第29章
そんなの無理だって。
セスはいい人だって認めるけど、ちゃんと地に足つけてる人だし。あたしは誰かの心を壊せるようなタイプじゃないんだよね。むしろ、自分の心が壊れるのを恐れてるタイプっていうか。
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「まず、最初から話してもらえない?知ってること全部。」あたしは手を組んで、ベンジャミン氏を見た。スーツ着てるし、髪はボサボサだし、全然寝てないみたいだった。
彼は髪をかきむしって、「あんまり知らないんだ。ハリソンが殺された夜は家にいたんだ。誓って、あたしが殺したんじゃない、カリーさん。」声は震えてないし、嘘ついてるような感じもしない。あたしは、彼がパートナーを殺してないってわかってる。あとは、陪審員に信じてもらえるかどうかだよね。
あたしは頷いて、「ベンジャミン氏。それだけじゃ足りないわ。家にいたって証明できる人、いないの?奥さんとか。」
彼は首を横に振って、「いや、妻は町外に出てたんだ。一人だった。」
「つまり、アリバイはないってことね。」あたしはそう言って、髪をかきながら考える。こういうケースは一番難しいんだよね。しかも初めてだし。今まではみんなアリバイがあったから、楽だったんだけど。
彼はまた首を横に振る。「そうなんだ。」
あたしはクリップボードを見て、「家から一歩も出てないって言ってたけど、凶器はどうやってそこへ? 」
彼はあたしの目を見て、「カリーさん、ナイフは裏庭で見つかったんだ。誰でもそこに置けたはずだよ。」確かにそう。つまり、サミュエル氏を殺した犯人は、何をすべきか正確にわかってたってこと。ベンジャミン氏の裏庭を調べろって警察にリークしたのも同じ犯人かもしれないし。じゃないと、あんなに早く武器が見つかるわけないし。
あたしは頷いて、「サミュエル氏との関係は?」
「一番の親友だったんだ。」彼はため息をつく。「大学からの友達だったんだよ。」
「喧嘩とかしたこと、あった? 」核心に迫る必要がある。検察官が、ベンジャミン氏がサミュエル氏を殺したってことにするのを、なんとしても阻止しなきゃ。
彼は迷わず答えた。「いや、一度もない。」
喧嘩のない友情か。
うーん。「敵は?」
彼はため息をつく。「まあ、そうだね。あたしたちは運送会社を経営してるから、敵くらいいるさ。」
「その敵の名前教えてくれない?調べて、サミュエル氏を殺す動機があったかどうか、確認できるから。」あたしはペンを取り、名前を待つ。
「コリン・ダニエルズ。あいつは本当にクズなんだ。あと、ディック・レイモンド。」あたしはクリップボードに名前を書き留める。クレアに頼んで、その人たちの情報を集めてもらおう。
ペンを置いて、「あなたは?敵はいる? 」 殺人罪でハメられてるのに。
「たくさんいるよ。」彼は答えた。「こんな仕事してたら、敵がいないわけないだろ。」
あたしは頷く。どんなビジネスでも、敵はいるもんだ。セスがあたしの敵みたいなもんだし。
「名前を教えてくれる?全部。」一人も見落とせない。彼は、ここ数ヶ月で喧嘩したり、意見の対立があった人たちの名前を話し始めた。
「他に、何か知っておいた方がいいことある? 」彼の無実を証明するために、できるだけ多くの情報が必要だった。
「ハリソンと妻は離婚することになってたんだ。殺される数週間前に、妻は彼に対してすごく暴力的になって、オフィスに来て花瓶を投げつけたりもしたんだ。」
あたしは首を傾げて、「つまり、彼女が彼を殺したかもしれないってこと? 」
彼は首を横に振る。「わからないんだ。お互い愛し合ってたのに、突然離婚の話が出て、それで彼が死んだんだ。」あたしは彼女の名前をクリップボードに書いた。もし彼女が夫を殺して、ベンジャミン氏をハメた可能性があるなら、知っておく必要がある。
「離婚の原因は何か知ってる? 」
「いや、でも彼女が離婚を求めたのは知ってる。」あたしは頷く。法廷で彼の注意をそらすために、その情報を使えるかもしれない。「なぜ離婚を求めたか、知ってる? 」
彼は首を横に振って、「わからない。」って、うつむいた。
あたしは彼が見てないのに、微笑んで言った。「心配しないで。あなたが無実だって証明するから。」
彼は顔を上げてあたしを見て、「アリバイがないし、凶器は家で見つかった。あたしが唯一の容疑者なんだ。」
「それが問題なんだよ、ベンジャミン氏。容疑者。ナイフにあなたの指紋はなかった。」あたしの頭にアイデアが浮かんだ。「ベンジャミン氏、あなたの家に、あたしが行ってもいい? 」
彼は困惑した顔で眉をひそめたので、あたしは彼を安心させるように答えた。「あなたの使ってるナイフの種類を見たいの。家のナイフの写真を取れれば、凶器と比較できるから。」
彼は、事務所に来てから初めて笑顔を見せた。「それは素晴らしいアイデアだね。」
「そう、弁護士としては、型にはまらない考え方をしないとね。」あたしは同意した。
「じゃあ、うちに行こうか。」彼は椅子から立ち上がって言った。
あたしはクリップボードとハンドバッグを持って、「行きましょう。」
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コテージのドアベルを鳴らして、返事を待った。ドアが開いて、金髪のミドルエイジの女性が現れた。あたしは微笑んで手を差し出した。「あたしはカリー。ベンジャミン氏の弁護士です。」
彼女はベンジャミンの名前を聞いて顔をしかめたけど、あたしの手を取って握手してくれた。「何か用ですか? 」
「まず、あなたのご家族にお悔やみを言いたいんだけど。」彼女は頷いたけど、何も言わない。あたしがここにいることを嫌がってるのがわかったから、「一つだけ質問があるんです。」
彼女は肩をすくめて、あたしに話を促した。「あなたとご主人は、離婚の手続き中だったんですよね? 」
彼女は頷いた。「はい、そうです。」
「離婚の原因を教えてもらえませんか? 」
彼女は苛立ったため息をついた。「彼は浮気してたの。」