第25章 シミュレーション戦闘
アダムは二回目のシミュレーションはしなかった。
あの結果は三位だったからね。
別に一位になれないわけじゃないけど。
一位になるのはめっちゃ簡単。
戦艦三隻をくっつけちゃえばいいんだよ。エネルギーシールドを重ねて、最強の防御できるし。
海面にめっちゃ近いとこを飛んで、水のシールドも作れば、ダメージなしで勝てちゃう。
そうすりゃ、パーフェクトスコア取れるし。
でも、別にそんなことしても意味ないんだよね。
だって、いつもこんな地形とは限らないし。
似たような戦術は万能じゃないし。
それに、三位でもエントリーできるんだから、十分じゃん。
シミュレーターから出た。
ちょうど出ようとしたら、キチッと決まった格好をしたおっさん二人が両側に現れたんだよ。
「なんか用?」
「んー、別に。たださ、お前にちょっと聞きたいことがあって。お前みたいなクソガキが、こんな試験受けに来るなんてさ。司令官は、お前みたいなクソガキが相手にできるもんじゃないって、思ってんのか?」
「難しんすか?」
アダムの言葉に、そのおっさん二人は思わず笑っちゃったよ。
「ガキ、調子乗ってんな。司令官試験を舐めてんのか」
「もしこれ、他の奴らに聞かれたら、ボコボコにされるぞ」
「マジで。こんな若い年齢で司令官試験受けに来るなんて。もしかして、天才気取りか?それとも、俺たちみたいに努力してここに来た奴らのこと、みんなクズだと思ってんのか!」
声が大きくなったから、当然周りの奴らの視線を集めることになった。
隅っこで、ちょっと嫌そうな顔して見てた女の子が、そっぽ向いてどっか行っちゃった。
アダムはちょっと困惑。こいつら頭おかしいのかよ。
なんでこんなにイライラしてんだよ。
別に、お前らのやり方とか、アダムには関係ないじゃん。
「終わった?邪魔だからどけよ。お前らと話す気ないし」
「なんだと!ガキ、生意気な口きくんじゃねえ。お前に正しい態度ってのを教えてやるんだよ。若いからって、年寄りを舐めてんじゃねえぞ」
「なあ、お前みたいなルーキーは、俺らの指導なしじゃ決勝にも行けねえんだよ。来年も灰になって試験受け直したいんだったら、ちょっとは誠意見せろよ。俺らの経験をお前に分けてやることもできるぞ」
アダムは、そのうちの一人を突き飛ばした。
「いらねえよ。マジでクソ野郎ばっか。お前らに教わる資格なんてねえし、自分の価値も分かってねえんだろ」
おっさん二人は激怒して、シミュレーターのケースを思いっきり殴った。
「クソ、生意気な。後でどんな目に遭うか見とけよ!」
ルーキー・スレイヤーズには、相手を落とす方法は山ほどあるんだ。
だって、決勝は乱戦だし。
試験をクリアできるのは、最初の六十人だけ。
不公平だって文句言っても、しょうがない。
この世に公平なんてないんだから。
戦場で火炎放射とか、よくあることだし。
だから、運みたいなものも、試験の一部として考えられてるわけ。
二日があっという間に過ぎた。
この二日間、アダムはなにもしなかったけど、代わりにこの海賊システムの正しい使い方を勉強してた。
このシステムが提供できるハイエンドなものって、基本的には図面なんだよね。
完成品はそんなに多くないし、あったとしても数が限られてる。
将来的に必要な資源の量は、絶対少なくないだろうし。
じゃないと、あんなデカい戦艦は作れないし。
ネットの情報と比べてみたけど、この図面は見当たらなかった。
つまり、これらの軍艦は全部特別なモデルなんだよね。
具体的な性能も、市販されてるやつより強い。
将来、これらのことを全部理解した時、アダムが持ってる戦闘力は、同じ数でも、相手を簡単にぶっ潰せるレベルになるだろう。
その時、ドリスが服を持ってきてくれた。
小さい頃からずっと、こんな感じでアダムの世話をしてくれてたから。
まるで、時間が巻き戻ったみたい。
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
「うん。わかってる」
アダムの後ろ姿を見ながら、ドリスはちょっと笑った。
あのバカも、やっと成長したんだな。
素晴らしい男になったし。
今度、おばさんやおじさんに会った時、アダムのこと、ちゃんと分かってくれるといいんだけど。
t5レッド・スパイダー指揮艦が起動した。同じモデルのt3フリゲート二隻も、一緒に宇宙へ。
今回の決勝の場所は、第六惑星軌道上。
大小さまざまな流星や塵でいっぱい。
レーダーが干渉されて、操縦がめっちゃ難しくなる。
だって、複数の船を同時に操縦しなきゃいけないから、難易度が段違いに上がるし。
ランダムに振り分けられて、完全に違う座標になる。
今回は、その惑星の黄道面からわずか1キロメートルの範囲で戦うことになる。
設定された範囲を超えたら、失敗になる。
自発的な降伏なんてのは、存在しないことだし。だって、これはガチバトルだし。死にたくなかったら、自分の判断で外に逃げればいいんだ。
アダムはレーダーで他の戦艦をスキャンした。
指揮艦の中には、戦艦を1隻持ってきたのもいれば、アダムみたいに2隻持ってきたのもいる。
3隻に達してるのは、5人以下。
でも、年齢もバラバラ。
長年の脳力訓練を経て、やっと到達した人もいれば。
若い頃から才能がある人もいる。
比べたら、絶対に若い方が伸びしろがある。
突然、通信が入ってきた。
ちょっとビックリ。
だって、アダムはここにいる人のこと、誰一人知らないし。
スクリーンが点灯した。
画面には、女の子が一人現れて、一言だけ言って通信を切ったんだ。
「気をつけろ。あのルーキー・スレイヤーズが狙ってるぞ」
画面が暗くなり、アダムはちょっと困惑。
ルーキー・スレイヤーズってなんだよ?
誰がアダムのこと狙ってんだよ?
指定された場所に到着し、片側に黄色の大気がある惑星を見た。
その惑星は硫黄含有量が高くて、改造する価値すらない。
工業原料としてしか使い道がない。
こんな惑星はたくさんあるし、最終的には荒れ果てた死んだ惑星になる運命だし。
突然、さらに二つの通信が繋がった。
ちょっと見覚えのある、おっさん二人の顔が現れた。
「ガキ、びっくりしたか?まさか俺たちだとは思わなかっただろ?」
「なんか用?」
「おい、自己紹介するの忘れちまってたな。俺たちのこと、ルーキー・スレイヤーズって呼んでくれ」
「そうだ、お前の思ってる通りだ。俺たちは、認定のためじゃなくて、お前みたいな経験の浅いルーキーを狙ってんだ」
「本当は、お前に俺たちを敬わせるチャンスをあげたかったんだがな。お前は全然、そういう気がないみたいだから」
「だから、今回の試験で、俺たちが最初にお前みたいなクズを片付けてやるよ。あの連中に、俺たちに逆らうとどうなるか、よーく見せつけてやる」
「あいつらの金がどれだけ無駄だったか、思い知らせてやるよ」
「俺たちの踏み台として、最後の瞬間を楽しめよ」
そう言って、通信を切った。
アダムはちょっと呆れた。
なんなんだよ、これ。
恐喝、三級男爵を脅迫だって。へー、これは結構クリエイティブだな。
でも、報告しても意味ないし。
だったら、アダムからの悪意を味あわせてやるしかない。
「チタン電磁アクティブアーマー、起動」
「指向性電磁パルス兵器ジャミング、起動」
「ドットマトリクス動的防御システム、起動」
同じ指揮艦でも、装備は全然違うんだよね。
このチタン電磁アクティブアーマーは、電磁的な防御効果を劇的に向上させるもの。
電磁砲の威力を強力に抑制する効果がある。
指向性EMP兵器ジャミングシステムは、相手のロックを一時的に無効化できるんだ。
連続的に照射すると、戦艦の火力を完全に麻痺させられる。
一方、ポイントディフェンスシステムは、アクティブ防御システム。
高度なライトブレインを使って、相手の戦艦の攻撃地点を計算できる。
戦艦を囲むようにある、あの浮遊シールドは、指定された場所に瞬時に移動して、相手の攻撃を防ぐことができるんだ。
それに、アダムの指揮艦は、まだキングクラス戦艦だし。
成長ポテンシャルは、t9まで行けるんだよね。
クラス分けすると、戦艦は、普通、優秀、エリート、キングクラスに分けられる。
普通の戦艦の最適化ポテンシャルはt3、優秀はt5、エリートはt7、キングクラスはt9。
アダムの戦艦の中で、この指揮艦が一番グレードが高いし。
将来、強化を続けていくと、発揮できる戦闘力は、きっと多くのやつらをビビらせることになるだろう。
そして、あの二人のバカは、アダムをイライラさせようとしてるんだから、悪意を味あわせてやらなきゃ。
レーダーに、惑星の周りを猛スピードで周回し、アダムに近づいてくる赤い点がいくつかあった。
相手は、どこから情報を得たのか知らないけど、最初からロックしてきた。
でも、これはこれでいいんだよね。時間を大幅に節約できるし。
一方、監視ホールでは。
帝国海軍の制服を着た数十人の男女が、この試験の全方位的な検査を実施していた。
彼らは優れたスキャンシステムを持っていて、戦場全体を鮮明に把握していた。
「スーパーバイザー、あのルーキー・スレイヤーズがまたトラブルを起こしています」
「ほう?今回は誰がターゲットだ?」
「5番、アダム、三級男爵です」
中年のスーパーバイザーは、男爵という言葉を聞くと、思わず冷笑を浮かべた。