第二十七章
マジやばいって、お父さん、女の子たちが戻ったら殺すって言ってたけど、冗談じゃなかったんだ。警察がマーサのこと知らないわけないし、襲撃の後、何週間もそればっかり考えてたんだから。なんで彼女、わざわざ戻りたいんだろう?前回町に行ったときだって、家族でさえ彼女と関わりたがらなかったのに、わざとやってんのかな?
あたしの中では、お父さんが彼女を見たら、ちょっと優しくなるんじゃないかって期待もあった。だってマーサだし、小さい頃から知ってるんだもん。でも、またお父さんは血眼になってるし、お母さんのことだって色々分かってきたから、全然いい状況じゃない。
「町に行って、彼女がいるか確認した方がいいと思う」って、スコットが町に猛ダッシュしそうだったから言った。マジ、ありえないくらい速いんだよね。
「彼女は俺のメイトなんだ、エリカ。今すぐ迎えに行かないと」って、あたしの提案に不機嫌そうに言いながら、歩き始めようとするから、腕を掴んで止めた。
「今、優しくしてる場合じゃないでしょ。また町に攻め込んだら、あたしがどんな目に遭わせるか覚悟しといてよね」って、彼の目を真っ直ぐ見て言った。彼との関係はリセットしたって言ったけど、あたしの大切な人たちを傷つけるのは許せない。
「彼女はルナなんだから、彼女がどうしたいか、それが全てだ」って、後ろからコーディが言った。一瞬、彼がそこにいたこと忘れちゃった。「みんなで境界線まで行って、エリカが話すことにする。俺たちは彼女を守って、マーサを連れ戻すためにそこにいるだけだ」って、コーディが説明してくれたけど、スコットはあんまり嬉しそうじゃない。でも、従うしかないって感じ。
彼はまた何か言い返そうとしたから、あたしは遮った。
「分かった、急ぎましょう。文句言ってる時間があるほど、彼女を殺す時間は増えちゃうよ」って、彼の愚痴にもううんざり。本当にマーサのこと心配してるなら、そんなことしてる場合じゃないんだよ。
彼はあたしを見て、すぐに木の方へ走り出した。ちょ、マジかよ!気付いたら、コーディがあたしを抱え込んで、変身して、オオカミの姿で全速力で木々の中を走ってた。木の葉がボヤけていく中、必死に彼の毛につかまってたら、あたしたちと同じ方向に走ってるオオカミがもう一匹見えた。あれは、多分スコット。何とかして彼を止めないと。
「コーディ、あたしのこと下ろして、彼をタックルしてくれない?」って頼んだ。返事なんて期待してなかったけど、たぶんそれが正解だったと思う。もし彼が「ダメ」って言ったら、困るし。
彼が何かする前に、あたしは彼の背中から飛び降りて、森の地面に着地した。一回転してから止まると、コーディがオオカミを地面にタックルしてるのが見えた。作戦成功!うつ伏せになって、口の中の葉っぱを吐き出す。一体どうやって入ったんだよ?!やっと立ち上がって、コーディがタックルした場所へ走った。すごい勢いだったな。
そこに辿り着くと、二匹のオオカミが地面で戦ってるのが見えた。恐怖で感覚が支配される。まるで襲撃の時のようだけど、今回はオオカミ同士で戦ってるんだ!あたしは一歩後ろに下がって、心臓がドキドキする。本当はコーディとスコットだって分かってるけど、そうは見えない。ただ、二匹のオオカミが戦ってるようにしか見えないんだ。あたしの脳みそは、それ以外を認めない。コーディのオオカミもそれを理解してるみたいで、スコットに噛みついた。二匹は一瞬硬直して、テレパシーで会話してるのが分かった。すぐに離れて、それぞれ別の木の陰に隠れた。数秒後、コーディがハーフパンツとノーシャツで出てきた。あたしの目は、彼の裸の胸に釘付けになった。やば、今はそういう時じゃないわね。
「大丈夫?なんで背中から飛び降りたんだ?」って、コーディは怪我がないか確かめるように、あたしを見てきた。スコットも木から現れたけど、やっぱりシャツは着てない。
「町に走り込むなって言ったよね?」って、コーディを通り過ぎて、また町に突っ走りそうなスコットに尋ねた。
「俺のメイトがあの中にいるんだ」って、彼は唸って町の方を指さした。威嚇してるんだろうけど、全然効果ないんだよ。
「あたしの家族もそこにいるんだよ。もし町に入って、またあたしの家族を危険に晒したら、コーディに、あのオオカミたちが町の人にしたことと同じ目に遭わせるように言うからね」って言った。あたしのルナの面が出ちゃったのかも。こんなのいつものあたしじゃないのに。
「喜んでそうさせてもらうよ」って、コーディが後ろからちょっと唸りながら言った。スコットは、正直言って、アルファに対してちょっと失礼だよね。
「マーサのことだし、助けに行きたい気持ちは分かるけど、最近色々あったから、賢く行動しないと」って、彼と冷静に話せるように落ち着かせた。あたし、彼のせいじゃないって分かってるけど、頭を使わないと。
「もし町に突っ走ったら、どうなると思う?彼女がいたとしても、マーサを返してくれるわけがないし、自分だけでなく、マーサも、パック全体も危険に晒すことになる」って、どれだけ悪い考えか、頭に叩き込もうとした。「もし町に突撃して、銃を乱射したら、彼らはそれをまた攻撃と見なして、パックに目を付けることになる。ベータとして、そんなことは絶対望んでないでしょ?だから、あたしに話させて、約束するけど、マーサを取り戻せるよ」
彼はあたしをじっと見てから、町の方に視線を向けた。もし彼が町に向かおうとしたら、たどり着けないって分かってる。国境線まで行く前に、コーディに倒してもらうつもりだったけど、そんなことしたくなかったんだ。
彼は渋々承知して、あたしの後ろに立った。あたしは、ホッとして息を吐いた。悪い方向に進まなくて良かった。それから、みんなをパックの境界線へと向かわせた。すごく嫌な予感がしてて、何かすごく恐ろしいことが起こるんじゃないかって。何で、誰でってのは分からないんだけど、この気持ちが消えないんだ。もちろん、スコットにはあたしの気持ちを言わなかった。だって、彼がどう反応するか分かってるから。だから、あたし自身で、この気持ちがどこから来るのか見つけ出す必要がある。
また木が密集してきて、もうすぐだって合図。町とパックの境界線は、森の奥深くだ。合図通り、パックの境界警備隊が見えた。マーサに話しかける必要があった時に最初に見た二人だ。町の方を見ると、あのうざいタイラーが歩き回ってる。マジかよ、一体どうすれば彼と話せるんだ?!
彼は歩きながらあたしたちを見て、目が合った。恐怖が彼の顔を覆うのが見えた。あたしと彼が場所を入れ替わって、彼がここに帰ってくる羽目になるんじゃないかって思ってるんだろうな。可哀想に。彼がどうなったのか分からないけど。すぐに、境界線の端に着いた。あたしは、一歩も越えないように注意した。あたしのせいで、彼が復讐で銃を撃ちたいと思ってるのは分かってるから。
「喧嘩しに来たんじゃないの。お父さんと話がしたいだけなの」って、できるだけ丁寧に話した。この状況が、これ以上悪化してほしくないから。
「ハッ、そっちにつく前に考えればよかったのに」って、コーディとスコットを指さして笑った。マジ、この人、全然大人になれないんだな。
「お願いじゃなくて、彼女のお父さんを呼んで。さもないと、俺たちの言うことを聞かないとどうなるか、もう一度教えてあげることになる」って、スコットが唸る声で言った。これに、タイラーの目は見開いて、すぐにトランシーバーを取り出した。
あたしはスコットを見て笑った。彼はあたしに視線を返して、首を横に振ってから、また町の方を見た。
「お前の父親はもうすぐ来るぞ」って、タイラーはゴクリと唾を飲み込みながら言った。震える手で、トランシーバーを床に落としそうになってる。
「ほら、そんなに難しくなかったでしょ」って、スコットがまた横から言った。マジ、彼はこの人が嫌いなんだな。
遠くから、人が走ってくるのが見えた。どうか、穏便に済ませられますように。