第17章
あの日の後、ここ数日、何か特別な出来事があったわけじゃない。リアン・カーテルのいつものルーティンは相変わらず。違うのは、いつも携帯をいじってて、キース・ランチェスターとメッセージをやり取りしてることくらいかな。あのさ、キースはリアン・カーテルの家を出る前に、自分の電話番号を教えてくれたんだよね。
キースは、また友達になれたリアン・カーテルと連絡が取れなくなるのは嫌だった。定期的に会いにいくっていうのも考えたけど、お兄ちゃんのカルビンがいるから、やめといた方がいいかなって思ったらしい。それで、連絡先を教えて、都合がついたら連絡してくれってリアン・カーテルに言ったんだ。
リアン・カーテルは、使ってない携帯をタンスの中に持ってたんだけど、電話帳に誰がいるのか全然わからなくて、一度も使ったことがなかったんだよね。で、何気なく母親に新しい携帯を買ってもらえないか相談したら、母親はすぐにOKしてくれたんだ。それで次の日、カーミーが新品の携帯をリアン・カーテルに渡してくれた。新しい携帯の設定が終わってから、リアン・カーテルはキースの番号を家族の電話番号と一緒に携帯の電話帳に入れたんだ。
「おはよう。新しい番号だよ。ちなみに、リアン。」
リアン・カーテルがメッセージを送ったら、すぐに携帯がピコンって鳴って、びっくりしちゃった。まるでキースがメッセージを待ってたみたい。
「連絡するのに丸一日かかったね。」
「私のこと、待ってたの?」
「なんで?本読んで忙しいんだ。」
「わかった。しっかり読んでね、ミスター・プロタゴニスト。」
それから、リアン・カーテルとキースはしょっちゅうメッセージのやり取りをするようになった。別に面白い話題があるわけじゃないんだけど、お互いのことをよく知れるから、それでよかったんだよね。リアン・カーテルは、キースの本名を知ってから、ずっとキースのことを「ミスター・プロタゴニスト」って呼んでるんだ。キースに、なんでそんな呼び方するのか聞かれたとき、リアン・カーテルは、彼には物語の主人公が似合ってるからだよって、何気なく答えた。
「もし俺が主人公なら、ヒロインは誰になるんだろう?」
「それは知らないけど、きっとすぐに会えると思うよ。」
リアン・カーテルは、キースを含め、誰にも真実を話す勇気がなかった。それに、誰が信じてくれるって言うんだ?本当に自分たちは本の登場人物で、自分たちの人生や経験は、ただの想像力豊かな作者によって作られたものだって、みんなが思うのかな?もし本当にこんなことを話したら、おかしいって思われるかもしれない。
でも、彼女が話す勇気がない本当の理由は、リアン・カーテルがすでにすべてが現実だと思っていたからなんだ。家族の愛や優しさを感じることができたし、周りの自然環境も感じることができたし、人間が持つべき様々な感情を感じることができたんだ。何ヶ月もここに住んで、リアン・カーテルは自分が今、本の中で生きているっていう考えを消そうとしたんだ。ここが彼女の世界で、周りのすべてのものが現実なんだって。
数週間が経ち、いよいよ明日から学校が始まる。両親が言ったように、リアン・カーテルはフランシスと同じ学校に通うことになる。カーミーは、転校に必要な書類をもう準備してくれた。健康状態に関しては、カルビン博士が許可を出してくれて、もっと色々な経験をして、新しいことをたくさん学ぶのがいいって言っていた。カルビンは、去り際にリアン・カーテルに何か言ったんだ。
「トリスタンも君と同じ学校に通うんだ。もしかしたら、クラスメイトになるかもしれないね。」
「でも、彼は私に教えてくれなかったわ。」
「ああ。」
カルビン博士は肩をすくめた。
「じゃあ、彼には僕が言ったことは内緒にしておいて。もしかしたら、トリスタンは明日、君を驚かせようとしてるかもしれないよ。」
「もしそうなら、もうサプライズは台無しだよ、カルビン博士。」
リアン・カーテルの言葉を聞いて、カルビン博士は笑った。彼女が、友達の計画を台無しにしたことにふてくされていると思ったんだ。彼は何気なく手を振って、家を出て行った。
リアン・カーテルは、彼みたいな兄がいなくて本当に良かったって、心の中で神様に感謝していたんだ。カルビンは、弟や妹をからかって、意地悪をするようなお兄ちゃんなんだよね。フランシスも時々リアン・カーテルをからかうけど、彼女が嫌になったり、怒ったりするほどじゃないんだ。この二人を比べたら、リアン・カーテルはいつもフランシスの方がいいって思ってる。
「何してるんだ?自分の部屋で通学カバンを片付けるんじゃないのか?」フランシスは、リアン・カーテルがまだソファーに座って、ドアをじっと見つめているのを見て言った。
「別に。ちょっと考え事をしてただけ。」
「何について?」
「あなたが私のお兄ちゃんで本当に良かったって思ってたの。」リアン・カーテルはそう言って階段を上がって行き、フランシスを置いて行った。フランシスは何が起こったのかわからなかったけど、リアン・カーテルからそんな言葉を聞くのは、なんだかいい気分だった。
明日必要なものを全部カバンに詰め終わってから、リアン・カーテルは携帯を取り出して、短いメッセージを打った。
「明日から学校なの。ちょっとだけ、メッセージの返信が遅れるかもしれないから、事前に言っておくね。」
「わかった。俺も明日から学校なんだ。」
「え?そうなんだ。そういえば、学校の名前、教えてくれなかったよね。」
「だって、聞かなかったから。」
「でも、今聞いてるよ。学校の名前、教えてくれない?ミスター・プロタゴニスト?」
送信した後、リアン・カーテルは彼からのメッセージを受け取らなかった。そんなに深くは考えなかったけど。リアン・カーテルは携帯を置こうとしたとき、キースからメッセージが来た。
「もしまた会ったら、「ミスター・プロタゴニスト」って呼ぶのはやめてくれない?なんか変なんだ。」
「じゃあ、なんて呼べばいいの?」
「ただキースって呼んでくれ。俺の名前なんだから、そう呼ぶべきだろ。」
「嫌なの?」
「うん。」
「そう言うなら、ミスター・ミスター・主人公。」
「…」
リアン・カーテルはキースの返信を見て笑ってしまった。彼はまだ秘密を明かしたくないみたいだから、話題を変えたんだね。リアン・カーテルはパジャマに着替えて、ベッドに潜り込んで眠った。
眠る前に、リアン・カーテルは、ヒロインに会うまで、主人公の成長を見守るのがいいかなって思った。そして、自分自身も努力して、将来の夢を叶えようって思ったんだ。リアン・カーテルは、過去のオリジナルのリアン・カーテルが辿った道を避けるっていつも誓ってる。もしかしたら、主人公の光を借りて、悪いことは何も起こらないって、自分を安心させることができるかもしれない。