第22章
AMAHのハートから。
「別に大したことじゃないんだけどさ、話したいことがあって…その…」
話す内容を一生懸命考えてた。意味が通るようなやつを。
彼が続きを促してきた。
「…仕事のこと。そう…仕事のこと…」
真剣な顔で、驚いたように彼が言った。
「え、前にうちの会社で働かないかって誘ったの覚えてる?断ったけど。今のとこクビになったの?それとも、もっといいとこ探してるだけ?」
「クビじゃないよ。ただ、もっとステップアップしたくって」って言った。
「やっと俺の計画に乗ってくれるんだね。嬉しいよ。来週中に、オフィスでいい感じの場所を用意するよ。来月からね。少なくとも、いつでも君に会えるようになるんだ。でも、それだけのために会いたかったの?なんか深刻な話かと思ったよ…マジでビビった。別れる話かと思ったし。子供がお母さんにオヤツをねだるみたいに、土下座する準備もしてたんだから。深刻な話じゃなくてよかったよ…」
彼にお礼を言って、他にも色々話した。
その後、別れることになって、ルイに何を買ってあげられるか聞かれたから、デザイナーズウェアとか勧められたんだけど、ルイはお金が好きだし、現金の方が喜ぶって言った。
それから、もう一つ、こっそり話した。
「…ルイは車も好きだし、お金があったら、ルイの憧れの車をプレゼントしてあげたいんだけどな…」
「いいね。ルイは本当に君のこと大事にしてるんだね。きっといいお兄さんなんだろうね。こんな風に思ってあげるなんてさ。俺のガレージに古い車があるんだ。そんなに古くもないんだけどね。3年前に買ったんだけど、まだすごく調子いいし、見た目も新品みたいなんだ。ちょっと困ってる友達に譲ろうと思ってたんだけど、君のためならルイにあげてもいいよ。ルイが喜んでくれるなら、俺は何でもするつもりだよ。ハインダーだよ、すごく速くて強い車なんだ。この車が出たとき、俺も欲しかったんだよ。まるで機械みたいでさ。一生懸命働いて、買うためにお金貯めたんだ。それから、ハイランダー・ジープを運転するのはやめたんだけどな」
ルイはハイランダーを気に入ると思うよ、いい車だしね…」
嬉しかったけど、ルイがフィリップの高い車をすごく欲しがってるから、ちょっと不安だったりもした。
フィリップの車はベンツっていうんだけど、街で一番高くて、一番速い車のうちの一つなんだ。
ルイは、自分には買えないものを欲しがってるから、本当に困る。お金の半分も持ってないのに、なんでそんなこと言うんだろ。いつものルイって感じ。
フィリップは封筒を開けて、たくさんのお金を数えて、奥の方に入れてから閉じた。
それをルイのためにって私に渡した。
それから、財布から現金もたくさん出して、数えもせずに私に渡してきた。
「現金は好きじゃないの知ってるよ。初めて会った日にそう言ってたし、プレゼントとか買って、変えようとしてたんだけどさ。でも、ちょっとは自分のために使ってほしいんだ。いつまでも綺麗でいてほしいんだ。君のお給料なんて雀の涙だろうし、一ヶ月分にも満たないだろうからさ。だから、このお金で、好きなことして」
言われなくても、本当にお金が必要だったし、もう一度貯金を始めようと思ってたんだ。悲しいことにならないようにね。
彼にお礼を言って、キスを交わして、それからまたキスした。
キスだけで、それ以上は何もない。
この瞬間が終わってほしくなかった。フィリップは私をすごく特別な気持ちにしてくれたんだ。
ルイなんか、全然そんなことしてくれないのに。
その夜、彼が送ってくれて、私が中に入るまで、すぐに立ち去ろうとしなかった。中に入ってから、彼が車を走らせる音が聞こえた。
ルイは、私が家に入るのも待たずに、文句を言い始めたんだ。
「なんでそんな時間にかえってきてんだよ。フィリップと、もう10回もやったんだろ。お前は安上がりなんだよ。金持ちには媚び売って。体使って彼を誘惑してるんだろ。お前はマジでアホだよ。フィリップは飽きたらお前を捨てるぞ。体の汁を吸い尽くして。自分が愛されてるなんて勘違いしてんじゃねーぞ。あんな金持ちは、ただ遊びたいだけなんだ。お前にもう飽きたら、ポイ捨てされるだけだよ。でも、まだお前のガチガチの体を楽しんでる間はさ、俺の車と金を手に入れたいんだよ。それで、どうなったんだよ…いつになったら俺の車買ってくれるんだよ?」
すごく慎重に答えるようにした。
怒りがこみ上げてきてたけど、なんとか抑えようとした。
「フィリップはさ、今はビジネスがあんまりうまくいってないから、あの高い車は無理なんだって。でも、別の車なら用意できるって…ハイランダー・ジープで、何百万もするやつ…」
私がまだ話してる途中で、ルイが遮ってきた。
「何ができるってんだよ。フィリップはミリオネアだぞ。この間、彼の会社の純資産を調べたら、途方もない金額だったんだ。あいつは金持ってるくせにケチなんだよ。お前が何も言ってないのかと思ったよ。この前、あいつに電話して、さりげなく車のことを聞いてみたんだけど、まるで何も知らないみたいな感じだったからな。まあ、知ってるけど、知らないふりをしてるだけなんだろうけどさ。俺は妥協するつもりはないって、あいつに伝えとけ。ハイランダー・ジープだって高いけどさ、俺が欲しいのはベンツなんだよ。誰でも買える車じゃないんだからさ。妥協とか、ベンツっぽいのとか、そんなのいらないんだよ。ベンツか、それ以外はなし。それをあいつに伝えとけ。そして、今月中に手に入れろ。それが期限だ…ハイランダーでベンツの代わりにするなんて、狂ってるだろ。そんなこと誰がするんだよ?お前が朝昼晩、彼の体で奉仕しなきゃいけなくなったとしても、そうした方がいいぞ。だって、俺はお前を暴露するからな。お前のことを恥ずかしい目に遭わせて、同時にフィリップも失うことになる。俺を失ったら、全てを失うことになるんだからな。だから、さっさと行動しろ。こんなラブコメみたいなことやってる暇はないんだぞ。忠告しとくぞ、お前のために…」
私はバッグを持ってトイレに入り、彼がルイに渡したお金を数え始めた。
7万円だった。私の分は5万6千円。合計で10万円以上になった。ルイに一銭も渡すつもりはなかったから。
フィリップが私に渡したお金は、ルイが私に浴びせた侮辱の埋め合わせに使ってやるんだ。
部屋から出ていくと、彼が出てくるところだった。
フィリップがお金をくれたか聞かれたから、明日遊びに来る女に送るお金が急に必要になったとか言ってて、フィリップは私にプレゼントを買ってくれただけだって言ったんだ。現金はくれないんだって。
ルイは、フィリップをケチだって呼んだ。
私に、フィリップとどんなセックスしたか見せろって言ってきた。
もし触ってきたら、絶対に警察に行ってレイプで訴えてやるって言った。
私がそう脅したから、彼はショックを受けてた。
「お前、マジで図に乗ってやがるな。今月が終わるまでに、俺の車を手に入れなかったら、マジで痛い目見せてやるからな。賢いと思ってんだろ。間違ってるって証明してやるからな…見てろ…」
彼は怒って出て行った。
私はお金を全部持ったまま部屋に入った。1日で何もしないで、こんなにお金が手に入って、金持ちになった気分だ。周りを見回して、安全な場所に隠した。
フィリップに真実を伝える方法については、まだ何も考えてないんだ。
どうしたらいいのかわからないけど、見つけ出すつもりだ。でも、今は、この瞬間や、フィリップとの短い時間を台無しにしたくない。
全てが崩壊する前に、この瞬間を楽しもう。