第四章
夕方になって、あたしはキッチンで晩ご飯作ってたんだ。ジャスティンが手伝いたいって言うから、ピーマン切ってもらった。
お母さんがいなくなってからずっと、あたしが晩ご飯作ってるんだ。お父さんは最初7年くらい、全然家にいなかったし。お母さんを探してて、証拠がもっと必要だって言うときだけ帰ってきてた。
イーサンがほとんどのことやってくれてたんだけど、あたしも役に立ちたいって思って。だから、あたしが料理するようになったんだ。お父さんが帰ってきてからも、あたしは料理してるんだ。だって、みんなのために料理するの、好きなんだもん。それに、結構上手だし。
家は静かで、聞こえるのはコンロの音と、ジャスティンがピーマンを切る音だけ。お父さんは仕事してるし、イーサンがどこにいるのかも分かんなかった。
静寂を破ったのは、ジャスティンのトランシーバーから聞こえてくるお父さんの声だった。
「PCリチャード・パーカーが入る。会議で言及されなかったのは、門限があることだ。みんな夜9時には家にいなければならない。朝7時まで家から出てはならない」って、みんなに伝えてた。あたしはため息ついちゃったよ。安全のためにやってるのは分かってるけど、もう冗談じゃない。
もしオオカミか人狼がまた襲ってきたら、家にいるだけじゃ防げないじゃん。むしろ、もっと簡単になっちゃうよ。みんな的にカモになるだけだもん。お父さんはこの状況、楽しんでる気がする。自分がコントロールしてるって感じが好きなんだろうな。
でも、お父さんはリーダーだし、文句も言えないし。
ジャスティンがピーマンを切り終わって、あたしの後ろに来て、鍋にピーマンを全部入れてくれた。あたしは微笑んで、ピーマンを混ぜながら料理に集中した。ジャスティンはあたしの後ろにいて、顔があたしの首と肩の近くにあった。別に何も思わなかったんだけど、誰かが歩いてくる音が聞こえたんだ。
「なんで妹にそんなに近づいてるんだ?」イーサンが聞いてきた。これにはジャスティンもすぐに動いて、やっとあたしはイーサンを見ることができた。
「晩ご飯のピーマン、手伝ってくれてたの」あたしは言ったけど、イーサンはまだジャスティンのこと、気に入らないみたい。首を振って、冷蔵庫を開けてた。
「いつも相棒と一緒じゃなきゃいけないんじゃなかったの?」あたしは話題を変えようとしたんだけど、ちょっと混乱もしてた。あたしらはパパの子供だけど、ルールは守らなきゃいけないし。守らないのはフェアじゃないし。
「一人じゃないんだ。パパは、いつも何かあったときに助けられるように、あたしがいる方が役に立つって思ってるんだ」って言いながら、オレンジジュースを取り出して飲んでた。ちょっと待って、なんか人狼の話、信じてるっぽいんだけど。
「え、マジで信じてるの?」あたしはスプーンを置いて聞いた。イーサンはあたしのこと見て、「お前は?」って言うから、「信じてないよ。パパが悪者に見えないように、合わせてるだけ。パパが見せたビデオは偽物だし、写真も変えてた。昨日の夜に見せてくれたのと違うんだもん」って言った。自分がこんなこと説明しなきゃいけないなんて思ってなかった。イーサンは部屋にいたし、パパが写真を変える前のオリジナルを見たはずなのに。
イーサンはオレンジジュースを置いて、あたしの方に歩いてきた。でも、なんだか攻撃的な感じで。あたしはイーサンから少し離れて、ジャスティンがあたしの近くに寄ってきた。
「もしかしたら、この事件がお母さんを捜す手がかりになるかもしれないって考えたことない?」イーサンはちょっとイライラした声で言った。あたしは困惑したけど、イライラもした。あたしの表情に気づいたみたいで「もしかしたら、あの夜にお母さん一人いるところを見て、連れ去ったのかもしれないだろ」って言って腕を組んで、自分の意見を支持しようとしてる。マジで?
「お母さんは買い物に行って、二度と帰ってこなかったんだよ。人狼の偽物とは何の関係もないでしょ。まさか、それを繋げようとするなんて信じられない!」あたしはついにキレて叫んだ。ジャスティンはあたしの肩に手を置いて、落ち着かせようとしてくれたけど、もうあたしは怒りが限界だった。
「俺は調べて、人狼がどうやってお母さんと繋がってるのか、お前に証明してやる。そしたら、パパがそこまでおかしいわけじゃないって分かるかも」って叫んで、キッチンから出て行った。あたしの意見を支持するのに、いい仕事したね、マジで!
あたしは、何が起きたのか理解しようとして、しばらく呆然として立ってた。イーサンの頭の中では、お母さんは人狼に誘拐されたことになってるんだ。まともなのは、あたしだけ? 街で変なことが起きたのは、人狼のせいじゃないでしょ、それも存在しないのに!
「今、あいつ、何て言った?」ジャスティンの方を見て聞いた。ありがたいことに、ジャスティンは晩ご飯が焦げ付く前に、コンロを消してくれた。
「何が起きたのかは分からないけど、怒らない方がいいよ。イーサンは、起きてることを受け入れようとしてるんじゃないかな」って、あたしの肩をさすってくれた。人によっては、考え直した方がいい対処法もあるよね。
玄関から人が入ってくる音がして、会話は中断された。サマンサとジェイコブが先に入ってきて、マーサとリースも続いた。
あたしは晩ご飯はもうすぐできるから、食堂で待っててって言った。
ジャスティンは、状況についてもっと話そうとしたけど、あたしはそれを止めた。あたしは晩ご飯を終わらせなきゃいけないし、人狼のファンタジーは一旦置いておきたかった。
一体、何が起きてるの?
晩ご飯が終わったら、みんなで地下室に行った。そこにはゲームとか全部置いてあって、かっこいいソファとラグもあるんだ。あたしとイーサンが自分のものを全部置ける場所って感じかな。お父さんは、自分がどれだけお金持ちで、モダンかを見せたいんだよね。家はスタイリッシュで綺麗にしておきたいみたいで、地下室だけは、あたしたちが好きなように使わせてくれるんだ。
男たちはXboxで遊んでて、あたしたち女の子はラグに座って話してた。ほとんどはサマンサとあたしで、マーサはほとんど話さなかった。
「この状況が全部終わったら、旅行に行かなきゃ。この街から少し離れていたい気分」サマンサはフワフワのラグに寝転がって言った。あたしもそれに同意。
「それが終わるならね。人狼は簡単にあきらめないでしょ」マーサが横からつぶやいた。あたしはサマンサを見たけど、サマンサも困惑した顔をしてて、それからマーサを見た。
「どういうこと、マーサ?何か知ってるの?」あたしが聞くと、マーサはすぐにものすごく怖そうな顔をした。まさか、この人狼ごっこ、信じてるの? もしそうなら、何か知ってるのに、あたしたちには教えてないみたい。
「ううん」って言っただけで、顔を床に伏せてしまった。まあ、ううんって言ったけど、反応が全然違うし、目が家の外の草が見える小さな窓をちらちら見てるんだ。
「10分くらいで出よう。門限過ぎちゃうから」ジェイコブがサマンサに大声で言った。サマンサは頷いたけど、外で何かが壊れる音がして、みんな飛び上がった。
「何?何だった?」サマンサはあたしの手をつかんで震えながら聞いた。あの窓からはほとんど何も見えなかったし、誰かが窓のすぐ外に立ってないと、足しか見えないんだ。
「みんな、こっちに来て」ジャスティンが窓から目を離さずに言った。サマンサはすぐにジェイコブのところへ走って行って、あたしは窓の方に行こうとしたけど、ジャスティンに掴まれて、ソファに座らされた。
「多分、風で何か倒れたんじゃない?」サマンサがジェイコブにぴったりくっつきながら言った。あたしもそう思ってたし、特に冬は色んなものが飛び回るし。
「外に出て、何があったのか見てみようよ」あたしはジャスティンに耳打ちした。もしトランポリンが倒れただけなら、みんな落ち着くだろうし。
ジャスティンが返事する前に、外からすごい唸り声が聞こえた。まるで地面が揺れたみたいで、多分、想像力だったのかもしれないけど、そう感じたんだ。あたしはすぐにジャスティンの胸に顔を埋めて、みんなと一緒に怖がった。ジャスティンはあたしを抱きしめてくれて、すぐにまた、もっと大きな唸り声が外から聞こえた。今度は、もっと近くに聞こえた。
ジャスティンが少し前に動いたけど、すぐに後ろに引っ込んだ。あたしはまだ顔をジャスティンの胸に埋めてたから、何が起きてるのか全然分かんなかった。あのオオカミがまた襲ってくるかもしれないって、見たくなかったんだ。
「もしもし、あたしはジャスティン・フィッツジェラルドです。PCリチャードの家にいます。外からものすごい唸り声が聞こえました。助けを呼んでください」って言ったから、ジャスティンがトランシーバーを取って前に乗り出したんだ。誰も返事をしなくて、数秒が永遠のように感じた。
「家の中にいろ。すぐ行く」って、お父さんの声が聞こえた。まるで音楽みたいに聞こえた。警察が来て、全部片付けてくれるんだ。
「やだ、スコットを傷つけさせたくない」マーサが叫んで地下室の階段を駆け上がった。あたしはマーサを呼んだけど、返事はなかった。
何も考えずに、あたしも階段を駆け上がった。今度はジャスティンが、あたしの名前を呼んで追いかけてきた。家に着くと、玄関が開けっ放しになってるのが見えた。外に出たんだ! あたしはドアの方に走って行った。あたりは真っ暗で、街灯だけが頼りだった。
「マーサ!」あたしは冷たい夜に外に出て叫んだ。すぐにゾクゾクって震えがきて、自分を抱きしめた。「お願い、マーサ。危ないよ!」あたしはもっと外に出て、マーサの姿を探した。
茂みの中で何かが動いて、あたしは飛び上がった。茂みから少し離れて、巨大なオオカミのイメージが頭の中に浮かんだ。でも反対方向には、違うものが見えたんだ。マーサが森の中を走ってる。あそこは絶対、安全じゃない。
「マーサ!」あたしも走り出したけど、誰かに腕の中に抱えられた。顔を向けると、ジャスティンがあたしを抱きとめてたんだ。
「家に待機しろって言っただろ!」お父さんの声が聞こえてきた。あたしはお父さんの車から降りて、あたしたちに走ってくる姿を見た。何でみんな走ってんの?
「マーサが森に走って行ったの」あたしはジャスティンに抱きかかえられながらお父さんに言った。もう少しで危険な目に遭うところだったんだし。
お父さんはすぐに、マーサが走って行った森に警官を送り込んだ。そして、唸り声がどこから聞こえたのか尋ねた。分かると、安全な家に帰るように言われた。マーサなしで帰りたくなかったけど、仕方ないって分かってた。あたしたちは地下室の階段に戻った。ジャスティンに抱きつかれたけど、今度はサマンサじゃなかった。
「何を考えてたんだ、エリカ?」リースが抱きしめてきた。なんでこんな感じなんだろうって、あたしはびっくりした。「お前を失うのは、妹を失うようなもんなんだ。もう二度と、そんなことには耐えられない」って言ってて、あたしはすぐに理由が分かった。あたしはリースを抱きしめて、もう二度とそんなことはしないって言った。
「そこにいるなら出てこい!」ってお父さんの声が外から聞こえた。あたしはリースから少し離れたけど、二人は腕を組んだままだった。
その後の静けさはすごく緊張した。何がいたのか、見つけられたのか、分からなかった。
それに、マーサもまだそこにいるんだ。何で森に走って行ったんだろう? スコットを傷つけさせたくないって言ってたけど、スコットって誰だっけ? どっかで聞いた名前なんだけど、思い出せない。
それに、何でスコットを傷つけるんだ? スコットがオオカミなら、そうなるかもしれないけど。あたしは、マーサがオオカミの友達だったなんて知らなかったし!
「マーサを見つけました。彼女を自宅まで護送します」ジャスティンのトランシーバーから聞こえた。ああ、よかった!
リースはマーサと一緒にいるために出て行った。あたしはジャスティンを抱きしめた。誰かを抱きしめたかったんだ。まだ何がいるのか分かんないし、また戻ってくるかもしれない。もし、あたしを襲ったオオカミが、あたしを殺しに帰ってきたらどうしよう?! いいから落ち着いて、エリカ。またオオカミであって、恨みを持った人とかじゃないし!
「一体、俺は一人倒した」ジャスティンのトランシーバーから別の声が聞こえた。ちょっと待って、一人以上いるの?!
ジャスティンのTシャツを、ちぎれるんじゃないかってくらい強く掴んでたけど、大丈夫だった。数分後、お父さんが地下室に降りてきた。ジャスティンを離して、お父さんのところに走って行って抱きしめた。お父さんが無事で、本当に良かった。
「大丈夫だ。俺たちが問題を解決してる」ってお父さんは囁いて、あたしを強く抱きしめた。「今は、問題も解決したし、マーサも見つかって、リースと一緒にいる。二人も家に護送するから、気をつけてくれ」お父さんはサマンサとジェイコブに微笑んで、二人はお父さんにお礼を言って、地下室を出て行った。残ったのはお父さんとジャスティンとあたしだけだった。
「また、あんな攻撃とかあると思いますか?」ジャスティンがお父さんに聞いた。あたしは、もう二度とごめんだ。前のやつに食べられそうになったんだから。
「何が起きてるのか、まだ分からないけど、警察は町に近づく前に、あいつらを倒すか、攻撃を防ぐつもりだよ」ってお父さんはあたしを見て言った。あたしが襲われそうになったことも、どうして知ってるのかよく分からない。
少し話して、寝ることにしたけど、まだ多くの人々とオオカミが起きていた。