現在
公園にゆっくり入っていく。もう公園の入り口って感じで、お父さんを早く家に帰らせてあげたくて、いつも以上に気合入ってた。マリオが私に何をしてほしいのか分かんないけど、とりあえず周りを見ながら公園の奥へ進んだ。誰を探せばいいのかも分かんなかったし、会う相手はマリオじゃないだろうなーってのは予想できた。こんなとこに姿を現すような人じゃないでしょ、多分。
公園の中のちょっとした分かれ道に差し掛かった時、携帯が鳴り始めた。コートのポケットから取り出してみると、知らない番号。誰からか分かったから、すぐに出て耳に当てた。
「おはよう、ミス・カーター。お願いした物が入ってる箱、持ってるみたいだね。」 マリオの声が聞こえた。冷静で落ち着いた話し方だったけど、私はめちゃくちゃ怖かった。
「箱に入ってるって言われたものが、それなんですけど。どこに置けばいいですか?」 私が聞いても、誰も私の方に向かって歩いてくる様子はない。地面に置いとけなんて言わないでしょ、きっと。
「君は仕事が早いな。質問への答えだけど、数メートル先に、カモがいる池に向かって茶色いベンチがあるだろ。そこに座ってくれ。」 そう指示されて、見ると、本当に数メートル先に、彼が言ってた茶色いベンチがあった。
ベンチに近づこうとした時、あることに気づいた。このベンチまでの距離を知ってるってことは、私が見えてるってことじゃん! 周りをキョロキョロしてるとバレたら嫌だから、とりあえず考えないようにして、言われたベンチに座った。
「よくできました、ミス・カーター。じゃあ、カモがいる池の方を向いて、箱をベンチの横に置いて。」 マリオの声が聞こえて、次の指示。震える手で箱を横に置いて、何にも気にせず泳いでるカモたちをボーッと見てた。「いいね。私の友達がベンチの横に座って、頼んだものが入ってるか確認するから、その人がいても無視して、水面を見てて。分かる?」 怖すぎるでしょ! なんで箱を取りに来た人を見ちゃいけないの?!
「分かります。」 震えないように声を出して答えた。そう言うと同時に、視界の端に、全身黒ずくめの男の人が歩いてくるのが見えた。
数秒後、その人が私の隣に座って、箱を手にとってた。私は、母親のチームがちゃんと頼んだものを入れてくれたか心配しながら、無理やり水面を見つめて、男の人と視線を合わせないようにした。箱を開け始めるのが分かった。
「確認してるだけだよ、ミス・カーター。」 マリオが電話で言った。男の人は箱を閉じて立ち上がり、箱を持って行ってしまった。「君は約束を守ってくれたみたいだね。お父さんは、とりあえず安全だよ。」 マリオが言ってくれた時は、本当にホッとした。言われた通りにしたからね。
「それで、これからどうなるんですか?」 これからどれだけのことになるのか知っておきたくて、質問してみた。でも、向こうでクスクス笑われたから、不安になった。
「その情報はまだ教えられないよ、ミス・カーター。タイミングが来たら、これからどうなるか話すよ。でも、よくやったね。だから、お礼をあげようと思うんだ。それが当然でしょ?」 また不安になる。マリオからもらうものなんて、ロクなものじゃない気がする。「電話を切った後、君とベビーシッターは、野外音楽堂の後ろに行って。プレゼントが置いてあるから。またすぐ話そう、ミス・カーター。」 そう言って、電話が切れた。耳から電話を離して、それまで止めてた息を吐き出した。
顔を向けて、ジャクソンがまだ車に寄りかかって、私を見てるのを確認した。席を立って、ジャクソンに手招きした。それを見て、ジャクソンが走ってきて、すぐに合流した。私の両腕を掴むジャクソン。
「大丈夫?」 心配そうに私を見て、私は大丈夫だよって頷いた。前よりずっと落ち着いてる感じ。
「マリオの手下が箱を持って行った。次は何をするか、また連絡が来るって。でも、すごく頑張ったから、プレゼントがあるんだって。あなたと一緒に行って、野外音楽堂の後ろを見てくる。」 心配そうな顔でジャクソンを見て、私も白い野外音楽堂の方を見て、何が待ってるか怖かった。
ジャクソンも野外音楽堂の方を見て、私も同じように不安を感じてるのが分かった。ジャクソンは頷いて、腰に手をやってベルトのバックルを外した。いざって時に銃をすぐ取り出せるようにするためだ。それから、私の手を取って、一緒に野外音楽堂に向かって歩き始めた。
マリオのことだから、いいプレゼントなわけがない。バラとか、そういうのがあるわけじゃない。最悪の事態をいろいろ考えながら歩いた。ジャクソンは、誰かが飛び出してくるんじゃないかってくらい、銃に手を添えてる。すぐに野外音楽堂の横に到着した。マリオが私たちに見せたいものは、その向こうにある。
ジャクソンと顔を見合わせて、ゆっくりと角を曲がった。床には何もなかったけど。
野外音楽堂の後ろに回ると、大きな花の茂みのそばに、ボロボロになった男の人が倒れてた。ジャクソンが私を少し後ろに引っ張って、見えなくしようとしたけど、もう誰だか分かってた。
デレクだった。