第35章
私、歴史の授業であったことをビクトリアに話した。「なんで、彼のこういう面のこと、今まで知らなかったんだろう?」って、全部話し終わってから聞いたんだ。
「だってさ、エミリーのこと知らないこと、結構あるんじゃない? 多分、ずーっとああだったんだよ。ただ、エミリーが彼に夢中だったから、気づかなかっただけじゃない?」って、ビクトリアは推理した。
「まあ、そうかもね」って答えて、タイラーがカフェテリアに入ってくるのが見えて、顔を上げた。そしたら、カフェテリアの列に向かって歩いていくタイラーの方に、チアリーディング部の女の子が近づいてって、ちょーアピールし始めたんだよね。明らかに、タイラーの気を引こうとしてた。
私、またランチに意識を戻したんだけど、心臓はドキドキするし、お腹はギュッとなるし。手が震えて、タコス掴んで口に運ぶのも大変だった。なんでこんなんなるのか、全然わかんないけど、嫌だったんだよね。だってさ、あんな可愛い子がタイラーの気を引こうとしてても、別に良くない? だって、私たち、別に付き合ってるわけじゃないし、別に気にする必要ないじゃん。
でも、そう思おうとしても、心臓はバクバクするし、変なことばっかり頭に浮かんでくるんだよね。なんで、こんな気持ちになるんだろ? まさか、タイラーのこと好きになり始めてるわけじゃないよね? ありえない、ありえない。
「エミリー、大丈夫?」って、ビクトリアが怪訝そうな顔して聞いてきた。
私はタイラーのこと全部頭から追い出して、頷いた。「うん、全然大丈夫」
ビクトリアはまだちょっと心配そうな顔してたけど、何も言わないうちに、セスがどこからか現れて、私たちのテーブルに座って、すぐにタイラーも来た。
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その日の夕方、家に帰ったら、お父さんとサラがいた。二人がいるリビングに入っていくと、二人ともニコニコしながら私の方を向いたんだ。
「どうしたの?」って、私は混乱した顔で、二人を交互に見ながら聞いた。
「エミリーに、すごく良いお知らせがあるんだ」って、お父さんが言った。それから、サラを見て、話すように促した。
「私たち、赤ちゃんができるの!」って、サラが叫んだ。「妊娠したの」
その言葉に、私は目を見開いて、顔に大きな笑みが浮かんだ。「マジで?」って、彼女のことと、お父さんのことを見た。
「うん」って、サラが頷いた。お父さんも頷いた。「もう、6週目なの」
「すごい!」って言って、サラが座ってるところまで行って、抱きしめた。本当に嬉しいニュースだった。ずっと兄弟か姉妹が欲しかったから、これでできるんだもん。
サラから離れると、お父さんが言った。「お祝いに、今夜みんなでご飯食べに行こう」
「ほんと?」って、私はお父さんを見た。
「うん。外食なんて、ずいぶんしてなかったから、良い機会だろ」って、お父さんが説明した。「6時に出発するから。7時に予約してあるんだ」
「ありがとう、お父さん」って、まだ笑顔のまま答えた。それから、二人から背を向けて、自分の部屋に上がった。
「どこ行くの?」って、タイラーに何回も聞いた。
一週間後の金曜日。学校が終わってから、タイラーはどこに向かうのかも言わずに、私を車に乗せて色んな場所に連れて行ってた。家の方向には行かずに、別の道に入ったんだよね。
どこ行くの?って聞いても、彼は「どこかに行くんだよ」って言うだけで、場所は教えてくれないんだもん。
「すぐわかるよ」って、いつも返事するんだよね。
「なんで、一緒に行かなきゃいけないの?」って、私は言った。
「だって、絶対楽しいから」って、まるでそれが答えだって言うように言った。
私は腕を組んで、前をじっと見つめた。「もう、なんで教えてくれないの? 意地悪」
タイラーはチラッと私の方を見て、それからクスクス笑った。「知ってる」
沈黙の中、目的地に向かって車を走らせてて、周りの景色を見てたんだけど、ついに車が止まった。ここに来るのに30分くらいかかったな。
私は首を伸ばして、止まった車の窓から外を見た。タイラーは、右側にある建物の前に車を停めてた。上を見上げて、その建物に大きく黒い文字で書かれた看板を読んだ。
どこにいるのか分かって、私はびっくりして目を見開いた。そして、タイラーの方を向いた。「スケート場に連れてきたの?」
タイラーは頷いた。「エミリーがスケートしたことないって言ってたの覚えてたんだ。今、やってみたら?」
私は笑いながら首を振った。「いつも、エミリーの予想外のことばっかりするんだから。まあ、別に嫌じゃないけど」って答えた。ずっとローラースケートやってみたかったけど、なかなか機会がなかったんだよね。私は向き直って、車のドアを開けた。「ほら、行こっ」
建物に入ると、タイラーは私たち二人のためにローラースケートと膝当てと手首ガードを借りた。それから、階段を降りてスケートエリアに向かった。そこでベンチに座って、それらを装着した。
準備ができたから、立ち上がってみたんだけど、足が滑って全然うまくいかない。ベンチに掴まってバランスを取って、また座り込んだ。
うーん…思ってたより難しいな。
「ねえ、私、ここで何やってるのか全然わかんないんだけど」って、タイラーがスケートを履き終わって、倒れもせずに立ち上がってるのを見て、言った。
タイラーは笑った。「大丈夫だって。俺が教えてあげるから。実は簡単だよ。すぐ慣れるよ」
さっき、私が立つのも大変だったのを知ってるから、私は首を振った。「無理だと思うけど」
「まず、スケート履いたまま歩けるようにならないと」って言いながら、彼は何の問題もなく床を滑ってた。まるで当たり前みたいに。それから、私の方に滑ってきた。「自転車に乗るみたいなもんだよ」