第2章
ジーナ
レストランで働き始めてから5年、毎晩の自分の行動は完璧に覚えてるって言える。それが良いんだよね、だって今は何も考えてないんだから。だって、今夜エースが自分の家に来るってことばっかり考えてるから。また妄想しちゃってる。でも、そんなことにはならないだろうなーって思ってる。だって、エースとは全然うまくいってないもん。まさか風向きが変わって、あのライオンを飼い慣らせたりしない限りね。
突然、エースのことなんか頭から吹っ飛んだ。レストランに入ってきたお客を見て。30代後半くらいの、超イケメン。ジーナはすっごい笑顔で挨拶して、いつもの席に案内した。
そのお客さんが食べ終わってから数分後、ジーナはすぐさま近づいて尋ねた。
「ブランドンさん、お気に入りのデザートはいかがですか?チョコレートチーズケーキとエスプレッソです。」
ジーナは、ブランドンさんの連れは全然食べてないことに気づいた。どうやら、メモを取るのが仕事らしい。こんな時間に、あんなに要求の多い人が、まだ従業員を雇ってるなんて、どんな状況なんだろう。
「ああ、ありがとう、ジーナ。最後の一切れ、まだある?」
「はい、ブランドンさんのために取っておきました。ブランドンさん、あれしか好きじゃないの知ってますから。」
「そっか、覚えててくれたんだね。」
「もちろんです、ブランドンさん。」
「デザートは何があるんだい?」ブランドンが尋ねた。
「桃マンゴーパイです、ブランドンさん。」ジーナはちょっと気まずそうに答えた。
いつものように、ブランドンは食べた分の代金を支払い、去る前にジーナの手を握った。
「そういえばジーナ、明日はVIPルームを予約したいんだけど。」
「わかりました、エースに言っておきます。」そう言って、ジーナは彼に背を向けた。
ブランドン・ニコラス。完璧な男だってわかる。ダークブラウンの髪で、ハンサム。目力があって、鼻筋も通ってるし、頬骨もシャープで、マッチョに見える。服装からして、お金持ちのビジネスマンだろうな。とにかく、エレガントな男。でも、ジーナのタイプじゃない。
ブランドンのことなんか考えてる場合じゃなくなった。エースがキッチンのドアを塞いでたから。
「ねえ、なんでそんなに睨んでるの?」エースのイライラした顔を見て、ジーナは尋ねた。
「別に、睨んだっていいだろ?」
ジーナはため息をついた。本当は、エースが自分の独占欲の強い彼氏みたいに振る舞うのが、ちょっと嬉しかったりする。
また制服姿で、すごくイケメンでエレガントだって思った。タキシードの制服姿、マジでかっこいい。
「ブランドンさんが、明日VIPルームを予約だって。」ジーナはエースに言った。
エースはブランドンの席を見て、ブランドンもエースらを見ていた。でもエースは、眉間にシワを寄せながら、ブランドンに背を向けた。エーがブランドン以外のお客にそんな態度をとるのを見たことない。エースはさっき、ジーナがブランドンが部屋を予約するって言ったとき、こくんって頷いてたけど、なんか変な反応だった。そして、エースは他のテーブルに行った。
「マリアム、お食事はどう?」ジーナは食べていたものを片付けながら、お客に声をかけた。
マリアム・ベレス。マリアムのランジェリーの社長。40代後半だけど、年よりずっと若く見える。彼女もレストランに遅く食べに来る。また誰かと一緒だったみたいだけど、ジーナの最初の運転手兼ボディーガードはどこに行ったんだろう?いつも一緒に食べてるのに。
「ディナーは最高よ、いつものように。ジェレミーのこと、どう思う?」マリアムは新しい運転手兼ボディーガードのことを尋ねた。
「ステキ。」ジーナはマリアムに答えた。
マリアムはすごく笑って、ブランドンがそっちを見た。ブランドンはマリアムを見て、マリアムはシャンパングラスを上げて、まるでブランドンに乾杯してるみたいだった。彼女の目は、ジーナとブランドンをからかってるみたいだった。マリアムは、ジーナがブランドンに夢中だと思ってたのかも。
「ステキだって? 」マリアムはジェレミーのことを言って、テーブルナプキンで口を拭った。
すごく綺麗にラッピングされたプレゼントを渡された。さっきマリアムのテーブルにあったプレゼントが、自分のためだとは思ってなかった。
「お誕生日おめでとう、マイ・ディア。あなたのためにデザインしたの。彼と寝る時に着るって約束してね。」
彼?誰のこと?ジーナは、ブランドンじゃなくてエースのことだといいなと思った。
「誰のこと言ってるの、マリアム?」
「あなたの思ってる人よ、多分ね。」
ジーナが返事する前に、エースがジーナの前に現れて、マリアムを手伝った。
「ありがとうございます、デュラントさん。」
「どういたしまして、ベレスさん。」
ジーナは、エースとマリアムの親密さに驚いた。マリアムは、20歳くらい年下の男が好きだって知ってる。だって、48歳なのに、付き合ってるのはいつも半分の年の人たちばっかりなんだもん。エースは28歳で、マリアムの好み通り。2人、隠れた関係でもあるのかな?だって、お互い見つめ合う様子は、目がものを言ってるみたいなんだもん。
「ドアまでエスコートしてもよろしいですか?」エースはマリアムに言った。
「ちょっと待って。ジーナと話さないと。」
「お誕生日プレゼント、ありがとう、マリアム。」
「どういたしまして、マイ・ディア。デザイン、どう?」
「まだサンプルはできてないけど、すごくロマンチック。」
「ロマンチックね。まあ、何事も初めてってことあるわ。私のバイヤーたちは、きっと驚くわね。」マリアムはジーナにウインクして、ブランドンの座っているテーブルに行き、彼の耳元で何かを囁いた。
「あなたもマリアムの仕事してるの?」エースがジーナに尋ねた。
「うーん、彼女の新しい製品ラインのアイデアを思いついただけ。2人は何の話してたの?」
「2人が何を話してたか、2人に聞いてみる?」エースは皮肉っぽく言った。「あなた?ブランドンと何話してたの?」
うーん、エース、嫉妬してるみたい。面白い。
「お皿を持つには重すぎるわ。」
エース
ジーナの視線を追って、彼女がキッチンに入っていくのを見届けた。そして、マリアムが自分に近づいてくるのを見た。彼女のヒップは優雅に揺れていて、いつものように外までエスコートした。
「この間は本当にありがとう。」マリアムは、感情のこもったハスキーな声で言った。
「どういたしまして。」エースは答えた。
「ありがとう、エース。私の命を救ってくれて、本当に感謝してる。忘れないわ。」
「ちょうど良いタイミングと場所だっただけです。あんなバーにはもう行かないでください、マリアム。問題しか見つからないから。」
「それに、あなたはなんであのバーに行ったの?あなたも、誰も自分が誰かを知らないような場所にいたかったりする?」
マリアムの声には悲しみが感じられた。エースもまた、孤独な人生を送っていた。でも、理由は全く違う。エースが孤独を感じるのは、それは彼が大切に思ってる人たちの安全のためなんだ。
「レストランを出た後、他に用事あるの?」マリアムが尋ねた。
エースは彼女に微笑んだ。「場合によります。」
「お礼以上のもので、あなたに恩返しできないかしら?」
「マリアム、ゲストと個人的なビジネスをするのは禁止されてるんですよ。」
マリアムは彼に微笑んだ。「あなたはルールを破らないタイプね。」
「個人的なことでなければ、何でも注文してください。」
「面白い答えね。」
「マリアム、あなたが孤独を終わらせてくれる男性は、他にもたくさんいるはずです。」
「それ、前にも聞いた気がするわ。」そして、彼女は車に乗り込んだ。「おやすみ、エース。」
キッチンに行こうとした時、エースはブランドンがジーナのポケットに何かを入れるのを見た。それで、すぐに2人に近づいた。
「今夜は、ご来店ありがとうございます。」エースが突然言ったので、2人は驚いた。
ブランドンの目には、突然の非難に対するイライラが見て取れた。ブランドンがジーナを気に入ってるのは明らか。彼女は綺麗だし、魅力的だもんね。
「また明日。」ブランドンはジーナに言った。
「おやすみなさい、ブランドンさん。」ジーナは言った。
「俺がやるから、ロッカーに行って着替えて。」ブランドンが去った後、エースは言った。
ジーナ
エースが何をしてるのか、ジーナは本当に驚いた。テーブルを拭くなんて、彼の仕事じゃないのに。
「えー、ヘッドウェイターがテーブル拭いてるよ?」
「疲れてるんだろ。お前は24歳だけどな。体力ないな。」
ジーナはエースの言葉に影響されたくなかった。代わりに周りを見回して、同僚たちがみんなキッチンかロッカーに入ったことを確認してから答えた。「じゃあ、ここで仕事が終わったら、家に帰るのにジョギングしたとしても、あんたがしたいならセックスするエネルギーも残ってるってこと。」
もうエースに何を言われても気にしない。ジーナは本当にムカついてる。
「ブランドン、ポケットに何入れたの?」エースが尋ねた。
「なに?」
「ブランドンからお金もらったの?」
ジーナはちょっと考えた。
「そうだよ、ブランドンからチップもらった。」そう言って、エースに背を向けた。
「いくらチップもらったの?」
「関係ないでしょ。」
エースは突然、ジーナのポケットからお金を取り出した。ジーナが持ってたお皿が落ちそうになって、幸いスプーンとフォークだけ落ちた。エースのしたことで、全身がビリビリするようだった。ジーナも、エースが今何をしてるのか理解できなかった。
「なにしてるの、一体?」
エースはジーナのことなんか気にせず、ブランドンから受け取ったチップを数え始めた。
「一万円、これをジョージナ、チップって言うのかよ?」
ブランドンが今日くれたチップが高額だったことに気づき、ジーナは目を見開いた。ブランドンはレストランに来るたびに、去る前にいつもチップをくれる。でも、今日はどうしてこんなに高額なんだろう?ジーナはごくりと唾を飲み込んだ。「たぶん、私のサービスを気に入ってくれたから、たくさんくれたんだと思う。」
お金の真ん中には、白い名刺が挟まってた。エースは、そこに書かれてる名前を読ませるように、ジーナの顔の前に持ってきた。ジーナは、その名刺がブランドンからだってわかってた。当然、チップと一緒に渡されたんだから。
「何言ってるの、ハニーパイ?そんなのわからないほど馬鹿じゃないわよ。」
「もうハニーパイって呼ぶな。なんか変だよ。聞いて、ジーナ、ブランドンからもらった金は、明日返しなさい。」
「あなたは何を言ってるの?あなたは何様?マチョぶるのはやめて。つまんないんだから、それに私にどうしろとか言う権利はないでしょ。」ジーナはエースからお金を取り返そうとしたけど、エースはまだ渡すのをためらってた。
「ジーナ、この金、彼に返しなさい!」
ジーナはエースの目に怒りが見えた。でも、ジーナは彼がどう思おうと気にしなかった。エースがお金を胸ポケットに入れたので驚いた。二度目のビリビリがきた。
「私をハラスメントしてるわ!」
「ごめん。」エースはジーナに謝った。
ジーナは答えず、エースに背を向けた。
エース
ブランドン・ニコラスのことをまた考えて、がっかりした。何か起こる前に、ジーナをブランドンから遠ざけなきゃ。
エースは制服も着替えずに、駐車場でジーナを待っていた。
ついに、ジーナはプレゼントを持ってレストランから出てきた。エースはすぐに彼女を手伝った。
「ジーナ、さっきは本当にごめん。とりあえず、お前の下宿先で会おう。」エースは言った。
「私の下宿先、知ってるの?」
「もちろん知らないよ。仕事はずっと一緒だけど、それでも知らないんだ。」
「とにかく、私が先に行くわね。」
ジーナは古い車に乗り込んだ。彼女が走り出すと、エースはエンジンをかけてギアを入れた。ジーナが出たとき、黒いトヨタアルティスがジーナを尾行してるのに気づいた。さっき遠くに停まってるのを見てたから。
エースは自分の直感を信じることにしたから、すぐにジーナを追った。ジーナが下宿先に着いた時、黒い車も止まったから、ジーナを追跡してたのは間違いないと確信した。
車は再び走り出し、エースは彼らがブランドン・ニコラスのペントハウスに着くまで追いかけた。
エースはすぐに携帯電話を取り出し、誰かに電話した。
「社長、こんばんは。起こしてすみません。」
「大丈夫だよ。どうしたんだ?」相手は言った。
「社長、あいつが、明日、俺と取引したいって。」
「俺たちがカバーする。」
「はい、社長。また。」
「ちょっと待ってくれ、エース。渡したのか?」
「まだです、社長。」
「渡してやれよ、そうすれば、落ち着けるだろ。」
「はい、社長。終わったら。」
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