第6章
イカン・グボゴフルワってさ、誰が見ても二度見するようなタイプの男だったんだよね。 いつもあの素敵な笑顔で、何か頼んだら女の子を簡単にオッケーさせられる、みたいな。 でも、こんなに長い間クラスメイトなのに、アイクがあんまり彼のこと好きじゃないのって、全然不思議じゃないんだよね。 仲良くて話したりするんだけど、イカン・グボゴフルワがあのいつもの笑顔で口説いてきたり、色々アピールしてきても、アイクはニヤニヤするか、笑うだけなんだもん。
自分の状況のせいで、アイクは誰とも恋愛関係にならないって決めてたんだ。他の子達みたいに。 グロリアとかチディマはいつも、アイクがただ単にめっちゃ選り好みしてるだけなんだって言ってたけど、だからこそ17歳なのに、まだ誰のことも好きになったことがなかったんだよね。
彼女たちからしたら、アイクは普通の人間じゃないんだ。もちろん、そうなんだけど。 イカン・グボゴフルワが遠ざかっていくのを見て、アイクはニヤリとした。 女の子が彼に挨拶して、彼はその子に笑いかけて、ハグしてた。 アイクはアイスクリームに目を向けて、それを食べながらクスクス笑った。
クリスマスダンス?
もし自分がまだ生きてたらだけどね。 でも、彼は知らなくていいんだ。 誰も知らないんだ。 いつも笑顔のアイクが、2ヶ月も経たないうちにあの世に行っちゃうなんて、誰も想像してないんだから。
アイクは棚の本をなんとなくパラパラめくってた。 家で小説全部読んじゃったから、図書館から何冊か借りることにしたんだ。 図書館は、毎回新しい学期が始まるたびに本が補充されるんだよね。
ふと、隣の棚に新しく並べられた本が目に入って、アイクは笑顔で近づいて、新しい本を手に取った。 ほんの少しだけ本を見たところで、向かい側に、見覚えのある姿が見えたんだ。 びっくりして目を見開いて、彼は本の山を抱えて、壁のそばに並べてるのを見てた。
その人は床に寝転がって、本の山を枕にして、長い足を伸ばして目を閉じた。 アイクは一瞬呆然とした。 新学期の最初の週は、図書館に来る生徒なんてほとんどいないから、いつも静かでシーンとしてるんだよね。
アイクは、その日二度も会った人に興味を持って見つめながら、手にした本をパラパラ見て、時々その人に視線を送った。 借りたい本を選んで、残りを元の場所に戻して、その人を見たら、まだ寝てた。
アイクは少しの間その人を見てから、踵を返して歩き出した。 本棚の列から出たところで、その人の目がゆっくりと開き、茶色のチョコレートみたいな瞳が現れたんだ。 その日の学校は特に何もなくて終わって、アイクは親友たちにバイバイして、お母さんの車に向かった。 前のドアを開けて乗り込んだ。
「こんばんは、お母さん」 アイクが挨拶すると、お母さんは娘に微笑んで、学校からバックした。
アイクは窓にもたれて、外を見てた。 ラゴスの道路はいつも混んでるんだよね。 朝も、午後も、夜も、真夜中でも。 人々はいつも働いてるように見える。 ラゴスで生まれた人は、いつも働くために生まれてきたのかなって、アイクは思った。 お母さんの車が夕方の渋滞に巻き込まれると、アイクは小さくため息をついた。 渋滞してる車を眺めてから、シートにもたれかかった。
「あなたを迎えに行く前に、スナックと食べ物を買っておいたの。 お腹すいたら、後ろに手を伸ばして何か食べなさい」 お母さんがそう言って、車の後ろからラップトップを取り出した。
アイクは学校用の靴を脱いで、足を椅子にのせた。 2時間以上���滞に巻き込まれるのは間違いないって、誰も言わなくても分かってた。 それがラゴスなんだよね。 アイクは、朝の渋滞と夕方の渋滞、どっちが最悪か考えようとした。
椅子にある白いナイロン袋に手を伸ばして、中を探った。 すぐに食べ物の入ったナイロン袋をつかんで、席に座り直した。 揚げたご飯とチキンが入った白い皿を開けると、車の香水とエアコンの匂いと混ざって、匂いが車の中に広がった。
アイクが最初の一口を食べた時には、夕方の渋滞の方が朝の渋滞より最悪だって結論が出てた。 お母さんが話す声が聞こえたので、アイクは振り返ってお母さんを見ると、お母さんはラップトップでライブミーティングをしていて、また外を見た。 高そうな黒いジープが目に入り、中にはティーンエイジャーのシルエットが見えた。
車のガラスがスモークがかかってて、誰だか分からなかったから、アイクは誰なのか必死に見てた。 結局、誰だか分からなかった。 傍らにあった水筒をつかんで、何口か飲んでると、車が動き出したので、お母さんはビデオ通話を止めて車を動かそうとした。
アイクがさっき見た黒い車の窓が少しだけ開き、少しだけ顔が見えたけど、すぐに窓が閉まった。 でも、アイクはそれで誰だか分かったんだ。 ガラスを下げて、ナイロン袋を外に投げ捨てて、誰にも当たったり、車の邪魔になったりしないか確認しようと、ゆっくりと外を見た。 車が踏んでいったのを見て、ほっとため息をついた。
「よかった」 アイクはつぶやいて、シートにもたれかかって、黒い車を見た。
一日で三回も会うのは、いいことの前触れじゃない?
DRCに5年くらい住んでたけど、アイクは彼に一回も会ったことがない気がした。 それなのに、同じ日に三回も会うなんて。