第52章
ローハンの視点
「彼女は俺のメイトだ」って、彼に言ったんだ。
彼はびっくりして俺の方を向いた。急に向いたから、むち打ちとかになってないか心配になったよ。一瞬、動きが止まってたし。
「ベン? 大丈夫?」って、俺は彼に聞いた。
彼は瞬きしてから、咳払いした。すぐにショックから立ち直ったみたいで、顔が怒りに変わったんだ。
「お前、彼女を拒否したんだな」って、彼は言った。
別に質問とかじゃなくて、もう知ってるみたいな感じで言ってきたんだ。俺とアヴィラのドラマの裏話を話す気はなかったから、なんて言えばいいのか分かんなかった。彼の知ったことじゃないし。俺はただ、彼を守ってあげたかっただけなんだ。
「まあ、でも今は大丈夫なんだ」って、俺は彼に言った。
「じゃあ、なんで今になって俺に言うんだ?」って、彼は聞いてきた。
ここが一番難しいところだったんだよ。
「彼女から離れてほしいんだ」って、またしても彼は質問しなかった。
「それだけじゃなくて、お前自身を守ってほしいんだ。お前は俺の友達だし、お前が好きな女の子と俺が一緒にいるのを見て、お前が辛い思いをするのは嫌なんだ。もしお前が彼女と仲良くして、最終的に彼女に夢中になったらどうするんだ? いつもみたいに、お前のことを心配してるだけだよ」って、俺は説明した。
彼は頷いたけど、何も言わなかった。別に期待してたわけじゃないけどね。一番大事なのは、彼が俺のアドバイスを聞いてくれることなんだ。だって、彼らのちょっとした集まりが、俺をイライラさせてたんだから。
「分かった。教えてくれてありがとう」って、彼は言った。
彼は何か深く考えてるみたいで、何を考えてるのかは聞けなかった。
彼は行こうと立ち上がったけど、俺は彼を止めたんだ。
「ごめん」って、俺は言った。
「いいよ」って、彼は言って車に向かった。俺は彼が行くままにして、アヴィラにもう一度チャンスをもらうための、派手なことをしようと集中したんだ。アヴィラは優しすぎるから、俺にすごく惹かれてるって感じてる時は、断れないんだよな。そういうところが、人間らしくて愛おしいんだ。メイトに対して、まだよく知らないうちから、ものすごく惹かれるんだから。
ベンと俺の間は、ちょっと気まずくなるだろうなって思ってた。今回の話で彼が喜ぶとは思ってなかったけど、早く終わらせたかったんだ。
でも、俺は彼のことよりも、アヴィラの優しさのほうが心配だったんだ。それを利用して、自分の計画を進めたいんだ。
いつもなら、アヴィラに会いに行く前に、メッセージを送るんだけど、今回はサプライズっていうのは、派手なことの一部に入るかなって。ただ、カミラがいないといいんだけどな。彼女は怒るだろうし、親友をガッカリさせたくないだろうから。あいつは、俺の側にいて、兄貴分として、頼れる存在でいるべきなんだ。俺に忠実であるべきなんだ。
まあ、今回は許してやろう。後でみんなにご褒美をあげよう。でも、まず始めなきゃ。
俺は花屋に行って、彼女のために花とチョコレートを買った。今日は食べ物を買う時間はなかったから、急いでたんだ。
彼女の家の前に着いたら、花とチョコレートを持ってた。ノックしたけど、彼女はドアを開けなかった。おばさんもいないのかなって思った。花とチョコレートと、念のため走り書きしたメモを置いてきた。アヴィラに用があるんだ。だから、彼女に電話に出てもらわなきゃいけないんだ。
それを置いて、俺は一番考え事ができる場所に向かったんだ。お父さんがこのアイデアを出してくれて感謝してるよ。もし俺がアルファだったら、もっとたくさんのものと力を持てたはずなのに。彼が教えてくれるまで、自分がアルファになることが、こんなに楽しいなんて思ってもなかったんだ。俺が目指す道に、彼はガッカリするだろうけど、もうどうでもいいんだ。アルファになれば、彼はもう俺をコントロールできなくなるんだから。
湖のそばに着いて、車を止めて座った。幸せになりたい気持ちと、自分の家族の名を継ぐ強い子供たちを産みたい気持ちの間で、引き裂かれるような気分だった。お父さんは、真のメイトと強いメイトのどちらかを選び、アルファの座を失ったんだ。彼のことを喜ぶべきなのか、自分のものだったはずの玉座を失ったことに怒るべきなのか、分からなかった。
自分の頭に浮かんだ馬鹿げた考えに首を振った。まるで、暴力と権力のことしか考えてないみたいだ。
暗くなる前に湖のそばにいた。カミラに話して、アヴィラにもう一度チャンスをくれるように説得してもらわなきゃいけないんだ。アヴィラは妹の言うことを聞くし、次の会話で俺のことを少しでも話してくれて、俺の電話に出てくれるように説得してくれたら嬉しいんだけどな。
カミラと話すのは簡単じゃないだろうけど、彼女は俺の妹だし、人間のメイトのことで嘘をついたのを俺が隠してやったから、俺に借りがあるはずなんだ。彼女は俺のためにやってくれるだろうけど、頑固になるのも分かってる。
しばらくしてから家に帰った。彼女の車が家の前に停まっているのを見てホッとした。家に入って、両親に挨拶して、彼女の部屋に直行した。
軽くノックして、「入って」というかすかな声が聞こえたので、ドアを開けたんだ。
彼女はベッドにうつ伏せに寝てて、俺が何か言うまで起きなかった。
「やあ」って、俺は言った。
「何が用なの?」って、彼女は聞いてきた。
疲れてるみたいだった。「どうしたの?」って、俺は聞いた。
「気にしてるふりしないでよ。何が用なの?」って、彼女はまた聞いてきた。
彼女に何があったのか話させようとしても無駄だから、俺は別に気にしてないんだけど。
「アヴィラに俺の電話に出てほしいんだ」って、俺は単刀直入に言った。
「分かった」って、彼女はあっさり言った。
「分かったって?」って、俺は聞いた。
「うん、彼女にあなたにもう一度チャンスをあげるように言うわ」って、彼女は言った。
「ありがとう」
「どうでもいいわ」って、俺はそっと彼女の部屋のドアを閉めて、彼女の悩みを残してきたんだ。