第32章
「ねえ、リアン・カーテル、私の問題解決してよ」ジェイミー監督が、すごく真剣な顔で言った。
「え?」
「リアン、お願いしたいことがあって――」
「ヤダ!」リアンはきっぱり断った。「やりたくない」
「えー、なんで?」
「……」
「で?」
「だって、ケリーの代役なんて、他の人探せばいいじゃん。私、演技とか素人だし」
「演技? 何言ってるの……あ!」
すると、ジェイミー監督が急に笑い出した。
「バカだなあ。ケリーの代わりになんて頼んでないわよ」ジェイミー監督は笑いながら言った。
「え、そうなの?」
「もちろん。実際、この映画でケリーの代わりになる女優さんのリスト、もう作ってあるし。ちょっと手間と金かかるけど」
「へえ」
リアンは心底ホッとした。まさかジェイミー監督に、ケリーの代役を頼まれるなんて思ってなかったから。でも、リアンがそう考えたのも仕方ない。さっきのジェイミー監督の鋭い視線、完全に誤解させる雰囲気だったし。
「じゃあ、私、何すればいいんですか、監督?」リアンが尋ねた。
「初恋について、あなたの考えを聞かせてほしいの」
「初恋?」
「そう。お金かけずに、あるシーンをカットしたいから、話を変えようと思って」
「監督、できるんですか?」
「なんでできないの? 私、この映画の脚本家でもあるし」ジェイミー監督は自慢げに言った。「この映画、これ以上時間かけたくないから、主人公が初恋の人と過ごすシーンを変えようと思って」
「どんな風に?」
「主人公と初恋の人が一緒にいる時間を長くするんじゃなくて、初恋の人が学校を去る前に、一緒に過ごした記憶を振り返るシーンにするつもり」
「すごーい! 監督!」リアンは褒めた。
「別に大したことないわよ。それで、あなたの初恋について聞かせてちょうだい、リアン」
十代の恋愛映画だし、ジェイミー監督はリアンの考えを聞きたかった。彼女の見た目から何から何まで見て、きっと男の子たちはみんなリアンに夢中になってるだろうと思った。リアンの可愛い顔と、優しくて優しい性格を見たら、男の子たちが無視できるわけがない。
「あの……すみません、ジェイミー監督。でも……そういうの、全然ないんです」
「ないって……?」
リアンはこくりと頷いた。
「どうして!?」ジェイミー監督は信じられないって顔で尋ねた。「片思いとかでも? 憧れとかは?」
「ごめんなさい、本当にそういうの、全くないんです」
「じゃあ、ここにいるあなたの彼氏は?」ジェイミー監督は、キースを指差して尋ねた。
キースは、監督に急に名前を呼ばれて、本当に驚いた。後ろで静かに聞いてたのに、監督が突然、リアンの初恋について尋ねてきたから。自分には関係ないような顔をしてたけど、キースはずっと、リアンの答えに集中してた。
リアンが誰とも恋愛関係にないって聞いて、キースは心底ホッとした。つまり、リアンはまだ誰も気になってないってことだ。でも、どこか物足りない気持ちもした。
リアンとキースは友達になってから、すごく仲良くなった。二人とも正直に話せるし、一緒にいて楽。リアンは本当に優しくしてくれるし、キースも同じように接してる。たまに、お互いの意見を聞いたりもする。
つまり、相性がいいってこと。
「違いますよ、ジェイミー監督。キースは私の彼氏じゃないです。私、まだそんな歳じゃないし」リアンはすぐに説明した。
どうして主人公と付き合ってるとか言えるんだ? リアンにとって、主人公とヒロインがくっつくのは当然のこと。リアンは、主人公の恋愛に波風立てたくない。
それに、今の状況を考えると、この年で付き合うのは早すぎるって思う。今の子供たちは、まずは勉強して、将来いい仕事を見つけるのが一番。それに、リアンの目標は、この世界で生き残ることと、将来、家族が滅びるのを避けること。もちろん、将来アンドリューと恋に落ちなければ、達成できるはず。
『そういえば、アンドリュー、一週間も休んでるけど、大丈夫かな?』
担任の先生によると、アンドリューのお母さんが電話してきて、息子が本当に具合悪くて、しばらく学校に来られないって言ってたらしい。ジェイミー監督は、たとえアンドリューがこの世界の悪役だとしても、結局は人間なんだから、って思った。そして、普通の人間は、時々病気になるものだ。
リアンが、キースが彼氏だって質問をすぐに否定した時、キースは胸に説明できない気持ちになった。別に彼氏じゃないんだけど、あんなに早く否定されると、ちょっと寂しい。
「それで、キースとはどんな関係なの?」ジェイミー監督がもう一度尋ねた。
「友達」リアンは自信満々に答えた。「たまに、弟みたいに思っちゃうけど」
「誰が弟だよ! 俺はお前より一歳年上だぞ!」キースは反論した。
「えー? でも、私の方が大人だし」
「俺のこと、子供だって言いたいのか?」
「それは、あなたが言ったこと」
厳密に言うと、この世界ではキースの方が年上だ。でも、リアンにとっては、まだお金を稼いで、夢の仕事に就くことしか考えてなかった22歳の女の人なんだ。だから、キースを子供とか弟みたいに思ってる人に、自分が夢中になるって考えが、変に感じるんだ。
ジェイミー監督は、目の前にいる十代の二人を見た。本当に予想外だった。リアンとキースの間には、何かあるって正直思ってた。ジェイミー監督が二人に会ってから、この二人はいつも一緒。リアンが行くところに、必ずキースもいる。
彼女の視線は、突然キースに集中した。キースはまだ、リアンと言い合いしてる。でも、薄い唇には、かすかな笑顔が見える。二人のことを観察して、ジェイミー監督はついに問題を発見した。監督は、突然、若い彼に同情した。
「好きな女の子を追いかける道は、苦労がいっぱいなんだよ」
「それで、監督。今回は、お役に立てなくてすみません」リアンはもう一度謝った。
「いいのよ。キースが手伝ってくれるから」
「え!?」
ジェイミー監督はキースに近づき、彼の肩に腕を回した。
「そうでしょ、キース?」ジェイミー監督は笑顔で尋ねた。「君にも、そういう人いるんでしょ? ね?」
「だって――」
「キース? だって……あ、なるほど!」
リアンは、キースを細い目で見た。キースは嫌な予感がした。
「誰なの? 早く教えて!」リアンは興奮して尋ねた。
「何が?」
「好きな女の子! だから、急にイメチェンしたんだ。ふーん、ふーん。ミスター・主人公、誰を落とそうとしてるの?」
リアンは急に興奮し始めた。ミスター・主人公が女の子を口説くのは初めてのこと。友達であり、秘密の守護者であるリアンは、彼のミッションを助けるべきだ。計算によると、主人公とヒロインが出会うのは三年後。運命的な出会いまで、誰かに夢中になるのはおかしくない。
「教えて! 誰なの? クラスの女の子? それとも、他のクラス? あ、待って! 先輩とか? ミスター・主人公、早く教えて! 誰なの?」
「や、やめろ! 意味わかんないこと言うな!」
『この娘、なんなんだ?』
さっきまで、彼氏じゃないって否定してたのに、あっという間に、キースが女の子を口説いてるって考えたら、興奮し始めた。
『リアンは、俺のこと弟くらいにしか思ってないのか?』
「そう言いながら、耳真っ赤じゃん!」リアンは、彼の耳を指差して非難した。「ほら? まるで、茹で上がったロブスターみたい!」
「やめろ! 暑いだけだ!」
「照れることないよ! それで、どんな子なの? 花とかチョコが好き? それとも、スポーツ好きな活発な子? それとも、一目惚れしちゃうくらい可愛い子? 早く教えて! 説明して!」
「うー! もう、うっとうしい!」
この二人に無視されてる監督は、笑顔で二人を見ていた。彼らから何かアイデアを得るのは無理だってことは明らか。こうなったら、監督はオリジナルの脚本通りに進めて、ケリーの代わりになる女優を探すしかない。ジェイミー監督は、とにかくコネが多いし。
リアンとキースを見て、ジェイミー監督は、時々この子供たちが羨ましかった。まだ、現実の重荷を背負う必要がないから。でも、それでも、ジェイミー監督は、この二人を見て少しイライラした。女の子は優しすぎるし、純粋すぎる。男の子は、シャイでぎこちない。結局、監督は、男の子の方にイライラしてた。
「頑張って、少年。君の成功への道は、本当に大変だろうな」