第12章
ロッド・アズラエルの視点
「アイシャ…」って、彼女の名前を呼んだ。
「ごめん! 誰?」って、彼女はあたしに訊いた。
あたしのこと知らないフリ、まだ続ける気?
「何してんの? 夕飯、作ってくれるもんだと思ってたんだけど」って、あたしは彼女に訊いた。
あたしの彼女は、レンゾのこととかアメリアのこと、知ってるのかな?
まさか彼女にここで会えるとは思わなかったんだよね。だって、あたしに何も言わなかったし。外に出かけるなんて。あたしのこと知らないフリしてるのも、なんか変だし。
「ごめんなさい! でも、あたし、あなたのこと知らないし」って、彼女は答えた。
は?
マジかよ!
あたしの彼女、あたしのこと知らないフリしてんじゃん…
何企んでんだ?
あたしは困惑した表情で彼女を見た。彼女の瞳をじっと見つめて、あたしだって、あなたの彼氏だよって言ってるんだけど。でも、彼女の顔には困惑した様子しか見えない。あたしたちは、お互いに困惑した表情で見つめ合ってる。
「知らないって…」って、あたしが言いかけたら、レンゾがどこからともなく現れた。
「エレイン!」って、あたしの彼女アイシャとそっくりな女の子を呼んだ。
「ごめん!」って、あたしは彼女にこっそり囁いた。
彼女は聞こえたみたいで、あたしに微笑んだ。
「エレイン! アメリアが探してるよ」って、レンゾは言った。
「すぐ行くわ!」って、彼女は答えて、あたしを見て、また微笑んだ。
恥ずかしい!
今、すべて理解できた…
彼女は、アイシャが話してた双子の妹なんだ。そっくりそのまま、瓜二つ。
まさかこんなところで会えるなんて、想像もしてなかった。
1年前に見た人だったんだ。あたしがアイシャと一緒に、ショッピングモールで食料品を買ってたとき。彼女を見たんだよね、あの人も。
こんなに間近で会えるなんて、信じられない。アイシャみたいに、彼女と瓜二つの人を見るだけで、全身が震える。まだ信じられない!
アイシャがからかってるんだと思ったんだ。あたしのこと知らないフリとか。だって、もし彼女があたしのこと知らないフリしたら、あたし、どうしたらいいかわかんないもん。だって、心が粉々になっちゃうし。辛すぎる。もしそんなことになったら。
「おい、行こうぜ!」って、レンゾが呼んだ。
あたしは彼に頷いて、ダイニングエリアまでついて行った。
アイシャの双子の妹を見ただけで、なんかゾクゾクするんだよね。
アメリア・リベラ-スミスの視点
毎日が昨日と同じ日だった。だって、何も変わらないんだもん。あたしはいつも仕事に行って、レンゾと夕食を食べるために家に帰る。
彼に対して冷たくしてたのは、彼の気持ちをこれ以上傷つけたくなかったから。レンゾがすごくあたしを愛してるのは感じてた。彼はあたしに、すごく愛情を注いでくれてた。でも、あたしは彼が求めてる愛には応えられなかった。
あたしたちの結婚式は、あたしにとって一番辛い日だった。いつも頭の中でフラッシュバックする…
フラッシュバック
レンゾが、最初に誓いの言葉を言った。
彼はマイクを持って、話し始めた。「初めて君を見たとき、恋に落ちたんだ。まるで僕の世界は君を中心に回ってるみたいだよ。君は、僕が人生を一緒に過ごしたいって思った人なんだ。君のために、持ってるもの全部、命だって捧げたい。君への愛は、この世のどんな宝石やダイヤモンドにも比べ物にならないんだ。君が欲しいものは全部あげるし、君を女王様のように扱って、いつも幸せでいてほしい。病気のときも、健康なときも、いつも一緒にいるよ」
あたしは深呼吸して、ため息をついた…
彼はあたしにマイクを渡して、あたしはそれを受け取った。今度はあたしが誓いの言葉を言う番だ。
「あなたが最初に愛した人じゃないかもしれないけど、でも、今、あなたはあたしが未来を一緒に見たい人です。あたしには欠点もあるし、完璧じゃないけど、あなたを大切にします。あなたは、あたしが手放したくない人です。神様、毎日ありがとうございます。あなたが私に、困難な時に私を理解してくれる人、あなたを与えてくれたからです。病気の時も、健康な時も、いつもあなたのそばにいます」って、あたしは誓いの言葉を言った。
そのあと、あたしたちはマイクを置いて、ファーザーがまた話し始めた。
「レンゾ・スミス、あなたはアメリア・リベラを妻として迎え入れますか?」ファーザーがレンゾに訊いた。
「はい!」って、レンゾは少しも迷わず答えた。
「アメリア・リベラ、あなたはレンゾ・スミスを夫として迎え入れますか?」ファーザーがあたしに訊いた。
あたしは1分間も喋らなかった。そして、群衆を見て、もう一度ちらっと見た。奇跡が起こるのを待ってた、ブレイキーに会えるかもしれないって。でも、彼はそこにいなかった。
だから、すべての希望を捨てて…
今日から、あたしは前に進んで、ブレイキーへの気持ちを忘れて…
夫を愛し始めることにした…
「はい!」あたしはすぐに答えた。群衆が何か囁いて、問題になる前に。
フラッシュバック終わり
「あたしはまだブレイキーを愛してるし、彼の帰りをずっと待ってる」って、あたしは心の中で呟いた。
あたしは深呼吸して、ため息をついた…
あたしたちは結婚写真を見た。レンゾには辛いだろうな、あたしは彼を遠ざけてるから。あたしは何度も彼を愛そうとした。でも、彼に対して同じ気持ちにはなれなかった。彼と一緒にいるより、一人でいたかっただけ。
彼と一緒にいるのは、あたしの人生で一番長い一日だった…
彼を愛するのは、あたしができる一番難しいことなんだろうな。
結婚して1年。あたしは彼を愛そうとして、彼があたしに注いでくれた愛を返そうとした。
あたしはレンゾをあんな風に扱って、冷たくしてて申し訳なく思ってる。でも、彼に愛してもらえなくなるには、それしかないんだってわかってたから。だって、あたしは彼を愛せないんだって、自分でもわかってるから。
「だって、あたしはまだブレイキーを愛してるから…」
ロッド・アズラエルの視点
太陽が空に輝いてて、まるで月みたいに光ってる。空は穏やかで、鳥たちが自由に空を飛んでる。雲と空は海みたいに青い。木々の枝から、鳥たちがさえずってる。風が木を揺らして、あたしの肌を通り抜ける暖かい風を作り出してる。
あたしは空を眺めてたんだけど、考えが途切れたのは、聞き覚えのある声が聞こえたから。
「ロッド…」
「レンゾ?」って、あたしは心の中で思った。
だって、まさか彼がここにいるとは思わなかったから。あたしは彼を信じられないって感じで見た。だって、今日は二人とも仕事休みで、ゆっくりするはずだったから。
「あの、ドアを開けてくれた女の子が中に入れてくれたんだ」って、あたしは言った。
ちゃんと座り直した。
アイシャが彼を中に入れたのかな。だって、レンゾのこと知ってるはずだし。彼は、最初のファイブの一員だったし。彼らはみんな、裏社会では有名人なんだ。新人たちだって知ってるくらい。もう裏社会で仕事してないけど、彼らはまだ有名だし、知られてる。
「アイシャだよ、あたしの彼女」って、あたしは答えた。「そこに座って!」って、あたしは隣の椅子を指して言った。
それから、彼はあたしの隣に座った。
彼がここにいる理由なんて、全く見当もつかない。だって、一日くらいゆっくりしろよって言ってくれたのに。
アイシャもここにいたんだ。彼女は、与えられたミッションを終えたばかりだった。次のミッションは、来週なんだって。あたしのグループに配属されるかどうかは、わからない。だって、ブレイキーのグループを引き継いでからもうすぐ1年になるけど、組織はアイシャをあたしのグループに入れなかった。どのグループに配属されるか、決められなかったから、あたし的には別にいいんだけど。
だって、彼女は家でも見れるし。あたしたちは同じ屋根の下で暮らしてるし、同じベッドで寝てるんだから。
「エレインとそっくりだったな。噂は本当だったんだ。彼女は君の彼女だったんだな。最初、ただの噂だと思ってたんだよ。昨日の夜、君が屋敷でエレインを見たときに混乱してた理由がわかったよ。まるで瓜二つなんだよな」って、レンゾが話し始めた。
その通りなんだ!
アイシャとエレインは、顔がそっくりなんだ。でも、動き方は違うんだよね。アイシャがあたしをドキドキさせるように。アイシャの天使みたいな声に、何度でも恋に落ちるかな?
たくさん違うところがあるんだ…
「最初は混乱したんだよ。でも、君が違う名前で呼んだとき、アイシャの双子だって気づいたんだ。彼女と話す時間がなかったんだ。それに、彼女と会って、顔を直接見たのも初めてだったし」って、あたしは答えた。
「今度、紹介してもいいよ」って、レンゾは言って、微笑んだ。
うーん、それはいいね…
「コホン…」って、アイシャが、あたしたちのグラスにジュースを注いで、あたしたちに渡しながら邪魔した。
彼女はあたしの隣に座った。ジュースの入ったグラスを持ったまま。
「あたしの彼、アイシャだよ!」って、あたしはレンゾに紹介した。「もし連絡が取れなかったら、彼女にチャットしたり、テキスト送ったりすればいいよ。あたしに伝えてくれるから。急ぎのことでも、大事なことでも、彼女なら信用できるから」って、あたしは続けた。
「ちょっと行ってくるね」って、アイシャは言って、立ち上がった。
あたしは頷いて、彼女に微笑んだ。
彼女はあたしたちから離れて行った。あたしたちが、何か大事なことを話してるってわかってるから。
「ミッションの大事なことは、彼女に任せるって?」