第67章
アヴィラの視点
家に戻ってきて、もう眠りまくりたい気分だったんだ。もう眠れなくなるまでね。おばさんが約束通り仕事に戻ったんだ。私もそうさせてあげた。だって、誰かに本当のことを言わせようとしても無理だって分かったから。相手から話してくれるのを待つ方が、無理やり聞いて半分しか分からないよりずっといい。彼女には、色んなことが起きてるのに私に隠しておきたい事情がきっとあるんだろうから、今回は見逃してあげよう。彼女が適切なタイミングまで待ちたいなら、私はその決定を尊重するつもり。
まだカミラには私が戻ってきたって言ってないんだ。明日にでも学校で会うだろうし、あるいは明日にでも私に会いに来るかもしれない。そうしたら、色々質問してくるだろうし、それもまだ心の準備ができてないんだよね。ローハンの話にもなるだろうし、あの日のことについて本気だって、彼女に言う気にもなれないんだ。
あいつからは、もう電話なんて絶対かかってこないで欲しい。どんな理由があっても、あいつの電話には出ないから。今はもう、そっちのけにしておく。あいつとのドラマとか心の痛みにはもううんざりなんだ。
ベッドにバッグを置いて、バスルームに行って顔を洗った。朝にスコーンを食べたのはラッキーだった。お腹いっぱいになったし、しばらくは何か注文する必要もなかったから。
シャワーを浴びて、体からビーチの匂いを落とした。リラックスできて、気分転換になったよ。
髪をタオルで拭いて、ラウンジウェアに着替えた。本を読んで寝ようかな。ゆっくり休む時間が必要なんだ。
でも、実際は寝ないだろうって分かってる。新しいヴァンパイアのメイトのこと、もっと考えて、白昼夢を見るだろう。あいつに会ってから、ずっとそればっかりなんだ。あいつのことしか頭にないし、考え事もそればっかり。別に不満じゃないんだけどね。
枕に頭をのせて、色んなことを考えてたら、いつの間にか眠りについちゃった。
…
数時間後、目が覚めた。家は静かで誰もいなかった。おばさんはまだ帰ってきてないんだなと思った。今は誰にも会いたくなかったから、カミラに「おいでよ」ってメッセージを送るのはやめておいたんだ。
気分に合う絵を描こうと思って、アートルームに行った。そこに着いて、周りを見渡した。壁にかかってる自分の絵、全部美しいんだよね。
ローハンのために描いた絵を見てたら、突然、どうしようもない怒りがこみ上げてきた。その絵に近づいて、壁から引き剥がして、膝で叩き壊したんだ。それだけじゃ足りなくて、彼の顔がずっと見えてて、もっと腹が立ってきた。ボロボロになるまで叩き続けたよ。
床に座り込んで、ちょっと泣いた。あいつが、自分勝手なことしか考えられなくて、私達が一緒にいられなくなったことが悲しかったんだ。ウラジーミルのことを考えたら、また笑顔になった。立ち上がって、イーゼルに向かった。あいつがどんな顔をしてるか、忘れちゃう前に描きたいって、急に思ったんだ。あいつは、太陽の下の天使みたいだった。太陽が彼の肌を照らして、ブロンズ色の肌が生き生きとしてるんだ。
あいつに会えたのは、昼間は一回だけだったから、彼の特徴を全部覚えてるか試してみようと思って絵を描き始めたんだ。彼が私を見た時のあの輝いた目、オオカミとして私を嗅いだ時の困惑した目、そして私が彼のメイトだって言ってくれた時の嬉しそうな目。全部覚えてる。ギリシャ神話の神様みたいな体、アドニスみたいだった。あいつは戦うために作られたような体だった。黒いジャケットの下を見なくても、あいつが筋肉と力でできてるってことは分かったよ。私が反論して立ち去ろうとした時、口元がニヤリとしたんだ。
それを全部描いたんだ。彼が私を見下ろした時に唇が少し開いてるとことか、メイトだって公言したときの彼のあのセクシーな笑顔とか。考えもせずに私をメイトだって言ったんだよね。その行為で私の心が溶けて、スケッチをしながら、笑顔がこぼれた。途中で目を閉じて、彼の目が私の目を見つめてるのを想像したり、彼が冗談を言って、私が笑ってる時に私を見てる時の、あのセクシーな笑顔を想像たりしたんだ。
色を塗り終えた頃には、もうほとんど暗くなっていた。彼はすごく美しかったから、彼の全てを表現しようとしたんだけど、無理だった。だって、実物の方がずっとかっこいいからね。
部屋の真ん中に置いて乾かしておいて、階下に降りて番組を見て、何か食べ物を注文した。おばさんに電話して様子を確認したかったんだけど、私を避けてるのが分かったから、もうすぐ戻ってくるだろうと思ってやめたんだ。
ベンに電話して遊びに来てもらうこともできたけど、あのキス以来、私達の関係はギクシャクしてたから、もっと気まずくなるような会話は、もうしたくなかった。突然だったし、今はもう考えられないことなんだ。
ピザと中華料理を注文したんだ。明日学校に行かないから、ピザは使えるし。しばらくはゴーストプレイするんだ。