第21章
アマーのハートから。
その日、家に帰る途中、色んな歌を歌いながら、雑用をこなしてた。
たまたま家にいたルイスは、あたしのことを見て「どうしたんだ?」って不思議そうにしてた。
あたしはシラフでいる代わりに、歌ったり笑ったりしてたんだから。
彼はすぐに何か聞いてくるようなやつじゃない。
次の日、あたしに「フィリップに、例の要求の件で話したか?いつまでにってやつ」って聞いてきた。
あたしは「まだ伝えてない」って言うと、彼はまくしたて始めた。あたしに何をするつもりだって。
あたしは彼の脅しに全く動じなかったし、彼をじっと見たり、怖がってる様子を見せることもしなかった。
返事も何も言わなかったけど、心の底では、彼が「あたしは何を企んでるんだ?」って思ってるのがわかった。あたしが相手にしてないから、延々とまくしたててた。
フィリップに会うことになってる日に、あたしは準備して、お気に入りのTシャツにブルージーンズのジャケットとズボンを着た。
白いスニーカーに、ポータブルのシングルチェーンバッグ。
いい匂いがするように香水もつけたし、簡単なメイクもした。あたしはガチのメイクとかしないんだけど、たまにはちょっとやってみる。
鏡で自分をチェックして、大丈夫だって確認した。
週末だったし、きっとあたしを迎えに来て、どこかいい場所に連れて行ってくれるんだと思った。二人だけのプライベートラウンジで、静かで、いい音楽が流れてるような場所。
そこで、あたしは彼に全部話すつもりだったんだ。
今日が、あたしたちの最後の日になるかもしれない。一緒にいられる最後の日かもしれない。
あたしのことを全部話したら、彼はあたしを振るかもしれないし、罵倒するかもしれない。
彼はずっとあたしを騙されてた、あたしは嘘をついてたって思うかもしれない。男と一緒に暮らしてて、あたしは彼を騙してたって。
フィリップはすごく怒って、あたしを許さないかもしれない。それはすごく辛くて、深い傷になるだろう。あたしは悲しくて、寂しくて、イライラするだろうけど、時間が経てば大丈夫だってわかってる。
誰もあたしの道のりを理解してくれないし、あたしの話を全部話したとしても、誰も理解してくれないだろう。
でも、彼らが理解するかどうかは、実はそんなに重要じゃない。
あたしの人生だし、自分をがっかりさせたりしない。
いつか家に帰るんだ。明るく、幸せな人間になって。もっといい自分になって、自分の人生を精一杯生きるんだ。
フィリップとの話を終えたら、ルイスを懲らしめてやる。
彼からお金を取り返す方法を見つけるんだ。
あいつに、あたしが今まで頑張って得たものを全部奪われるわけにはいかない。
あの金は、あたしがまた人生をやり直すために必要なんだ。警察を巻き込むことになっても、何としてでも手に入れる。
鏡の前で、あたしは自分を見て、今日どうなるんだろうって考えてた。
ゆっくり息を吸って、最後に自分を見てみた。
大丈夫そうだし、服装も完璧。
笑顔で、明るい面を見ようとした。もう一度息を吸って、出かけた。
居間にいたルイスがあたしを見て、どこに行くのかって聞いてきた。
あたしが答える前に、彼は言ったんだ。「…ああ、フィリップとデートか。金持ちの彼氏と。お前が俺の言うこと聞かないと、すぐに振られるぞ。実際、お前にこれを渡す。いい返事をしろ。いい返事をしないと、お前をバラす。今週中にだ。逃げられないぞ…」
あたしは返事をしなかった。どうせ最後はあたしの勝ちだってわかってるから。ルイスに笑われるわけにはいかないし、させない。あたしは自分のことを暴露するつもりだし、彼は何も掴めなくなる。彼はバランスを崩して、倒れる。
あたしは彼を無視して、ドアに向かって歩き出した
「…ところで、お前、いい感じだな。金持ちの彼氏が良い仕事してるってのが、お前の体に出てるな。俺もすぐに、彼のプレゼントの恩恵にあずかることになるだろう。お前だけ楽しむのは許さん。今日もフィリップに思い出させてやれ。俺の車と金を早く寄越せって、大声で耳に叩き込んでやれ。このチャンスをうまく使え、エイプリル。そうしないと、後で後悔することになるぞ…」
あたしは一言も言わずに、出て行った。
フィリップに電話して、もう外で待ってるって伝えた。彼はもうすぐだって。
まもなく、フィリップの車が走ってくるのが見えた。
あたしは彼を待ってたバス停からゆっくり歩き始めた。
彼は車を止めて、あたしは彼に合流して、出発した。
しばらく話して、緊張をほぐそうとした。
心臓がドキドキし始めたけど、落ち着かせようとした。
フィリップはあたしの服装を褒めて、「すごく素敵だね」って言った。
あたしは微笑んで、お礼を言った。彼は体を傾けて、あたしの頬にキスをした。
「君は美しいよ、エイプリル。このセリフを何度も聞いてるだろうけど、言わせてくれ。君は傑作だよ。賢くて、率直で、知的で、一緒にいて楽しい。それに、服装のセンスも最高。モデルみたいだし、君の全部が好きだよ。お世辞じゃないんだ。本気で言ってるんだ…」
あたしは少し顔を赤らめて、満面の笑みでありがとうって言った。
フィリップみたいな、あんなに素敵な人が、そんな素敵なことを言ってくれるなんて。いつも、周りには美しくて、成熟した、洗練された女性たちがいるのに、あたしを選んでくれた。どんな女性だって、こんなこと言われたら、世界の頂点にいるような気分になるだろう。
「君に何かあげようと思って。気に入ってくれるといいな」
彼は言って、あたしはまだ微笑んで返事したんだ
「いつもあたしを甘やかすんだから。フィリップは、いつもあたしに何かくれるんだから…」
彼はニヤニヤ笑ってた。すごく嬉しそうだった。あたしと一緒にいるからか、あたしの存在が彼を喜ばせてるからか。
「場所に着いたら渡すよ。君を笑顔にするのが、俺の仕事なんだ…君が不幸なのを見たくないんだ。そして、何か必要なものがあったら…何でもいいから、遠慮なく教えてくれ。エイプリル、心から愛してる。君は全部を占めてるんだ…何も残ってないんだ」
あたしは笑い始めた。リラックスしたし、フィリップと一緒にいると安心する。
彼はあたしを安心させる特別な方法を持ってるんだ。
あたしも彼を愛してるって返事した。
ルイスのことを考えて、顔をしかめた。
ある考えが頭に浮かんで、あたしは尋ねることにした。
「…あたしがどんなことしたら、あたしへのあなたの愛が薄れたり、憎しみに変わったりする?つまり、一番悪いことって何?あたしがあなたを嫌いになって、もう関わりたくなくなるようなことって?」
あたしはふざけて聞いたけど、心の底では本当に知りたかったんだ。彼を失うのが怖くなって、さりげなく質問を投げかけたんだ。
彼はまだ微笑んだままで黙った。
「そんなことになるようなこと、あんまり思いつかないな。憎しみって強い言葉だし…エイプリルのこと、嫌いになることなんてないと思う。君は天使みたいだし、すごく特別だよ。俺の目には悪いことなんて何一つないし、どんなことがあっても、君を嫌いになることなんてない…そんなこと、あるかな…」
あたしは深く考えてって促した。彼にとって、付き合ってる女性で嫌なことって何?
「うーん、やっぱり何も思いつかないな。多分、君が近くにいるから、まともな思考ができなくなってるんだと思う。でも…多分、彼女が浮気したらかな。浮気は嫌だな。彼女が俺と別れて、他の人と付き合うならまだしも、他の男と付き合ってて、俺だけだってフリするのは最悪だよ。そんなひどい仕打ちは、誰も受けるべきじゃない…男も女も。関係ってのは、お互いに忠誠心を持つものなんだ。リスペクト、思いやり、真実、そして愛。それは要求じゃなくて、当然のことだ。嘘、浮気、暴力は、俺にとっては最悪だよ。真面目な人はみんな、そう思うんじゃないかな。誰だって、軽蔑されたり、侮辱されたり、嘘をつかれたりするのは嫌だろう。浮気しないのは、関係において議論の余地があることじゃない。当たり前のことなんだ…」
彼はあたしの方を見た。あたしはなんとか笑顔を作った。全然大丈夫じゃなかった。まるで、あたしのことを間接的に話してるみたいだったから。
「エイプリル、君が俺に対して浮気することについて、心配したり、恐れたりする必要はないよ。それは君の権利だし、俺はそれを奪ったりしない。胸を張って言えるけど、君も100%誠実だよ。君は冷静で、落ち着いてて、家庭的だし、多分、真剣な彼氏もいなかっただろう…それとも、真剣な関係ってあったのかな。高校生みたいな関係じゃなくてさ。本当に真剣なやつ…?」
「はい…いや、別に…そうですね…って言おうとしてた…ない…」あたしは明らかにどもってた。
すごく罪悪感を感じてたんだけど、フィリップは突然笑い出して、その笑い声があたしの緊張した体を和らげた。
「やっぱりね…君が話してる関係って、高校生みたいなやつだってわかったよ。多分、俺が君の最初か二人目の男だよ。君はまだ若いし、恋愛経験もそんなにないかもしれない。怖がらないで、愛しい人。俺は君を傷つけたり、意図的に悲しませたりすることはないよ。もし、何か気に入らないことがあったら、遠慮なく言ってくれ。俺は夢中になってたり、気づかずにやってしまうこともあるかもしれない。でも、意図的に君の気持ちを傷つけることはしないよ。だから、もし俺が何かして、君が不愉快になったら、教えてくれるかい…?」
あたしはうなずいた。彼は優しくあたしの頬に手を添えた。
彼は運転を続けた。「あなたのいとこ…兄弟のルイスは元気かな。先週電話してきたんだけど、言い忘れてた…でも、君は知ってると思った。彼は明らかに俺のことを見てたよ。俺の車のモデルとか、いくらで買ったのかとか聞いてきたんだ。彼は気に入ってるみたいで、近いうちに同じようなの持ちたいって言ってた。車の値段を言ったら、すごく高いって叫んでたけど、やっぱり欲しいって言ってた。それから、君が彼に、どれだけ俺の車をすごいって言ったか話したのかって聞いてきたから、あたしは何も言ってないよって言ったんだ。彼は、別に大丈夫だって言ってた。ただ、様子を見て、君のこと気にかけてるのも忘れないでくれって…」
フィリップは笑い始めて続けた。「…冗談だって言ってて、二人で笑ったよ。様子を見てくれて感謝してるよ。君が友達じゃなくて、家族と一緒だってわかってるから、安心してる。俺は自分の女が友達といるのは好きじゃないんだ。友達が変な方向に導くかもしれないからね。もし、家に帰ることになったら、ルイスに何か良いものを買ってあげようか。感謝の気持ちを込めて。どう思う?」
あたしは笑顔でうなずいた。
目的地に着いたときは、ほっとした。
彼は車を止めて、あたしたちは降りた。
彼は小さな四角い箱を持っていた。それがプレゼントだと思った。「プロポーズするのかな?」って、あたしは心の中で思った。
変な考えだし、あの素敵な箱は大きいし、指輪が入ってるような箱じゃない。
彼はあたしの手を取って、素敵な場所へ入っていった。
VIP席に案内されて、座った。
彼は色々注文して、箱をあたしに渡した。
開けてくれって言われて、すぐに開けた。
好奇心ってやつが、あたしを支配してたんだ。
中身は本当に綺麗だった。金のチェーンと、素敵なブレスレットが二つ。
すごく綺麗。
あたしは何度もありがとうって言った。
フィリップに出会うまで、あんなに高いものを持ったことなんてなかった。
フィリップは、あたしにプレゼントをくれるのをやめないんだ。色んな種類のを、全部高価なのを。
あたしは何もあげたことがないんだ。
全部持ってるような男に、何がプレゼントできるんだろう。
何か、あげられるものを考えてみよう。
大切なのは、ギフトじゃなくて、与える心だって言うし。
テーブルに運ばれてきたご馳走は、あんまり食べられなかった。あたしは、どうやってルイスのこと話そうか、そればかり考えてた。
だって、彼に会うように頼んだ理由じゃない。今日ここに来た、一番の理由なんだから。
家を出る前は、あたしの心は強くて、全部彼に話すつもりだったんだ。カバンから猫を出すように、全部隠さずに言おうと思ってた。
彼に会う前にあった強さと熱意は消えてしまって、あたしはもう何も力がないんだ。まるで怖い小ネズミみたい。
もう、どこから、どうやって始めればいいのかわからない。
フィリップを失うわけにはいかないけど、これをしないと、ルイスが暴露するだろう。
そして、今日フィリップが言った、彼の恋愛観からすると、あたしは危険な道に立ってるんだ。
フィリップはあたしに優しくしてくれたし、無償の愛で愛してくれて、支えてくれた。
彼はあたしを愛されてるって感じさせてくれたし、あたしを評価してくれたんだ。あたしのことだけじゃなくて、あたしの周りの人たちのことも気にかけてくれた。
彼を傷つけることなんてできない。絶対に、フィリップを秘密で傷つけたりしない。
彼はそんなことするに値しないし、あたしはもう二度と、彼みたいな男は見つけられないかもしれない。
ルイスみたいな男はどこにでもいる。権利があると思ってて、何も植えてないのに刈り取ろうとする男。虐待的な男、見せかけだけの男。女たらし。エゴイストな男、プライドの高い男、無礼で嘘つきな男。
彼らは安く手に入るし、どこにでもいるし、すごく上手く振る舞うんだ。
彼らの名前はルイスである必要はないけど、ルイスは完璧な例だ。
もし、女性がそういう男に出会ったら、彼らをプリンスチャーミングと間違えてしまうかもしれない。彼らが羊の皮を被った狼だってことに気づかずに。
彼らは何ヶ月もフリをすることができるけど、ある日、彼らは本当の姿を見せて、女性をショック状態にするだろう。
フィリップみたいな男は珍しくて、安くもなくて、見せかけでもない。彼らは本物で、高価なんだ。
もし、女性が運良くそういう男に出会えたら、彼を傷つけるようなことは避けて、彼の愛に応えるようにするべきだ。
あたしは、フィリップがいてラッキーだし、それを台無しにするようなことはしない。ルイスでさえも。
「それで、何が言いたかったの?」
フィリップが、現実に戻してくれた。
「…少し、距離を置いてるみたいだけど。何か悩んでるの、エイプリル?覚えててほしいんだけど、何でも話して。いつでも側にいて、感情的にも、肉体的にも、経済的にもサポートするよ。君に必要としてるのは、信頼だけだよ。俺を信じてほしい。だって、俺は君を信じてるんだから…」
言葉が出てこない。どこから話せばいいのかもわからない。