第八章
その日も遅くなった。町中、みんな家にいろって警察がいっぱいいたし。お父さんから電話がひっきりなしにかかってきて、何を知ってるか教えろって、もちろん「知らないよー」ってかわしたけどね。あたしはジャスティンみたいに、理由もなく友達を売ったりしないからさ、ま、正当な理由があれば話は別だけど。
リースがさっき言ってたこと、ちょっと気になってたんだよね。ジャスティン、なんであたしの部屋の前でウロウロしてたんだろ? それに、あたしらが話してるの、ドア越しに聞いてたんだよね。あたしとリースが何してると思ってたんだろ?! 部屋にいる時に、あんなことされたことあったっけ? もう、この状況、いろんな疑問が出てくるんだけど、特にジャスティンの意図が気になる。
リースが寝る前に、あたしは部屋のドアに鍵をかけた。ジャスティンはあたしの部屋の床で、空気で膨らますマットレスで寝てるし。リースは地下室で寝るって言ってたんだけどね、あたしが寝る時に気まずくならないようにだって。別に気まずくはなかったんだけど、あたしの気持ちを考えてくれるのは、なんか嬉しかったんだよね。ジャスティンはそういうこと、したことない気がするし。寝ようと思ってベッドに入ったら、ドアノブがカタカタし始めて。最初はリースかなと思ったんだけど、リースは外からドアを開ける方法を知ってるから、すぐに違うってわかった。ドア、何回か壊れてて、それで開けられるようになってたんだよね。
「入れないよ、ジャスティン」ってあたしは言って、毛布をかぶって横になった。あの裏切り者は、しばらく近づけさせない。ジャスティンの声じゃなくて、お父さんの声が聞こえて「お前も入ってくんな」ってあたしは言って、ベッドに潜り込んだ。あったかいから、誰にもドア開けないもんね。
「エリカ、ちょっと入れよ、話があるんだ」って、いつもと違う声で言ってきた。声のトーンじゃなくて、感情的に違うんだよね。
ドアを見て、それから毛布を見た。無視して寝ちゃえばいいんだけど、多分眠れないだろうな。お父さんって、悲しい顔とか、感情を表に出さないんだよね。お母さんがいなくなってから、ずっとそうだし。だから、あんな風に話されると、ちょっと気になっちゃうんだよね。なんでベッドで横になりながら、こんな大事なこと決めなきゃいけいんだよ!
ため息をついて、あったかいベッドから出て、ドアに向かった。ドアを開けると、お父さんが一人で立って、地面を見てた。こんなの、お母さんがいなくなってから初めて見たよ。何度も言ってるけど、本当なんだもん! お父さんって、感情を表に出さない人だから。お母さんがいなくなる前からそうだったけど、事件の後、さらにひどくなったんだよね。
あたしの部屋に入っていいように、あたしは道をあけた。運良く、隠してあったノートを隠した床板の上に、あたしのタンスを移動させてたんだよね。そう、まるで秘密の宝物みたいにノートを扱ってるってわかってるけど、この町の人がどんな人たちか、あたしは知ってるから。ジャスティンと違って、あたしは友達を守りたいし、困った時とか、何か得することがある時だけ友達を売ったりなんかしないんだから。ジャスティンが潜んでないか、あたしは周りを見回した。あいつならやりそうだからね!
部屋のドアに鍵をかけて、お父さんを見た。あたしのベッドに座って、ナイトスタンドに置いてあるあたしの写真を見てる。お母さんと最後に撮った写真、お母さんがいなくなっちゃう前に撮ったんだよね。あの時、最後だってわかってたらよかったのに。でも、そんな風にはいかないんだよね、きっと。
「お前とお前のママの写真、あたしが撮ったんだよな。学校で賞もらった直後だったよな。何の賞だったっけ?」お父さんがあたしに初めて話しかけてきた。ずっと地面か写真を見てたのに。「
一番いい髪の毛でしょ。学校って、なんでも賞あげるんだから」あたしは笑って、お父さんの隣に座った。お父さんも少し笑ったけど、また悲しそうに写真を見てる。
「お前、ママにそっくりだな。日に日に、もっと似てくるよ」って、写真を持って笑顔になった。「性格もそっくりだし。今日、マーサと何かあったみたいだけど、なんで教えてくれなかったんだ? ママも、大事な人を守るために、同じことしただろうな」って、ため息をつきながら、まだ写真を見てる。
「あたし、何の話かわからないんだけど」って、まだとぼけてるんだけど、お父さんはあたしが何か知ってるってわかってるだろうし、あたしも、お父さんに話したくないってわかってる。お父さんはあたしに「わかったよ。何か知ってるかもしれないけど、無理だよ、お父さん。マーサはあたしの長年の友達だし、本当に悪いことしてないんだから」って、あたしは、あたしがお父さんに見せたい情報があるって、初めて認めたんだよね。
「マーサには何も起こらないようにする。でも、お前の知ってる情報、見せてほしいんだ。それで、この町を守れるんだから。マーサだけじゃなくて、この町全体に関わることなんだ」って、お父さんは言って、あたしは立ち上がって部屋を歩き始めた。ノートをお父さんに渡して、もうこんなくだらないこと全部終わらせたいって気持ちもあるけど、マーサを守らなきゃって気持ちもあるし、何故か、これらのノートを自分のものにしておきたいって気持ちがすごく強かったんだよね。
「お父さん、約束できないでしょ。マーサのためにって思ってても、誰かが何か言ったら、そっちに流れて、マーサのこと忘れちゃうでしょ!」ってあたしは言って、机に座って、頭を抱えた。こんなの、あたしの体に良くないし。
「もし、そのノートにマーサを陥れるようなことが書いてあったら、何かしないといけないけど、ちょっとしたことなら、無視するよ」って、お父さんは立って、あたしと妥協しようとしてる。その選択肢はすごくいいんだけど、まだわからない。あたしの心の声は、やめとけって言ってるし、お父さんは「お前はお母さんに似てるから、本当にそうなんだ。でも、お前のママだって、町を助けられるような情報なら、あたしに教えてくれたよ。あたしがお前にしてほしいように、もっと大きな視点で見ただろうな」って、あたしに話しかけてきて、あたしは顔を上げた。お父さんは、また悲しそうだった。
お父さんって、誰かがお母さんの話すると、いつもこうなるんだよね。だから、できるだけ話題にはしないようにしてる。あたしのお母さんって、自分が信じるもののために、最後まで戦う人だったんだ。お母さんが、何かしたいのに、誰かに止められた時に、戦ってる写真を見たことがある。なんで誰かがそんな写真を撮ってたのかは知らないけど。あたしにも、そういう面があって、真剣な時は抑えようとしてるんだ。お母さんがどんな人だったのか、思い出そうとしてる。こんな状況だったら、どうするだろうって。まあ、現実的に考えて、あたしのお母さんはこんな状況にはならないだろうけど。世界中の誰も、こんな状況にはならないだろうし。ネットのアドバイスとか、役に立たないよね!
でも、お父さんの言ってることは正しいってわかるんだよね。あたしのお母さんなら、自分が信じるもののために戦うだろうし、誰にも負けないだろうし。でも、お母さんって、やめるタイミングも知ってたんだよね。全部勝てるわけじゃないってわかってたから、もっと大人にならなきゃいけない時もあるって。あたしも、人に譲ったり、自分のやり方が人を助ける方法じゃないって認めるのは苦手で、お金のためでも、愛のためでも、絶対にあきらめたりしない戦いはたくさんあるけど、今回はそうじゃないんだ。
あたしはあきらめて、ノートを取りに行くから、外で待っててって言った。お父さんは、それは正しいことだって言って、部屋を出て行った。お父さんが戻ってこないってわかったら、タンスを動かそうと押してみた。あたしは、こんなことまたしなきゃいけないとは思ってなかった! 背中を何回も痛めそうになりながら、タンスを動かした。床板を持ち上げて、隠してあったノートと本を見つけたんだ。手にとって、ドアを見たけど、本当にこれでいいのかまだわからなかったけど、もう一度考える時間もなかった。全部渡すんじゃなくて、三冊だけ渡すことにした。床板を丁寧に元に戻したけど、タンスをまた動かすのはやめた。もう、負け戦だしね。
ドアに行って、ノートを渡した。リースのかいたノートも、一緒に入ってたんだ。どんな情報を見つけたのか知らないけど、あんまり悪いことじゃないといいんだけど。
「正しい選択だよ、エリカ。この中に書いてあることが、この町を守るのにすごく役に立つよ」お父さんは笑って、ノートをぎゅっと抱きしめた。あたしが奪い取りたいんだろうなってわかってるんだろうな。「さあ、寝なさい」って、あたしの頭にキスをして、振り返って出て行こうとしたから、あたしは止めた。
「マーサのことだけは、頼むよ」ってドアに手をかけて言った。お父さんは笑顔でうなずいて、あたしを置いて行った。あたしは一人でそこに立ってた。
マーサに、どんな問題が起きるのか、あたしは知らなかったんだ……そして、未来のあたしにもね。