第8章:奇妙な感情
「変な感じ」
大学ってさ、マジで大変じゃん?特に、お金持ちばっかりの世界に馴染めない時。彼らの話なんて全然入ってこないんだよね。例えば、高級レストランで食べた超豪華な料理とか、海外旅行の話とか、モデルとか芸能人に会ったとか、そういうのばっかり。テレビでしか見たことないような話ばっかりでしょ。それに参加しようとしても、なんか場違いなオブジェみたいになっちゃうんだよね。
レイナとさ、同じ授業だったらいいんだけどな。レイナと一緒なら、絶対つまんない日にならないもん。だって、彼女は知ってること全部教えてくれるから。話がヒートアップしすぎたら、ちょっと距離置きたくなるくらいすごいんだけどね。でも、レイナといるといつも楽しいし。もう慣れっこだし。でも、大学に入ってからは…
ため息ついて、手のひらに顎を乗せた。綺麗でピカピカのホワイトボードをぼーっと見てたら、自分の気分がそのまま映ってるみたい。つまり、つまんないってこと。
でも、幸いなことに、ここにはそういう空気はないみたい。まだ2日目だけど、このまま続くといいな。大学生活は穏やかに過ごしたい。とにかく、いじめとか、そういうのはマジで勘弁。
教授が来るまで寝ようかなーって思ってたんだけど、急に静かになって目が覚めた。頭を上げて、ドアの方を見た。
あ、あいつだ…マジか、同じ授業なんだ。…てか、あいつって一体何科なんだろう?他の授業であんまり見かけないんだけど。留学生かなんか?
あいつ、目立つんだよな。あいつがいると、うるさい教室が一瞬でシーンってなるんだから。なんでこんなスローモーションみたいになってんだろ?あいつ何者?みんながあいつのこと見てるのに、本人は平然と座って、みんなのこと見てるし。
数秒後、教授が来た。あー、今日が始まる。でも、あいつの顔が頭の片隅から離れないんだよな。…マジで何?私らしくない。他の人、特に男のこととか、別に気にしちゃダメでしょ。
でも、あいつはただの男じゃないって、心の奥の声が聞こえた。軽く頬を叩いた。「しっかりして、ベッカ。落ち着け!」
学業のことは、別に心配ないし、なんとかなる。問題は…あいつがずっと気になるんだよな。この変な感じ…お腹がひっくり返りそうになる感じ。あいつを見た瞬間から、なんかあるんだよ。カフェでぶつかった時も、触られた瞬間、ビリビリってなったし。
なんで、あいつのことばっかり考えちゃうんだろ?あの瞬間が、何度も頭の中でリプレイされるんだよね。あいつが近くにいると、ドキドキして、なんかゾクゾクする感じ。あー、これはヤバい。
あいつのこと、考えるのやめな!ベッカ!
やめろ。やめろ。や…「あ、すいません」って、なんか、物に…特に人にぶつかった時に謝った。てか、なんで、さっきから頭から離れないやつを凝視してんだ?
「また?!」って呟いたけど、あいつは眉を上げて、そのまま歩いて行っちゃった。私は呆然と立ち尽くして、あいつの後ろ姿が見えなくなるまで見送った。心臓の音がどんどん速くなっていく。
色々考えすぎて、レイナに話さないと。相談したいし、助けてほしい。何が起きてるのか、わかんないわけじゃないけど、確認したいんだよね。
授業が終わって、モヤモヤしたまま。自分がどう感じてるのか、わかんないわけじゃないけど。
カアラの明るい声が聞こえた。「お疲れ様」って挨拶したら、ニコって笑って挨拶を返した。
「授業どうだった?」ってカウンターを拭きながら聞いてきた。
「まあまあかな。カアラは?」って聞いた。
「私も。…ねえ。デンマークの王子様のこと、知ってる?見たことある?」って、いきなり話が飛んだ。
眉をひそめた。「王子?」なんでみんな王子を探してるんだ?「いや、知らない。どんな人かも知らないし。なんで?」
「噂によると、デンマークの王子がここにいるらしいんだけど、誰もどんな顔か知らないんだって」って、キャラメルラテをカップに注ぎながら答えた。
笑っちゃった。「ネットで調べればいいじゃん」って提案した。
彼女は左の眉毛を掻いて、カップを前に立ってる女の子に渡した。「それが問題なの。名前しか分かんなくて、どんな顔か全然分からないんだよね。ネットに写真とか全然ないし」
ミステリアスだなあ。
「名前は何て言うの?」
「ダミアン王子。王位継承者で、次の国王。私たちより1つ年上で、ビジネスアド…私たちと同じ学科らしいよ。でも、もしかしたら上の学年かもしれないし。知らんけど。もしかしたら、もう修士とか取ってたりして」
「ダミアン?」
「そう、ダミアンだけ」って、困ったような顔で答えた。
あー、もしかしたら身分を隠してるんだな。秘密主義貫きたいんだ。有名人だったら、そりゃ色んな情報隠さないとね。だって王子だもん。たぶん、平穏な生活を送りたいんじゃない?パパラッチとか、そういうのなしで。まあ、その情報だけで満足しとけばいいんじゃない?深入りしなくても。私が彼の立場だったら、絶対隠すけどね。
「今の若い世代は違うからね。ゴシップ好きがあちこちにいるし。気にしない方がいいよ。自分たちのことに集中しよ、ね?」
彼女は深くため息をついた。「そうだね」って言って、作業を続けた。
あの王子、考え方いいね。きっと色々と得するんだろうな。ミステリアスなままでいると、周りの人に色んな想像をさせるから。カアラとか、他の子とか、王子の秘密を暴きたいっていう気持ちは、もう止まらないギフトみたいなもんだよね。
ミステリアスなままでいると、人の好奇心を刺激するし…人間って、そういうの好きじゃん。未知なものに惹かれるし。
女の子たちは王子のこと、色んなこと想像し始めるだろうし、それは自然なことだよ。
バイトがちょっと遅くなった。カフェ、めっちゃ混んでたし。家に帰ったら、レイナがスマホいじってて忙しそうだった。
「おー、忙しいねえ」
彼女は顔を上げて私を見た。「王子が見つからない」
また、王子って言葉が出た。「あのさ、本人が隠したいんだから、もう考えんのやめれば?」
「人生で一回くらい、王子に会ってみたいじゃん」って言って、拗ねた顔でスマホの画面を見た。彼女の隣に座って、首を伸ばして何見てるのか覗き込んだ。
デンマークの王子…って書いてある。
「写真も見つかんないの?」って、ちょっと体を近づけて聞いた。
「うん、マジでー…って、なんで知ってんの?」
「カアラが言ってた」って答えた。
ベッドの方に行って、靴紐を解き始めた。「レイナ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」って、やってることに集中しながら言った。
「んー…」って答えた。
「初めて会った人に、なんか変な感じがする時って、あるじゃん?その人に触られたりして、ビリビリってなるみたいな…」
「待って、待って。まさか、あなたが経験したことについて話してるんじゃないでしょうね?」
「違う!」って否定したけど、声がちょっと裏返っちゃった。
彼女は私をじっと見て、なんか全部お見通しって顔してる。「正直に言って、ベッカ…誰かのこと、好きになったりしてんの?」
「まさか!」って、即答。「そんなわけないでしょ!勉強に集中してるんだから」
「変な感じ…ビリビリ…まさか、先生が答えろって言ってた、ただの質問じゃないよね?いつものベッカじゃないよ。学業のことに関する質問だったら、別に私の意見とかいらないでしょ。これは、あなたが彼に対して変な感じがする理由について聞く質問じゃないし…」
「うわ、ストップ!誰が彼だって言ったの?」
彼女は肩をすくめて、またスマホいじり始めた。「ああ、ベッカが誰かのこと好きになったんだ…」って言って、笑ってる。
枕を投げつけたら、簡単にキャッチされた。「何思っててもいいけど、違うから」
「否定しとけ、そのうち気づくから。あるいは、もう気づいてるのに、否定してるだけかもしれないし。いやあ、ベッカ、これは始まりだね。誰かを好きになって、苦労する日が楽しみだよ」って、呪いみたいに言った。
嫌だ!そんなのありえない。絶対に嫌。