第44章
「イーサン?」なんで俺に電話してきたのか、混乱して聞く。お母さんをまた見つけてから、何回か電話かかってきたけど、いつも夜だったんだよね。お父さんにバレないようにって。
「ルナ、すぐにボーダーに来い。お前の兄貴が襲われた」ボーダーの警備員がそう言う。マジで、心臓がぎゅっとなって、涙が溢れてくる。
電話を切って、何が起きたのか他のやつらに言う暇もなく、イーサンのとこに急がなきゃって思った。ドアから飛び出すと、お母さんが俺の名前を呼んでるのが聞こえたけど、止まれなかった。止まるわけないじゃん。パックメンバーを次々と追い越してく。大丈夫かって聞いてくるやつもいたけど、返事もできない。兄貴のことしか考えられなかったから。
すぐにボーダーに着いて、イーサンが倒れてるのが見えた。警備員がそばにいた。すぐに駆け寄って、そばにひざまずく。イーサンは目を開けてたけど、顔はボコボコだった。
「イーサン、大丈夫。私がいるよ」イーサンの手を握って言う。医者が必要だってのはわかってたから。「お願い、医者か誰か呼んで」電話で話してた警備員に懇願する。警備員は顔を無表情にして頷いて、マインドリンクしてた。
「エ…エリカ」イーサンがどもって、俺は頭を上げてイーサンを見た。「ごめん」って言って、目が閉じそうになるから、俺は頭をイーサンの頭の下に入れて、俺の顔を見えるようにした。「お母さんが来た」って、俺は少し見て止まった。
「ダメ、イーサン、目を開けてて」今度はイーサンに懇願したけど、すぐに目が閉じてしまう。「やだ、お願い、早く呼んで!」後ろにいる同じ警備員に叫ぶ。イーサンを失うわけにはいかない!「イーサン、お願い、起きて」イーサンを揺さぶるけど、起きない。「医者はもうすぐだよ、ルナ。もうすぐだから」警備員が言う。俺はまだイーサンを起こそうとしてる。「アルファ呼ぼうか?」って聞かれて、コーディに来てほしいのは山々だったけど、仕事がある。
「ううん、パックにとってすごく大事な会議があるんだ。それが終わったら言うから。ありがとう」警備員に笑って言った。涙が頬を伝ってる。そう言った途端、医者たちが駆けつけてきた。
医者たちは俺に、下がっててくれって言って、イーサンの処置を始めた。俺は少し後ろに下がって、両手を膝についてしゃがんで泣いてた。イーサンには元気でいてほしかった。やっとこれから良くなるはずだったのに。過去10年間、イーサンを失うためにやってきたわけじゃない。今、いなくなってほしくなかった。少し上を見上げると、またお母さんがいた。お母さんもイーサンの方を見て泣いてたけど、俺の方を見てた。何も考えずに、お母さんに駆け寄って、抱きしめた。お母さんも俺を強く抱きしめてくれた。二人でただ、抱き合って泣いてた。
病院の部屋をウロウロしてる。俺はルナだから、医者は俺たちだけのプライベートな待合室に入れてくれたんだ。入ってからずっと、部屋の中を歩き回ってる。何日も経ったような気がするけど、実際は2時間ちょっとしか経ってないんだよね。ここに着くなり、イーサンは手術室に運ばれた。何が起きたのか、どんな怪我をしたのか、まだ全然わかんないけど、とにかく元気でいてほしい。お母さんも、レイモンドと一緒にいてくれた。コーディが来てくれればいいのにって思ってるけど、会議が大事なのはわかってる。それで、スコットにマインドリンクして、会議が終わったらコーディに伝えてもらうことにした。
「スコット、コーディには、私があなたにマインドリンクしてることは言わないで。マーサだってことにして。会議が終わったら、コーディに、私が病院にいるって伝えて。イーサンが襲われて、今手術中なの。コーディかリースには言いたくなかった。二人ともすぐにここに来ちゃうから。よろしくね」ってマインドリンクしながら、椅子に座る。こんなに待ってるのは初めてで、足が疲れてきた。
「もちろん伝えますよ。コーディに私をベータにしてって言ってくれて、ありがとうございます」スコットがすぐにマインドリンクを返してきた。俺は大丈夫だよって言って笑ってから、椅子で膝を抱えて、まだニュースを待ってる。
さらに時間が過ぎて、もうマジで永遠にここにいる感じ。外は真っ暗で、見えるのは街灯だけ。レイモンドがちょっとの間行って、食べ物とか持って帰ってきた。俺にも勧めてくれたけど、食べれなかった。
ため息をついて、後ろの壁に頭を預ける。お母さんは、何も情報がないのは良い知らせだってずっと言ってるけど、なんでこんなに手術が長いの?って思って、窓から外を見ようと顔を向けると、ドアが開いた。振り返ると、コーディが立ってた。椅子から飛び出して、コーディの腕の中に飛び込んだ。これはマジで必要なハグだった。
「今来たよ。言うべきだった。何時間も前に会議抜け出せたのに」ってコーディが俺を強く抱きしめて言う。俺は首を振った。何度もそう思ったんだ。「できないよ、あの会議はすごく大事なんだし、私は大丈夫だったし」俺は笑って話した。「それに、もし早く抜け出させたら、また会議しなきゃいけなくなるでしょ。つまらない会議からあなたを救ったのよ」って笑うと、コーディも少し笑った。少し離れたけど、コーディの腕は離さなかった。
お母さんがバッグから何か取り出して、ゆっくり近づいてきた。レイモンドは後ろで笑ってた。
「あなたが言ってたことについて考えてたんだけど、その通りね」って俺に言う。まあ、何時間も何も言ってないし、イーサンがどうなる前のことなんて覚えてないから、何のことか全然わかんなかった。「これ、あなたに」って言って、書類を渡された。困惑した顔でお母さんを見て、書類に目を落とすと、
「この町はあなたのものよ、あの人を止めなさい、エリカ」って言って、俺の手を少し握ってから振り返った。マジでびっくりした。
そう、そうしてほしいって言ったのはわかってるけど、まさか本当にやるとは思ってなかった。こんなに早く。あの町との戦いが、やっと終わるのかな?まあ、俺が入って、支配する方法を見つけ出したらだけど。コーディの方を見ると、コーディは俺に笑いかけてた。
「ありがとう、お母さん」って笑って、お母さんを見た。お母さんは笑ってて、レイモンドがお母さんの肩に腕を回した。「私たちがまた町の支配を取り戻したら、イーサンは彼の兄弟たちに会えるかもね」って笑って、レイモンドを見た。レイモンドも俺に笑いかけてた。すると、ドアが開いた。
今度は医者が入ってきた。すぐに目をそらして、俺の目の前に立ってる男に全神経を集中させた。
「あなたの兄弟は、かなりひどい状態でした。激しい暴行で内出血が多発しました。長い道のりになるでしょうが、完全に回復するでしょう」って医者が笑う。マジで、その瞬間、キスしてもよかった。コーディは緊張して、俺を見てきたけど、俺はただ目を丸くした。
「本当にありがとうございます」ってすごく感謝して言う。医者は頭を下げて笑い、すぐにイーサンに会えるって言って出て行った。
「きっと大丈夫だって思ってたよ。あなたがたパーカー家を倒すのは、大変なんだから」コーディが笑うから、ちょっと笑っちゃった。マジでそうだ。「さあ、イーサンに会うのを待ってる間に、あなたの町の支配を取り戻すための計画を立てよう」って書類を掲げて笑う。俺は笑って、笑ってるお母さんを見た。