第2章
アマーのハートから。
「エイプリル…エイプリル…起きて…エイプリル…」
それは、二番目の兄の声で、僕を起こす声だった。
マークってやつは、いつも優しくて、世話好きなんだけど、ウザったくもなるんだよな。
兄弟ってのは、たまにイライラするものだって言うけど、
僕の兄弟も、例外じゃなかった。
目を開けると、17歳の僕は、リビングでうたた寝してたんだよね。
マークを見たら、すごい顔してる。
「なんだよ?」
「なんで枕の下に置いてた金、取ったんだ?」
なんか面倒なことになりそうだったから、起き上がろうとした。
「何のお金のこと?…マークのお金なんて、見てないよ…」
「エイプリル、あれはお金にはちゃんと目的があったんだ。なのに、なんでお前の部屋に入って、取ったんだよ。初めてじゃないし、もう面白くないんだよ。お前、泥棒になったみたいで、この家じゃ何一つ安全じゃない…」
「うーん、マーク、まず第一に、部屋に入ってないし、お金も取ってないよ。第二に、私は泥棒じゃない。そんなこと言うのやめて。お母さんに言うよ。お金、探してきなよ。私をほっといてよ…マークのものは、一度も無断で取ったことないし…」
ちょっとイライラしながら、マークに向かってそう言った。私を泥棒呼ばわりするなんて、むかつくんだよ。人に言われる前に、人のものに手を出すような人間じゃないんだから。
早く学校に行きたいな。本当はもう大学に入ってるはずだったんだけど、ちょっと遅れちゃって。去年の高校卒業から、ずっと家にいて、待ってるだけなんだ。
だから、みんな好き勝手に私を責めるんだろうな。
前はレイチェルが、自分のものをいつも探し回ってたけど、今はマークも仲間入り。
次は何が起きるんだろうな。
「レイチェルが、お前が取ったって言ってたぞ…今朝、俺の部屋に入っていくのを見たって…」
「嘘だよ…マーク。信じてよ。部屋にも入ってないし、お金も取ってない。そんなこと、絶対してない…」
マークは混乱してるみたいだけど、誰かが責任を取らなきゃいけないんだ。レイチェルは、いつも可愛いお姫様で、悪いことなんてしないことになってる。
一方私は、いつもほとんどの責任を負わされる。
レイチェルが何かすると、私が責められるんだ。
悲しいけど、逃げられないんだよね。
マークは、これ以上問題にしたくなかったのか、怒ってどこかに行っちゃった。
すごく気分が悪くなって、レイチェルを探しに行った。
どこにもいないんだよね。
もう学校から帰ってきてる時間なのに。
もう4時だし。もしかしたら、放課後のレッスンとかに行ってるのかもしれない。
レイチェルはもう高校生で、学校で2回も飛び級してて、今にも13歳で卒業しそうなんだ。
神様も、両親も、兄弟も、世間も、みんなレイチェルを特別扱いしてる。
一番優遇されてるんだよ。
前は気にしてなかったけど、最近、どうしても悲しくなる。
私が、一番下の子供だったら良かったのに。そしたら、もっとみんなに構ってもらえたのにって。
みんな、私はもう大人だって思ってるけど、レイチェルはいくつになっても、家のベイビーなんだよね。
正直言うと、たまに、レイチェルがいなかったらって思うこともあるけど、妹がいてくれて、感謝してるんだ。
レイチェルに、なんでマークに、私が盗んだって言ったのか、聞いてみたけど、返事してくれない。
マークが、この話はもういいって言ったけど、私は聞かなかった。
「人に泥棒だって言うなら、証拠を見せてよ。一回も捕まったことないじゃない。もしかして、レイチェルが盗んで、誰かをスケープゴートにしたかったのかな。都合よく私が泥棒にぴったりだもんね。もうやめてよ、レイチェル…面白くないんだから。私が黙ってるからって、つけあがらないで。次からは、黙ってないからね。そうなったら、嫌なことになるかもしれないよ。もう、冗談じゃないんだから…わかってる?」
レイチェルはテレビに釘付けで、私の方を向こうともしないし、返事もしない。
こういう時は、いつも言葉が出なくて、自分を弁護する言葉もないんだよな。普段のレイチェルは、すごい言い訳するのに。
悪いことをするたびに、いつも被害者のふりをするんだよね。
これが、私が家で経験したことの一部で、レイチェルが生まれてから始まったことなんだ。
両親は、お金がなくなったって聞いて、誰に目をつけたと思う?もちろん、私だよ。
「みんなには、もっと良い人生を送ってほしいんだ。悪魔に利用されて、恥をかかせたり、自分をだめにするようなことはやめてくれ。エイプリル、もしマークのお金を盗んだなら、返しなさい。二度とそんなことはしないでくれ。何か欲しいものがあるなら、私かお母さんに言いなさい。エイプリルは、妹の見本になるべき年齢なんだよ。レイチェルは良い子だし、自分のもの以外は絶対に取らないってわかってる。お願いだから、この家族を支える良い道徳観を守ってくれ。もうこんな話は聞きたくない…わかった?」
私は、私がやったんじゃないって弁解しようとしたけど、誰も信じようとしないし、話も聞いてくれない。
自分の部屋に行って、子供みたいに泣いた。
すごくつらかったし、黙っていられなかったんだ。
その日の夕食、お母さんと一緒に作ってるときに、この話を切り出してみたんだ。お母さんなら信じてくれるかなって思って。そしたら、お母さんはこう言ったんだ。
「エイプリル、誰もあなたを責めてるわけじゃないのよ。でも、こう考えてみて…お兄ちゃんのデビッドはイギリスで勉強してるし、マークは学校に行きながら、お父さんの友達の電気屋でバイトしてるでしょ。稼いだお金は、将来のために貯めてるのよ。誰かが、それを取っちゃうなんて、すごくひどいわ。この家じゃ、何一つ安全じゃないってことになる…心配になるわ。あなたの妹は小さいし、自分のものじゃないものを盗むような子じゃないわ…」
「お母さん、レイチェルはもう13歳よ…赤ちゃんじゃない。レイチェルにも聞いてみたら?なんで私が黒い羊みたいになってるの?もしかしたら、レイチェルが取ったのに、私を責めたんじゃないの。そうすれば、いつまでもお姫様でいられるから…」私は、玉ねぎを切りながらそう言った。
「言い争うのはやめましょう、エイプリル。とにかく、注意を守りなさい。自分のものじゃないものは取らないで。何か欲しいものがあったら、言いなさい…」
私は、どうあがいても勝てなかったんだ。完全に時間の無駄だった。
そして、私は、やったことのないことを認めたんだ。
私は、聖人ぶろうとしてるわけじゃないけど、これが、うちの家の政治なんだ。本当に嫌なんだよ。
だから、6月が私にとってすごく大切なものになるんだけど、まだ先の話なんだよね。
全部を知らないで私を判断しないで欲しくて、全部話したいんだ。