第17章:キス
キスの日
金曜日の夜、カフェから出たら冷たい風が僕を包み込んだ。街のところどころに木が影を落としてる。僕はジャケットのポケットに両手を入れた。冬がもうすぐそこまで来てるんだ。
歩き始めた。
リナスと僕、仕事の終わり時間が違うんだよね。リナスは夕方の6時、僕は7時、たまに8時。
ため息。またリナスかよ。いつになったらあの名前忘れられるんだろ。
ゆっくり歩きながら、空を見上げた。星たちがキラキラ光って、いたずらっぽくウィンクして、僕に挨拶してるみたい。「やあ」って。まるで、あの深い青い空を飾るずる賢い真珠みたい。月にも負けないくらい綺麗だ。夜の匂いが空気に染み渡って、周りの景色を全部包み込んでる。昼間とは違って、現実感がないんだよね。空気は蒸し暑くて、まるで霧みたい。街灯の光は、賑やかな通りに散らばる夜の真珠みたい。夜は、黒いカーテンを素晴らしい世界に変えるみたいだ。
下を見て、道を渡ろうとしたとき、誰かが僕の左手をつかんで、カフェと美容院の間にある細い路地へと引っ張った。
息をのんだ。そして、壁に押し付けられた。
「何だよ、」って言おうとしたら、あいつは左手で僕の口を塞ぎ、右手は壁に寄りかかってる。
僕はもがいて、彼の手に掴みかかって、口から離そうとしたんだけど、彼には全然かなわない。
「シーッ… 叫ぶな」って、彼は囁いた。「ちょっと話したいだけなんだ」って付け加えて、僕の顔から手を離した。
「何がしたいんだよ、クソが」って、僕はちょっとトーンを落として言った。まだ学生がいるかもしれないから、落ち着かないと。
でも、こんなに近くにいるのに、どうやって落ち着けるんだよ!それで、ちょっと彼を突き放した。
「お願いだから、私に構わないでくれない?私はあなたのこと知らないし。それに、話すことなんて何もないわ」深いため息をついて、僕は拳を握りしめ、彼を睨んだ。彼がどんなにカッコよくても、関係ない。「もし、私が何か悪いことしたとしても、ごめんなさい。ごめんなさい…」
僕の心が爆発した。いきなり、彼の柔らかくて薄い唇が僕の唇に触れたんだ。目が大きく開いて、心臓がバクバクして、聞こえるくらいだった。
動けない。でも、反射神経はちゃんと働いてくれて、僕は彼の頬に手を当てていた。その衝撃で、彼の頭は反対側に傾いた。
「よくも!」って叫んで、僕は全力で彼から逃げ出した。
心臓はドキドキ、目は潤んで、頭の中はもう限界だった。
「何があったの!?」部屋に入るとすぐ、レイナが叫んだ。僕は返事もせずにベッドに行って、うつ伏せに倒れ込んだ。そして、もっと大きな声で叫んで泣いた。
泣いてる。つらい。
彼の行動に、混乱してつらいんだ。
一体、何がしたいんだ?
「ベッカ」レイナが僕の名前を呼んだけど、返事はしなかった。
レイナは僕の背中を優しく撫でながら、何があったのかずっと聞いてくる。「ねえ… もうやめて、一緒に話そうよ」って、優しく言った。
彼女に意識を向けて、ボロボロになった顔を気にせず、「レイ…」って座った。
彼女の心配そうな目が僕と合った。「大丈夫だよ、話して」って言った。
「レイ… もう… 何を感じればいいのか分からない。心臓が」胸の上を抑えながら、「ここが痛い。どうすればいいのか分からない」って、また涙が視界をぼやけさせた。
「シーッ… 大丈夫だよ。恋はいつも予想外の時に、予期せぬ形でやってくるもの。泣かないで。傷つくのは自然なことなんだから」って言って、抱きしめてくれた。彼女は僕の背中を撫でて、痛みを和らげようとしてくれた。
「具体的に何があったのか教えて」って言われて、僕は話した。リナスにキスされたって。
「なんでそんなことしたの?」って彼女は聞いた。
僕はティッシュで顔を拭いて、「分からない」って答えた。
「彼はあなたも好きなの?あなたに気持ちがあるの?」
僕は首を振った。「まさか」って囁いた。
「でも、あなたは彼と話してないでしょ。彼はあなたの同僚だけど、前に彼の部屋に誘われた夜から、話してないって言ってたよね?」
僕は頷いた。
「じゃあ、一体何がしたいんだろ?」レイナは苛立った。
「気にしないで。たぶん、別に意味なんてなかったんだよ」って、僕は弱々しく言った。
「えー、冗談でしょ!なんで男が、ちょっと話したいからって、いきなりキスするのよ?」
「たぶん、私で遊びたかっただけなんだよ。なんか、挑戦みたいな」って僕は言った。
彼女は笑った。「挑戦?何?私たち、高校生じゃないんだから!ありえないよ。彼があなたを好きなのは分かってる」
「違う」って言い返した。
「好きなのよ!100ドル賭けてもいい」って、すごく自信ありげに言った。
「どこで100ドル手に入れたの?」って僕は聞いた。
「秘密」って彼女は答えた。「もし明日、あのリナスが謝りに来たら、彼はあなたが好きってこと。信じて」
「そんなこと期待しない。それに、彼は金持ちで、私はただの一般人。私たち、一緒になる運命じゃないんだよ。チャンスなんてない」
レイナは枕を取って僕を叩いた。「いつもポジティブに考えてるベッカはどこ行ったの?あなたはもう、昔のベッカじゃないわ。私が知ってるベッカは楽観的で、希望に満ちてる女の子よ。まだ始まったばかりなんだから、ベッカ。もっと色んなことが起こるわ。あなたの心と魂を試すような、色んな状況を乗り越えなきゃいけない。だから、覚悟しておきなさい」
レイナの言葉が、僕の頭の中でずっとリプレイされてる。
期待してるけど、怖いんだ。