第36章
「なんでそんなに早く荷造りしてんの?クリスマス過ぎてからじゃないの?」 フェイスが服のラックを眺めながら聞いてくる。
朝ごはんの後、ハンナの叔母さんが「クリスマスの恒例パーティー」の服を選びに行くから、一緒にモール行かない?って誘ってくれたんだ。
叔母カロライナの言葉ね、私のじゃない。
「荷造り、めっちゃめんどくさいから、こうやって乗り切るしかないの」 ハンナは肩をちょっとすくめて、短くて鮮やかな赤いドレスを手に取りながら言う。
えー。
別に、最悪ってわけじゃないんだけど。
誰かの強い腕がハンナのウエストを締め付け、黒髪の女の子がハンナの肩に顎を乗せる。
一日中、めっちゃスキンシップしてくるんだよね。
別に文句はないけど。
「それ、似合うよ」 オーレリアが言う。
うーん。
わかった。
もはや壊れたテープレコーダーみたいになってる。
「私が何選んでもそう言うじゃん」 ハンナはちょっと笑いながら返事をする。
オーレリアはもう服は決まってるらしくて、ハンナがドレス探しを手伝うことに同意したんだ。
でも、ハンナが何を選んでも全部「いいね」って言うから、手伝ってほしい意味ないじゃん。
「だって、ハンナは何でも似合うんだもん」 オーレリアは肩をすくめて返事する。
ハンナはオーレリアの褒め言葉に目を回しながら、ドレスをラックに戻し、温かい腕の中に身を預け、自分の手をオーレリアの手の上に重ねる。
これ、めっちゃ気持ちいい。
「何着てくの?」 ハンナはインスピレーションを得ようと期待しながら尋ねる。
オーレリアはハンナに微笑み、ハンナの頭の横にキスをする。
「教えない」 オーレリアが答えるからハンナは唸る。
「なんで?」 ハンナは尋ねる。
ハンナは頭を横に傾けて、ヘーゼル色の瞳でオーレリアの灰色の瞳を見つめ、子供っぽい不満げな表情をする。
「だって、サプライズだもん」 オーレリアは可愛い声で答える。
ハンナは灰色の目の女の子に眉をひそめる。
「サプライズとか嫌い」 ハンナは、オーレリアに何を着るつもりか教えてもらうために嘘をつく。
ハンナは少しでもインスピレーションが欲しいんだ。
「嘘だね」 オーレリアは当然のことのように言い、ハンナはまた不満げな表情をする。
オーレリアの言う通りだ。
もちろん、オーレリアの言う通りなんだ。
「ハンナ、これどう?」 ハンナの叔母カロライナが尋ねる。
彼女は奇妙な質感の白いドレスを持ち上げ、ハンナの顔にすぐに笑顔が浮かぶ。
「うん、いいよ」 ハンナは落ち着いた声で答える。
そのドレスを着るのは、せいぜい2時間半くらい。
将来、それが嫌になったら、寄付するか、取っておいて、イザベラが着れるようになったら譲るつもり。
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「やめてよ、キングスベリー」 ハンナは、オーレリアがハンナのフレンチフライを1本取ったので弱々しく言う。
ハンナたちの友達は、二人の様子を面白そうに見ている。
黒髪の女の子は、ハンナのトレイからもう一本フライドポテトを掴もうとする。
ハンナはオーレリアの手を叩き落とし、ハンナはハンバーガーを一口食べる。
「二人って、めっちゃキュートね」 ハンナの叔母カロライナは本気で微笑み、ハンナは恥ずかしさで顔を赤らめる。
「ちょっと、まだ付き合ってないんだよ」 ベイリーが暴露して、ハンナはうなる。
うーわ。
マジかよ?!
ここで暴露されるの?
昨日じゃ足りなかったの?
「ほんとに?もっと詳しく教えて」 叔母カロライナは面白そうに茶化す。
ハンナはハンバーガーをもう一口食べながら、興味津々の目でその展開を見守る。
「ハンナがチャドリーと別れて2週間後に二人は出会って、すぐに火花が散ったの」 ベイリーは大げさに言う。
まるでクソみたいなハリウッド映画みたいになってるじゃん。
「そんなこと、全然なかったから」 ハンナは無表情に言う。
「そうそう、ハンナは自分がストレートだって思ってて、オーレリアを避ける口実にしてたんだよね」 フェイスが割り込む。
うわー。
「いや、私はただ自分のデスクに座ってて、オーレリアが「私の方がみんなより上」みたいな態度でめっちゃウザかっただけ」 ハンナは訂正する。
「痛いとこ突かれたね、お姫様」 オーレリアが冗談を言う。
ハンナはハンバーガーをもう一口食べながら、目を回す。
「私たちの学校の全員がオーレリアと付き合いたがってたのに、ハンナだけは違った」 ベイリーは目を回して言う。
この話の大げさな語り方は、絵本でも書いた方がいいレベル。
「それで、何があったの?」 叔母カロライナが興味津々に尋ねる。
「オーレリアを一緒に座るように誘ったら、ハンナは逃げるのが良いアイデアだって思ってたんだよ」 フェイスが答える。
うーわ。
この二人、全然話が下手くそ。
「逃げたんじゃなくて、ただオーレリアが座って、私は何か起こさないように席を外しただけ」 ハンナは事実を冷静に述べ、ハンバーガーを一口食べる。
「数週間経って、このビッチは元カレとヨリを戻したんだよね」 ベイリーはハンナを無視する。
ハンナは、そのブルネットの女の子を見て、目を見開く。
マジかよ?!
「それで、オーレリアを避け始めた」 フェイスが付け加える。
うーわ。
この二人にはもうお手上げだ。
ハンナの叔母カロライナは、このフィクションの話にめっちゃ興味があるみた��だけど。
「チャドリーは、ハンナに対してめっちゃ性差別的なクソ野郎だったのに、オーレリアはハンナを擁護して、ハンナにスキットルズを買ってあげたんだよ!」 ベイリーが叫ぶ。
ハンナは、チャドリーが「ハンナの居場所」を分からせようとした時のことを思い出して、恥ずかしさで顔を赤らめる。
うーわ。
たぶんハンナは現実逃避してたんだと思う。
「それで、フェイスと私の気難しい演劇の先生が、私たちに2日間で「ひねり」のある短編映画を強制的に作らせたの」 ベイリーは目を回して言う。
まさか、ハンナのクソ叔母さんにこれについて話すつもり?
「私たち、めんどくさがり屋だから、ロミオとジュリエットを選んだの」 フェイスは誇らしげに言う。
自慢できることなのかどうか、ハンナには分からない。
「で、その「ひねり」は?」 叔母カロライナが割り込む。
「ああ、女の子二人を使うことにしたんだ、女の子と男の子じゃなくて」 ベイリーが言う。
叔母カロライナは興味深そうに眉を上げる。
「つまり、「ジュリエットとジュリエット」ってこと?」 叔母カロライナは質問する。
「うん、基本的にはね」 フェイスは肩をすくめて言う。
オーレリアは、ハンナのフライドポテトをもう一本取ろうとするから、ハンナはオーレリアの手を叩き落として、フライドポテトはテーブルの上に落ちる。
「どうしてこれがハンナとオーレリアに関係あるの?」 叔母カロライナは面白そうに笑いながらからかう。
やばい。
この展開は見たくない。
「私たちは、ロミオとジュリエットに二人を選んで、オーレリアが当然の理由でズボンを履くことにしたの」 ベイリーはハンナを横目で見て教える。
ハンナは口がぽかんと開いて、ベイリーの方を向く。
え?
どういうこと?
「それってどういう意味?」 ハンナは質問する。
「たぶん、ハンナは受けだってことだよ」 叔母カロライナは答え、笑うのを我慢しようとする。
うーわ。
ハンナは黙ってハンバーガーを一口食べながら、話している二人ににらみをきかせる。
「むしろ枕プリンセスって感じ」 ベイリーが言う。
フェイスとオーレリアは大爆笑し、ベイリーはハンナの目を見開いた表情に楽しそうにニヤリとする。
彼女がもしこれを続けるなら、クリスマスのプレゼントにすごいものをあげてやる。
ネタバレすると、ロクなもんじゃないけど。
「それで、当日、ハンナはドレスを着れなかったんだけど、それはー」 フェイスがまくし立てようとするからハンナは遮る。
「黙ってて、フェイス」 ハンナはにらみながら言う。
もし、ハンナがベイリーと、一番の親友であるベイリーに、たったキスだけで「上」を取られたって言われたら、どんな気分?
「撮影はめっちゃ時間がかかったけど、A判定取れたから、その価値はあったよね」 ベイリーは肩をすくめる。
まだ、どうしてあの「性的なシーン」みたいなものが許されたのか信じられない。
でも、裸ではなかったにしても、変だよ。
「二人がキスした後、みんなの顔を見たらよかったのに」 フェイスはゴシップ話をするように言う。
やばい。
「いや、むしろチャドリーの顔を見た方が良かったよ、彼が嫌いな女の子と自分の彼女がキスしてるのを見た時の」 ベイリーはたたみかける。
この部分は飛ばして欲しかったのに。
ちょっと恥ずかしい。
「まあ、びっくり」 叔母カロライナはショックを受けた声で言う。
「そう、それで、彼は文句言って、ハンナと別れた」 オーレリアは無関心そうに言う。
マジかよ?!
彼女も?
味方だと思ってたのに!
「マジでどうやったら、あんなデカいカメラに気づかないんだよ!」 ベイリーが叫ぶ。
何人かの人が、ハンナたちの方にちらっと見てくる。
ハンナはベイリーをにらんでいるおばさんに対して、目を回す。
おばさん、私たちよりずっと若い子が、もっと酷いことしてるんですけど。
「ハンナは部屋に閉じこもって、私たちの電話に出なかったから、ベイリーと私は、ハンナが過去のシナリオを繰り返さないように来たんだよね」 フェイスは、ありがたいことに「過去のシナリオ」が何だったのかは言わなかった。
多分、彼女たちが語る、明らかに過剰なドラマティックなフィクションの話は、もうすぐ終わりになるはず。
「オーレリアのこと無視したのに、チャドリーにはドアを開けるなんて!」 ベイリーは目を回して言う。
マジ?
今度はこれ?
「誰がドアの前にいるのか、分かんなかったんだって」 ハンナは言う。
「うん、まあね」 ベイリーが答える。
うーわ。
ハンナは、こめかみに手を当てて、バタンと叩きつける。
「ハンナとチャドリーは仲直りしたんだ」 フェイスは目を回して説明する。
「それで、その日、私、世界で一番の親友が、ここミズ・キングスベリーをハンナにサプライズしたんだ」 ベイリーは自慢げに言う。
彼女、まさかー
「私の部屋に乱入して、無理矢理下に連れて行って、家の外に締め出したのはあなたでしょ」 ハンナは信じられないような口調で言う。
ハンナの叔母とフェイスは、ハンナたちの話を聞いてクスクス笑い始める。
「うん、でも愛からだよ」 ベイリーは胸に手を当てて言う。
ハンナは彼女に首を振る。
「それで、恋人たちは仲直りしたんだ」 ベイリーは嬉しそうに言う。
ハンナは、過去数ヶ月の出来事を、ほぼ全て叔母カロライナに説明し終わった友達の話をほとんど聞かなくなる。
「誕生日は忙しい?夜とか」 ハンナは、黒髪の女の子に緊張しながら尋ねる。
彼女は、ベイリーの熱心な説明から意識をハンナに向けた。
ハンナの緊張に微笑み、優しくハンナの手を取り、指を絡ませる。ハンナは、絡み合った手に笑顔を浮かべる。
「ううん、なんで?」 オーレリアは興味津々に尋ね、親指を使ってハンナの手の甲を優しく撫でる。
よかった。
じゃあ、ハンナの計画は、うまくいくかもしれない。
「君のうちに泊まってもいいかな、プレゼントの準備に時間がかかるんだ」 ハンナは言う。
オーレリアは驚いて眉を上げる、手をハンナの髪に上げて髪をまとめる。
なんか、熱くない?
「もちろん、別に構わないよ」 オーレリアが答えるから、ハンナは感謝の笑顔になる。
オーレリアは、一生忘れられないような衝撃を受けることになるだろう。
「それにしても、ハンナが言ってた「プレゼント」っていうのがめっちゃ気になるんだけど」 オーレリアは茶化す。
オーレリアは黒髪をポニーテールにして、ハンナの空いた手にまた視線を戻す。
「サプライズだから、待っててね」 ハンナは少しニヤリとしながらからかう。
オーレリアは、ハンナの唇を見て、自分の唇を噛む。
クソ。
あれ、クソほどエロい。
うーわ。
また勃ってきた。
「ハンナも私も、そういうの苦手って知ってるでしょ」 オーレリアは、テーブルにいる3人のゴシップガールに聞こえないようにささやく。
ハンナは姿勢を正して、右足を左足の上に重ねる。
まるで、効果ないけど、コアのズキズキを鈍らせる。
「キスしてよ、キングスベリー」 ハンナは、オーレリアの目がハンナの唇を見つめ続けているので、ちょっと笑いながら言う。
オーレリアは抵抗せず、柔らかい手でハンナの赤くなった頬に触れる。
ほんの3秒も経たないうちに、オーレリアの魔法のように柔らかいピンク色の唇が、ハンナの熱望する唇にしっかりと押し付けられる。
「うわ、子供たちが見てる」 ベイリーは、丸めたナプキンをハンナたちに投げつけながら、吐き気を催すふりをする。
ハンナは渋々、灰色の目の女の子から顔をそむき、ため息をつく。
ハンナはベイリーの方を向き、黙って中指を立てる。
残酷な罰だ。
わかった、ちょっと大げさになってるけど。
でも、ハンナはイライラしてる。