漂流者
ベセスダ、
2420 AA、大昇天後。
どこもかしこも静かで、どっちを向いても人っ子一人いない。
ハビラはまた振り返って、今度は周りを見回したんだけど、どこを見ても建物がそびえ立ってて、道の先とか、その先の景色が見えなくなってたんだ。
自分の足元を見て、浮くことを考えたんだけど、試す前に、無理だって分かってた。だって、もう力も、移動する手段も全部なくなっちゃったんだから。
どうやって生きていくんだろう?ハビラはそう思った。なんだかすごく空虚な気持ちで、ヴァーチュを試そうと筋肉を動かしてみたけど、何も起きなかった。
ここに立ち続けるわけにもいかない。そうも結論付けて、やっとどっちに進むか決めて、道を進んでみた。どこにたどり着くのか、見守りながら。
まだ現実を受け入れられてないのか、それとも頭が拒否してるのか。
それが、まだ脳みそが動いてる唯一の理由だと思う。だって、冒険を望んだのは私じゃない?短い人間の人生を?それが今、目の前にあって、でも、誰もいないんだから。
それでも道を辿ってたら、すぐに分かった。あの巨大な石の建造物は、巨大なコンクリートの迷路を作るように配置されてるんだって。奥に進むほど、中心にある建物を取り囲むように円を描いてるみたいで、その建物は、ハビラにとってすごく新しい目にも、どこか見覚えがあった。
見た目じゃなくて、そこから漂ってくる、奇妙だけど懐かしい雰囲気で。
どこでこんな気持ちになったことあったっけ?そう思いながら近づいていくと、足が吸い寄せられるように引き寄せられていく感じがした。
ハビラは近づいて、巨大な丸い柱を観察した。自分のずっと上までそびえ立つ、灰色の柱たち。
高いドーム型の屋根にたどり着いてて、それは雨、風、太陽といった自然の力から、偉大で強力な入り口を守ってたんだ。
他の建物とは違って、壁は円形になってて、どの方向にも広がってて、自分の目に見える範囲よりずっと先まで続いてる。
外壁の周りには広い通路があって、それを辿ると、3つの大きな入り口が見つかって、コンパスの各方向に面しているみたいだった。
もし浮けたらな、ハビラは物思いにふけって自分の足元を見てから、この巨大な建物を囲む高い壁を見た。
うん、大きかった。他の建物と比べたら。他の建物は、実際は住居らしいんだけど。
でも、トリベリアの基準で言ったら、小さくて、サンクチュアリが街の中心で宝石みたいに輝いてたあの輝きには及ばないんだよね。だって、希望を宿してるんだから、見えるのは夕日にぼんやり光る金色の屋根だけなんだし。
それでも、あの壁の中にある何かが、ハビラを呼んでる気がした。
でも、今の状態じゃ、あの門を突破するなんて無理みたいだ。
そういえば、ここは他の建物より状態がいい気がするな。
そう思って、周りを見回した。
窓がないし、ドアが金箔で覆われてるからかな?
そう自問自答しながら、金色のドームと、各入り口にある塔を眺めた。
何に似てるんだろう?
ハビラは答えを探して、頭の中をくまなく調べた。
「それだ!サンクチュアリ!」
言葉がささやくように口からこぼれ落ちて、あの建物を作っている、見覚えのある金色の建築を振り返った。
他に道はないって、やっと決心した。
中に入る方法を見つけなきゃ。
まずは、あの大きな入り口から?
もしかしたら、そこに避難できるかもしれない。
ドアを試してみるしかないよね?
ハビラは片足を上げて、東側の大きな入り口へと続く階段を上り始めた。
チェンバレンが避難場所を見つけろって言ってたし、今、考えられる中で一番都合がいい場所だったんだ。
もう一歩進んで、上り続けた。
ヴァーチュがないから、いつもよりずっと大変な気がした。
息切れもするし、汗もかくし、こんなこと今までなかったのに。
秘密の巻物を読み漁る日々を送ってなかったら、大変なことになってたかもしれない。
危険な身体の状態になるっていうのは、こういうことなんだ、と。
でも、これが人間ってことなんだ。
生きるってことなんだ。
息がなくなるまで努力するってことなんだ。
考え事をしていたら、すぐに金色のドアの前に立っていて、震えていた。
いつも見ているあの金色の模様に、手が触れた。
どうやって開けるんだろう?そう考えていると。
巨大な二重のドアを、ずっと上まで見上げて、それで足を踏み外して後ろに倒れそうになった。
ありがたいことに、ドアノブがあったから、すぐに手を伸ばして体勢を立て直した。
押す?引く?
そう自問自答しながら、アクションを起こす準備をした。
押すって、やっと決心した。摩耗パターンを調べてから。
「外側に滑り跡がないから、ドアは内側に開くはず…?」
背中の毛が逆立つと、背後から現れた何かに警戒した。
「おい!お前!ここで何してんだ?」
男の声がハビラを驚かせた。
ハビラは、長くなる影の中に隠れている人間を探すように、視線を向けた。
誰だろう?階段を見下ろしたけど、夕焼けと巨大な建物が落とす影で見えなかった。
「私…」ここで何してたんだ?
自分を守ろうとしながら、ハビラは考えた。「私…ちょっと見てただけ…」
そう言って、この見慣れない世界から抜け出す方法を探そうとした。
また犯罪を犯したのか?
一体、私はどこまで不運なんだろう?
ハビラは心の中でつぶやいた。「入っちゃいけないの?」
影にそう呼びかけた。
「誰に聞いてるかによるな」
声が返ってきて、ハビラは目を見開いた。
黒いアーマー姿の男が、影から現れたんだ。
「キリオン?」
思わずそう言ってしまった。まさか、こんなことってある?
気持ちが軽くなった。もしかして、運が良くなってきた?
ハビラは階段を一段降りて、その人物に近づいた。
「キリオン?」
彼は困惑したように言った。「いや、誰が聞いてるんだ?」
その声が答えた。そして、バイザーが引き上げられて、若い男の顔が現れたんだけど、男?
ハビラにはどっちか分からなかった。
だって、その顔はすごく騙されやすい顔だったんだから。
まず、アーマー姿には若すぎる顔だった。
美しい顔で、髭も生えてないから、年齢どころか性別さえも推測しにくい。
でも、すごく背が高かったし、声は紛れもなく男の声だった。
それだけは分かった。
でも、女の人でも低い声の人もいるってことも知ってたけどね。
「私は…」なんて言えばいいんだろう?
男にどう自己紹介すればいいか分からず、言葉が途切れた。
「まあ、彼に案内してあげることはできるよ。
ただし、朝まで待ってもらうことになるけど。
見ての通り、もう日が暮れてきてるし、それが何を意味するのか分かるだろ…?」
「それが何を意味するって?」
空を見上げて、ハビラは初めて空が本当に暗くなってきていることに気づいた。
そうすると、キリオンが言ってたこととか、あの男を助けるためにハビラが飛び降りる前に見た光景とかが、頭の中に蘇ってきた。
「ドラゴン?また来るの?」
彼女の問いかけに、男は周りの様子を観察するのをやめて、深い青い瞳で彼女をじっと見つめて、奇妙な表情をした。
「お前、一体何者なんだ?」
ハビラは一瞬眉をひそめて、変な質問の仕方だなって顔をした。
なんでこんなこと聞くんだ?
なんで今なんだ?
「私はハビラ。ジェイコブとタマールの娘、エル…」
彼女は人間との最後の出会いを思い出し、言葉を飲み込んだ。
「ハビラです」
やっと訂正した。
「ハビラ?」
男は一瞬考え込んだように見えたけど、突然元気になった。「ハビラ!知ってる!その名前、聞いたことあるぞ。
お前、俺たちのキャプテンを助けた娘だろ?」
「あなたのキャプテン?
つまり、キリオンのこと。
私はただ…えっと、だって…」
自分を説明し始めた。
彼を助けた理由を説明し始めたところで、やっと分かった!
なんで、彼が私のことを知ってるんだ?
彼は知ってるはずがないのに、そう思いながら、彼が初めて見るかのように彼女の姿を見ているのを見ていた。
「説明とは違うところがある。
例えば、お前のローブは黒くて赤じゃないけど、ほとんどは…」
「ちょっと待って!何?」
ハビラは叫んだ。「彼があなたに?
だって…だって…」
そう言って、あの他の人間が彼に何を言ったんだろうって想像して、腹が立って大声で言った。
一体、何人に話したんだろう?
大事なことを秘密にしとく方法を知らないのか…
そう思ったところで、神経を逆なでするような轟音が空を揺るがし、ハビラはしばらくの間、麻痺してしまった。
ふむ、こんな感じなんだ。
こんなに近くにいると。
鼻を掻きながら、入り込んできた息苦しい闇を感じた。
そうしていると、赤オレンジ色の炎の玉がいくつか夕空に燃え上がり、ほんの少しの間明るく照らして、分厚い闇の中に消えていった。
不気味な沈黙が続き、骨の髄まで冷えるような寒さがハビラを襲った。
不安で神経が麻痺し、その場から少しも動けなくなってしまった。
「これは何?
この圧倒的な不安感は?
空気、空気…空気が息苦しい!」
「来い!早くしろ!」
男が叫び、階段を駆け上がり、ハビラの手を掴んだ。
そして、彼女を階段から引きずり降ろし、薄暗い路地裏に連れて行って、崩れかけた外壁の後ろに隠れた。
逃げ出した彼女はよろけた。
これまで闇を知らなかった彼女の目は、暗い通りの影の中で適応しようと必死だった。
何度もつまずき、何百万回目かの時に、暗い影が襲いかかってきて、突風が吹いて、二人は固い石畳に倒れ込んだ。
影は舞い上がった。
ハビラは再び立ち上がろうとしたが、男は彼女をタックルして、彼女が起き上がれないように体重をかけて押さえつけた。
「何…何してるんだ?」
彼女は怒って囁いた。
「あー、忘れてた!」
彼は完全に間違った理由で苛立ったようだった。
「お前には熱を隠すスーツがないんだ」
彼は苛立ちながら答えた。
スーツ?
ハビラはしばらく考え込んだ。
「私を感知できるってこと?」
彼女はやっと気づいて、恐怖に震えて囁いた。
「当たり前だろ!できるよ!お前、一体どこから来たんだ?
そんなこと、どうして知らないんだよ?
ベセスダの誰もが、いや、エリドリア全体が知ってることだぞ」
彼はぞんざいに答えた。
どうして、こんな目に遭わなきゃならないんだ?
ハビラは自分の不幸を嘆いた。
ついに自分の状況を理解し、涙が流れそうになった。
一体、私は誰を怒らせてしまったんだろう?
そう思わずにはいられなかった。
そして、エルダーライオネルの姿が頭に浮かび、彼女は暗いトリバンのブーツの中で身震いした。
これは神の罰じゃない!
あいつはヘビだ!
全部あいつのせいだ。
「私はここから来たんじゃない」
彼女は、大粒の涙を必死にこらえながら、彼に言った。
「それで、ハビラ、お前はどこから来たんだ?」
男は蛇のように答えた。「もしかしたら、みんなでその楽園に行って、何世紀も私たちを苦しめてるこの恐怖から逃げられるかもしれないな!」
そう皮肉を言ったけど、彼女は非難できなかった。
だって、彼女は本当に楽園から来たんだから。
彼女は良い暮らしをしてきて、それを軽蔑してたんだから。
この…この…一体、何を考えてたんだろう?
「ごめんなさい…」
彼女は、自分が守られているというのに、ふてくされて自分の手を見た。
「もう関係ないんだ。
だって、あそこにはもう歓迎されないんだから」
そう付け加えたけど、それはもっと優しく言ったことだった。
でも、人間は彼女の声を聞くことはなかった。
突風が吹き荒れたんだから。
彼は警戒していた。
別の暗い影が襲来し、再び彼らを攻撃しにくる前に、行動を起こした。
男は素早く行動したけど、ハビラはそうはいかなかった。
ヴァーチュがない彼女は、完全に無力だったんだ。
3つ目の影が彼らに襲いかかり、彼女は自分の足につまずき、転んでしまった。
そのせいで、ワイバーンにローブの後ろを掴まれて、持ち上げられてしまったんだ。
ハビラは、人生でこんな恐怖を味わったことがなかった。
恐怖と痛み、鋭い爪が彼女の肌を貫いたんだから。
彼女は叫んだ。
若い兵士が彼女に手を伸ばそうとしたけど、ワイバーンが彼女を連れ去ろうとしているんだから、どうしようもなかった。
これで終わりだ。
これが、彼女が追放された最初の夜に死ぬ方法なんだ、と。
彼女は、負けた涙を頬に流しながら考えた。
「ああ、光よ、これが私の運命なの?
私を助けて!
私を救って!」
彼女は自分の愚かさを思い出し、涙を流した。
そして、硫黄と闇の濃い雲が四方から彼女を圧倒した。
これで終わりだ。
そう思って、彼は意識を失い始めた。
彼女のまぶたが閉じたけど、暗くはなかった。
もしかしたら、幻覚を見てるのかもしれない。
彼女は、すぐに大きくなる小さな光の輝きを見てそう思ったんだ。
すぐに火になった。
彼女の心を温める火。
すぐに平和が彼女を包み込み、突然、明るい光の爆発が彼女を包み、彼女は自分の目を開けて、まだ生きていることに驚いた。
周りは明るかった。
まるで昼間のように。
上のドラゴンが苦痛に叫び、そして、彼女はついに自由になった。
自由で落下しているけど、痛みはない。
むしろ、傷はふさがっていて、彼女は自分の皮膚が治癒するチクチクを感じることができた。
彼女は自由だった!
そう、自由だったけど、落下しているのに、なぜか、この白い海の中でパニックになることができなかったんだ。
彼らは彼女を救いに来たんだろうか?
彼女は救出されてるんだろうか?
家に連れて帰ってもらってるんだろうか?
この瞬間、彼女は安心感を感じた。
すべてが大丈夫だって安心感だ。