第十三章
アヴィラの視点
「アヴィラ、ちょっと自己紹介でもどう?」カミラが提案した。
あたしは何も言いたくなかった。少なくとも声に出しては。だって、どもって、彼を前にして完全にバカみたいになるのは嫌だし。彼の名前すらまだ知らないんだから。
あたしの目尻から、彼がアタシの名前を口パクしてるのが見えた。それが身体中にゾクゾクする感覚を呼び起こした。口パクじゃなくて、声に出して言ってほしかったんだ。
顔を上げると、みんなの視線がアタシに集中していた。彼もだ。レッシャー半端ない。
「アタシはアヴィラ。ここに引っ越してきたばっかりで、明後日18歳になるの。最近両親を亡くして、それでここに引っ越してきたんだ。やり直すために」アタシは息継ぎなしでそう言った。
「ご両親のこと、本当に残念だったね、女の子」カミラはそう言って、アタシの手を握って、悲しそうな目で優しく握ってきた。
アタシは彼女に物悲しい笑顔を向けて、食事を再開した。テーブルは静まり返ってしまったけど、あたしのせいでぎくしゃくするのは嫌だったから、話題を振ってみた。
「みんなのこと、教えて」アタシはカミラに促した。
「あら!もうあたしの名前は知ってるよね。えーっと、これがあたしの兄のローハン」そう言って彼を指した。
見上げると、彼はすでにアタシのことを見つめていて、あたしの反応を待っているようだった。あたしはただ彼に微笑んだ。「はじめまして、ローハン」そう言うと、彼は硬直したけど、それ以外は挨拶を返そうともしなかった。カミラが次の話題に移ったから、アタシは気にしないことにした。
「これがベン」彼女はそう言って、もう一人の男の子を指した。彼はすぐにアタシに微笑んで、あたしの手を取ってキスするような仕草までした。
ローハンからは、うめき声のような咳が出た。彼があたしに何でそんなにムカついてるのか分からなかった。ランチの残りの時間は、口論の時以外は静かに過ごした。楽しかったな。
あたしは、18歳の誕生日を祝うために、ちょっとした集まりを開いてもいいか、おばさんに相談しなきゃいけないんだ。急な話だけど、彼女が何でもやらせてくれるといいな。
「ねえ、アヴィラ、明日の誕生日は何するの?」カミラが興奮して語尾が高くなって、アタシは彼女のバカっぽさに笑ってしまった。
「まだわかんない。おばさんと話してないんだ」そう言って肩をすくめた。
彼女は秘密めかして身を乗り出した。「もうシフトした?」
彼女の兄ローハンは彼女を強く小突いた。彼女は彼の方を向いた。まるで、兄弟特有のテレパシーみたいな会話をしてるみたいだったけど、自分の言ったことに気づいたみたいで、あたしは彼女の目に驚きが走るのを見た。そしてそれを隠した。
「パーティのシフトは?」彼女は言った。
あたしだって、それがウソだってことはわかってたし、何かおかしいのは明らかだった。
あたしが首を振ると、彼女は小さく頷いて、また食事に戻った。急に、今日はもう終わって、おばさんに話をしに行きたい気分になった。知りたいことがたくさんあったんだ。
頭の中に誰か他の人が住んでいるような気がするのはなぜ?
身体が変化していくのも見えるし、頭痛も酷いし、もしかしたら何か遺伝性の病気があるのかもしれない。アタシが知らないだけで。
学校が早く終わって、家に車で帰った。涙が出てきて、視界がぼやけてきた。ローハンに触られた直後から。
男の子たちが一緒に教室まで歩いてて、あたしはつまずいてしまった。ローハンは反射的にあたしを抱きかかえて、立たせてくれた。彼に触られた瞬間、身体の中に奇妙な感覚が走った。足の指から頭まで。どう表現していいかわからないけど、知らない自分の側面を埋めてくれる人を見つけたような感じだったんだ。
頭の中の声がまた聞こえてきて、もっと近づいて抱きしめろって言ってるけど、あたしはただ彼の目を見つめていた。それもまた最悪で、吸い込まれそうだった。
「大丈夫?」彼のハスキーボイスが尋ねてきた。
あたしは話すこともできず、ただ大丈夫だよって頷いた。彼はあたしが大丈夫か確かめるように身体を見て、安心したようにあたしを手放した。
奇妙な瞬間だった。それからずっと、頭が痛くて、目がしょぼしょぼして、鼻も詰まってる。彼に触られてからずっと調子が悪くて、その理由を知りたかった。
家に車で帰り、駐車した。どこも静かで暗かった。鍵でドアを開けて、部屋に直行した。明かりがなくてすごく大変だったけど、スマホのライトでなんとか乗り切って、リュックとか全部置いて、おばさんを探しに行った。
家全体が妙に静かで、お化け屋敷を思い出してゾッとした。部屋を探したけどいなくて、そういえば彼女は森に行って考えるのが好きだって言ってたなと思って、もしかしたらそこにいるのかもって思ったんだ。
裏口から出て、彼女を探しに行った。一歩一歩が重く感じた。何か変な気がしたけど、好奇心もあった。先にうなり声が聞こえて、何だろうと思って、そっちに向かって確認することにした。
それほど遠くまで行かないうちに、あたしのおばさんを見た。あたしを育ててくれて、安心させてくれたおばさんだ。彼女はあたしに背を向けていて、あたしからは見えない誰かと話していた。名前を呼ぼうとしたとき、彼女はあたしを衝撃的な行動に出たんだ。
彼女はあたしの目の前で動物に変身したんだ。
あたしの目はソーサーみたいに大きくなった。何か声が出たんだろうか。彼女はあたしを見て、弱々しくうめき声をあげた。
あたし達は互いをじっと見つめ合った。視界がぐらつき始めた。急にふらふらしてきて、最後に見たのは、動物があたしの方に歩いてきて、あたしは地面に倒れたってことだった。