Chapter 18: 彼は返事しない?
ヴァレは電話が切れちゃって、ちょっとムッとした顔になった。
「繋がらないの?」ジェニーはそわそわしながら、部屋をウロウロして、唇を噛んでる。
もしこんなことになると分かってたら、キースに止められても家に入ってたのに。キースが危ない目に遭ってる時に、離れちゃったのは良くなかった。
「うん…」ヴァレはため息をついた。
ジェニーとキースがフロストの家を出たのは、ほんの1時間前。ジェニーが戻ってきて、何があったのか話してくれた時は、本当に驚いたんだ。
「私、彼を置いて行くんじゃなかった…」ジェニーは座り込んで、額をゴシゴシ擦ってる。
「自分を責めないで。きっと大丈夫だよ」ヴァレの目に一瞬、罪悪感がよぎった。
「そうだといいんだけど。でも、そうじゃないと思う。ディランは電話に出ないし、ナンシーとレクシーも、何回電話しても出ないの」ジェニーは鼻をすすりながら、頬の涙を拭った。
ヴァレはジェニーの赤くなった目と、顔色の悪さに、ちょっとドキッとした。
「もう…もし…彼らが無事かどうかも分からない…」熱い涙が頬を伝って落ちる。
考えると胸が締め付けられる。お母さんは二人が結婚するのを待ってたのに。婚約したと思ったら、急にいなくなっちゃうなんて!
結婚式は2週間後なのに!
お母さんに、どう説明するの?
婚約者がいなくなって、他の人と結婚しなきゃいけないって?
ディランは、この6ヶ月間、ずっと彼女が頼ってきた人だったのに!
心を許せる、たった一人の人だったのに!
どうして、他の人と結婚できるの?
ヴァレはソファに黙って座り、ジェニーの様子を見ていた。
彼女とジェニーは、特にこの6ヶ月は、ほとんど話してなかった。実際、ヴァレは契約のせいで、他の誰とも関わってなかったんだ。
3年間苦労したことと、この6ヶ月で経験したこと、どっちが辛いって言うんだろう?
一晩だけの関係で、朝にはポイって捨てられるようなもの。もし彼が、何か酷いこと言わなければ、まだ良かった。
説明してくれれば、分かってあげられたかもしれない。でも、期待しすぎるのは危険なんだよ。
彼はヴァレのこと分かってくれて、説明するのを待っててくれると思ってた。
自分のことは自分で解決させてくれるって、信じてた。…まさか、信じたせいで死ぬなんてね。
もし彼が他の人と結婚しても、まだ良かった。シェリー・リバー以外だったら!
彼にふさわしい人と結婚するなら、ヴァレは喜んでたよ。でも、シェリーみたいな二面性のある女は、絶対ダメ。
でも、彼はかつて自分を置いてきぼりにしたような女と結婚するんだから。
ヴァレは、この事態を許せなかった。
彼女とキースは、まだお互いに告白したことなんてないんだ。3つの黄金の言葉なんて、一度も言ったことないし。あるのはただの惹かれ合う気持ちだけ。
でも、どうしてキースがシェリーと結婚するって言った時、こんなに胸が痛むの?
どうして、彼が他の誰かといるのを見た時、こんなに不快な気持ちになるの?
どうして、彼が落ち込んでる時、こんなに悲しい気持ちになるの?
どうして、彼のことこんなに大切に思ってるの?
ヴァレの目は熱く、胸の奥がズキズキ痛む。
もし、これが愛じゃないとしたら、一体なんなの?
彼は、ほんの少しの愛情だけじゃなくて、本当にヴァレのことを愛してくれたことなんて、あったのかなって思ってしまう。
「この件は、私の人間に調べさせよう」ヴァレはそう呟くと、テーブルの上のスマホを手に取り、キースの今の状況を調べるようにジェームズにメッセージを送った。
ブラックローズの幹たちが姿を消した途端に、誰かが騒ぎ出すなんて、思ってもなかった。
実際、もし誰かが今キースにちょっかいを出してくるなら、ヴァレは自分で手を汚さなくて済むから、ラッキーだって思うだろう。
でも、キースの命だけは奪わせない。
ヴァレは彼に、失恋して欲しいんだ!
無力感と孤独を感じて欲しい!
見捨てられた時の痛みを感じて欲しいんだ!
「ありがとう。私はもう帰るね。何かあったら、教えて…」ジェニーは立ち上がり、涙を拭った。
突然、ふらつきを感じて、ドアに向かって歩き出した。最後に覚えているのは、ヴァレが自分の名前を呼ぶ声だった。
***
「それで、一体何があったんだ?何で、あいつはお前を罰したんだ?」
オールド・ノエルは暗い表情でベッドの横に座った。
さっき、キースの怪我を治療するために家族のお医者さんが来た時、オールド・ルナはすぐにトイレに駆け込んで吐いてた。
キースの背中は、もう原型をとどめてなかった。
血が背中を覆い、皮膚も一部なくなってる。治るまで、何ヶ月もかかるだろう。
「分からないんです。僕は数日間、いなくなってました。熱があったから、友達の家にいたんです。屋敷に戻ったら、父さんがすぐに罰を与えました。僕がいなくなってる間に、ギャングが苦しんだって。」
「それに、幹部の人たちもみんな行方不明になってるみたいだし。裏切るなんて、考えられない。ありえないよ。何でそんなことするんだ?僕がいない間に、何かあったに違いない。」
オールド・ノエルは眉をひそめた。「でも、彼らはみんな幹部だぞ。どうして同時にみんな消えるんだ?小さい頃から訓練を受けてきたのに。一体、誰がそんなことできるんだ?」
キースはしばらく考えた。誰がこんな攻撃を仕掛けられるか、敵を全部思い浮かべてみたけど、誰も思いつかない。
「このことをやったやつは、周到に計画を立ててるに違いない。そんなに単純なやつじゃない。」
キースは同意するように頷いた。「彼らに何もなければいいんだけど…」そう呟いた。
「これから、どうするんだ?ベースに戻るのか?今、誰が助けてくれるんだ?」
キースは窓の外を見た。
「そろそろ、あいつらを使う時が来たのかもな…」キースはそう囁いた。
しかし、オールド・ノエルは聞き逃さなかった。
彼は驚いた。
「本当か?」彼の目は興奮して輝いた。
彼は、この時をずっと待っていたんだから。
「仕方ないんだ。父さんは助けてくれないし、兄弟も連れて行かれた。もう時間がないんだ。」