第44章
「やっと」って、ハンナはオレリアとあたしのホテルルームに入るとため息をついた。
トロント、カナダについたんだ!
飛行機で寝ちゃってさ、もうマジで、イライラするようなこととか、絶対起きたくないから。数時間後に起きたら、ベイリーからテキスト来てて、5ドル貸しだって。あのコ、超音波みたいな聴力持ってんのかなってくらい、騒がしい飛行機の中で、木製のドア越しに聞こえたんだよね。
フライトアテンダントですら、気付いてなかったのに!
乗り換えの時に、ベイリーとフェイスに5ドル払ったら、フェイスがビックリした顔で「もう負けたの!?」って。
あたしのホルモンバランスがこの2日間おかしいのは、あたしのせいじゃないし。
オレリアとあたし、飛行機に乗る前に、10ラウンドは戦ったと思うんだよね!
これって何かのアレなの?それとも、よくわかんない。
「起きろよ、お姫様」ってオレリアが言って、あたしたちのバッグをエキストラベッドに置いて、あたしの方に来て、優しくお尻を叩いたんだ。
あたしは「キュッ」って声出して、座り直して、ニヤニヤしてるアヴァと向き合った。
あいつらと「話」して、めっちゃ良い気分みたい。
「下に行って何か食べ物買ってこようと思うんだけど、何か欲しいものある?」って彼女は聞いてきた。
あたしは首を振って、ベッドにバタンって倒れ込んで、ホテルの天井を見上げた。
クソッ。
マジでめっちゃ疲れてる。
「ちょっと昼寝して、何か持ってくるよ。何か食べたいものとか、ある?」って彼女は聞いてきて、あたしのオーバーな性格に笑いをこらえようとしてる。
あたしは唸って、毛布を体に巻き付ける気力もなくて、丸まった。
「健康的じゃないやつ」って、ぼんやり答えた。
それって、マジでめっちゃ色んな選択肢があるってことじゃん。
「わかった、すぐ戻ってくるね」って彼女は答えた。
あたしのとこに来て、頭にキスして、ホテルルームから出て行って、すぐに眠りがあたしを襲った。
ー
ゆっくり目を開けたら、太陽が沈もうとしてる。
オーケー。
結構長い間寝てたと思う。
少なくとも、数時間は。
ベッドから転がり落ちて、背中、腕、足とかをストレッチした。
ちょっとだけ部屋を見回したら、眉間にシワが寄った。
オレリアはまだ帰ってきてない。
ホテルルームは、彼女が出た時と全く同じまま。
ドアをノックする音が聞こえて、さらに混乱した。
あたしはホテルのベッドから起きて、重いドアに向かい、キーカードを掴んだ。覗き穴から覗いて、ホッとした。
大きなドアを開けたら、フェイスの心配そうな顔と目が合ったんだ。
「オレリアのお母さんがオレリアを探してるんだけど、見てない?」って彼女は聞いてきた。
あたしは首を振った。
つまり、彼女はいないってこと。
あたしたち、カナダに着いたばっかりなのに、もう彼女いなくなっちゃった。
「探しに行くから、一緒に行く?」ってあたしは聞いて、ドアを閉めた。
彼女は首を振ったけど、あたしに幸運を祈って、自分の開いたホテルルームに戻っていった。
多分、キーカード掴む気になれなかったんだな。
それとも、もうなくしちゃったのかな。
エレベーターに向かい、髪をまとめたお団子から解き放った。もう、マジで、髪留めついてる時点で、ほぼこぶみたいになってるし。
金属のドアの前に着いて、下のボタンを押そうとしたら、金属のベルトコンベアが開いたんだ。
「ハンナ?」って、あたしが死のトラップに入った時に、誰かが聞いてきたんだ。
声のする方を見たら、目が飛び出した。
え、マジで?
「チャドリー?どこかもっとあったかいとこにいるんじゃないの?」ってあたしは言って、どこにバケーション行ってたか、マジで覚えてない。
彼はこれに気まずそうに笑って、あたしは「1」って書いてあるボタンを押した。
「ママはまだハワイだけど、気分転換したくて」って彼は肩をすくめて、エレベーターに寄りかかった。
つまり、彼は「気分転換が必要」って理由で、ママを他の国に残してきたってこと?
1人で旅行してるの?
「君は?」って彼は、あたしの混乱に気づいて質問した。
あたしは、質問攻めで頭が痛くなってきたから、首を振った。
「マジで、なんであたしたちがここにいるのかわかんないけど、文句は言わないよ」ってあたしは笑顔で言った。
数秒間沈黙があって、彼がまた話し出したんだ。
「寂しいよ、ワイルダー」って、彼は本気な声で言ってきた。
あたしはため息をついた。
そんなこと言って欲しくなかったんだ。
「あたし、彼女いるの、チャドリー、知ってるでしょ」ってあたしは彼に言ったんだ。
あーあ。
このエレベーター、もっと早く行かないの?
「あー、そうだね、彼女はどこにいるの?」って彼は質問してきたけど、本気には聞こえなかった。
あたしは目を回した。
「わかんない」ってあたしが答えたと同時に、エレベーターのドアが開いたんだ。
やっと!
あたしはエレベーターからさっさと出て、彼に返事する時間も与えずに、ビュッフェエリアに向かったら、閉まってる。
看板を見た。
8時に閉まるって書いてあって、今は8時25分。
「どこにいるんだろう」って、あたしは心の中で呟いた。
周りを見たら、フロントデスクも空っぽ。
マジでなんなの?
「黙って」って、誰かがドアの隙間から囁くように叫んでるのが聞こえた。
あたしって、マジでバカだから、ドアに向かったんだよね。
誰も止めなさそうだし。
「あたしだったら、静かにするけどね、キングスベリー、ハンナに見つかりたくないでしょ」って聞き慣れた声が、挑発的な口調で言ったんだ。
誰?
は?
あたしは呼吸を落ち着かせようと試みて、壁に寄りかかって、ドアの隙間から覗いたんだ。
「あたしのガールフレンドは寝てるんだから、ありがとう」ってオレリアが皮肉っぽく、目を回しながら答えたんだ。
クソったれ!
オレリアだ!でも、1人じゃない。
「あたしの『ベイビー』は、元気?」ってヘビ女が眉をひそめて聞いてきた。
アヴァ?!
一体、何やってんの?
「あなたのこと、マジで嫌いじゃん」ってオレリアはきつく言ったんだ。
「まだだけど、あなたが彼女の信頼を失うと、彼女は真の友達であるあたしのところに這って帰ってくるよ」ってアヴァは、あたしたち2人の間を指差したんだ。
あたしは心の中で目を回した。
マジで、自分勝手なんだから。
「あなた?元彼と寝た女?」ってオレリアは笑いながら質問したんだ。
これは明らかにアヴァをイラつかせたみたいで、オフィスの隅にある木の机に拳を叩きつけたんだ。
「あたしだったら、そんなに生意気にはならないけどね」ってアヴァは始めたんだ。
「彼女があなたが彼女のママのために働いてるって、知るまで待っててあげて、ギャングのリーダーよ」ってアヴァは、邪悪な笑顔で答えたんだ。
あたしは心臓が止まるのを感じた。
まさかー。
彼女は冗談言ってるんだよね。
あたしのママがギャングのリーダーで、あたしのガールフレンドがママのために働いてるなんて、ありえないでしょ。
そんなことって、本とか、変な映画でしか起こらないことじゃん。
「まず、彼女は引退するし、次に、ハンナは気づかない」ってオレリアは、これが普通の会話みたいに答えたんだ。
彼女は否定しなかった。
なんで否定しなかったんだよ?!
マジで、「ギャング」とかそんなの、ありえないんだから。
「あたしは、そうなるって、思わないけどね」ってアヴァは携帯電話を手に取ったんだ。
あたしは、彼らの会話の残りを遮断して、立って、自分が目撃したことに頭を整理しようとしたんだ。
どうやら「ギャング」は、実在するらしい。
あたしのママが、そのリーダーで、引退しようとしてる。
あたしのガールフレンドは、「ギャング」に関わってる。
震える手で、長い、ボサボサのブロンドヘアを梳いた。
「ハンナ?」ってオレリアが、明らかに混乱した声で聞いてきたんだ。
あたしは顔を上げて、彼女の後ろめたい顔と目が合ったんだ。
彼女はあたしに嘘をついた。
みんな、あたしに嘘をついてたんだ。
「ハンナ、待って」ってオレリアが言うと、あたしは彼女から後ずさり始めたんだ。
あたしは首を振った。
これは、ありえないでしょ。
これは、全部、悪い夢なんだ。
「あたしに嘘をついた」ってあたしは言ったけど、声が途切れたんだ。
アヴァは、この瞬間にオフィスから出てきて、ニヤニヤ笑ってるんだよね。
「まあ、おばあちゃんたちに話すには、素晴らしい話じゃない?」って彼女は言ったんだ。
うざ。
「ハンナ、嘘なんてついてない、ただ言わなかっただけ」ってオレリアは、彼女の後ろにいる生意気な女の子を無視して言ったんだ。
あたしは、彼女と一緒にいた時のことを全部思い出し始めた。
マジかよ。
あたし、彼女に、自分のヴァージニティを捧げたんだよ!
「知らない番号からのメッセージは、誰からのだったの?」ってあたしは彼女に聞いて、答えを覚悟する間もなかったんだ。
「あー、それは、あたし」ってアヴァが遮ったんだ。
「あたしが、バーナーフォンからテキスト送ったんだ」って彼女は興奮して言ったんだ。
マジで、冗談きついんだけど。
あたしは振り返って、信じられないことに、両親だけじゃなくて、チャドリーとも対峙したんだ。
「本当なの?」ってママに聞いて、彼女と視線を合わせたんだ。
ママは心配そうな顔で近づいてきた。
「何が本当なの、ハンナ?」って彼女は聞いた。
「あなたたちは、ギャングの一員なの?」ってあたしはゆっくりと聞いて、同じことを繰り返したくなかったから。
彼女の顔が、混乱した顔から罪悪感のある顔に、一瞬で変わったんだ。
それが、あたしに、必要な全てを物語ってる。
「信じられない」ってあたしは、彼らの前を通り過ぎながら、呟いたんだ。
チャドリーは、あたしを止めようと、あたしの手首を掴もうとしたけど、あたしは階段を上がって、エレベーターを待つ気もなかったから、すぐに避けたんだ。
今まで、周りのみんなが、同じ組織に関わってて、あたしに言わなかったなんて、どういうことなの!
ー
「何か隠してることない?ギャングとか、秘密結社とか、そういうの」ってあたしが聞くと、ベイリーがドアを開けたんだ。
彼女は、あたしに眉をひそめた。
「えーっと、ギャングって、実在しないって知ってるよね?」って、そのブルネットは当然のように言ったんだ。
あたしは、息を吐いて、泣かないようにしたんだ。
「お願いだから、質問に答えてくれる?」ってあたしは彼女に聞いて、彼女があたしみたいに普通でつまんない人間でありますようにって祈ったんだ。
今夜はもう、これ以上のサプライズには耐えられない。
「うん、あたしは、マジで普通だよ」ってベイリーは、疑わしげな口調で答えたんだ。
あたしは、フェイスの方を見て、彼女はホテルのベッドで携帯をいじってる。
「同じく」って彼女は答えたんだ。
あたしは、安堵の息を吐いて、上の天国に感謝した。
「ハンナ、どうしたの?」って彼女は真剣な口調で聞いたんだ。
あたしは、話そうとしたけど、今一番会いたくない人の1人に遮られたんだ。
「ハンナ、あたしはここにいるから」って、チャドリーがエレベーターから叫んだんだ。
あたしは、ベイリーとフェイスのホテルルームに入って、ドアを閉めて、鍵をかけたんだ。
「ごめん、オレリアを探しに行ったんだけど、チャドリーがどこからともなく現れて、そしたらオレリアとアヴァが誰もいないオフィスで話してるのを見つけちゃったんだ」ってあたしはまくしたてて、彼女の目が大きくなるのを見たんだ。
「あたしは、あたしだから、彼女たちのことをスパイして、オレリアがこの秘密組織の一員だって分かったんだよね、それにあたしのママがリーダーだし」って、あたしはまくしたて続けたんだけど、彼女の目はさらに大きくなったんだ。
「オレリアが、あたしがスパイしてるのを見つけちゃって、あたしは彼女に質問して、両親とチャドリーが現れて、あたしは彼らに質問して、階段を駆け上がって、そして、今、ここにいるわけ」ってあたしは話が終わって、やっと息を整えたんだ。
ベイリーが、ただ黙ってあたしをハグしてくれた時、あたしはショックを受けたんだ。
あたしは、彼女の抱擁の中でリラックスして、彼女のウエストの周りに腕を回したんだ。
「今夜は、あたしたちの部屋に泊まれるよ、エキストラベッドもあるから」って彼女はあたしに言ったんだ。
あたしは、フェイスを見て、彼女は今、ハグに参加してる。
「あたしの部屋から、明日、バッグを持ってきてあげるね」って彼女は、あたしの肩に頬を乗せて言ったんだ。
あたしは、唇を噛んで、塩辛い涙があたしの顔に流れ落ちて、親友の肩に落ちるのを感じたんだ。
全てが、うまく行っていたのに。
どうして、こんなに早く、全てが崩れ落ちてしまったんだろう?
ー
オレリアの視点
クソッ。
これがあたしが避けようとしてたことなんだ。
「あの匿名の中傷については、明日の朝話しましょう」ってハンナのママはあたしに言ったんだ。
あたしは頷いて、彼らは向きを変えて、ロビーから出て、エレベーターに乗ったんだ。
彼らが去った後、チャドリーはすぐに、子鹿のような顔の表情を拭い去って、ニヤニヤした顔に変えたんだ。
「あたしはいつも、あなたが彼女に合ってないって分かってたんだ」って彼は言ったんだ。
あたしは、彼を睨んだ。
「これで、やっと、彼女を取り戻せる」って彼は言ったんだ。
うざ。
彼は「バカ」って言葉を、全く新しい意味にしてる。
「あんたは、彼女のこと好きじゃん、なんで、彼女が自発的にあんたを相手にしないのか、分かる?」って、あたしは率直に言ったんだ。
「これは、あたしたちが呼ぶところの『女の子のための勝利』だよ」ってアヴァがオフィスのドア枠から言ったんだ。
彼女は、まだ何やってんの?
マジで、誰も、彼女にいて欲しくないのに!
彼は、ちょっとエゴが傷ついたみたいだけど、すぐにそれを隠したんだ。
「あたしは、あなたがまだここに比較的慣れてないって分かってるから、簡単に説明するけど」って彼は始めたんだ。
あたしに、今すぐ、彼の金玉を回し蹴りして欲しいのかな?
「ハンナは、いつも以上に、傷つきやすい時に、ナイーブになる」って彼は言って、あたしは歯ぎしりしたんだ。
「あなたと彼女の両親は、彼女の小さくて、壊れやすい心を壊しちゃったから、今、彼女は、めちゃくちゃ傷つきやすくなってる」って彼は続けたんだ。
「あたしは簡単に、彼女を慰めて、『そこにいてあげて』、彼女が、あたしのところに走ってくるんだ、いつもそうだし、これからもそうなる」って彼は終わらせたんだ。
あたしはニヤリとして、彼の方向に数歩歩いて、彼のベルトのループを掴んで、彼の股間を膝で3回殴ったんだ。
「それが、古いハンナだよ、明らかに、新しいハンナに会ったことないでしょ」ってあたしは言ったんだ。
あたしは、彼の無力な体に、最後の蹴りを食らわせた後、階段を上がったんだ。
あの2人とエレベーターに乗る気にはなれないんだ、もし、1人か、両方いなくなっても、あたしは責任負えないし。
あたしは、ハンナに、これを埋め合わせることができればいいんだけど。
彼女は、本当に、あたしが望むすべてなんだ。
他の人たちは、遠くからあたしを「尊敬」して、話しかけてこないか。
それとも、あたしを見るのも怖がってるか。
でも、どうやって、今の、たぶん元カノに、自分がママのために働いてるギャングにいるって言う?