える最高の贅沢だった。
マイロンっていう神聖な建築家が設計して作った船で、最高の金属、エキゾチックな木材、大理石で作られてた。船の骨組みはアダマンタイト製。一番重要なのは、マイロンっていう、降格されたタイタンが神聖な力で守ってくれてたこと。嵐とかハリケーン、竜巻にも耐えてきたし、海の巨大生物の攻撃にも耐えられるように作られてたんだ。
アポストリスは41回目の航海に出発して、200人の乗客がいた。そのうち15人は城塞から、185人は貴族の街、モドから来た人たち。金品と引き換えに、裕福な貴族とか、ちょっと神っぽい人たちが神々と一緒に過ごすことが許されてたんだ。モドの人たちは、船に乗って宿泊するために、1万ゴールドと、それ以上の現物を提供したんだって。
神-プライムのネルヴァは、船の船首像に手を置いて、船首甲板に立ってた。その彫刻は、金で覆われた4本指の拳だった。女神は身長6フィートで、ウールの船乗り服を着てた。
北の方で嵐が近づいてきてた。暗くて恐ろしい雲が、空のクラーケンみたいに、こっちに向かってきてる。波はどんどん荒れてきて、完璧な嵐になりそうだった。プリンケプスとか、モドの代表者たちがネルヴァの後ろに立って、迫りくる自然の脅威に圧倒されてた。
神々はペトロマックスの金と白の服を着てて、貴族たちはプロイセンブルーを着てた。
「彼のプロビデンスはもうすぐ戻ってくるのか?」神-プライオリのドルーが尋ねた。プリンケプスとモドの市民も同じことを思ってたけど、ネルヴァに尋ねる勇気はなかった。
彼女は冷酷で短気だってことで有名だったんだ。一度、城塞でペトロマックスの玉座に触ったプリンケプスを、誰もいない時に、死ぬほど殴ったことがあったんだ。ネルヴァは、揺るぎない規律を求める女神だった。自分にも部下にも容赦なかったんだ。だから、ペトロマックス家のプライオリとプリンケプスは、几帳面で効率的だってことで有名だった。
「嵐のせいで感覚が邪魔されて、彼の存在を探ることはできないわ」彼女は無愛想に答えた。プライムたちはタイタンに一番近くて、最初に神性を与えられた人たちだったんだ。主との繋がりが強くて、遠くからでもタイタンの存在を感じて、気分を測ることができたんだ。
ペトロマックスは、伝説の海のモンスターを探すために航海を始めたんだ。6日間も果てしない海を旅したあと、彼は突然船を捨てて、北に向かって飛んでいったんだ。彼がいなくなってからもうすぐ1日経つけど、モドの人たちは心配し始めてた。不吉な嵐の兆候も、彼らの不安を煽ってた。
「これはひどい嵐になりそうだな」モドの市民、バシラスが言った。「アポストリスは、この嵐を乗り越えられるのか?」
ネルヴァは、その質問に答えることもしなかった。もしペトロマックスが禁じてなかったら、彼女は不遜な貴族の頭を潰してただろう。人間と混ざり合わなきゃいけないこと自体、恥ずかしいことだったんだ。神-プライオリのカリックスが怒って頭を振ると、鋭い風がモドの市民の顔を叩いた。「タイタンの力を疑うのか?」
バシラスは痛む顔を覆い、深く頭を下げた。
「アポストリスは、我らが神-王マーカス・ペトロマックスの守護下にあり、マイロンの神性を宿している」カリックスは宣言した。
「申し訳ありません、あなたのプライオリシップ」バシラスはうめいた。「嵐の激しさに動揺して、ただの人間である私は、一瞬我を忘れてしまいました」
カリックスはうなずき、謝罪を受け入れた。
「あなたのプライムシップ、よろしいでしょうか」神-プライオリのイリスがネルヴァに尋ねた。「マイロンがタイタンの地位から降格された主な原因は何だったんですか?」イリスは、城塞の図書館で歴史とか工芸について読んで過ごす、好奇心旺盛なプライオリの一人だった。
ネルヴァはため息をついた。確かに、それはデリケートな話題だった。でも、不幸な出来事が起きてから、もう1世紀も経ってる。マイロンと彼の失脚については、千の噂が飛び交ってた。女神は、他の神々やモドの市民の前で真実を話しても、害はないだろうと考えた。それに、迫りくる嵐と荒れ狂う波が、彼女を少しだけ優しくさせてた。
「始まりには、6人のタイタンがいた」ネルヴァは物語を始めた。「ペトロマックス、マイロン、エレクトラ、アナクシマンドロス、ベオウルフ、モルフェウス。ペトロマックス、エレクトラ、アナクシマンドロスは、セラフィムのティタス・ルシファーの血筋。マイロン、ベオウルフ、モルフェウスは、セラフィムのベクター・カーンの血筋」
「彼のプロビデンス、マーカス・ペトロマックスとタイタンのアマデウス・モルフェウスは、一番の親友で、一緒に戦いや遠征を率いたんだ。彼らは、最悪の時代にアセンダントを強化した二重存在だった」
「およそ1世紀前、キンハイムの土地に、冥界から呪いが現れたんだ。約束を破る神、ホルクスが私たちの世界に足を踏み入れた。彼は、ルシファーとカーンの子孫が作った神々を殺すことができる腐敗をもたらしたんだ。彼は冷酷に何百人もの神々を殺した」
「その悪者は、私たちがまだ口に出すことを恐れている冥界の女主人からの暗い命令を果たしていたんだ。ペトロマックスとモルフェウスのリーダーシップの下、アセンダントはホルクスの暗い軍隊への攻撃を開始した」
「私たちが勝利目前だったとき、マイロンが作った金属の巨人、コロッサイがホルクスの腐敗に感染し、神々に牙をむいたんだ。私たちの軍隊は大きな損失を被った。モルフェウスは、他のタイタンを守るために命を落としたんだ」
「多大な努力の末、アセンダントは戦争に勝利し、ホルクスは倒された。でも、犠牲は大きすぎた。神々はモルフェウスの犠牲に深く心を痛め、マイロンを死者の原因として非難したんだ。彼の失敗に対する罰として、他の4人のタイタンは、彼らの力を合わせてマイロンからタイタンの本質を剥奪し、それを隠したんだ」
「それ以来、彼は城塞で建築家として、残りの神性を使って働いている。でも、彼は創造を通して神聖な天才であり続けている。そして、強力な船、アポストリスは、そのことを思い出させてくれるんだ」
ネルヴァが物語を終えて、聴衆の方を向くと、他の神々は活気づいているように見えた。同時に、モドの人々は魅了されて固まってた。彼らは噂を通して大まかな概要を聞いたことはあったけど、これは出来事がどのように進んだのかを、それらを目の当たりにした神-プライムから直接聞いた初めてのことだったんだ。
風は強くなり、帆は荒々しいスタッカートを刻んだ。波は復讐のように船に打ちつけ、アポストリスはうなり声をあげてきしみ、人間の背筋をぞっとさせた。小雨が帆とデッキを濡らした。
突然、ネルヴァは船首甲板の北西の方を向いた。彼女は遠くになにかを感じたんだ。強力な神の、おなじみの激しい本質を。
「帰ってきた」
彼らは、船に向かって突進してくる小さな点が見えた。それは大きくなり、巨大な岩になった。人間の群衆は楽しそうにつぶやき始めた。風と塩水を通して、ある音が聞こえた。響き渡る笑い声。その振幅は、岩が近づくにつれて高まった。
その飛んでいる瓦礫の上に立っている人物がいた。祝福するように叫んでいた。岩は船に到達し、その上を漂った。それから、腰のデッキに降りて、大きな音を立てて着地した。
ネルヴァを先頭に、神々と人間たちは、着陸地点に駆けつけた。
岩の上に立っている男性は下船した。彼は巨大な体格で、身長は7フィート半以上あった。巨大な岩が小さく見えるほどの筋肉質で、マーカス・ペトロマックスは見るべき記念碑だった。彼は長く流れるひげを生やし、太い眉毛の下には大きな茶色の目があった。
彼は448歳で、すべての神の中で最年長だったけど、40歳くらいの男の姿をしていた。彼の笑い声は、船のホール全体に響き渡った。他の神々と人間のゲストを悩ませていた迫りくる嵐の不安は、まるで存在しなかったかのように消え去った。彼らは、生ける世界で最も強力な存在、神-王、マーカス・ペトロマックスの前にいたんだ。
「見つけたぞ、ネルヴァ」彼はプライムに大声で言った。「カリュブディスを見つけたんだ」